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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第六章 大会篇

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79話 前夜祭

 




「なぁリオンはん、前夜祭のダンスパーティーで踊った男女はカップルになるって噂知ってはる?」


「ああ」


 ナナに聞かれた俺は短く答える。

 知ってるも何も俺は原作を知っているからな。その辺の噂話は一通り網羅しているよ。


 魔術大会までの期間もあっという間に残り一日となり、大会前日の今日は学園で前夜祭が行われる。その前夜祭ではダンスパーティーが行わるんだが、そこで踊る男女はカップルになれるっていう曰くがあるんだ。


 なのでダンスパーティーが始まる前までに、生徒たちは意中の相手に勇気を振り絞って誘っているらしい。

 最悪好きな人じゃなくてもダンスに誘っているみたいだ。折角のイベントに参加できないのもつまらないもんな。


「まっ、リオンはんにはレイラはんがおるもんな」


「そうだな」


 勿論俺は婚約者であり正式な恋人となったレイラと踊ることになっている。レイラを誘ったら、彼女は喜んで引き受けてくれた。


「わての情報網だと、ユイはんはアメン国のウラエウス王子がユイはんを誘われたが断わり、カイトはんと踊るそうや。後は二年生の・カスティア先輩が帝国のオレオ王子と、三年生のトーマス先輩が帝国のココア王女と踊るそうやで」


(ふ~ん)


 カスティアもトーマスも大貴族だし、そのダンスペアは恐らく外交も含まれているんだろうな。


「アメンのイシスはんは偉い人気やで。学園の男共が揃って誘ったんやがもれなく玉砕や。まぁ面目を保つためにウラエウス王子と踊るんやろな」


 イシスは絶世の美女だからな~、人気なのも納得だ。カップルにならなくても、あんな美女と一夜を共にしたいという男子の欲望は分からなくもない。


「アズマの撫子はんと徳之助はんは参加しないようやで。アズマにはそもそもダンスって文化が無いようや」


 だろうな。舞や剣舞とかならあると思うけど、ダンスはしないだろ。それに撫子は戦いの前にダンスとか浮かれたことはせず精神統一とかしてそうだしな。


「ハモニカのセレンはんはリヒトはんと踊るそうやで。なんやリヒトはんから誘ったみたいや。レオンはんは誘われたけど断ったそうや」


 レオンもイケメンで女子から人気があるのだが、撫子と同様に戦いに集中したいんだろうな。リヒトとセレンがペアになるのは知ってたし、その後の関係も知っている。


 それにしてもナナの情報網には毎度驚かされるな。よく代表者のダンスパートナーを調べられるもんだ。


「ほんでまだダンスパートナーが決まってないのがあんさん等や」


「う、うるさいな!」


「まだ時間はある!」


 ナナがニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて肩を叩くのはゴーズとクラッドだった。二人は一週間前からあらゆる女子生徒にダンスを申し込んでいるが、全て断られてしまっている。


 というかこの二人、恐れ多くもイシスにも申し込んでいるんだよな。ワンチャン狙いでも相手は選ぶべきだろう。


(なんとかしてやりたいが……)


 このままだと二人は寂しい夜を迎えることになってしまう。友のためになんとかしてやりたいが、大貴族である俺から頼むと強制になってしまうからな。そうすると女子生徒が可哀想だ。


 でも何でゴーズとクラッドは人気がないのだろうか。

 下級貴族ではあるけど良い奴等なのに。やはりビジュアルか? ビジュアルが問題なのか?


 誰か二人と踊ってくれる女子が現れないかな~と思っていると、ナナがゴーズとクラッドの間に入り肩を組んで、


「しゃ~ない、わてが一肌脱いだるわ。二人纏めて相手したる、感謝し~や」


「な、何で平民のお前なんかと!」


「そ~だそ~だ!」


「そんな照れんなや~」


「「照れてない!」」


 お~、まさかナナがパートナーを買って出てくれるとは思わなかった。

 まぁこの三人以外と仲良いもんな。いつものやり取りもトリオ漫才みたいに息が合ってるし。

 ここはナナに二人のことを頼もう。


「良かったじゃないか。お似合いだぞ」


「え~! それは酷いですよリオン様~!」


「俺たちにだって選ぶ権利ぐらいありますよ~!」


「何をアホ言うとんねん! 相手がおらんからわてが仕方なく相手してやるっちゅうねん。文句言うなや!」


「そうだぞ。ナナに感謝しろ、二人とも」


 ナナに臍を曲げられて止めると言われても困るので言い聞かせると、二人は大きなため息を吐いてから力なく頷いた。


「「はい……」」


「しし、いや~楽しみやな。贈りもん期待してるで、お二人さん」


 守銭奴のような笑みを浮かべるナナ。

 あっ……こいつそれが目的だったのね。



 ◇◆◇



 星々が煌々と輝く中、魔術大会の前夜祭が行われていた。

 学園にあるダンスホールには学生や各国の代表者、代表者に関係ある者がドレスコードに着飾って楽しく踊っている。


「ほらほら、しゃきっとせいや」


「わ、分かってるよ」


「うぅ、お腹痛くなってきた」


 紫のドレスを纏うナナが、ゴーズとクラッドを両脇に携えて入場する。ガッチガチに緊張している二人をナナがリードしているものの、彼女は貴族ではなく商人の娘なので雰囲気で踊っていた。


