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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第一章 転生篇

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8話 レイラ・ベルンツベルン

 



 今更ではあるが、この世界の元となっている「魔術学園の無能力者」の概要を話そう。


 ジャンルは学園ファンタジー。

 平民で魔術も使えない主人公カイトが魔術学園に入学し、個性的な仲間達と共に成長していく物語だ。


 カイトの専らの敵となるのは、“闇の魔術師の組織”。

 闇の魔術師とはなんぞやというと、その正体は「魔術師のための世界を作ろう」と企む貴族たち純血派の魔術師のことである。


 純血派の魔術師の中には自分たちが神に選ばれた者だと信じて疑わず、魔術が使えない平民を同じ種族とは見ておらずに奴隷にするべきなどと過激な思想を抱いている。

 そんな彼等からすれば魔術が使えないカイトの存在は邪魔でしかなく、あの手この手で学園から排除しようとするんだ。


 カイトは闇の魔術師の陰謀を仲間たちと解決していき、最終的にラスボスを倒してハッピーエンドを迎える。


 闇の魔術師といえば、力を欲したリオンは彼等が作った怪し気な薬を飲んで醜い化け物になり、カイトを殺そうとして逆に退治されてしまうんだよな。

 それとここだけの話だが、ジオ・エルファルドも純血派の魔術師でカイトの敵側なんだけど、大切な息子を化け物にされて怒り味方(カイト)側に寝返るんだよ。


 さて、カイトの敵を説明したところで、今度は味方の勢力を話そうか。

 カイトの味方は、混血派の魔術師たち。魔術が使える者も使えない者も、貴族も平民も皆仲良くしましょうといった平和的な考えを抱いている人達だ。


 貴族の中にも混血派の人達は沢山いて、代表的なのがヒロインのユイ・アストレアである。

 これはリオンに転生してから知ったことなんだけど、母親のヴェラも混血派だったそうだ。まぁあれだけ平民に寄り添っていたヴェラが混血派なのは当たり前だよな。ついでに言うと、混血派だったヴェラを失くしてからジオは純血派になったそうだ。


 けど、ジオがどの時点で純血派の闇の魔術師に組してしまったのかは分からない。

 話を戻すけど、カイトの味方である混血派はまだいる。


 それは誰かというと――




「お久しぶりです、リオン様」


「……ああ(本物はめっちゃ可愛いな!)」


 俺の目の前に座っている、可憐な美少女。

 純白の髪に、吸い込まれるような綺麗な青色の瞳、シミ一つない真白の肌。天使のような愛らしい顔立ち。美しいドレスを纏う身体は抜群のプロポーション。

 転生する前を含めて、こんなに可愛い女の子に会うのは初めてだった。冗談じゃなくて一目惚れしそう。


 彼女の名前はレイラ・ベルンツベルン。

 混血派の大貴族であるベルンツベルン家の長女であり、カイトの第二ヒロインであり、リオンの婚約者である。


(でも、リオンはこの婚約に不満があるんだよな)


 そもそもこの婚約は、レイラの父親であるラドクリフ・ベルンツベルンとリオンの母親のヴェラが自分達の子供を結婚させましょうといった親同士の約束だ。リオンの記憶を読み取ると、ラドクリフとヴェラは仲の良い幼馴染だったらしい。


 そもそもリオンは第一ヒロインのユイのことが好きだし、恐らくレイラもリオンのことを好きではないだろうから、当事者の二人はこの婚約には納得してないんだよな。


(それにしても可愛いな~。あれ、そういえばレイラ隠れ目じゃないじゃん!)


 余りにも可愛くて彼女のことを見ていたら、ふと違和感を抱いた。

 レイラは登場時、左目を前髪で隠している。隠している理由は、顔の左側に大きな傷があるからだ。


 ベルンツベルン家は闇の魔術師の襲撃に遭い、その時にレイラも顔に傷を負ってしまう。

 その傷に対してリオンは「醜い顔だ」なんて最低なことを言うし、終いには婚約破棄を言い捨てるんだよな。マジでクソ野郎だよ。まぁそのイベントがあってレイラがカイトの第二ヒロインになるんだけどね。


 でもそうか、傷がないってことはまだ襲撃に遭ってないんだな。


「私の顔に何かついていますか?」


 不躾にジロジロと見過ぎていたせいか、レイラが居心地悪そうに聞いてくる。

 ぶっちゃけ、俺って第一ヒロインのユイ・アストレアより第二ヒロインのレイラが方が見た目も性格も好みなんだよな。俺の中の推しヒロインと言ってもいい。


「何でもない(ごめんね! 推しに会えたのが余りにも嬉しくて!)」


「そうですか……」


「ああ……」


「……」


「……」


(気まずい!)


 何だこの気まずい空気は! 誰か助けてくれ!

 はぁ……二人とも相手を好きではなく、親同士が決めた婚約だから、話が弾まないのも仕方ないよな。俺としてはレイラにいくらでも話しかけたいんだけど、緊張しているのか思うように口が開いてくれない。


 この気まずい静寂を打ち破ったのは、レイラの方だった。


「ここ最近、リオン様の噂を耳にしました」


「どういう噂だ(えっ……どんな噂だろう)」


「その……リオン様が変わられたと。優しくなられたり、稽古にも真面目に取り組んでいるとか」


 良かった~悪い噂じゃなくて。

 けどどっからそんな噂が流れたのかな。基本的には家にいるし、外にも出かけてないから噂が広まるはずがないんだけどな。

 ――これは後から知ることだが、どうやら妹のサラがリオンの印象を良くするために噂を流していたそうだ。


「何か、心境の変化があったのでしょうか?」


「大したことではない。いつまでも子供のままではいられないと悟っただけだ(変わらないと死んじゃうからね)」


「そう……ですか」


 俺の答えを聞いたレイラが驚いた反応をしたのが気になり、今度は俺から尋ねる。


「何かおかしいか」


「いえ……失礼ですが、本当に変わられたなと思いましたので」


 う~ん、そんなに変わっているか?

