30 エントラール・ストーン青
気がつくと真っ黒い空間にいた。
呪いの中だ。
ここからでも遠目にもがき苦しむ人々の姿が見える。
同じようにプリズマの生み出す死の海に呑み込まれたのだ。
体が呪われ始めて全身の魔力が急速に吸い取られていく
このままでは消滅することだろう。
そのときだった。
これは・・・ドリームキャッチャーが光っている。
いつかオッペリアがくれたお守りだった。
不思議なその光が体を満たすと絶大な魔力が解き放たれていく
ドリームキャッチャーを空高く掲げればエレメントを象徴するかのような色とりどりの光が闇を照らし目の前にプリズマの姿をとらえることができた
オッぺリアの言っていたことは本当だった。
ドリーム・キャッチャーは本来大魔法を込めて魔王を退けるために作られたアクセサリー。
これがドリームキャッチャーに封じられた大魔法の力なのか・・・。
勝機は見えた。決める!
双剣杖を振るい
全精神を集中させる深呼吸をする。
はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
死には死を、影の世界の死神よ!世界を呪う死の波を貴様の死を持って切り裂け!
影魔法・スキアー・ハロス!
四方八方から無数の邪悪な影、影魔法・スキアー・アンテローポイが集まると一つに体を重ね合わせ、
黒いローブを羽織ったおぞましい最強の影の存在へと変貌していく。
ケタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!
切り裂けえ!ハロス!
スキアー・ハロスの大鎌に緑の光が集束していく。
ガレー・フルゴル!
スキアー・ハロスが大鎌を振るえば、
死をつかさどる緑の刃が同じ死の海を真っ二つに切り裂き、大地もろともプリズマを両断した!
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城は元の古城跡地へと姿を変えていく。
魔法の嵐が止んだのだ。代わりに暗雲と雨が降り注いでいた。
倒れたプリズマのもとへと向かう
プリズマは僕を見ながら言った
マスター・・・あなたなら不死を殺してくれると思っていました・・・長かった・・・やっと・・・終わる・・・のね・・・。
お前が憎くてしかたがない・・・けれど・・・愛してもいた・・・。
プリズマの胸に双剣杖を突き立てる
がはっ!
お前をそこまで追い詰めた愚かな師を・・・許してくれ・・・。
プリズマは目を閉じてそれから動かなくなった。
くっ、うぅ・・・うぅぅぅぅ・・・。
心がやりきれない気持ちでいっぱいだった
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手に青いエントラールストーンを握りしめる
戦いは終わった・・・帰ろう。
ボゴ!
突如、トゥリスカ・エンポリアーの倒れていた方から音がする。
見れば半身機械半身生身のティスの腹から子供が生まれ落ちていた。
片眼が金色の瞳をしている・・・魔が混じっているのか?
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
とてもじゃないが赤子の鳴き声とは思えない鳴き声をあげる。人と魔王の血を引き継ぐ化け物だった。
ティスの顔が脳裏に浮かぶ。
やつと・・・オッペリアの子供だと!穢らわしいぃぃーーー!
双剣杖を力の限り握りしめる
・・・人じゃない!こんな物体!人であるはずがない!
僕はそれに近付きながら双剣杖を振りあげる。
安心しろよ。化け物め!いま殺してやるううううううう!
思いっきり振り下ろすと
勢いよく砕け散ったのは地面だった。
間一髪、トゥアレタが赤子を抱きかかえていた。
マスター!やめてください!この子がいったい何をしたというのです!
いつの間にこの場に来たのか。
トゥアレタ!黙ってそいつをこっちに寄越せ!そいつはオッペリアと魔王の血を引く化け物だ!
この子がオッペリアさんと魔王の子供?
そうだ!おぞましくも生を受けてしまった。殺さなければ!
あ、赤ちゃんに罪はありません!
もうどうでもいいんだよ!そんなこと!
機械手袋サイバネティックス・ケイリスを前にかざすと威力を抑えた緑のビームがほとばしる
トゥアレタの聖術が空中にバリアを張って一瞬で爆散した。
きゃああああああああああああああぁぁぁぁ!
数メートルぐるぐる回転しながらトゥアレタが吹き飛ぶ
迫る緑のビームを受け止めたのは・・・
トゥアレタ!
そう声をあげ、横から飛び込んできたのはピュエロスだった。
ピュエロス!
ピュエロスが聖術を扱い、それに合わせるようにトゥアレタも聖術を発動させる。
二人とも頑張って!
エリザベートも遅れて現れ魔術を叩き込む
緑のビームが3人の聖魔術とぶつかり合う。
三人がかりでも非力な聖魔
術だ。
壊せなくはないが勢い余って殺してしまいそうでもある。
そうして手をこまねいていると
ピュエロスが叫ぶ
トゥアレタ、エリザベートも、頑張って!
