聖女のお茶会(強制)
「ああ、ほんと、さいあく」
その声は言うほど最悪に聞こえなかった。
幼いと言える主は笑う。
「きみにじゆうをあげよう。
いっちょ、てきにおもちこみしないかい?」
主は王族という立場でありながら、小競り合いというには大きすぎる争いの責任者だ。幼いという声さえ無視され、命じられた。
後ろ盾のなさとその血統を軽んじられてのことだ。
そのお守というより、確実に死なせてこいと命じられたのが俺で。
見透かすようなそれに顔をしかめた。
「同胞を裏切るわけにはまいりません」
「ざんねんむねん。
わがあくうんもここまで」
おどけるように言う主は、おやと空を見上げた。
「……でもないかも?」
空から光が差し込み、誰かが降りてきた。
「あれがうわさのせいじょさま」
「聞いたことはありませんが」
「ぼくはかわいい、おさなごだからね。
きみはぼくごえいで、ちゃんとしてね。そうすればきっとよくなるよ」
急に怯えたような表情でしがみつかれて困惑を隠せなかった。
「やあやあ、お日柄もよく、ピクニックかな?」
柔らかい声は一荒野に響いた。一人一人に語りかけるようなものに、おやおやと主が呟いた。
「私もご一緒させていただく。
さて、ここに陣を張る。
代表をご招待したい」
気がつけば、彼女のそばには一人の男が立っていた。黒ずくめの仮面の男はあたりを見回し、何かを彼女に囁いたようだった。
「みっけ」
なぜか、ものすごく、嫌な予感がした。
微笑みながら爆速でやってくる彼女に、本能的に逃げそうになった。あれは、よくわからないが、ダメなやつだ。
「ちからあふれてるぅ」
「にげましょう」
「むりかなぁ」
主従で言っている間に目の前に立たれた。
「こんにちは。
お茶はいかがかしら」
「おかし、あります?」
にこりと無邪気そうな笑顔を振りまく主。
彼女はしばし動きを止めて、ぎぎぎと音がしそうなくらいの動きでやや後方を振り返った。
「…………ショタは、趣味じゃないが、愛玩は可?」
「殴りますよ?」
「や、やだなぁ。素直な本音がポロリしただけよ。そ、その拳は何かなぁ。
ははは、幼児の前で暴力行為は反対だよ。うん」
「そうでしたら、言動はお慎みください」
「承知してますですはい。
おかし、用意してますよ。
ちゃんとお話ししましょ。無益な争いダメ絶対。素敵ケモが」
「ごほん」
「皆が平和に暮らすのが、良いです」
それが、平原の大乱の始まりとなるとは誰も想像していなかった。
聖女、本人ですら。




