28 望まない再会
ドガシャアアアアアアアアアアアアアン!
騒音を立て黒焦げに朽ち果てたトゥリスカ・エンポリアーが倒れた。
コクピットから半身がねじきれたティスが投げ出されワイヤーから垂れ下がっている。
機械と生物の融合した体は出血しなかった。
そのときだった。
こ、これは・・・。
突如、朽ち果てた古城が時を戻したかのように修復されていく。
トゥリスカ・エンポリアーこそ、そのままだが、時間の逆行とまでは言わずとも割れたガラスがはえかわり新品同様に変わっていった。
消えていたろうそくの火が点ると、先ほどまで古城跡地だった場所に新品同然の城内が現れる。
魔法だ。
何者かから干渉を受けている。それも強大な存在からだ。
オッペリア!
彼女の姿を探すがどこにもいなかった。
これは・・・魔力の気配が漏れ出している!
隣の部屋から?
誘われているのか?
い、い、い、い、い、いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
オッぺリアの悲鳴が聞こえてきた。
オッぺリア!
勢いよく扉を開くとよくは見えないが薄い暗い光の下でオッペリアの顔だけが明るく照らされていた。
ぼんやりと見えるが手足をしばられ吊るされているようだ
オッペリア!
すぐに駆け寄り助けようとして
嫌あああああああああああああ!ゼロス!来ないでえええええええええええ!
えっ!
突然拒絶され戸惑ってしまう
そのとき気がつく。オッペリアの他にもう1人真っ黒い部屋の窓辺に女が立っていた。
不思議なことに窓の外を見ることはできても窓の外から光が差し込むことはなく部屋は漆黒の黒塗りのままだった。
真っ白い衣服に身を包みヒラヒラした布を頭からかぶった女だ。
女が頭の布を取り払うと女の顔が見える。
プリズマ?
・・・プリズマ、なぜ君がここに・・・。それに・・・まさか、君がすべての黒幕だったのか!
彼女は僕の訴えに興味を示さず窓の外に向けて言った。
ハノ・カルティ、私の私、私たちはいつまでも一緒よ。
声が響く
あぁ、プリズマ、我もお前と過ごした日々悪くなかったぞ・・・・・・。
プリズマは振り返るとようやく僕の声に答えた。
1万年ぶりですね。我が師よ。
何?1万?
僕の疑問に興味を示さずプリズマは話を続けた。
いま、ハノ・カルティが消えました。
人は死ねば神によって天に召されます。
では神は死んだらどうなるのでしょうか。
マスターゼロス、いくつもの世界を渡り歩いたあなたにならわかりますか?
プリズマ・・・君は・・・。
クリフォギタグマを討ち滅ぼした今、私は彼女の願いを叶えるためにハノ・カルティの死を受け入れました。この身を神魔に捧げることでさらなる頂きへと昇華させ、多くの灰の信徒と無垢な子どもたちを・・・ひいてはアリシアを・・・よみがえらせるために。
でも、それもかつての願いにすぎない。いえ、それどころか彼女は私が約束を守らないと知ってなお私に託した。真理の探求を私に放り投げた。
私も彼女も、人と神である前に行く千の年月を経た今となってはどうでもよいことなのです。
マスターゼロス、この指輪を私の指にはめてはもらえませんか?
指輪?
そう言って青い宝石がついた指輪を投げて寄こされる。
キャッチした。
何を考えているんだ?
プリズマの顔を見るが内心がまるで読むことができない。
茶番だ。・・・だが下手に動けばオッぺリアが危険か・・・。
僕はプリズマの前まで移動すると片膝を折り、プリズマの左手を引き寄せると、指輪をプリズマの指にはめた
プリズマは目の前に指輪をかかげて舐め始めた。
ああ、これがエントラールストーン!なんとお綺麗なんでしょう。
え、エントラールストーン?
指輪から尋常ではない魔力があふれ出していた。
プリズマ・・・オッペリアを返しくれないか?
ああ、この子ですか?傀儡にしてはよく働いてくれましたね。
傀儡?
