74話 代表者集結
「生徒諸君、今年もついにこの日がやって来た」
俺たち全学年の生徒や教師が講堂に集まっていた。
壇上に立つ校長ダニエル・ゴッドヴァルトが両手を広げ、生徒たちに聞こえるように拡声魔術を使いながら告げる。
「各国による若き魔術師が集い凌ぎを削る催し、魔術大会がわが校で行われるのじゃ!」
「「おおおおおお!」」
校長が告げた直後、生徒たちが一斉に雄叫びを上げる。
凄い盛り上がりようだ。
そりゃそうか。違う国だと試合を投影魔術越しでしか観られないが、開催場所が現地だと直で見られるからな。まさしくお祭りだ。
校長が手を上げて制すと、騒がしい生徒たちが口を閉じる。静かになったのを見計らって、校長は話を続けた。
「それでは各国の代表選手を紹介しよう」
校長が告げた直後、講堂の扉が開かれる。
そこから現れたのは、着物を纏った三人の侍だった。
「遠き海を渡り、極東の島国アズマからやってきた、大和撫子選手、徳田徳之助選手」
「「わぁああああ!」」
(来たな、撫子)
ひらひらと桜が舞い落ちる演出の中、撫子が堂々とした態度で階段を下りる。彼女が出場すると分かってはいたが、物語通りで安心した。
撫子の隣を歩くのは男前の侍。彼はアズマで一番偉い将軍家の子供だった気がする。
その二人の背後を歩くのは撫子の父である大和猛。彼は二人の子守役兼アズマの特使として来たのだろう。
「撫子選手、凛々しくて素敵な女性ね!」
「徳之助選手もかっこいいわ!」
ビジュアルの高い二人に女子生徒はメロメロだ。撫子が軽く手を振れば、女子生徒が黄色い声を上げて鼻血を出す者もいる。
まぁ撫子って女子に人気なタイプだよな。巨乳をさらしで巻いているエロい格好だから男子にも人気だけど。
「アルカディア帝国からは、オレオ・アルカディア選手、ココア・アルカディア選手」
「「おおおおお!」」
再び美男美女の登場に生徒が沸き立つ。
炎が巻き起こる演出の中を歩くオレオとココアは、名前から分かる通り二人共王族だ。でも、第何王子だったかまでは覚えていない。帝国は王子と王女が沢山いるからな。
まぁ上位ではないだろう。帝国が子供のお遊びに本気を出してくることはないだろうしね。
彼らの付き添いは物語で特に描写されなかったから知らない。
「砂漠の国アメンからはウラエウス選手、イシス選手」
「蛇だ……」
「イシス選手もお美しい……」
アメンのモチーフはエジプトで、民族衣装を纏う二人はどちらも気品があって神々しく見える。そんでウラエウスの肩には白蛇が乗っていて、生徒たちは怖がっていた。
「久しいな、ダニエル」
「よく来てくれたの、ホルス」
ウラエウスとイシスの付き添いの男が校長とがっしり抱き合う。へぇ、二人は旧知の仲だったのか。知らなかったな。
「亜人国ハモニカからは、レオン選手、セレン選手」
「えっ、耳と尻尾が生えている」
「セレン選手の耳長いな」
「あれが噂に聞く亜人か」
「っていうか、あの飛んでるの何?」
「魔術学園の無能力者」にも獣人やエルフが存在し、それらをひっくるめて亜人と呼ばれている。
因みにゴブリンみたいな魔物も知性がある場合は亜人なんだ。
多種多様な亜人だけの国がハモニカ。その代表のレオンは虎の獣人で、セレンはエルフだった。
「よく来てくださいました、メイベル様」
「ダニエル坊や、お前も歳を取ったの」
レオンとセレンの付き添いは亜人どころか妖精だった。それも校長が恭しく頭を下げるほどの相手。
今になって思い出したが、確かメイベルは何千年と生きている偉い妖精だった気がする。
「そして最後に、我が校から四人の代表者を紹介しよう。トーマス・ドルトン選手、カスティア・リッツェ選手、カイト選手、リヒト選手」
「「わぁああああああ!」」
今日一番の歓声が巻き起こる。
そりゃ自分たちの代表なら応援するわな。因みにうちの学園だけ二人ではなく四人も出場するのは、開催国で出場枠を四つ設けられたからだ。
壇上に並び立つ代表選手、計十二人が出揃った。
大和撫子 (アズマ)
徳田徳之助 (アズマ)
オレオ・アルカディア(アルカディア帝国)
ココア・アルカディア(アルカディア帝国)
