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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第七章 帝国篇

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88話 審問会

 



【最悪】の魔術師、デモルト・ブラックロードが復活した事実は、世界中に絶望と混迷を振り撒いた。


 各国は取り急ぎ、デモルトと闇の魔術師の組織【純血使徒《ノーブルブラッド》】の対応に追われてしまう。


 それはここ、襲撃されたリアーナ王国も同様であった。

 王城にある議場には、リアーナ王を始めとする高官に、魔術学園校長ダニエル・ゴッドヴァルト、各大貴族といった国の重鎮が勢揃いしている。


 目的は一つ。

 リオン・エルファルドを審問する為である。


 リアーナ王は、手錠を嵌められて壇上に座らせているリオンを見下ろしながら厳かに口を開いた。



「これより、リオン・エルファルドの審問を執り行う」



 ◇◆◇



(国の重鎮が勢揃いだな)


 頭を動かさず視線だけで周りを見渡すと、一番高い所に王様が座っている。王様の周辺はおっかない顔をしている高官で固められ、左右の外側にはラドクリフやウィルバートなど大貴族が座っていた。


 そして俺は、議場の一番低い位置で座っている。魔術が使えないように、手足に魔道具の手錠が嵌められてな。


 何故俺がこんな目に遭っているのか。

 それは王立魔術学園の魔術大会において、デモルト率いる【純血使徒《ノーブルブラッド》】が襲撃してきた際、俺が闇の魔術師の一員として現れたからだ。


 最終的に組織を裏切った形でデモルトを退けたが、俺が本当に味方なのか、それとも敵なのか分からない。

 警戒した上で闇の魔術師の内情を知る俺に詳しく話を聞こうと、審問会を開くことになったんだ。


(やはり奴はいないか……)


 父ジオ・エルファルドを殺した真犯人であり、国の重鎮である筈の宰相ヴェリアル・ヴァンデッドの姿はこの場にない。

 ノコノコと姿を現わしたら殺してやるつもりだったのだが、ここまで俺を欺いてきただけのことはある。


 恐らく真犯人であることを俺に知られたと気付き、雲隠れしたんだ。ラウルから真実を聞き出した俺は怒りに任せ真っ先に王城へ向かったが、既に宰相は王城から姿を消していた。老獪な糞爺め……。


