34 4年がすぎた。
4年がすぎた。
ピュエロスは言った
プラチナ、今日から寺院だからね。頑張ろうね!
はい!ママ!
プラチナはそれなりに言語を覚え、エイレースケイアの白い法衣を着ていた。
黄金の瞳を隠すため目に白いアイパッチを当てている
化け物風情がずいぶん文明的にふるまえるようになったものだ
本家の聖術の師から魔術にくら替えした母親から聖術の学校を進められるとは飛んだ皮肉である。
母親と言っても血のつながりこそないが本人たちがそれでいいのだから差しさわりあるまい。
生まれてまもなくから冷たくあしらうように接しているとプラチナは寄って来ないのが普通になった。
だが時おり俺のほうを見ていることがある。父が恋しいとでも言うのか?ははっ、笑わせるな。誰がお前なんかと親子になるか!
あるときプラチナは家の中でコツコツ聖術の勉強をしていた。
庭に出て実際に光を手の平に出してみる
ずいぶん弱々しい聖術を出すものだ。くだらない。
聖術の訓練は暗くなるまで続いた。
縁側で本を読み。
疲れた。
ひとりごとをつぶやき、一度本を置くと横を見た。
いまだプラチナは聖術を振るっている。
おい!
と声をかけると
プラチナはビックリした風にこっちを見た
やってみろ。
気まぐれにそう話しかけるとプラチナは聖術を撃ってみせた
プラチナが護符を振るうとしょぼい光が飛んで行く
もしこんな攻撃が飛んできても踏みつぶす握りつぶす跳ね返す無視して敵に突き進む、どうとでもなるようなあまりにしょぼい光だ。
それが的まで飛んでいくと小さく弾けた
クズだな。
感想を述べると、プラチナはしゅんとうつむいていた。
夜、ピュエロスは寝巻き姿で髪をとかしながら言った
マスター、あの子寺院でいじめられているそうです。
あいつがいじめられようがどうでもよかったが会話の種として相づちをうつ
そうか。
そうなんです!あの子、生まれつき魔力が強いせいか周りの子から怖がられてるみたいで、
それが原因で避けられたのか?
そう!だからちょっとでも仲良くなれるように聖術の威力を調整できるよう練習していて
そうか。
もう、ちゃんと聞いてるんですか!
そうだな。聞いてるよ。
ピュエロスの、くだらない世間話ではクラスでいじめられているそうだ。改めて言おう、くだらない。
何ヵ月かたったある日、ピュエロスは言った
それじゃあ、今日は遅くなるので、晩御飯頼みましたよ。
ああ、
プラチナを連れていってくださいね。
嫌だと思ったが、ピュエロスの頼みだ。聞いてやらなければなるまい。
例のごとく庭でプラチナがひとり聖術を練習している
おい!
と声をかけるとこっちを振り向く。
全身汗でビッショリだっだ。
出かける前にまずは風呂か。
はあ~・・・。
心底深いため息を吐いて風呂を済ませ、俺は愚かにもそれと一緒に商店街に買い出しに出掛けた。
クソみたいな商店街に到着すると全員俺を見て不快そうな顔をする。
そのあとで誰も彼もがプラチナを見るたび満面の笑顔になった。
金やるから好きなもの買ってこい。
そう言ってプラチナに硬貨を持たせると走っていって店並みをうろつき始める。
その間に俺は何を買うかを考えながら食品を見る。
接客は最悪だが味はいい店だ。コロッケパンでも買っておけば外れはないだろう。
そう時間はかからずプラチナが戻ってくると、手に小さな箱を持っていた。お菓子だ。
俺は一気に逆上した。
食い物持ってこいって言っただろうがあああああああああああああああああああああああ!
ドン!
プラチナを蹴り飛ばすと小さい体がぶっ飛んで商品棚を倒した。
ガッシャーーーーン!ガラガラドガジャーンカンカーーン!
道に大量の商品が散乱していく
うえあああああああああああああああああああああああああ!
泣き叫ぶプラチナ
防具屋の親父はあわててプラチナに駆け寄ると俺を見て言った
おい!何てことしやがる!あんたの子供だろ!