わかってるけど!これがマスターアカーテスにも比毛をとらない闇の力!
なんて力なの!腕が裂けそう!
三人がかりで本の数瞬、抵抗を見せる。
邪魔しないでよ!
もう感情のおもむくままにサイバネティックス・ケイリスの出力を引き上げる。
緑のビームをさらにほとばしらせる。すると3人の聖魔術は粉々に吹き飛んだ
「「きゃああああああああああああああああああ!」」
不様に投げ出された3人を無視して悠然と歩みながら距離を詰める。
化け物めえぇぇ!
再び赤子に意識を向けると
・・・待って!
トゥアレタだった
トゥアレタはピュエロスとエリザベートに支えられながら何とか杖を構える。
こ、この子を・・・殺そうと言うのなら私が相手になります!
その目には鋭く研ぎ澄まされた剣のような意思の強さを感じさせた。
強者を前に我が身を掛けて弱きを助ける勇敢な・・・まるでサイフォスの理念を・・・オッペリアの意思を・・・。
そう思ったら毒気が抜けてしまった。
やり場のない怒りだけが心に残る。
うぅ・・・うあああああああああああああああああああああああ!
激情のままに叫び、がれきを破壊する。
新たに人の気配がして顔をあげると、
マスターアカーテスが立っていた。
・・・・・・マスター。
マスターアカーテスは言った
ゼロス・・・。
その声や表情から悲痛な弟子を哀れむ心が伝わってきて僕も抑えていた気持ちを言葉にしていく。
マスター、僕はついに弟子を・・・プリズマをこの手にかけてしまいました・・・許せなかった。
オッペリアを殺されて頭に血が上って・・・でも本当は殺したくなんてなかったのに!どうしようもなく怒りが沸き上がってきて・・・。
マスターは言った
それはつらかったですね。
そう言われて気がつく。
つらかったですね・・・・・・?
どうして・・・どうしてもっと早く助けてくれなかったんだ!
そんなどす黒い感情がわきあがる
ち、違う・・・そんなこと思ってない!思ってないはずなのに思ってしまっている。正確にはそう感じている。そう感じていればそれは思っているということで、でも本心は違う!違うのに・・・。
信じられない感覚だ。自分の中にそんなさもしい思いがあっただなんて!でも・・・。
違う!そうじゃない!・・・異世界の魔王が・・・世界を・・・マスターは・・・みんなを守るため・・・それを止めようとして・・・。
周りなんて無視して弟子を!自分を助けてほしかった!
違う。自分の尊敬したマスターはそんな人ではない・・・。
でも結果的にそうであってもほしかった。それも真実だ。
頭ではわかっていたのに気持ちが止まらなかった。
マスターアカーテスは言った
ゼロス、ごめんなさい。あなたとあなたの弟子が争っていたのに私は他のことにばかりかまけて、気がつけなかった。止められなかった!
言ってはいけない。そう思っても自分の気持ちを言葉にせずにはいられなかった。
マスターなら助けてくれると・・・思ってた・・・。けど、違った・・・。
違う!違うのゼロス・・・私は!
・・・守って・・・くれなかったじゃないですか!
言ってしまった・・・。
マスターに言ってしまった・・・。
もっとも言ってはいけないことを言ってしまったのだ。
マスターの顔が悲しみと無力感に歪むのが見えた。
すべて手遅れ、遅すぎたのだ。
ふと気がつく。
弟子である僕を守ってくれなかった?
それは僕も同じじゃないのか?
奇妙な感覚になる。
まるで自分が再会した弟子たちにしたことを追体験しているような・・・。
そうか・・・これが・・・あの子たちの・・・絶望・・・。
心の中が真っ暗になっていく気がした。
・・・もう、いいですよ・・・マスター・・・。
ま、待って・・・待って!ゼロス!
アカーテスは頼りなく手を伸ばすが
ゼロスはそれを無視して、いや認知すらせず、ただ呆然とまっすぐ歩いていく。
何もない場所に向かって。
トゥアレタ、その子を
そう言ってピュエロスはトゥアレタから赤ん坊を受け取ると言った。
マスターアカーテス、私は彼と共に行きます。
トゥアレタが言った
ダメ!ピュエロス!行ってはいけない!あれはもう人じゃない!破滅に突き進むだけの、ただの脱け殻よ!
さようならトゥアレタ、あなたのことを姉妹のように思ってた。
そう言い残しピュエロスはゼロスの後をついて行ってしまった。
ピュエロス・・・。
トゥアレタとエリザベートは涙を流した。
それが姉妹同然の親友との別れになると思ったのだ。
マスターアカーテスはそんなトゥアレタとエリザベートの肩をいつくしむようにそっ、とつかむと赤子をあやすように優しく頭を撫でて祈った。
主、パリョ・テオスよ。どうか三人の旅路に祝福を・・・。