 まぁ焦る必要はない。

 どこに隠れようが、必ず見つけ出して殺してやるさ。


「これより、リオン・エルファルドの審問を執り行う」


 王様が宣言すると、高官の一人が俺の素性を説明し、審問を開始する。


「リオン・エルファルド。故人ジオ・エルファルドの息子であり、現在は魔術学園の生徒である。間違いないな」


「はい」


「よろしい。では早速質問させてもらう。貴殿は闇の魔術師であるか」


「違います」


 NOと答えると、高官たちが「嘘を言うな!」「本当の事を言え!」と罵声を浴びせてくる。少し腹立つが、今の状況を考えると彼等が信じられないのも無理はない。


「魔術大会において、【純血使徒】が襲撃してきた際に貴殿は闇の魔術師として現れた。さらに、組織の中でも高い地位のようだったと報告を受けている。これはどういう事か」


「確かに俺は【純血使徒】の幹部の地位にいました」


「ほら見たことか!」


「自ら認めたようなものだぞ!」


 五月蠅いな、最後まで言わせろよ。

 喚く高官を遮り、「ですが」と続けて、


「組織に居たのには理由があります」


「聞こう。申してみよ」


「俺が闇の魔術師になったのは、組織に潜入し、父ジオ・エルファルドを殺した闇の魔術師を殺した犯人を自ら探すためです」


「何だと!?」


「嘘を言うな!」


 罵声はあるが、先程より少ない。特に貴族は口を閉ざしている。

 ジオが闇の魔術師の手によって殺された事実は、以前の貴族会議で知れ渡っているからな。俺の話に一応納得しているのだろう。

 この勢いに乗じて真実を話してやる。


「そして俺は、父を殺した犯人を見つけました」


「誰だ」


 王様の短い問いに、俺は堪えきれない怒りを乗せて発現する。


「我が国の宰相、ヴェリアル・ヴァンデッドでございます、陛下」


「「なっ!?」」


 真犯人の名を告げると、この場にいる全ての者が吃驚する。

 そりゃ驚くだろう。国のナンバー2が闇の魔術師であり、俺の父を殺したと聞かされればな。


「正気か貴様!? 自分が何を言っているのか分かっているのか!?」


「宰相閣下が闇の魔術師である訳がないだろう!」


「お言葉ですが、では何故宰相はこの場に居られないのでしょうか。国の未来を担う重要な会議に、宰相が出席していないのは不自然ではありませんか?」


「そ、それは、閣下は今不在で……」


「宰相が不在の理由は?」


「そ、それは……」


 畳みかけると、高官達はしどろもどろになる。

 宰相への疑いが深まったところで、さらに攻める。


「自分が真犯人だと知られた宰相は、俺に殺されない為に雲隠れした。賭けてもいい、俺が生きている限り宰相が国に戻ることはないでしょう」


「馬鹿な……」


「信じられん、宰相が闇の魔術師だったなんて……」


 議場に動揺が広がる。

 これまで国に尽くしてきた宰相が闇の魔術師だと知ったら困惑するだろう。その気持ちは十分分かる。俺だって今まで騙されていたんだからな。


「陛下、発言よろしいですか」


「よい、許可する」


 立ち上がったのは、大貴族ドールズ・ドルトンだった。彼は冷酷な眼差しで俺に問いかけてくる。


「リオン。貴様は魔術学園校長ダニエル・ゴッドヴァルトから「魔法の杖」を奪い、デモルトに渡したな。闇の魔術師でないなら、何故そんな真似をした」


「デモルトに「魔法の杖」を渡す必要があったからです」


「何故だ」


「デモルトを完全に殺すには、「魔法の杖」の力を使い肉体を蘇らせ、完全に復活させる必要があるからです」


「……どういう事だ」


 これだけ話したって分からないよな。

 物語知識がある俺は知っているが、ここにいる人達はデモルトを完全に殺す手段を知らないんだから。

 ドールズの問いに、俺は問いで返す。


「五十年前に死んだ筈のデモルトが何故生き返ったのだと思われますか?」


「……」


「奴は自分自身に魔術をかけていました。死んだら自動的に、予め用意していた魔道具に魂を分離させるという魔術をです。奴は死んだように思われましたが、実は生きていたのです」


「そ、そんな馬鹿げた魔術があるのか!?」


「リオンの言うことが本当ならデモルトは不死身ではないか!」


 魂を分離させて生き長らえるというとんでもない魔術があるのに驚き、デモルトを倒す方法がないと知って絶望する高官達。

 ざわざわと騒がしい空気の中、ドールズが高官達を制する。


「皆様、落ち着いてください。リオンは“デモルトを完全に殺すには”と言っておりました。リオン、貴様はデモルトを殺す方法を知っているのだな?」


 ドールズの問いに「はい」と答え、デモルトの仕組みを伝える。


「まず初めに、死んだデモルトは肉体がなく幾つもある魂の一つという脆弱な生き物でした。完全復活を企む奴は、世界中にバラ巻いていた魂を集める必要がある。長い時間をかけて全ての魂を集めたデモルトは、今度はダニエル校長先生が持つどんな魔術でも使える「魔法の杖」を手に入れて魂を入れる肉体《うつわ》を作ろうとしました」


「だから校長から「魔法の杖」を奪い、デモルトに渡したのか」


「はい。そしてここからが重要となります。今デモルトを殺せたとしても再び魂を分離されてしまう。この堂々巡りを終わらせ奴を完全に殺すには、分離している全ての魂が入った肉体の状態で魔術学園の生徒であるカイトの能力で殺す必要があるのです」


