1-82 天まで届け
――深夜。午前四時。
〈オクタゴン〉のリビングで、俺と拓生、ハズレちゃん、竜歌は、まだ帰ってこない二人を待っていた。
拓生は倉庫の金庫に三百枚の虹金貨を納めてくれていた。
一方、俺はソファに腰を沈め、煙草を吸っていた。
部屋に響くのは、壁掛け時計の針が刻むチクタクという乾いた音だけだ。窓の向こうはまだ深い夜で、暖房の効いた室内にまで、冬の冷えがじわりと染み込んでくるような気がした。
いつになく言葉は少ない。だが、四人が考えていることは多分同じだった。
――さっきの、陽奈乃の言葉。
イルミネーションを背に、宙に浮かんだまま、俺を真っ直ぐ見て告げたあの声。あの顔。あの強がった笑顔。全部が、頭から離れない。
フランは俺の膝の上で、疲れ果てたように眠っていた。小さな身体を丸め、規則正しい寝息を立てている。まだ三歳なのに、フランは俺の戦いを見届けようと、深夜二時まで必死に起きていてくれたのだ。今日は昼過ぎまで寝かせてやろう。
「むにゃ……おにいたま……」
陽奈乃と別れた時、あいつの目には涙が滲んでいた。それでも陽奈乃は、俺達に勘づかれまいとして、飽くまで明るく振る舞った。俺達を先に帰らせたのも、そのためだろう。
あの後、陽奈乃が泣いたであろうことは、想像するまでもなかった。こういう時だけ、自分の勘の鋭さが嫌になる。
――陽奈乃は、俺を好きだと言ってくれた。それは素直に嬉しい。嬉しいに決まっている。
だが多分、陽奈乃はまだ俺のことを諦められていない。
――「本当に相手のことを思うなら厳しくすべき」なんて言葉もある。だが俺はまるで共感できない。あれ以上強い言葉を、陽奈乃にぶつけることなんて俺には出来なかった。仮に出来たとして、それでどうにかなったとも思えない。
出会ってからまだ日も浅いというのに、陽奈乃はそれくらい本気で俺を好いてくれている。
リビングの棚の上には、EMB優勝者の証であるチャンピオンベルトが飾られていた。照明を受けて、その金属の縁が煌々と輝いている。数時間前まで耳を劈いていた歓声が、まだその部屋に薄く残響しているような気すらした。
そんな中、仕事を終えた拓生がリビングに戻ってきて、俺と竜歌、ハズレちゃんが座るL字型のソファに腰を下ろす。
座面が小さく沈み、そこで漸く竜歌が、重い口を開いた。頭の二本の黄色い角が、照明を受けて鈍く光る。
「陽奈乃は……ボスのことが好きだったんだなァ……」
「……驚きでしたな」
「アタイは正直、恋愛とかわかんねェよ。ボスやみんなのことは大好きだけどよォ、それは陽奈乃の気持ちとは違ェような気がする……」
「ハズレちゃんもわかんないですけどっ!陽奈乃さんは相当な覚悟で雪渚センパイに告白したんだと思いますっ!」
――陽奈乃は、俺と天音のことを思って、「俺にフラれる」なんて辛い決断をした。しかも最後まで気丈に振る舞って、俺達に余計な気を遣わせないようにした。
「日向女史は本当に〈神威結社〉に入ってくれるのですかな……?」
「アタイは陽奈乃が入らねェなんて嫌だよォ!」
――その時だった。背後で、扉の開く音がした。玄関だ。
振り向くと、そこにはメイド服に身を包んだ天音が立っていた。肩口に、ほんの少しだけ雪が残っている。外の冷気を纏ったまま、天音はリビングへ足を踏み入れた。
「皆さん。帰りが遅くなってしまい申し訳ございません」
そこに、陽奈乃の姿はない。
陽奈乃はまだ〈オクタゴン〉の場所を知らない筈だ。天音と一緒でなければ、ここには来られない。部屋の空気が、目に見えるほど張り詰めた。
