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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第六章 大会篇

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76話 愛のタッグマッチ

 




「さぁさぁ大変なことになってしまいました! なんとなんと、我が校の生徒と砂の国アメンの関係者が試合を行うことになったのです! しかもなんと、二対二のタッグマッチ! これは一週間後に行われる魔術大会の前哨戦と言っても過言ではないでしょう!」


(どうしてこうなった……)


 貴族の生徒と各国の代表者による交流会の翌日。

 学園の決闘場には多くの生徒が駆けつけていた。試合をするのは大貴族リオン・エルファルドとレイラ・ベルンツベルンの二人と、砂の国アメンの護衛であるセトとバステト兄妹の四人である。


 リオンは当事者だけで済ませたかったのだが、何故か話が広がり見世物《イベント》ごとになってしまった。


 リオン本人は知る由もないが、実は話を広げ大事《おおごと》にしたのはアメンの王子であるウラエウスである。

 王子は祭りごとが好きで、どうせ戦うなら見世物にした方がいいと学園の貴族と話しをつけたのであった。


「かか、楽しくなってきたのう」


 仕掛け人であるウラエウスは、客席の一番高いところで豪華な椅子に座り、女性に団扇を扇がせながら高みの見物をしていた。


「よいかセト、バステトよ。これは余興であるが、負けは許さぬ。他国の前でアメンの名を落とすような真似はするなよ」


「分かってますよ王子」


「アタシたちが勝つに決まってんじゃん!」


 跪くセトとバステトに言い聞かせる王子。

 実は彼らは幼馴染で親しい関係だった。なので、護衛の癖に王子に対して馴れ馴れしい態度を取っていても不敬にならないのである。


「うむ、では行ってこい」


「「はい!」」


 大きく首肯した二人は、その場からジャンプして決闘場のフィールドに着地する。軽やかなパフォーマンスに学園の生徒が大いに沸きあがった。

 すると解説席にいる女学生がマイクを手にして口を開く。


「いや~、見事な身のこなしですね~! さて、役者も揃いましたところで本日試合を行うメンバーを紹介しましょう。我が学園からはリオン・エルファルド選手とレイラ・ベルンツベルン選手。アメンからはセト選手とバステト選手です。実況は私《わたくし》、三年生のキアラ・ベッラが務めさせていただきます。解説はアズマ代表の大和撫子選手です。撫子選手、解説を引き受けてくれてありがとうございます」


「うむ、よろしくお願いいたす」


 キアラが隣にいる撫子に声をかけると、若き女侍は楽しそうに頷いた。するとキアラが気軽な感じで撫子に質問する。


「撫子選手はリオン選手と知り合いだという情報が入ってきているのですが本当ですか?」


「うむ。事情は言えぬが、リオン殿には大変世話になったでござるよ」


 撫子は詳しいことは伏せておいた。

 本当は鬼の頭領や八岐大蛇を倒し大和を救ってくれた偉業をこれでもかと褒め称えたいつもりではあったが、どうやらリオンは隠していたいようなので気を遣ったのだ。


「そうでしたか。そんなリオン選手ですが、ここ最近は何かと話題が絶えません。レイラ選手との婚約を破棄しておきながら、レイラ選手に婚約を申し込む男子学生を十対一の決闘で見事勝利しております」


 実はその後、リオンはカイトと決闘をして負けているのだが、それは二人を含めた五人の学生しか知しっている者はいない。


「そして少し前に突然退学したと思いきや、最近になって復学したのです」


「キアラ殿、退学とはどういう意味でござるか?」


「学園を辞めて去るということです」


「ふむ……そうでござるか。リオン殿が退学したのはいつ頃だったか?」


「恐らく二か月前だったかと思います」


「なるほど、教えてくれて感謝いたす(ではリオン殿はアズマに来るために退学したのでござろうか)」


 リオンが退学した時期とアズマに居た時期が合っていることから撫子はそう考えた。

 リオンがアズマに用があったのは事実だが、退学した理由は父親であるジオ・エルファルドが闇の魔術師に殺されてしまったからである。



「話を続けますが、復学したリオン選手はなんとレイラ選手と人目もはばからずイチャついているようです。婚約を破棄しているのにおかしいですが、実は少し前にレイラ選手もリオン選手を追うように退学しているようです。このことから二人は駆け落ちのために退学したのではないか? と色々な噂が飛び交っています」


