29/82
5時間目 誘惑する女教師
俺は朝イチの鍵開けをすませては職員室でコーヒーを飲む。すでに朝練のため部活で登校している生徒や先生が何人かいた。
「おはよう、しんちゃん!」
「ぶー!」
俺は飲みかけのコーヒーを吹き出した。
「幼馴染みだからってしんちゃんは寄せって何度言ったら分かるんだ、かなえ。」
「あら、しんちゃんだって成宮先生じゃなく、昔のままかなえじゃないの。」
俺になれなれしく「しんちゃん」と言ってきたこの女は「成宮かなえ」小学校~大学と一緒だったいわば腐れ縁と言うやつだ。去年、俺達は違う高校に先生として赴任したが、俺は家の事情、かなえは学校の事情でそれぞれこの春から風鈴高校にやってきた。
「昔の癖が抜けなくってな・・・。」
「高校の頃に付き合ってたもんね。でも、私はまだしんちゃんのこと諦めてないよ。」
「俺はもう結婚してるって言っただろう。」
「嘘・・・。だって、しんちゃん、奥さんの話をすると目をそらすもん。」
かなえが俺のそばにやってきては小声で耳元でささやく。
「それは言いたくないことだって人にはあるしな。」
「私の女の勘が言っている。しんちゃん、結婚していないでしょう、違う?」
「コーヒー飲みすぎたトイレ行ってこよう。」
俺は席から立つと職員室を後にした。