「姉御ォ!……って陽奈乃はァ……?」
「それが……しばらく日向さんの帰りを待っていたのですが……こんな連絡が……」
そう言って、天音が差し出したスマートフォンには、SSNSのDMが映し出された。陽奈乃との遣り取りが記されており、その画面越しの会話からも仲睦まじい様子が窺えた。
そして、その中には、一言だけ綴られていた。
――――――――――――――――――――――――
ごめんね、あまねえ
先に帰ってて
――――――――――――――――――――――――
「何度か電話をかけてみたのですが……連絡が取れず……」
その短い文の下には、天音からの不在着信の表示が幾つも並んでいた。続けて、〈オクタゴン〉の位置情報と、「私のためにごめんなさい」という天音のメッセージ。
「まだ日向さんは〈オクタゴン〉の住所をご存知ないはずなので、所在地だけは伝えておきましたが……」
「そうか……」
天音の説明を聞き終えるや否や、拓生とハズレちゃん、竜歌が一斉に声を荒げた。
「――おいボス!まさか陽奈乃のヤツ……ッ!」
「大変ですよっ!」
「そんな……!捜しに行きますぞ!」
――いや。
陽奈乃は、俺みたいな弱い人間じゃない。あいつは多分、そんなことはしない。天音もそれをわかっているからこそ、こうして戻ってきたのだろう。
「いえ……きっと日向さんは大丈夫です」
「そうだな……。信じて待とう。アイツはそんなヤワじゃねえ」
「……っ!そ、そうですな」
「悪ィ、ボス。そうだなァ……」
待つしかなかった。
そして更に、数十分。
軈て窓の向こうに、朝の気配が滲み始めた。雪はいつの間にか止み、東の空がうっすらと白んでいく。午前五時。静かな早朝だ。
突然、その時は訪れた。
玄関の扉が開く。敢えてか否か、施錠されていなかった扉から、一人の女が入ってきた。
「――お邪魔するね」
ギャル風の可愛らしいファッション。朝の光を背負って立つ、その女は、玄関から一歩リビングへ踏み込み、そのまま仁王立ちになった。凛としていて、美しくて、妙に堂々としていた。
ルビーみたいな瞳が、ソファに座る俺達をしっかりと見返している。
俺は、その女――陽奈乃に言った。
「おい遅いぞ、陽奈乃。心配しただろ」
頬にはまだ涙痕が残っていた。散々泣いたのだろう。それでも今の陽奈乃の顔には、妙な吹っ切れ方をした明るさがあった。腕を組み、胸を張り、俺達を見下ろすように立ったまま、少しだけ照れ臭そうに笑う。
「えへへ……ごめん雪渚、それにみんなも」
「陽奈乃ォ!来てくれたんだなァ!」
「陽奈乃さんっ!」
「日向女史!歓迎しますぞ!」
「日向さんが来てくれて嬉しいです。〈オクタゴン〉へようこそ。日向さん」
歓迎の声が次々と飛ぶ。その中には、勿論、天音の声もあった。さっきまでの揺れが嘘みたいに、その声音には迷いがなかった。
「ああ、改めて歓迎するよ」
「うん!みんなありがと!」
陽奈乃は嬉しそうに笑った。八重歯が覗く。その笑顔のまま、仁王立ちの姿勢を崩さず、俺と、その隣に立つ天音を真っ直ぐ見て言う。
「――雪渚、あまねえ!ごめん!諦められなかった!アタシ、まだ全然雪渚のこと好き!」
「ふふ、そうですか」
天音が小さく笑う。二人の間にあった筈の蟠りは、もう見当たらなかった。
「雪渚!アタシのことどう思ってる!?」
陽奈乃が、逃がさないとでも言うように俺を見る。
天音もまた、優しく俺に言った。
「せつくん、私には気を遣わず、素直に答えてあげてください。それがせつくんの誠意です」
俺は小さく頷き、灰皿に煙草を押し付けた。それから改めて、陽奈乃を見た。陽奈乃に、言葉を。
