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33 マスターどうして助けてくれなかったんだ

ダンザが言った

マスターどうして助けてくれなかったんだ

腕が伸びてきて俺の腕をつかむ

ウィンが言った

マスターあなたのせいで!

ノエルが血だらけになりながら言った

マスター!恨んでますからね!死ぬまで!恨んでますからね!

わぁ!

ベッドから跳ね起きて肩を上下させ息を吸う。

夢か・・・。

目の前にオッペリアがいた

オッペリア?死んだはずじゃ?

オッペリアは僕を見下ろしながら言った

自分のことくらい俺って名乗りなさいよ。あんたそんなんだからああいうやつらになめられるのよ。

目の前に絶大な力を持つ怪物たちが現れる

普通なら恐れるものだが、そこに恐怖はなく。ただ後悔だけあった。

僕は・・・僕は君を・・・守れなかった・・・。

オッぺリアが突然悲しそうな顔をする

その顔だけで十分だ。後悔などしたくない!

前を向くと強くあろうと振舞った

わかってる・・・僕はもう・・・君を守れなかった頃の俺じゃないんだぁぁぁぁぁ!

目が覚めるとベッドの上にいた。


あれから1年


サイフォスを辞めた

理由は簡単だ。デス・ムント・デスを討つ使命を投げ捨てるために戦う。

そんな自分をごまかすことに嫌気がさしてしまったのだ。

もう何もしたくなかった。

玄関の方から声がする。

ピュエロスだ。

それではマスター、私は行ってきますね。

ご飯置いてあるので後で食べてください。

いつものようにピュエロスが仕事に出掛けた。

自ら立ち上げたサイフォスを離れ、第一線からも退いた俺は完全に腐っていた。

精神的に無理をして戦っていた俺もついに限界を迎えたのだ。

ピュエロスも俺に付き合いサイフォスを辞め、いまじゃ冒険者たちの日雇いアシスト役だ。

布団を払いのけ立ち上がる

クソ・・・。

最悪な気分で朝食を探す。

台所からご飯をつかみ、我が家の食卓まで運ぶと

うぅ!

突然の冷気に壁を見た

開いた穴から詰め物が落ちている。

なにしろ中古の安い家だ。このくらいは当然のこと

ちっ!

悪態をつきつつ落ちた詰め物を再び穴に詰っ込む。

気を取り直して朝食を運んでいると。

あ、あ~。

それは目の前に現れた。

プラチナと名付けられたその物体は人並みの言葉を話す程度に成長したあの赤子だ

と言っても片眼は金色の瞳のまま、あのゴオオとしたうなり声をあげなくなっただけなのだが、人間に換算すると1歳児くらいだろうか。

足下にいたので

邪魔

軽く頭を足で押しのけると倒れる

鳴き声をあげた

うるさい!

もっと泣かれた。

うるさあああああああああああああい!

感情のままに叫び

勢いよく建物の外へ出る。

泣き止むのを待つよりもその場を離れたほうがいくらかましだ。

あんな物体に愛情など欠片もない

ピュエロスがどうしてもというので家に置いている。それだけだ。

その後ピュエロスの作ってくれた朝食を済ませ、本を読みふけり

時を忘れて読み続けると気が付いたら昼だった

台所をあさりながら思い出す。

ピュエロスとの約束だ。

プラチナに何とか食べさせ

スプーンで離乳食を運ぶ

何度もボロボロとこぼしていた

かまわずおしこみさっ、とふき取る

すべて食べさせ終わる前に食器を片す

掃除を済ませ。

その後、午後の分の自分の食事を食べ読書に戻る

本をしばらく読みふけり、読み終わってしまった。

「王と7人の聖剣」か、おもしろい本だった。

立ち上がるとわずかに残った残金を手に本を買いに出掛けた。

サイフォス再建費用にすべてをつぎ込み、手持ちの財産を使いきった俺はこの家を除き、いまや文無しだ。

道行く人々とすれ違う。

あれ、

ほら!

出てこなければいいのに

ハハッ!

納税義務を果たせ!

