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スマホ中毒転生  作者: しいな ここみ
第二部 ようやくのはじまり

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魔王暗殺計画

 ヒミカちゃんがあたしを見て笑ってる。


 その目はどうやらあたしのほんとうの姿を見透かしているようだ。


 ──嬉しい!


 見て! もっと見て! そばかすだらけの白ブタちゃんみたいなこの変身した姿じゃなくて、この、東洋人ならではのすべすべな肌をした、かわいいあたしを!


『どういうこと?』

 また頭の中にミレーディアさんの声が聞こえた。

『アレクシア……あなた、転生者を匿ってるの?』


 やっぱりこの声、他のひとには聞こえてないみたいだ。ミレーディアさんが連れてる覆面の男の子はただわけがわからなそうに、ぼーっとしてる。


『え……、えーと……』

 お母さまのオロオロしたような声が答えた。

『うちの娘……じつはそうなの。転生者なの。でも、変身魔法で姿を変えてるのに……どうしてわかるのかしら』


『そうか……。戦った時、アレクシアのことをヒミカは避けてたから……あなたはヒミカの能力を知らなかったのね。ヒミカには透視の能力があるのよ』


『ええっ!?』

 あたしの隣でお母さまが「はわゎ……」と唇を震わせはじめた。

『ま、魔族に……。魔族に転生者を匿っていることを知られてしまったわ!』


「なんのことだね」

 お父さまがしらばっくれた。

「私は転生者など匿ってはおらん」


 お母さまがその耳に小声で伝えた。「あの魔族、変身魔法が効かないらしいの」とかなんとか。


 お父さまがヒミカちゃんを睨みつけて、片手を上げた。


「待って、お父さま」

 あたしが横から止めた。

「こんなところで極大魔法を使っては死人が大量に出ます」


 後ろでお母さまが聖系の魔法を発動させようとしてるのを感じ取り、そっちもやめさせた。


「お話を聞きましょう」

 あたしはヒミカちゃんに言った。

「私たちは野蛮人ではありません。要求は? その子を匿うことですか?」


「ありがとうございます、リエお嬢さま」

 あたしに向かって深くお辞儀をすると、ヒミカちゃんがお父さまのほうを向いた。

「辺境伯さま。私は魔王の討伐を企てております」


「な、なんだって……?」

 お父さまが顎がはずれるかってぐらい驚いた。


「魔王ヴンが今まで何人もの転生者を喰らうのを見るたび、私は反感をもっていました。理性のない魔物が人間領に踏み込んだら退治されるのとは違い、彼らは私たちと変わらない、言語を持つ存在です」


 ウンウンと、あたしはうなずいた。

 仲良くしようと思ったのに襲いかかってきたスライムさんや、好戦的なあの巨人さんとは転生者は違う。魔王さんを殺そうなんて思ってないのに、一方的に存在を否定されるのにはあたしも反感をもっていた。


 ヒミカちゃんが続ける。

「私はこの子を授かった時、決意しました」

 金髪の子の肩を大事そうに抱いて言う。

「この子を守らなければと。この子の存在を隠し通すのに、なぜこんなにも苦労をしなければいけないのかと──」


 あたしは聞いた。

「どうやって隠してきたの?」


「ブタの覆面をかぶせ、オークの子を飼っていることにしてきました。でも、成長するにつれ、それにも無理が出はじめて……。何よりこの子がこの世界に新しいものをもたらしたがるんです」


「ごめん、お母さん」

 金髪の子が、歳には似合わない大人びた口調で言った。

「我慢できないんだよね。もっと清潔に暮らせる方法を知ってるのに──それをさせてもらえないなんて」


「いいんですよ」

 ヒミカちゃんが娘ににっこり微笑み、またあたしたちのほうを向く。

「転生者は世界をよりよくする知識をもっています。それを問答無用で食用にする魔王ヴンは、世界の発展を阻害する存在だと思います」


 ウンウンとあたしはうなずいた。

 ふと見ると、覆面をかぶった少年もウンウンとうなずいている。しまった、なんか不審者とシンクロしちゃった。


「そして転生者は魔王が恐れる通りの力はもっていたりします。転生者を集めてパーティーを組めば、じゅうぶん魔王に対抗しうる戦力が作れることでしょう」


 確かに──


 あたしは自分の中に、凄まじいまでの魔法の才能を感じている。


 でも、まだ12歳だよ?


 それに──


「戦争を起こせというのかね」

 お父さまが厳しい顔で仰った。

「犠牲者が多く出ることになる。それに、やはりキミを信用できない。もし、これがキミのなんらかの謀略だとしたら──」


『ミレーディア』

 お母さまの声が、また頭の中に聞こえた。

『その娘の心を読むことはできないの? 何を企んでいるのか、わからない?』


『コイツは死人だ』

 悔しそうなミレーディアさんの声が答える。

『死人の思考はまったく読めん』


「あたしは信じます」

 手を上げて、あたしは言った。

「ヒミカさんの言うことにはいちいちうなずけますもの」


 ヒミカちゃんが、あたしを見て、嬉しそうに笑った。

 なんて裏表のなさそうな笑顔だ。かわいい。こんなかわいいひとが、あたしたちをハメようなんてしてるとは、とても思えなかった。ただ──


 あたしは声に力を込めた。

「ただ、戦争はだめだと思います!」


 そう、戦争はいけないことだ。

 前世であたしの好きなミュージシャンも歌ってた、戦争は愚かだって。

 スマホの中に遠い国で起こった戦争の動画を見て、心を痛めてた。


「リエお嬢さま……なんてお優しい」


 ヒミカちゃんに褒められて、あたしは思わずテヘヘと笑った。


「でも、戦争は起こしません」


 ヒミカちゃんの言葉に、全員が「えっ?」と首を傾げた。

 でも、次の言葉で、みんなが「ええっ!?」ってなった。


「戦争が起こる前に、魔王を暗殺するのです」





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― 新着の感想 ―
なるほど開戦前に最高指導者を暗殺すれば戦争は起きないか。 って何処の大統領だぁぁぁぁぁ! 外交的に考えて一番アブナイ方向に走るこの人達をひどく応援します。
 しいな ここみさん、こんにちは。 「スマホ中毒転生 魔王暗殺計画」拝読致しました。  見透かされて、喜んじゃってるリエ。(さすがのスマホメンタル)  で、お母様の声も聞こえます。  どういうこ…
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