「陽奈乃は可愛いと思うし魅力的な女の子だと思う。だが天音には一歩及ばねえかもな」
「ふふ」
嬉しそうに、天音がまた笑った。
一方の陽奈乃は、目に見えて顔を真っ赤にした。
「可愛い……可愛い……って!」
「ふふ……素直に答えるのが誠意だとは言いましたが、妻である私の前で他の女の子を褒めるなんて、正直すぎるようですね?」
天音が少しだけ怖い目で俺を見る。だが本気で怒っていないことくらい、誰の目にも明らかだった。
陽奈乃は尚も勢いのまま、俺へ食い下がる。
「……じゃあ、あまねえさえ倒せばアタシにもチャンスはあるんだよね!?」
「日向さん……そういうことですね?」
「うん!アタシはあまねえに勝ちたい!雪渚がアタシに振り向いてくれるように、アタシは今よりもっと可愛くなる!」
――陽奈乃は……強いな……。
「……わかりました、日向さん。受けて立ちますよ。絶対にせつくんは渡しません」
「うん!アタシも絶対に負けないから!」
火花を散らすように頷き合う二人。
俺は陽奈乃を見て、言う。
「はっ、クソかっけえな、陽奈乃。いいだろう、振り向かせてみろよ」
「うん!絶対雪渚に好きになってもらうから!」
朝の光が、玄関から差し込んで陽奈乃を照らしていた。その姿はやけに眩しく見えた。
それまで黙っていた拓生とハズレちゃん、竜歌が、そこで漸く騒ぎ始める。新たな仲間――〈十傑〉・第七席、日向陽奈乃。その現実が、部屋の空気を一気に明るく塗り替えた。
「――っしゃァ!陽奈乃ォ!良かったなァ!」
「うん!竜歌ちゃん!」
「陽奈乃さんっ!よろしくお願いしますっ!」
「うん!ハズレちゃんもよろしく!」
「〈神威結社〉万歳ですぞ!」
「オタクくんも改めてよろしくね!」
「――ぶひっ!?小生はオタクくんのままですと!?」
「なにそれきも!ウケるんだけど!」
笑い声がリビングを満たす。
その様子を見ていた天音が、柔らかく笑って俺に言った。
「ふふ、また賑やかになりましたね」
「はは、そうだな……」
――こうして、〈十傑〉・第七席――日向陽奈乃が〈神威結社〉に加わった。
陽奈乃は仲間達と笑っていたが、ふと何かを思い出したように俺の方へ向き直る。
「そうだ!良かったらみんなにアタシの親友に会ってほしいな!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――その日の夕方。俺達は、陽奈乃が元々家族と住んでいたという住宅地の近くにある墓地を訪れていた。
プレート型の墓石が等間隔に所狭しと並べられた中、一つの墓石の前に俺達は立っていた。供えられた弔花――数輪の菊の花が、薄暮のオレンジの光に照らされる。
「ひなのおねえたまのおともだち、ここにいるの?」
「そうよ、フランちゃん」
その墓石には、こう刻まれていた。
――――――――――――――――――――――――
青砥舞白
2088~2108
――――――――――――――――――――――――
墓の前に踞み込んだ陽奈乃に倣って、俺達も静かに手を合わせる。
冬の夕暮れは早い。冷たい風が墓地の間を抜け、花弁を微かに揺らしていった。
暫くして、陽奈乃がゆっくりと口を開いた。まるで墓の下で眠る親友に、今日あったことを話して聞かせるみたいに。
「舞白、今日はね。友達を連れてきたんだ。アタシを受け入れてくれた、素敵な人たち」
その背中越しの声を、俺達は誰も遮らずに聞いていた。陽奈乃の声は柔らかくて、それでいてどこか、壊れそうなほど細かった。
