64話 物の怪
※宣伝失礼しますm(__)m
本日より、ニコニコ漫画にて私の小説
「勇者の教室〜元勇者の俺が魔術学校の教師になって問題児達を更生させることになった件〜」がコミカライズとして配信されました。
お時間あれば見に行っていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本編へどうぞ。
「お鶴、我が君の魂が入っている勾玉の行方はまだ分からないのか」
「はい……お役に立てず申し訳ございませぬ、リオン様」
(クソッ……)
アズマに来てもう一週間経つが、手がかり何一つ見つけられないでいる。
死人すら出すほどの濃密な魔力を放出する呪物だ。俺の魔力感知ならすぐに見つかると高を括っていたが、大和全域を歩き回ってもついぞ見つからなかった。
元々封印されていた祠にも行ってみたが、痕跡すら見当たらない。もし大和の外に出て行ってしまったのなら、見つけるのは困難だろう。
おまけにベッキーだ。
居間で暢気に寝転がりながら煎餅を食っているこいつは、初日だけ協力して次の日以降から全く探さなくなった。
「面倒臭ぇな。後輩、後はお前に任せた」
そう言って、毎日お気に入りになった茶屋に団子を食いに行くか、拠点でぐ~すか寝てるだけ。不眠症で寝たくても寝れない分、気持ちよさそうに寝てるベッキーを見ると蹴り飛ばしたくなるほど腹が立つ。
お蔭でこの一週間、俺一人で探し回るはめになったんだ。
まぁ、大人しくしている分面倒事を起こしていないからいいっちゃいいが、納得はしていない。
ブラック企業で先輩から「今日までにこれやっておけよ」と理不尽に仕事を押し付けられたことを思い出して余計に腹が立ったしな。
「クソ、いったいどこにあるんだ。捜索範囲を広げなければならないのか」
「まぁ落ち着けよ後輩。煎餅でも食うか?」
「……いりません(少し黙っていてもらえますか)」
「いらね~のか? うめ~のにな」
今は食べてる場合じゃねえんだよ。ていうか食ってないでお前も探せよ。
あ~クソ、物語に少しでも描写されていれば探すのは簡単だったんだけどな。少しでもいいから書いといてくれよ作者様。
「我らくノ一も総動員で探しております。今暫くお待ちください」
(くノ一!?)
平に謝ってくるお鶴。
っていうかアンタくノ一だったのかよ、びっくりしたわ。
忍のくノ一か……「魔術学園の無能力者」の世界にもいるんだな。物語には登場しなかったが、設定だけはあったのだろうか?
「お鶴、勾玉が消える前後、何か気になることはなかったか。どんな些細なことでもいいんだ」
「気になること……ですか。はっ!」
「何かあるのか」
「はい。実は勾玉が消えて数日後から、突如大和の夜に物の怪が出始めたのです」
「物の怪……」
っていうと、外国でいう魔物のことだよな。
外国ではゴブリンやドラゴンといった魔法生物を魔物と呼ぶが、アズマでは鬼や河童など魔物ではなく妖怪や物の怪と呼んでいるんだ。
お鶴から話を聞くと、物の怪は時々出たり出なかったりするほどの頻度なのだが、ここ最近はほぼ毎日出ているし数もこれまでの比ではないほど多いんだそうだ。
「物の怪が多く出始めている今、人々は恐怖に怯え大和の夜は誰一人として出歩かず家に引き籠っております」
(夜か……あっ!)
そうか、そういう事だったのか!
俺は初めてアズマに来た日のことを思い出す。
『それにしても、人っ子一人いないな』
屋敷を出て夜の街並みを眺め、一人も出歩いていないことが不思議だった。あれは物の怪から身を守るためだったんだ。
(物の怪か、盲点だった)
勾玉が消えたのは、アズマ支部の誰かが持ち去ったとばかり考えていた。
しかし持ち去ったのが人間ではなく物の怪だったら? 俺は日中アズマで捜索しているが、夜はエルファルド家の屋敷に帰って仕事をしている。だから町の異変に気付かなかったんだ。
そうと分かったら探し方を変える必要がある。
「勾玉は物の怪に奪われた可能性がある。今日から俺も夜の捜索に加わる」
「承知いたしました。ですが、よろしいのですか?」
「何がだ」
「いえ、リオン様のお顔色が悪く見えるので、せめて夜中だけでも休まれてはいかがしょうか」
心配そうに提言してくるお鶴。
そんなに顔色が悪いのか? まぁ父が死んだ日から一睡もしていないし、連日の捜索と領主としての仕事で疲れがたまっているのだろう。ろくに休んでいないしな。
勾玉さえ見つかりさえすれば少しは落ち着けると思う。
「俺のことは心配無用だ」
「出過ぎたことを言いました。お許しください」
「気にするな。一つ聞きたいが、町に現れる物の怪は誰が対応しているんだ」
「物の怪は大和の術師が退治しております」
術師か……魔術師のことだろうが、大和では退魔師のような役割をしているのだろう。
面倒になるから出くわさないよう気を付けなきゃな。
「わかった。それとお鶴、お前たちを疑ったりしてすまなかった」
「いいえ、リオン様が我らを疑うのも当然です。お気になさらないでください。我々も物の怪の動向を探ってみます」