ウラエウス (アメン)
イシス (アメン)
レオン (ハモニカ)
セレン (ハモニカ)
トーマス・ドルトン (魔術学園)
カスティア・リッツェ(魔術学園)
カイト (魔術学園)
リヒト (魔術学園)
校長は選手たちの前に立ち、全校生徒へ向けて口を開く。
「この十二人が魔術大会に出場する代表選手じゃ。生徒諸君、彼らに今一度大きな拍手を」
「「わぁあああああああ!!」」
校長が促すと、生徒たちは拍手喝采を送る。大いに盛り上がったところで、校長は続けて、
「これより一週間後に魔術大会を開催する。大会までの期間は、代表選手や各国の才ある若者たちと是非交流を図って欲しい」
魔術大会は戦いの場でもあるが各国との交流の機会でもあるんだよな。
講堂には代表選手しか来ていないが、彼ら以外の客人も各国から沢山訪れている。異国の魔術や文化を知るのはとてもいいことだからね。
「代表選手の諸君は、開催されるまでの間に英気を養っておくように。良き大会になることを期待しておるぞ」
◇◆◇
「私、亜人の方を初めて見ました」
「俺もだ」
あの後、代表選手が軽く自己紹介したり、歓迎の催しが行われた。
とは言っても、催しを楽しんでいたのは撫子ぐらいで他のメンツは殆ど仏頂面だったけどな。各国の代表として来ているから楽しむ余裕なんてないんだろう。
「ここは静かでいいですね」
「ああ」
大会までの一週間は授業がなく、学園はお祭り騒ぎだ。
なんというか、文化祭の準備期間みたいなもんだろう。
他の生徒が各国の同年代と交流を深めている中、俺とレイラは昼間から中庭のベンチでイチャイチャしていた。今は冬で寒く、わざわざ中庭に来る奴なんて誰もいないから他人の目を気にする必要もないのだ。
「寒くないか」
「少し寒いので、近くに寄ってもいいでしょうか?」
「……ああ」
「では、失礼します」
「っ!?」
了承すると、レイラが俺との距離を縮めてピタリと肩を寄せ合う。さらに大胆にも腕を組み、俺の肩に頭まで乗せてきた。
「これで温かくなりました」
「そ、そうか(うひょ~~!)」
な、なんて可愛いんだレイラは!
さらさらとした髪の毛からは良い匂いが漂ってくるし、くっつくことで彼女の体温を感じられる。
傍から見たら俺たちはバカップルだと思う。転生する前までの俺だったら「こんな所でイチャついてんじゃね~よ、リア充爆発しろ!」と心の中で叫び嫉妬していたが、まさか自分がする側の人間になるとはな。
でもこれ、やってみたら分かるが凄い幸せを感じるんだ。
俺もついに“成って”しまったか。
勝ち組に!
「あぁリオン、そんな所にいたのか」
「探したぞ」
(ちっ、邪魔が入ったな)
クラインとバッカスが俺たちの所に歩いて来る。
折角イチャイチャしていたのに何だってんだよもう。ほら、レイラも腕を解いて離れたちゃったじゃないか。
「邪魔しちゃったかな?」
「そんな事はない(邪魔です)」
「いやはや、退学する前までは婚約破棄したり険悪な関係だったのに、復学した途端にこれだからね。知らないだろうから言っておくけど、君たちの関係に皆驚いているよ。何か心境の変化でもあったのかい?」
「レイラを愛すことを諦めないと決めた。ただそれだけだ」
「リオン様……」
自分でも歯が浮くような言葉だけど、これ以外の説明はできないんだよな。相棒が応援してくれて、自分の人生を歩むと決めた俺は、もう絶対に彼女を手放さない。
「は、はは……僕の専売特許が奪われてしまったよ。まさか君の口からそんな甘い言葉が出てくるとはね」
「お前たちは婚約者なんだ。収まる所に収まっただけの話だろう」
「そういう事だ。それで、二人は何の用で俺たちを探していたんだ」
「ああ、そうだったね」
クラインは思い出したかのように言うと、俺とレイラに話を伝えてくる。
「家の者から既に聞いているかもしれないが、今夜僕たち貴族の子供と各国の代表選手での交流会があるんだ。僕とバッカスも参加するし、勿論大貴族のリオンとレイラも出席してもらうよ」
「そういう事だ。二人共、交流会には遅れるなよ」
な、何だって~~~~~!?
そんな話聞いてないよ~!!