「カイト?」


「そやつは誰だ?」


「そうか、“魔術を消す力”か」


 俺の話で気づいたのか、ドールズは納得したように呟く。カイトの力を大会で直に見ているラドクリフやウィルバートといった貴族たちも同じ反応を見せた。


 カイトを知らない王様や高官たちに、貴族たちがカイトのことを教える。場が落ち着いたところで、俺は再び口を開いた。


「完全復活したデモルトをカイトの手で殺す。魔術を消す力ならば、死んだ時に魂を分離させる魔術を打ち消しながら殺せる。これがデモルトを完全に殺す方法です」


「では、カイト以外ではデモルトを殺せないと?」


「はい」


「お~、それは良きことだ!」


「この情報は大きいぞ!」


 デモルトを殺せる方法を知って希望を抱く高官達。

 ようやく信じてもらえたと安堵すると、大貴族ルマンド・リッツェが突如問いかけてきた。


「デモルトの殺し方が確かであるか分かりませんわよ。リオン、貴方はどうやってこの情報を知ったのかしら?」


「俺は闇の魔術師の幹部であり、デモルトの魂を集める仕事をしておりました。その過程でデモルトの魔術の仕組みを知り、カイトの能力なら殺せると気付いたのです。俺はカイトと何度も決闘しその力を身に染みて知っているので」


 これはでっち上げだ。

 本当はこの世界の元となっている小説「魔術学園の無能力者」を知っていたからなんだけど、流石にそんな事は言えないし言っても信じて貰える訳がないので、自虐を交えて嘘を吐いた。


「そうですか。辻褄は合っていますわね」


「リオン君、僕からもいいかい」


 ルマンドの次に手を上げたのはウィルバートだった。


「校長との戦いで弱っていたとはいえ、君はデモルトを圧倒していた。幹部と思われる実力の闇の魔術師を、四対一でさえ倒してしまった。正直まだ子供の君があんなに強いことにも驚いたけど、君なら奴等を逃がさずその場で殺せたんじゃないのかい?」


「まさか、奴等を助けたというのか!?」


「やはり疑わしいぞ」


 ウィルバートの質問で俺への疑いが再燃する。

 お前達高官の癖に手のひら返しが凄いな。少しは落ち着けよ。


「デモルトに対しては今説明した通り、「魔法の杖」を与えて復活させ、完全に殺す為です。幹部に関しては、確かに俺なら殺せたでしょう。しかし、各国の来賓や学園の生徒が人質に取られている状況で、あれ以上刺激するのは愚策だと考えました」


 これは半分本当で半分嘘だ。

 確かに俺や、あの場にいたラドクリフやウィルバートの力を合わせれば幹部を全滅できただろう。でもそうしたら、幹部もなりふり構わず反撃してくる。その場合、人質に取られていた生徒や来賓に犠牲者が出ていた。


 だから【純血使徒】のナンバー2であるアルフォート・ロッテに交渉して引かせたんだ。

 もし一人でも幹部を殺していたら、沈着冷静なアルフォートも反撃してきたかもしれない。


 幹部を殺さなかった理由はもう一つある。

 それはカイトを強くさせる為だ。カイトは十分強くなったが、完全復活するデモルトを倒すにはまだ足りない。

 これから起こるイベントで幹部と戦い、逆境を乗り越えてデモルトと渡り合えるくらい強くなる必要があったんだ。


「そうか、ありがとう。君の判断で犠牲を出さずに済んだよ」


 追及されるどころか感謝されてしまった。

 もしかしてウィルバートは俺を擁護するためにわざとあんな質問をしたのだろうか。


 一通り質問が終わったところで、審問会を指揮っていた高官が王様に尋ねる。


「陛下、どうなさいますか」


「うむ。リオン・エルファルドは闇の魔術師ではないと判断し、不問とする」


「感謝いたします、陛下」


「ただし、疑いが完全に消えた訳でもなく、裏切った闇の魔術師から命を狙われることを鑑みて、リオンを監視対象とする」


 ふぅ、何とか切り抜けたか。


 罰せられたり、牢屋行きにされなくて良かったよ、本当に。



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