「任せた」
という事で、いつもと逆で日中はエルファルド家に戻り仕事をし、夜になったらアズマに戻ってきた。
ぐ~すか寝ているベッキーを置いて屋敷を出る。
(確かに、異様な気配があるな)
月明りの下、不気味なほど物静かな大和の夜道を歩いていると、言い知れぬ気配を感じる。目には見えないのに、すぐ近くにいる誰かがいる感じだ。
周囲を警戒しながら歩いていると、お目当てのものが現れた。
「ニンゲン」
「ウマソウだ」
「小鬼か」
現れたのは二体の小鬼。
見た目はゴブリンによく似ているが、ファンタジーなゴブリンとは違って小鬼は日本風の画風だ。体色も緑色と黒色で違うしな。
さて、物の怪には外国の魔術が効くのか試してみよう。
「「ギャギャー!」」
「サンダー」
「「ギャギャー!?」」
襲いかかってくる小鬼共に電撃を浴びせると、耳障りな悲鳴を上げて消滅した。
ふ~ん、死んでも肉体が残る魔物とは違い、物の怪は死ぬとあんな風に塵となって消えるのか。まぁ妖怪とかって生物ってよりは霊的存在だからな。
「ウマソウなニンゲンだ」
「オレ、オレが食う!」
「い~や、オレ様の飯だ!」
俺の魔力に反応したのか、小鬼を皮切りに物の怪が次々と現れる。
牛や虎に似た奴、燃えている車輪、大きな目玉、その他大勢。物の怪のバーゲンセールだな。こんなに多いと人々が家に引き籠るのも分かる気がする。
だが、勾玉を持っているような強力な物の怪はまだ出ていない。
殲滅していけばいずれ親玉が出てくるだろうか。
「ライトニ「そこの者、逃げるでござるよ!」
(あん?)
中級魔術で一掃しようとしたのだが、横槍を入れられてしまう。その者は物の怪の集団に飛び込んでいくと、鞘から刀を抜き放ち物の怪を斬り裂いていった。
っておい、もしかしてあいつ撫子じゃないか?
何でこんなところにいるんだよ。
「何をしている! 拙者が相手をしている間に逃げるのだ!」
「燃えろ燃えろー!」
「ぐっ!」
余所見をしている撫子に車輪が襲い掛かる。
はぁ……仕方ない。余り彼女と関わりたくなかったが、このまま立ち去るのも忍びない。
「サンダーアロー」
「ぐえ!?」
雷の矢で車輪の中心を打ち抜く。一点集中型にしたのは撫子を巻き込まないためだ。雷魔術は基本的に広範囲の魔術だからな。
「術!? って、お主もしやリオン殿か!?」
「そうだ」
ようやく気付いたか。
まぁ月明りしかないし、俺だと分からないのも無理はないか。
「加勢する。好きなように戦え」
「う、う~ん? 相分かった!」
何でリオン殿がここに!? と困惑する撫子だったが、すぐに切り替えて物の怪の討伐に集中する。
「はぁあああ!」
(うん、やっぱ強いな)
バッタバッタと物の怪を斬り伏せていく撫子に関心する。
彼女は魔術を使ってもいなければ身体強化の類も使っていない。物の怪を倒すために魔力を刀に付与しているだけで、純粋な身体能力と剣技だけで戦っている。
音を置き去りにする剣速、柔軟な対応力、底知れぬ集中力。
流石、物語中盤で出てくる強キャラなだけはあるな。先ほどは俺に気を取られて遅れを取ってしまったが、今や物の怪に囲まれても全く危な気がない。
正直助太刀する必要もないのだが、加勢すると言った手前少しは手伝わなければな。
二人で協力して戦うと、あっという間に物の怪を片付けた。
「ふぅ……今日は中々多かったでござるな。リオン殿、怪我はしていないでござるか」
「問題ない」
「それは良かった。いやはや驚いたぞリオン殿、まさかお主が術師だったとはな」
「それはこちらの台詞だ」
「ん、それもそうか。はっはっは!」
別に笑うところじゃないんだけどな。
「ところでリオン殿はこんな夜中に何をしているのでござるか? 今、大和の夜は物の怪で溢れかえっているのだ。危険なので夜中は出歩かないほうがいいぞ」
「それもこちらの台詞だ。撫子殿こそ何をしているんだ」
「拙者は大和を治める大名の娘として、この町の治安を守らねばならんのだ」
「術師が対応しているんじゃないのか?」
「物の怪は日が経つごとに数も増し凶悪となっているのだ。大和の術師たちも必死に物の怪を退治しているのだが、連日の戦い続きで疲労し、怪我人も出ている。少しでも彼らの助けになるために、拙者もこうして見回りをしているのでござるよ」
なるほど、そういう事だったのか。
大変だね~領主の娘も。まぁ俺もエルファルド領が魔物に襲われたら同じようにするだろうから気持ちは分かるがな。
「だからリオン殿も夜中はうろつかない方がいい」
「わかった」
ここは大人しく引き下がろう。
彼女と関わりたくないので、見つからないように遠くで物の怪の相手をするか。そう判断して別れようとした時、どこからか声が聞こえる。
「あの~」
「ん? リオン殿、何か言ったか?」
「いや、俺じゃない」
「ここです、ここ」
声の出どころを探そうと二人で周囲を見回していると、足元から再び声が聞こえる。
「お侍様、どうか我らをお助けください」
「「なっ……」」
なんだ、このデフォルメちっくな可愛い物の怪たちは!?




