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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第六章 大会篇

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77話 試合ブーム

 



「うぉぉおおお!」


「ウホオオオオ!」


 バッカスとゴリラの獣人が決闘場の中心で殴り合う。磨き上げられた筋肉が存分に躍動し、観客を大いに楽しませた。


(プロレスかよ……魔術関係ねーじゃん)


 熱き男たちの戦いを客席で観戦している俺は心の中で突っ込む。バッカスもゴリラの獣人も魔術を使わず、身体強化だけを用いた肉弾戦を繰り広げていた。

 楽しいっちゃ楽しいけど、魔術師の癖にそれでいいのか……と呆れてしまう。


「はぁぁあああ!」


「ガハッ!」


「バッカス選手のアッパーパンチが決まった~! ゴーラ選手ダウーン! よって勝者、バッカス選手!」


「「おおおおお!」」


 実況のキアラが叫ぶと、観客がわっと盛り上がる。

 バッカスが倒れているゴリラの獣人もといゴーラに手を差し出せば、彼もガシッと手を取って立ち上がる。


 これがノーサイドの精神ってやつか。スポーツマンシップでとても爽やかな光景なんだが、本人たちのビジュアルが暑苦しいんだよな。これも口にはしないけど。


「見応えのある戦いでしたね、リオン様」


「あ、ああ……」


 隣にいるレイラがやや興奮気味に聞いてくるので、俺は苦笑いを浮かべながら頷く。逆側に座っているゴーズとクラッドも熱き男たちの戦いに拍手を送っていた。冷めているのは俺だけなのだろうか……。


「さぁ、どんどん参りますよ! 次は一年生クライン・クラディウス選手と、アズマの侍、左之助選手です!」


 バッカスとゴーラが会場から退場すると、今度はクラインと若い男侍が入場してきた。

 その際バッカスとクラインが何かを話していたようだが、「凄かったね、バッカス」「クラインも頑張れよ」みたいな言葉を送りあっているのだと思う。


(お祭りだな~)


 俺とレイラのタッグマッチに触発されたのか、学園では空前の試合ブームが巻き起こっていた。


 その日から三日間、朝から晩まで魔術学園の学生と各国の若き猛者が決闘場で試合を行っている。


 まぁ異国の魔術を知るには戦うのが一番手っ取り早いし、バッカスやゴーラのように戦いが終わってから仲を深めることもできる。試合は異国間交流に打って付けの手段なのだろう。


 勿論、カイトやウラエウスといった代表者選手は参加していない。本戦の前に敵となる相手に手の内を見せる訳にもいかないからな。


「ホーリージャベリン!」


「やぁあああ!」


「おっとぉ! クライン選手の光魔術を左之助選手が刀で弾き飛ばしたぞ!」


「やるじゃないか!」


「そちらもでござるよ!」


 といった感じで試合ブームが起こり、俺とレイラも暇なので試合を観戦していた。決闘場の周辺には屋台も設置され、異国の食べ物を飲み食いできて退屈にはならない。


 もうね、スポーツ観戦みたいなものだよね。飲み食いしながら様々な試合を観戦できるのは楽しいけど、唯一心配なのは実況のキアラ先輩だ。あの人三日連続朝から晩まで実況しているけど喉は大丈夫なのだろうか?


「セイント・レイ!」


「ま、参ったでござる」


「決まった~! 勝者、クライン選手です!」


「少し席を外す(トイレに行ってくるね)」


「はい」


 レイラに一言告げてから立ち上がる。

 飲み物ばっかり飲んで水分を多く取っていたら催したくなってしまった。


 尿漏れゲージはまだ50パーセントほどだが、早いとこ済ませておくことに越したことはないだろう。彼女の前で醜態を晒したくないしな。


(トイレトイレっと)


「おい、そこのお前」


(あん? こいつ等は確か……)


 俺を呼び止めたのは二人の男女。

 アルカディア帝国の代表選手にしてオレオ王子とココア王女だった。王子と王女が俺に何のようだろうか。交流会でもこの二人とは特に話をしていないけどな。


「リオン・エルファルドだな」


「そうだが(別に敬わなくていいか)」


「お前に話がある。悪いが今夜、時間を取ってくれないか」


(話~?)