あんたの子供だと?笑わせるな!俺はこいつを子供だと思ったことなど一度もない!こいつは憎むべき!忌むべき象徴でしかない!地獄に!堕ちろおおおお!
これでもかと指さして口の端から唾を吐き散らしながらあらん限りの憎しみを込めて罵った
吐き捨ててからその場を去る
ごめええんなさああああああああい!ごめんなさあああああい!ごめんなさああああああああああいい!ごめんなさああああああああああああああい!
大泣きしながら追いかけて来るがあれは人ではない。
人の皮をかぶった化け物だ。
ピュエロスさえいなければ、いますぐにぶち殺してやるところだ。
プラチナは目を泣き腫らしながら俺のあとをついてくる。
ヒグ、ヒグ・・・。
しばらく歩いたがいまだ泣き止んでいないようだ。
泣いてんじゃねえよ。愚図が!
そう言ってプラチナの後頭部をひっぱたく
しばらく歩くと武器屋の前に来た。
武器屋の親父は笑顔で言った
おいおいどうした嬢ちゃん。
泣いているのを同情しているようだ。
武器屋の親父はプラチナに棒付き飴を渡したあとで
嬢ちゃん、これ嬢ちゃんのママに頼まれてたスペアの杖だ。
親父は杖を渡そうとしてから、やはり体格から見て大人の俺に渡そうとした。
だが、プラチナは杖をあえて受け取ると重そうに抱えた
親父は俺を一瞬ギロリと見る
こんな小さな子に持たせるんじゃない!とでも言いたいのだろう。やっすい正義感だ。じじょ~も知らないくせにいい!知ったことか!そんなに可愛きゃくれてやるよ!そう思いながら俺は平然としていた。
いつもなら突っかかってきてもおかしくなさそうだが。余計なことにプラチナの前で俺ともめたくなかったようだ。
持てるか?重いぞ?
そう心配そうに言ってからプラチナの背中に杖をロープで固定していた
3、40代の2、3人のおばさんたちがいた
お、おばさん!こんにち・・・は・・・。ヒグ
泣いているの?
悪い子なの。プラチナ、悪い子なの・・・。
どうしたの?怒られちゃったの?
そうだ!プラチナちゃん!あいさつできて偉いわね~。と笑顔で笑ってから気まずそうに俺から顔をそむけた
つい最近、威勢よく俺を蔑んだ人物たちとは思えない。
あれか?子供の前だから本性は隠しているのか?
道具屋のハゲ頭
プラチナちゃん、今日は薬草多目にしとくね。おもちゃもおまけしとくからね!
果物屋の白服
プラチナちゃん、おまけだ。そう言ってお菓子を渡す。
アクセサリー屋の女
プラチナちゃん、これ持っていきな、小さなブローチを渡す
道行く人々は皆同じくプラチナに対する愛想笑いばかり。
どうやらこいつは商店街でかなり慕われているようだ。
本屋
一冊ほしい本を買ったら、もう一冊渡された
ほら、新刊だ。
・・・はあ?
まったく意味がわからなかった。
金はいらない。礼ならあの子に言いな。まあなんだ。お前さんも子持ちなら、そろそろしっかりしなよ。
そう言って店主はニッコリと笑うと俺の肩に手を置いた。
何のことはない善意からの行動だったのかもしれないが。
それが思いのほか俺の神経を逆なでする。
おい・・・いい加減にしろよ!どいつもこいつもよぉ!・・・お、お、お、俺があああああああああ!この物体の親だと!?ふっざけるなよ!てめえええええええええ!
激情のままに店主の胸ぐらをつかみあげる
いまにも首をへし折りたくなる
お、おぃ!なんだよ?
押し付けがましく!無遠慮で!人の心の中に土足でヅケヅケと入り込もうとする!その身勝手で下劣な善意を俺に押し付けやがって!余計なお世話なんだよおおおおおおおおおお!
バン!と店主を突き飛ばすと本を店主の胸に投げつけ、きびすを返しツカツカと歩き出す。
ここいら一帯を焦土にしない程度には俺にも分別があった。
お、おい!
呼び止める声など知ったことか。