30、40のおばさんたちが俺を蔑みの目で見ていた。

これが非公式とは言え世界を救った男に向ける目だろうか。

そのことを知らないものが大多数だろうことも理解しているが。

少ない近所の知人は俺がサイフォスだとうすうすわかっているだろうに

防具屋に武器屋に道具屋に食品屋にアクセサリー屋、商店街全員が目が合うたび嫌そうな顔をしている。

視界にも入れたくないのだろうことは言わずともわかる。

クズが!

早く死ねばいいのにピュエロスちゃんが可哀想よ

穀潰しよね。

あははははは!

全部聞こえている。聞かせているのだろう。

本屋の屋台に来た

次巻は・・・あった。あった。

それを手に店主に話しかける

一冊ください。

金を渡すと。

詳細ははぶくが軽く挑発を受けた。

いっそこの店主を殺してやろうか?

そう思ったが我慢するしかない。

気にしてもしかたがないことさ。

俺は本を手に店をあとにした

時間の影響で道には真っ白い服の子供が増えてくる

エイレースケイア近代主義を学ぶ寺院帰りをしている信徒たちだ。

学校と似たようなもので、この子らは学生。

ちょっとあれ見てよ。ニートよ!

うわぁ~

キッモ!

ゴミクズニートが!

女学生たちがヒソヒソ話をし

ある男子は仲間たちと目の前に来ると

ははっ、キモォ!

と馬鹿にして去っていく

男子のそのあまりに傍若無人なふるまいにたまたま通りかかった男が嫌悪感を示していた

言っておくが人間いつ転ぶかなど誰にもわからないのだ。この笑っている人間たちの中の何人が明日ニートになるかホームレスになるかわからない。

だというのに目の前のわかりやすい標的を痛めつけ楽しむ。

人間とはどこまでも浅はかでできそこないの動物どもだ。

いやいや、相手は子供だ。善悪の判断もできないのだろう。そう自分に言い聞かせ落ち着かせる。

まるでエイリアンになった気分だ。

そのどれもが人に向けていい感情ではなかった。

街中の人間が全員敵だ。

誰も信用などできない。

彼らは働かなければいけないと頭ごなしに勝手な理屈を押し付けてくる

その価値観を押し付け自分を正義と尊び、酔いしれ僕をクズ扱いしてくるのだ。

正しいことを正しいからと大義をかかげて一定水準を満たせないものに強要する。

正しさを盲目的に崇拝するカルト集団、狂信的な善意だ。狂っている!

地獄のような空間をトボトボと歩いていると目の前にそいつが現れる。

マルベリーだった。

久しぶりだな。

・・・あ、ああ・・・。

ついてこい。

何のようだ?と思いながらもマルベリーのあとをついていくと暗がりへと連れてこられた

どこまで行く!

・・・ここでいいか。

そう言って立ち止まったマルベリーの拳が俺を打つ

後ろに倒れた。

避けることは可能だったが、受けてみる。そして聞いた。

いったい何のつもりだ。

英雄だったお前がいつまで無様をさらすつもりだ!それでも一度はサイフォスを率いた男か!

ああ、ついに戦友であるこの男からも見限られたか、

そう思うと自分でもすべてをあきらめたようなそんな顔をしていたと思う。

マルベリーは虚しい顔をして言った

いまのお前を見てグレムやオフィーリアが報われるのか・・・。

・・・そんなこと・・・わかっている。けどどうしようもないんだ・・・。

・・・邪魔をしたな。去る者に貸せる力はない。エリザベートのやつが心配していた。たまにでいいから報いてやれ。

そう言ってマルベリーは去って行った。

勝手なことを・・・言うな・・・。

俺はボロボロと涙を流して、自宅のボロ屋に戻り、椅子に座って窓を見る。

気がつくと外が暗い。眠っていたようだ。

ああ、もう夕暮れ時か。

俺は・・・もうダメだ・・・。

突然、玄関の扉が開く

ガチャ

ピュエロスだった。

ただいま~、すぐにご飯にしますね~。

俺も手短に返事を返す。

ああ、お帰り。

プラチナが返事をした

あ~!

ママもプラチナに会いたかったよ~。

ピュエロスはいそいそと小走りに家に入るとプラチナを抱き抱えて愛おしそうに抱き締める。

そして台所で料理を作り始めた。

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