「行こうか、レイラ」


「はい、リオン様」


 黒のタキシードを纏うリオンが、純白のドレスを纏うレイラを連れて入場した。


 不格好なナナたちのダンスとは対照的に、二人は完璧なダンスを披露している。実はリオン、退学中にダンスの練習をしていたのだ。とはいっても、元々のリオンのスペックが優れているので、ほぼ一日でマスターしていた。


「楽しいな」


「はい」


 リオンとレイラは共に笑顔を浮かべる。

 あらゆる困難を乗り越えてようやく真の恋人となった二人は、愛する者とこうして共に居られることを幸せに感じていた。


「いや~ん、あの二人ラブラブですわね~」


「羨ましいです。私もあのような殿方を見つけたいですわ」


(よかったな、リオンはん、レイラはん)


 自分たちの空間を作っている二人に、女子生徒がうっとりとした顔を浮かべる。さっきまで踊っていたナナも、苦労の末に辿り着いた関係だと知っているので心の底からリオンとレイラを祝福していた。


 一通り学生が踊った後、ようやく主役たちの出番が回ってくる。


 三年生代表トーマス・ドルトンが帝国代表の王女ココア・アルカディアを、二年生代表カスティア・リッツェが帝国代表の王子オレオ・アルカディアを連れて入場した。


「四方とも美しいですわ~」


「ダンスもお手本のようですわね」


 目目麗しい代表者たちの登場に、ホールにいた生徒たちが騒めく。トーマスとカスティアは大貴族、オレオとココアは王族なので、ダンスは完璧に仕込まれている。美しい踊りに生徒たちが魅入られていた。


「ふ、ようやく余の出番だな」


「王子、激しいのは困りますよ」


「言われんともわかっておる」


 次に入場したのはアメン代表のウラエウス王子とイシスだった。二人とも民族衣装風のドレスを身に纏っている。


「「おおおおお!」」


「イシス様、なんて美しいんだ!」


「ウラエウス王子のお体もキレッキレね」


 イシスのドレス姿に男子生徒が釘付けになる。彼女のドレスはとにかく扇情的で、胸元もへそチラも太もも大胆に見えていた。かつ抜群のプロボーションなので、男子たちが鼻の下を伸ばすのは無理もないだろう。

 ウラエウスのドレスも薄く、逞しい筋肉が露になっているので女子生徒が黄色い声を上げていた。


「ほらセレン、行こうぜ」


「慌てないでよリヒト」


 次に入場したのは学園代表のリヒトとハモニカ代表のセレンだった。リヒトがセレンの手を取り無邪気に踊り出す。


「ひゅーひゅー、いいぞリヒトー!」


「セレンさんも綺麗だ……」


「いいな~リヒトの奴、羨ましいぜ」


 平民でありながらも生徒たちから人気があるリヒトは皆から冷やかされていた。男子に至っては、美しいエルフのセレンと踊れていることに悔しそうに歯軋りしている。


「しっかりリードしてよね、カイト」


「ああ、頑張るよ」


 大トリを飾るのは主人公カイトとヒロインのユイだった。


 白のタキシードを纏うカイトが、紅色のドレスを纏うユイの手を取って入場する。静かに踊り出す二人の呼吸はバッチリ合っている。それもそのはず、二人は前夜祭が始まるまでダンスの練習をしていたからだ。


「いい感じよ、カイト」


「ありがとう。ユイのお陰だよ」


 付き合いたてのラブラブなリオンとレイラとは違い、カイトとユイは付き合い出す前の雰囲気を醸し出している。

 そんな二人を盛り上げようとカイトの親友であるガイとディックが手拍子を行うと、他の者も釣られて手を叩いた。


「リオン君」


「何でしょうか、ラウル先生」


 ダンスホールが熱気に包まれる中、薬学教師のラウルがリオンに声をかける。


「招集がかかりましたので、お楽しみのところ申し訳ございませんが来てください」


「……わかりました」


 折角の楽しいダンスパーティーを邪魔しやがって、と内心で毒吐くリオンは、申し訳なさそうにレイラに声をかける。


「すまないレイラ、俺は先に寮に戻る」


「えっ、はい。おやすみなさい、リオン様」


「ああ、お休み」


 カイトたちが最後の盛り上がりを見せる中、リオンはウラルと共に姿を消したのだった。


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