突然、オッペリアが叫ぶ、
ダメ!ゼロス!見ないで!
お、オッペリア?
あまりの取り乱しようだった
なおもオッペリアは叫ぶ
お願い!お願いだから!見ないで!
プリズマは言った
ほ~ら、マスターご覧になって!
プリズマがそう言うやいなや光が強くなり、オッペリアの体が照らし出される。
オッペリアをよく見ると服が裂け、胸部が砕け、プリズム鉱石が輝いていた。
首はチューインガムのように伸びて異形と化している
こ、これは・・・
唖然とする。
オッペリアの体が砕け、体内には肉ではなく鉱石が詰まっていた
彼女は涙を流しながら僕から目を背け、力なく言った。
見ないでぇ、こんな・・・私を・・・見ないでぇぇ・・・。
ヘハハハハハハハハハハハハ!
プリズマはベロを出しながら笑っていた。
オッペリアの前まで歩いていくとあごを指先でつかみ、僕から背けていた顔を無理矢理こちらに向けながら言った
これは私の分身、プリズムでできた私の贋作、偽物だったのです。
おわかりですか?マスターゼロス。
マスター?私とそっくりなこの子、味わってもらえましたかぁ?ヘハハハハハハ!ヘハハハハハハハハハハハハ!
そ、そんな・・・。オッペリアがプリズマの・・・・・・。
あまりの衝撃に膝から崩れ落ちてしまう。
足に力が入らない
オッペリアはとても悲しそうな顔をしていた。
そ、そうだ・・・。
いまの彼女は一番知られたくない相手に一番知られたくないことを知られてしまった。
彼女が人ではないからなんなんだ。
僕が彼女を愛さずどうする!
僕はプリズマに言ってやった
それでも!
それでも?
それでも僕は彼女を愛している!
オッペリアは泣きながらつぶやく
ゼロス・・・。
オッペリア!一緒に帰ろう!
僕はプリズマに双剣杖を構えた。
その途端、プリズマはうれしそうな顔をして
でしたらマスター、本物である私も愛せますよね?
これはもういりませんね。
ドカーン!
次の瞬間、オッペリアの頭が爆発した。
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
プリズマは笑い声をあげる
ヘハハハハハハハハハハハ!ヘハハハハハハハハハハハ!ヘハハハハハハハハハハハ!
ドカーン!ドカーン!ドカーン!
体も無惨に爆発していく。
プリズムがキラキラと空中に舞いまるで最後の輝きのような光を発していた。
ああ・・・ああ・・・オッペリア・・・。
目の前に転がってきた無惨なプリズム鉱石を手の平に持つ、何も答えなど返って来なかった。
どこを見ているのです?そう言って伸びてきたプリズマの手は僕の顔をつかみ無理矢理に自らの方に向けた。
あぁ、ようやくこのときが来ました。
プリズマは頬を紅色させニヤ~っと笑った。
浮気はいけない。私だけを見なさい。
お前が私をこんな風にしたのです。
お前は私に命も財も友も家族も愛するものもそのすべてを捧げるべきです。
犬になると誓いなさい!従順な犬になると誓いなさい!
はい
いいえ←ピッ!
あぁ~!ここまで人を狂わせて自責の念すら抱かず断るだなんて!あはぁぁ~、いまはそれすらもいとおしい!
プリズマを激しく睨み付ける。
その目に宿る醜悪な憎悪、その調子ですよ。我がマスター、私だけを余さず見ていなさい!
プリズマがベロを突きだし顔をあちこちの方向に振り乱すと、顔の造形が変型し異形の仮面へと変貌、巨大化し怪物へと姿を変えていく。
それは仮面に封じられ長い間溜め込んだ呪い。
魔王の力と神であるハノ・カルティの力が融合しエントラールストーンの力によってさらなる高見へと昇華されたものだった。
さぁ、ゼロス、愛しい我が師よ。私たちはもはや戻れない。互いに憎み愛し傷つけ身も心も焦がすほどに溶け合いましょう!
殺してやるぅぅぅぅぅぅぅ!