(……そうだったのかよ)



 キアラの話を聞いて驚くリオン。

 婚約破棄したはずの二人が揃って退学し、復学してからイチャつき出したら生徒の間で噂になるのも無理はないだろう。特に二人の話は女子生徒の間で恋バナとして盛り上がっていた。


「そんな二人の愛に割って入ろうとしたのが、セト選手とバステト選手です。お二人は兄妹のようですが、昨夜の交流会でセト選手はレイラ選手を、バステト選手はリオン選手に求婚しております。いや~、リオン選手もレイラ選手も相変わらずモテモテですね~」



 キアラが冗談を言うと、観客席からクスクスと笑い声があがってくる。



「この対決も、セト選手とバステト選手が勝ったらレイラ選手とリオン選手をそれぞれ手に入れるという条件があるようです。果たして、リオン選手とレイラ選手は引き裂かれることになってしまうのでしょうか!? 皆で恋の試合を見届けましょう!」


「「ぉぉおおおおおお!!」」



 キアラが盛り上げるように叫ぶと、観客席にいる学生らも興奮する。

 場内のボルテージがマックスになる中、セトとバステトは目の前にいるリオンとレイラに確認する。


「いいか、約束は忘れるなよ」


「分かっている」


「今なら泣いて謝ったら許してあげるよ~ん」


「それはこちらのセリフです」


「四人とも、配置についてください」


 既にバチバチで一触即発の四人を制するのは、アメン代表のイシスだった。

 この戦いは個人間のもので決闘でもなく審判は必要ないのだが、わざわざイシスが審判役を買って出た。アメン側の二人はイシスに歯向かうことはできず、学園側の二人も特に問題はない。



「それではいきましょう! 愛のタッグマッチ、開始です!」



 キアラが試合開始の宣言を叫び、二対二の戦いが始まる。

 その直後、リオンは隣にいるレイラに声をかけた。


「レイラ、俺はサポートに回る。好きなように戦え」


「いいのですか?」


「ああ。お前も日々鍛錬しているのだろう? その力を俺に見せてくれ」


「はい!」


 愛しのリオンに期待を向けられたレイラは嬉しそうな顔を浮かべる。この戦いの理由には不服でしかないが、彼と肩を並べて戦える機会はそう無いので引き受けてよかったのかもしれないと胸中で思った。