「あと舞白、アタシね。好きな人ができたんだ」
陽奈乃は口元を少しだけ綻ばせて含羞んだ。まるで、女の子同士が、恋の近況を語り合う放課後のように。陽奈乃の柔らかな声音は、橙色の空に溶けてゆく。
「スゴくカッコいい人だよ。アタシを庇ってくれて、アタシのために命懸けで戦ってくれたんだ」
背後で、天音の白い毛先が風に揺れる。
「ずっと恋なんてしちゃいけないと思ってた。アタシよりずっと……ずっとキラキラ輝いてた舞白の将来を、アタシは奪ってしまったから」
声が少しずつ掠れていく。あの日の光景は、まだ陽奈乃の中で終わっていない。
「陽奈乃ォ……」
竜歌が堪らず声を漏らす。
「ううっ……舞白……なんで殺されなきゃいけなかったの……?あんな……姿にされて……ううっ……」
――〈不如帰会〉の信者二人に惨殺された陽奈乃の家族。そして、その巻き添えを食った親友、青砥舞白。
――しかも最悪なことに、加害者の一人は陽奈乃を良く思っていなかった元同僚だった。その事実が、陽奈乃の自責をより深く、より逃げ場のないものにしている。
涙声になった陽奈乃が、振り向かずに俺の名を呼んだ。
「雪渚……アタシはどうすればいいんだろ……。ううっ……やっぱり、舞白のお葬式で見た、アタシに向けられた、舞白のママの怒った顔が忘れられない……」
――俺は無宗教だ。葬式なんて、残された側が満足できればそれで良い。建前は死者を弔うためだが、それで死者が生き返る訳でもない。実態は弔う側が気持ちに区切りをつけるための儀式だ。
――だが、人の死というものは、そんなに軽くない。俺はそのことを、痛い程に理解させられた。俺は蘇っても、舞白さんは、もう戻ってこない。
「舞白……舞白っ……!アタシね……まだ力不足で何もできないけど……絶対に舞白の無念は晴らすから……!だから……っ!待っててね……!ううっ……」
「陽奈乃ォ……」
「ううっ……でもやっぱり寂しいよ……っ!舞白も、ママも、パパも、タロももういない……!ううっ……!雪渚……っ!」
首元の、ルビーが埋め込まれたハート型のネックレスを陽奈乃が強く握り締める。その指先は白くなるほど力が入っていた。
――俺は、昨夜の雷霧とのラップバトルで、自分の過去とはある程度折り合いをつけられたと思う。だが陽奈乃は違う。まだ、今もあの日に囚われ続けている。
「アタシね……アタシね……みんなとこれから一緒にいられるの、スゴく嬉しいよ……!でも、でもね……やっぱり舞白や、ママやパパ、タロのこと、ずっと悲しい……!毎日夢に見る……。……アタシだけ生きてるのが……辛いよ」
俺がその言葉に答えられるとすれば、一つだけだった。
「陽奈乃……俺さ、未だに母親を恨んでるよ」
「うん……」
「でも母親も、俺が引き篭ってるうちに事故死してた。結局、何の謝罪もないままな」
「そう……だったんだ……」
「それから結局、昨日の今日まで、ずっとその過去を払拭出来てねえままだった。両親との確執を放置したまま逝っちまったからな」
「雪渚……」
「でもそれも昨日、本気で雷霧と言葉で殺し合って、自分を全部曝け出したことで、俺の中で吹っ切れた気がする。陽奈乃がきっかけを作ってくれた。『ありがとう』を言いたいのは俺の方なんだ」
「ううん……雪渚が頑張ったんだよ」
「俺は……天音を八十五年も苦しませてしまった。泣かせ続けてしまった。それに天音だけじゃない。一二三だってそうだ。俺があの時、自殺を選んだことは、どんなに謝っても償いきれない」
「せつくん……そんなことは……」
「師匠……」
