黒いチビ
「よし、闘ろうか!」
馬から降りてきた黒い女性が言った。
ハリウスは何も言わず、ただ光の剣を背中の後ろに構えている。
「アネキ! やっちゃってください」
アマゾネスたちがリーダーを応援してる。
「人間なんて、アネキの敵じゃないッスよ!」
「頑張れ、頑張れアネキ!」
アマゾネスは七人いた。
でも後ろのひとたちは闘う気なんてないようだ。リーダーにすべてを任せている。
あたしは震えが止まらない。
自分の体じゃないみたい。ブルブル勝手に震えてる。これが武者震いってやつ?
アマゾネスのリーダーさんが、背中から弓を──
矢につがえようとした瞬間、ハリウスの光の剣が、その首をはね飛ばした。
ぽーん! と、月夜に高く飛び上がるリーダーさんの黒い首──
あっけなかった。
勝負はあっという間にハリウスの勝利──
「ハハハッ!」
リーダーさんの首が、笑った。
「なかなか素速いじゃねーか、坊や」
アマゾネスさんたちも大笑いしてる。なんだこれ……
ハリウスもびっくりして、ただ月夜に浮かぶリーダーさんの首を見つめた。その首が、ハリウスめがけて降ってくる。
なんだかわからないけど、あたしの出番だ。
あたしは覚えたての上級呪文『ファイヤイヤー』を唱えると決めた。
攻撃呪文にすべての魔力を集中させる。
あたしの変身呪文が解けた。
金髪そばかすブサイクに変身していたあたしが、黒髪、黒い瞳の、転生者の姿をあらわにした。
「おっ……?」
リーダーさんの首が、空中であたしを見て、かたまった。
「おまえ……」
「ファイヤイヤーーーっ!」
印を結んだあたしの手から、リーダーさんの首めがけ、青い炎が飛んだ。
ぼーーーん!!
森が大火事になった。
「ハハハッ!」
我に返ると、目の前でリーダーさんが笑ってた。
「すげーな、リエ! おまえ、リエなんだろ?」
見るとハリウスが、彼女らの馬の後ろに乗せられていた。気絶しているようだ。まるで狩られた獲物のように──
「ファッ!?」
あたしも一瞬、気を失っていたようだ。
でも縛られたりはしてなかった。威嚇する猫のように後ろに飛び退くと、「なんだこれ」と口が勝手に喋った。だって本当に、心から、何が起こったのかわからなかったから。
「リエだよな? やっと会えた! 嬉しいぜ!」
リーダーさんが熱烈にあたしの顔を見つめながらそう言うけど、わけがわからない。
「わからないか? まぁ、わからないよな? オレだよ、オレオレ」
「ど……」
あたしは単刀直値に、聞いた。
「どちらさまでしょう?」
「オレの名前はクロ。クロ・チビだ」
リーダーさんがワイルドな顔をフレンドリーに笑わせた。
「あんたに助けられた黒猫だよ。覚えてないか?」
「え……」
あの時、大型トラックに轢かれそうになって、あたしが助けた、あの……
「黒猫ちゃん!?」
「おうよ」
色の黒い顔が、にっこりと笑った。
「ずっと会いたかったぜ。ずっと探してたんだ。ようやく会えた! あの時助けてくれて、ありがとな!」
猫も死んだら転生するんだと知った。
しかも人間……っていうか、魔族の女性に。