 リオンとしては子供の戦いに大人が一人混じるようなものなので、レイラに実績経験を積ませるためにサポートに回ることにしたのだ。


「アイシクルショット!」


「デザートウォール!」


 レイラが氷塊の散弾を撃つと、妹のバステトが地面に両手を着き砂の壁を出現させ防御する。


「ゲイルカッター!」


「サンダー」


 反撃と言わんばかりに兄のセトが風の刃を放つが、リオンが電撃で拡散させた。


「おーっと! 初っ端から激しい魔術の攻防が繰り広げられています! 解説の撫子選手、今の攻防をどう見ますか?」


「いや~異国の術は多種多様で面白いでござるな」


 実況のキアラが尋ねると、解説の撫子は興味深そうに頷く。

 求めているコメントはそうじゃないんだけどな~とキアラが胸中で呟く中、再び激しい魔術の応酬が始まる。


「今度はこっちからいくよ~ん! デザートロンド!」


「ゲイルロンド!」


 バステトが再び地面に手を着けて砂の鞭を、セトが風の鞭を同時に放ってくる。二つの鞭が不規則な軌道で襲い掛かってくる中、リオンとレイラは慌てず回避する。

 二人が踊るように躱し続ける中、魔力を練っていたレイラが氷魔術を発動した。


「アイシクルランス!」


 大きな氷の槍を放つ。この魔術は貫通力が高く、先ほどの砂壁程度なら貫けるだろう。


「ゲイルカッター!」


「デザートウェーブ!」


 セトが幾つもの風刃《ふうじん》を放ち氷の槍を削ると、バステトが砂の津波を起こして飲み込んだ。

 それだけで終わらない。バステトは術を発動し続け、砂の津波でリオンとレイラを飲み込もうとした。


「ライトニング」


 リオンが威力の高い中級の電撃を放ち、砂の津波を吹っ飛ばす。攻撃が思うように決まらず、セトはチッと大きく舌打ちをした。


「あいつ等、結構やるじゃねぇか」


「お兄ちゃん、“準備完了だよ”!」


「よし、やるぞ妹よ!」


「何か仕掛けてくるぞ。警戒しろ、レイラ」


「はい!」


 兄妹の魔力が高まっていくのを感じ取ったリオンはレイラに気をつけるよう伝える。バステトとセトは、同時に魔術を放った。


「デザートストーム!」


「ゲイルストーム!」


「「混合魔術《ユニゾンマジック》、ダストストーム!!」」


「「っ!?」」


 リオンとレイラを中心に砂塵の竜巻が起こる。

 この砂塵はセトの竜巻とバステトの砂嵐が合わさった混合魔術《ユニゾンマジック》であり、威力も強度も上級魔術に匹敵する。


「セト選手とバステト選手の魔術が炸裂ぅ! 砂塵に囲われたリオン選手とレイラ選手の姿が捉えられません! 砂塵の中はいったいどうなっているんだ~!?」


「いや~凄い術でござるな」


「「ぉぉおおおおおお!!」」


 キアラがマイクを持って状況を説明しながら叫ぶと、珍しい魔術に観客が沸き上がる。そんな中、閉じ込められたレイラはなんとか脱出を試みていた。


「アイシクルランス!」


「無駄無駄! そんな攻撃じゃアタシとお兄ちゃんのコンビネーションは破れないよ!」


 氷槍を砂塵にぶつけるも、砂塵の威力が高く粉々に打ち破られてしまう。脱出に失敗した二人に、セトの風魔術が襲い掛かる。


「デザートカッター!」


「「っ!?」」


 砂塵の外側から放たれた風刃は、砂塵の砂を含んだ砂風刃となってリオンとレイラを襲う。紙一重で躱せたものの、砂を含んでいる分威力が高く喰らったら一溜りもない。


 が、厄介なのはそこではない。砂塵のせいで敵の姿が見えないため、いつどこから攻撃が来るか分からないことだ。


「どうする、レイラ」


(落ち着け、脱出する方法は必ずあるはず)