 やけに急じゃないか。

 しかも二人して鬼気迫るような顔を浮かべてやがる。余り良い話でないのは間違いないだろう。

 う~ん、すっごく断りたいけど、仮にも相手が帝国の王族だからな~。大貴族として断る訳にもいかないだろう。


「いいだろう」


「そうか……助かる」


 了承すると、オレオはほっと安堵の表情を浮かべた。彼としても断られると思っていたのかもしれない。


「では今夜、宿舎にある俺たちの部屋に来てくれ」


「わざわざ部屋に?」


「誰にも聞かれたくないんだ。面倒をかけるが頼む」


「わかった」


「待っているぞ。リオン・エルファルド」


 そう言って王子と王女は去っていく。

 誰にも聞かれたくない、ねぇ。益々きな臭くなってきたぞ。安易に引き受けなければよかった。


 まぁいい。そんなことより今はトイレだ。あいつらのせいで尿漏れゲージが60パーセントを超えてしまった。早く行かねば。


「やっほ~リオンちゃ~ん」


「よっ」


(今度はこいつ等かよ)


 次に目の前に現れたのはアメンのセトとバステト兄妹だった。

 なんだなんだ、またやっかみか? この前俺に負けたってのに、こいつ等も懲りないね~。


「そう嫌な顔すんなよ」


「俺たちに関わらないと約束した筈だが」


「分かってるって~。アタシたちじゃなくて、王子がリオンちゃんに用があるの」


「王子が?」


 ウラエウスが俺に何の用だ?

 怪訝な顔つきの俺にセトが申し訳なさそうに頼んできた。


「悪いが今夜時間を作ってくれるか」


「お願~い!」


「はぁ……いいだろう」


 面倒臭いが、ウラエウスの場合引き受けない方がもっと面倒臭くなる気がする。上に圧力かけてきたりな。だったらさっさと話を聞いた方が早い。


「ありがとよ」


「んじゃ、待ってるからね~」


 あ~あ、帝国に続いてアメンまで会うことになっちまった。今夜は忙しくなりそうだな。

 いや、そんなことより今はトイレだ。尿漏れゲージは70パーセントを超えて危険域まで達している。

 ここら辺から少し焦ってくるんだよね。


「おい、お前」


「……」


「お前だよ、聞こえてるだろ!」


(ちっ!)


 敢えて無視して突き進んだのに肩を掴まれてしまう。

 も~次から次へと何なんだよ~! 頼むからトイレに行かせてくれよ~!


「俺はハモニカ代表のレオンだ」


「私はセレンよ。急いでいるみたいだったけど邪魔しちゃったかしら?」


「いや」


 邪魔だよ!

 邪魔だけどトイレに行きたいなんて恥ずかしいこと言えないじゃないか……。

 そんで亜人国の代表者が揃いも揃って俺なんかに何の用だ? また話がしたいから夜に来てくれってか?


「リオン・エルファルドだな」


「そうだが」


「悪いんだけど、今夜貴方に会って欲しい人がいるのよ」


 はぁ、やっぱりそうくるのね。


「わかった。今夜そちらの部屋に出向く」


「あら、やけに物分かりがいいのね。助かるけど理由を聞かなくてもいいの?」


 今は悠長に話を聞いている場合じゃないんだよ。


「気難しい奴だと思ってたけど、案外良い奴なんだな」


「話が終わったなら行かせてもらっていいか」


「え、ええ。待ってるわ」


 ぽかんとする二人を置いてその場から逃げるように立ち去る。

 やばいやばい、急に尿漏れゲージが90パーセントまで来てしまった。漏らさないように早足でトイレに向かうと、目の前から撫子が手を振りながらやってくる。


「お~リオン殿、こんな所にいたでござるか! 探したでござるよ!」


 と声をかけられるが俺は歩みを一切止めず、


「撫子殿、俺に話があるなら今夜お前の部屋に行く」


「ええ!? 正にそのことを話そうと思ったのだが、よくわかったでござるな」


 ここまできたら流れでそれしかないと思ったよ!


「すまない、先を急ぐ」


「しょ、承知した……」


 呆然とする撫子にそう言って、俺は大急ぎでトイレに向かった。



 も、漏れる~~~~!


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