 俺の言葉がそのまま出ているなら分かるが、リオン語に変換されてるし他人から見ればそこまで変わっていないと思うんだけどな。分かる人には分かるんだろうか。


 その後も途切れ途切れの話をして、俺はベルンツベルン家を後にすることになった。


「おい、そこのろくでなし」


「……(誰だこのマッチョなおっさんは)」


 レイラと別れの挨拶をして馬車に乗り込もうとしたら、体格の良いおじさんに呼び止められる。


(この人、レイラのお父さんか!)


 リオンの過去の記憶を捻り出して思い出すことができた。

 ラドクリフ・ベルンツベルン。混血派の大貴族ベルンツベルン家当主であり、レイラの父親だ。小説の物語では既に亡くなっていて姿を見たことがなかったから初見では気づけなかった。


 それにしてもこの人、すげーマッチョだな。魔術師っていうよりも王国騎士団長って肩書の方が似合うような体躯だよ。


「何でしょうか」


「お前が変わったって噂を聞いたが、俺は一切信じてねぇからな。あのろくでなしが簡単に変わるとは思えねぇ」


「どうぞ、ご自由にお考えください」


「そうか……なら少し試させてもらうぜ」


「何を――っ!?」


 何を試すんですかって聞こうとしたら、ラドクリフは俺の鼻先目掛けて拳を突き出してきた。

 ぎゃーーー! 突然何すんのこの人! 野蛮過ぎるだろ。


「ほう……瞬き一つしねえとはな。変わったってのはどうやら嘘じゃねえみたいだ」


(ごめんなさい、驚いて何もできなかっただけです)


「でもな、俺はお前とレイラの婚約には反対だ。ヴェラとの約束とは言え、大切な娘をお前のような馬鹿息子に預けたくねえ。お前にお義父様って言われるのも気持ち悪いし、ジオの奴と親戚になんのはもっと我慢ならねぇ」


 ははは……そういえばジオとラドクリフは反りが合わないんだったな。ジオもラドクリフのことは嫌ってそうだし。


「俺としては、今すぐにでも婚約を破棄させたいぐらいだぜ」


(うん? どういう事だ?)


 彼の言葉が少し引っかかった。

 ラドクリフは俺とレイラの婚約を破棄させたいのか? まぁ父親としては大事な娘をリオンなんかと結婚させたくないのは当然だろうけど、ならば何故婚約を破棄させないんだろう。


 “婚約破棄したくてもできない事情でもあるのだろうか?”


 とはいえ、遅かれ早かれ婚約が破棄するのは決定してるんだけどな。


「ベルンツベルン卿がご心配せずとも、婚約は破棄させていただきます」


「あぁ!? なんだって!? テメエ俺の娘が気に入らねぇってのか!?」


 おいおい、婚約破棄させたいんじゃなかったのかよ。

 別にレイラが気にいらない訳じゃない。逆に、俺自身としてはレイラと凄く結婚したいよ。レイラはめちゃくちゃ可愛くて俺のタイプだし、できることなら一生守ってやりたいと思うぐらい好きになった。


 けど、物語に沿う為にはレイラとの婚約を破棄しなければならない。レイラはカイトのヒロインにならなければならないんだ。

 だから俺は、凄く嫌だけどレイラとの婚約を破棄する。


「レイラ嬢にはご迷惑をおかけいたしません」


「お前……」


「ですが、婚約破棄するのは今ではなく、一年後の予定です。ベルンツベルン卿には申し訳ございませんが、この事はレイラ嬢に言わないでいただきたい」


「そんな事娘に言えるかよ」


「ありがとうございます。では、俺はここで失礼します」


 呆然とするラドクリフにそう告げると、俺は馬車に乗り込みエルファルド家に帰宅した。



 ◇◆◇



「はぁ~疲れた」


 ボドっとベッドにダイブし、大きなため息を吐いた。

 遠くに出掛けるのも疲れるけど、レイラとかラドクリフと話すのは緊張してもっと疲れた。前世でもそうだったけど、あ~いう偉い人と話すのって変に疲れるんだよな。


「あ~あ、レイラめちゃくちゃ可愛かったな~」


 実際に会ったレイラは絶世の美少女だった。できるなら結婚したいけど、物語を変える訳にはいかないし、レイラだってリオンよりもカイトと一緒になる方が幸せだよな……。



『醜い顔だな。僕に近づくな』


「うっ!」


『レイラ・ベルンツベルン! 僕はお前との婚約を破棄する!』


「これは……未来の記憶!? またかよ!」



 頭痛がしたと思ったら、未来の記憶の映像が浮かび上がってきた。

 この映像は俺も知っている。どちらも物語にあるシーンだからだ。


 気になるのは、いつものように胸の奥から激しい後悔が押し寄せてくること。それも今までの比じゃない。身体が押し潰されそうなぐらい苦しくて強い後悔だ。



「はぁ……はぁ……くそ、なんだってんだよ!」


『助けろ。レイラを助けるんだ』


「っ!? 誰だ!?」



 どうすれば収まるんだよと愚痴を吐いていたら、突然頭の中に人の声が聞こえてくる。今のも未来の記憶の映像なのか? いや……それにしてはリアルだったような。



(レイラを助けるって言ったってどうすれば……)


『今すぐ向かえ。敵はもう来る』


「何だって!?」



 嘘だろおい……。

 まさか、ベルンツベルン家が襲撃されるのが今日だっていうのかよ!?



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