「リオン選手、レイラ選手、万事休すか~~!?」


「次で終わらせてやるよ!」


 ゲイルがトドメを刺そうと魔力を高めた時だった。突如、砂塵の頭上からリオンとレイラの姿が現れる。


「お~っと! リオン選手とレイラ選手、見事砂塵を脱出しました!」


「何だと!?」


 冷静に砂塵を分析したレイラは、上を見上げて青い空を発見した。抜け道を探し当てるとすぐに行動に移す。地面から氷の柱を出現させ、リオンと共に砂塵を脱出したのだった。


「ホーミングサンダー」


「くっ、デザートウォール!」


 氷の柱の上からリオンが追尾する電撃を放つ。砂塵を維持していたバステトは魔術を解除し、慌てて砂壁を出して防御した。


「ゲイルカッター!」


 風の刃が氷の柱を切り裂く。リオンはレイラをお姫様抱っこすると、崩れ落ちる氷塊を次々と飛び越えて地面に着地した。


「リオン選手、レイラ選手を抱えて華麗に着地! 美しい愛の光景に嫉妬してしまいます! 私もあんな風に彼氏に抱えられたい!」


「本音が出ているでござるよ……」


「「きゃ~~!」」


 観客席が今日一番の盛り上がりを見せる。特に女子生徒からの黄色い叫びが凄まじい。あんなラブラブな姿を見せられて年頃の女の子が興奮するのも無理はないだろう。


「ちっ、見せつけてくれんじゃねーか」


「ぐぬぬ、アタシとお兄ちゃんのコンビネーションが破られるなんて悔しい~!」


「落ち着け。破られはしたが、フィールドは既に俺たちの物だ」


「そうだね、お兄ちゃん!」


 頭に血が上る妹を兄が落ち着かせる。

 兄の言葉で気持ちを切り替えたバステトは、両手を砂の地面に突っ込んで魔術を発動する。


「デザート・ロックヘル!」


「足が!?」


(上手いな、地形を利用したか)


 リオンとレイラの足が砂に埋もれ、固まってしまい身動きが取れなくなってしまう。フィールドは現在、度重なるバステトの砂魔術によって砂地と化していた。


 兄妹は自分たちが有利となるこの瞬間を待っていたのだ。焼き雲に攻撃していた訳でもなく、地形を作り変えるという布石を作っていた敵の手腕に関心するリオン。


「凄い、凄いぞアメン兄妹! カップルの愛に負けじと兄妹の絆を見せつけています!」


「今よ、お兄ちゃん!」


「これで終わりだ! エアリック・ストーム!」


 リオンとレイラの身動きが取れない今、纏めて倒そうとセトが上級魔術を発動する。吹き荒れる暴風が襲い掛かる中、逃げられないリオンは右手を翳す。


「ライトニング」


「なっ、俺のエアリック・ストームが中級魔術に相殺されただと!? あり得ねぇ、何なんだあの野郎は!?」


 渾身の魔術が下位の魔術にいとも容易く打ち破られて呆然とするセト。電撃の威力もそうだが、戦いが始まってから終始落ち着いている。学生の癖に余りにも戦い慣れていた。


「レイラ、魔力は練り上げたか?」


「はい!」


「よし。サンダー」


 リオンが問いかけるとレイラからいい返事が来る。リオンが足を固定している地面の砂に向けて電撃を放つと、リオンとレイラの周囲だけ砂を吹っ飛ばした。

 直後、レイラが地面に手を着いて氷魔術を発動する。


「アイシェード・グラウンド!」


「「っ!?」」


「これで砂の魔術は封じました」


 刹那、砂地が氷地と一変する。

 砂が凍り付いたことでバステトの砂魔術を封じた上に、足が凍り付いたことで今度は兄妹が身動きを取れなくなってしまう。


 ここが好機。

 集中力が高まっているレイラは師匠であるエリザベス・エルファルド直伝の魔術もどきを行い、自然の水分を氷属性に変換。それを利用し少ない魔力で間髪入れずに上級魔術を発動した。


「アイシェード・ブロッサム!」


「きゃあああ!」


「レイラ選手の氷魔術がバステト選手に襲い掛かる~~!」


「くそ、スカイフライ!」


 無防備のバステトが氷花の彫像に閉じ込められる。妹が戦闘不能になると、氷上は不利と判断したセトが飛行魔術で空中に逃げる。

 リオンは「馬鹿だな」と呟きながら人差し指で空を指すと、



「空は雷魔術師《おれ》の領域だぞ。サンダーボルト」


「ぐぁああああ!?」



 小さな落雷がセトに降り落ちる。

 雷に撃ち落されたセトは気絶し、そのまま地面に落下した。



「決まった~~~! セト選手、バステト選手、共に戦闘不能! よってタッグマッチを制したのは、リオン選手とレイラ選手です!」


「「わぁぁあああああ!!」」



 見応えのある戦いに、場内のテンションが最高潮に盛り上がる。

 観客席から万雷の拍手を送られる中、リオンはレイラを褒め称えた。


「強くなったな、レイラ。敵の手を封じた良い戦い方だった」


「ありがとうございます、リオン様」


 こうして、愛のタッグマッチはリオンとレイラの勝利で終わったのだった。



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