「陽奈乃やフラン、拓生、ハズレちゃん、竜歌もそうだ。みんな地獄みたいな経験をして、それでも前に進んで生きている。そんなみんなが今、俺と仲間でいてくれることが、とても誇らしいよ」
「ボス……」
「雪渚……」
「結局みんなそうだよ。苦しんだ過去はそう簡単には乗り越えられない。みんながみんなそんな強い人間じゃない。でも俺はそれでいいと思ってる。乗り越える必要なんてないと思ってる」
「雪渚は……それで辛くないの?」
陽奈乃が振り向く。涙で濡れた目が、真っ直ぐに俺を見た。
「辛いに決まってる。だから俺は――」
俺は静かに言葉を継いだ。みんなが、ただ黙って俺を見つめていた。
「――引き摺って生きるよ。引き摺って、引き摺って、その重さで脚が千切れても、俺はそれでも前に進むさ。俺を仲間だと言ってくれるみんなのためにもな」
言葉にした瞬間、自分でもそれがしっくり来た。綺麗に乗り越えるなんて、俺には無理だ。無理なら無理なりに、傷ごと引き摺って生きるしかない。
「そっか……。雪渚は茨道を選ぶんだね……」
「せつくんらしいと思います。私はそんなせつくんが好きですよ」
「ボス……!そうだなァ!アタイらは……生き抜かなきゃなァ!」
「雪渚センパイっ!それでこそハズレちゃんの大好きな雪渚センパイですっ!」
「師匠……そうですな……!」
――この新世界は、旧世界みたいに、ただ仕事をしていれば生きられるような優しい場所じゃない。理不尽な暴力で、ある日突然全てを奪われる。そんなことは珍しくもない。
だからこそ、仲間と力を合わせて生き残らなければならない。二度と、誰も悲しませないためにも。
俺は改めて、陽奈乃を見た。陽奈乃もまた、涙を拭いながらこちらを見返す。
「それでな、俺、考えたんだ」
「うん、雪渚。聞かせて……」
「――〈不如帰会〉をブッ潰そう。微力だが俺も手を貸す」
その一言で、陽奈乃の顔が崩れた。
「雪渚……ありがとう。アタシ嬉しい……」
「……日向さんの悲願ですからね。せつくんがそう決めたのでしたら、無論私もお供します。いつまでも、いつまでも」
「はいっ!ハズレちゃんも協力しますよっ!〈神威結社〉の大事な仲間ですからっ!」
「そ……そうですな!小生も〈不如帰会〉は許せませんからな!」
そう言った拓生の脚はガクガクと震えていた。だが、恐怖の中で拓生が絞り出した言葉が本心だということは、十分に伝わった。
「アタイの兄貴が幹部っつートコだろォ!アタイもまだ決着がついたわけじゃねェ!陽奈乃ォ!目的は一緒だァ!アタイも手ェ貸すぜェ!」
「フランも、がんばる」
「うん……みんなありがとう」
陽奈乃はルビーの瞳に浮かべた涙を拭って破顔した。上がった口角から、可愛らしい八重歯を覗かせる。
「うん!そう……そうだね!アタシ、萎えてる場合じゃないよね!アタシがこんなんじゃ……舞白たちも辛いもんね!」
「ボス!やっぱ最高だァ!」
竜歌が勢い良く抱きつく。
拓生は虚空から、白い百合やカーネーションを中心に束ねられた綺麗な七束の花を取り出した。自分の分を一束残し、俺達に一束ずつ手渡してくる。
陽奈乃に倣って、平板状の墓石の上に献花する。
「舞白……アタシ、みんなと頑張るから。空から見守っててね」
「……いい友達だったんだな」
「うん!最高の友達!あ、もちろんみんなもね!」
「ははっ……」
笑い声が夕暮れの空に溶けてゆく。陽奈乃の言葉が天まで届いたかはわからない。――が、もう陽奈乃は、確実に前を向き始めていた。
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