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スマホ中毒転生  作者: しいな ここみ
第二部 ようやくのはじまり

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森の中の遭遇

 チビにゃんの腰は細いのに逞しい。


 ホンマに逞しい。


 顔はあどけないといえるほどなのに、身体はガッチリ、鋼鉄みたい。


 あたしはとても頼れるものを抱きしめるみたいに、その腰に捕まって、馬が駆けるのに身を任せた。


 ふと振り向くと、チョロさんが後ろにハリウスを乗せてついて来る。ハリウスは『魔族の腰になんか捕まってたまるか』みたいに、馬のお尻の上で立っていた。よくあんな揺れるところに立っていられるものだ。さすがニンジャだ。


「おっ……?」

 チビにゃんがそう声をあげて、馬を急停止させた。

 あたしは彼女の背中に思いきりぶつかった。


 チョロさんも後ろで急停止した。ハリウスが振り落とされた。しかし三日月を背にくるくると宙返りすると、地面に降り立った。


 どうして急停止したのかと、聞くまでもなかった。

 前におおきなものが立ち塞がっていたのだ。ものというか、人……いや、これって──


「オイオイオイオイ……」

 そのおおきなものが、地響きを立てるような声で、喋った。

「山火事が起きてるみてーだから見に来てみたら、まさかてめーに会えるとはな、チビ。この火事もてめーの仕業か?」


「めんどくせーのに出遭っちまったな」

 チビにゃんが舌打ちするのが聞こえた。

「ガンガロス。今はてめーと闘り合ってる暇はねェ。消えてくれ」


 巨人だった。

 身長4メートルはありそうだ。

 その巨体に革の鎧を着けて、巨大な棍棒をかついでいる。


「友達?」

 あたしが聞くと──

「敵だよ」

 チビにゃんがそう答えた。

「オレの天敵みてーなヤツだ。弓矢が効かねぇ」


「アネキは下がっててくださいッス!」

 そう言いながら、チョロさんが前へ出た。

「弓矢が効かねーなら、アタシの剣で……」


 ぶん! と、音がした。

 巨人が棍棒を一振りしたのだ。


 チョロさんの身体がバラバラになって飛び散った。


「チョロさぁーーーん!?」


「あーあ……」

 叫んだあたしがまるで場違いみたいに、チビにゃんは落ち着いていた。

「てめーの勝てる相手じゃねェよ、馬鹿チョロが」


「一発KOされたッス!」

 バラバラになったチョロさんが、どこからともなく言った。

「面目ねーッス!」


「チビよ、てめーより俺のほうが強えェってこと、今日こそ教えてやんよ」

 チョロさんが喋ったことには少しも驚きもせず、巨人さんが言う。

「勝負だ。闘ろうぜ」


「あー……。闘んねェ、闘んねェ」

 チビにゃんがため息を吐く。

「オマエのほうが強い、強い。それでいいか? オレたち急いでるんだ」


「いやだね。ここは通さねー。通りたきゃ俺を倒して行きな」

 頬の傷痕をごっつい指でなぞりながら、巨人さんが舌なめずりした。

「てめーにつけられたこの傷が疼くんだよ。てめーをぶちのめさねーと収まんねェ」


 あたしたちの後ろから、鋭い風が飛んできた。


「魔族、駆除……」

 小さな声でそう呟きながら、ハリウスが巨人さんめがけて飛んでいく。


「おいおい、よせよせ」

 チビにゃんが口で制止する。

「オマエ弱っちぃのに……。死ぬぞ?」


「忍法……、黒手裏剣」


 ハリウスの手から黒い手裏剣が百発ぐらい発射された。


「うわあっ!?」

 それをすべて喰らって、巨人さんが声をあげる。

「か……、痒いな、オイ! 百匹の蚊に食われたみてーだぞ、オイ!」


 プライドを傷つけられたようだ。地面に降り立ったハリウスが、全身から真っ黒なオーラを立ち昇らせた。


「なぜ…国境を易々と越えて、これほどまでに魔族が人間領に入り込んで来てるんだ」

 震える声でハリウスが言う。

「許さんぞーーー!」


 巨人さんが棍棒を一振りすると、華奢な身体のハリウスが紙切れみたいに飛んでいった。


「ハリウス!」


「大丈夫だ、当たってはねェ。風圧で飛ばされただけだ。だからよせって言ったのに。弱っちぃんだから……」


 いやいや……。ハリウスって、あれでも次期辺境伯候補なんだけど。まだ15歳にしては戦闘力めっちゃ高いはずなんだけど……。

 彼がこんなに簡単にあしらわれるなんて……魔族って、そんなに強いのか──。


「闘ろうぜ、チビ!」

 巨人さんが吠える。


 あの強い巨人さんがこれだけこだわるってことは、チビにゃんも相当強いのかな。実際、ハリウスを子ども扱いしてたし……


「やれやれ……」

 チビにゃんがため息を吐きながら、呟いた。

「ああいう筋肉バカ、苦手なんだ。かわすのはわけねーし、勝てって言われたら勝てるんだけどな、めんどくせーんだ。アレをやんなきゃいけねー……」


「アレはやんないでおくれッス!」

 後ろで再生しながら、チョロさんが泣いた。

「醜いアネキは見たくないッス!」


「醜いとか言うな! オレはアレをやっても醜くはねェぞっ!」


「来ねーなら、こっちから行くぞ」


 チョロさんと口喧嘩みたいなことをしてるうちに、チビにゃんの頭の上に棍棒が降ってきた。


 咄嗟に、あたしは魔法を唱えていた。


「ファイヤイヤイヤーーー!!」


 効いた。

 やった。

 巨人さんがもがき苦しんでる。

 でも、ちょっと魔法がでかすぎた。


 また山火事にしてしまった。




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― 新着の感想 ―
 しいな ここみさん、こんにちは。 「スマホ中毒転生 森の中の遭遇」拝読致しました。  二頭の馬は駆けていく。  チビ、たくましいなぁ。  ハリウス、器用だね。  なんかでた。ガンガロス。デカ…
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