49話 募る愛
「レイラ」
――いつか来る。
「俺は」
――この日が訪れないことを。
「お前との婚約を破棄する」
――私は、心の底から願っていました。
◇◆◇
リオン様に好意を抱いたのは、平民学校でいじめられていた所を助けていただいた時でした。
幼い私に突然できた婚約者。かっこよく助けくれた彼はまるで物語に登場する白馬の王子様でした。
私とリオン様の婚約は、お父様とリオン様のお母様であるヴェラ様が幼馴染で仲が良く、お互いの子供たちを結婚させようという約束で決まりました。
「いらっしゃい、レイラちゃん」
「こんにちは、ヴェラ様」
婚約が決まってから、私はヴェラ様に呼ばれてよくエルファルド家を訪れていました。
リオン様のお父上であるジオ様は仕事が忙しく余り関わっていませんでしたが、私とリオン様、ヴェラ様とまだ幼いサラ様の四人でお話ししたり、出掛けたりしていました。
それが凄く楽しくて、幸せだったのを覚えています。
ですが、私とリオン様が婚約してからすぐ、不幸な事故に遭いヴェラ様は亡くなってしまいました。
それからエルファルド家にも呼ばれなくなり、リオン様とお会いする回数も徐々に減り、一年に一度だけになってしまいました。
それでもリオン様に対する私の気持ちは変わりませんでした。例えリオン様が、婚約者がいながら貴族学校の女子生徒に目移りしているという噂を耳にしても。
久しぶりに会っても素っ気なく、私との婚約を破棄したがっているようでも、私の心は変わることはなかったのです。
「君を守れて良かった」
「リオン様……」
リオン様に対する気持ちが“好意”から“愛”に変わったのは、闇の魔術師との戦いで傷ついた彼を治療していた時でした。
闇の魔術師に襲われ殺されそうになった時、リオン様は昔のように駆け付けてくれました。
そして命を懸けて戦い、闇の魔術師を倒した後、今にも倒れそうな身体で私のもとへ来て、頬に触れ安堵したような顔でそう言ってくれたのです。
倒れたリオン様を治癒していて気づきました。彼の身体は全身の筋肉が裂け、魔力路もズタボロ。本当に死ぬ一歩手前でした。こんなになってまで助けてくれたことに、私は感謝で涙が止まりませんでした。
絶対に助けよう。私の全てを懸けて。
リオン様の容態が安定して安堵する私は、彼を愛おしく思いました。
そして誓ったのです。例えリオン様が他の誰かを好きになっても、私は彼を一生愛し続けると。
魔術学園に通うようになり、私は気付いてしまいました。
リオン様が好きな方は、きっとユイさんであると。
いえ、違いますね。貴族の子供たちだけで行われたパーティーで既に気付いていたのかもしれません。
何故なら、ユイさんに対するリオン様の顔や態度が恋焦がれているように見えたからです。
ユイさんを見つめるリオン様の横顔を見る度に、凄く胸が苦しかったです。
誰を好きになってもと口では言っておきながら、知らぬ内に嫉妬し、認めたくなかったんです。リオン様が私以外の女性を好きなことを……。
「ちょっといいか」
「貴方は誰でしょう?」
「オレのことなんてどうでもいいんだ。お前には人質になってもらう」
「何を言って――」
魔術大会の予選会が終わった後、見知らぬ男子生徒に声をかけられたと思ったら気を失ってしまいました。
そして気付いたら森の中で、男子生徒とリオン様が会話していました。
男子生徒の正体は悪魔で、リオン様の身体を奪うために私を人質にしたと。
私を助けたかったら、悪魔と「闘いの儀」と呼ばれる決闘を行えと脅していました。
私のせいでリオン様にご迷惑をおかけしたくない。また命を懸けるような危ないことはしないで欲しい。
そう願って、私はリオン様に必死で訴えました。
「リ、オン様……やめてください。私のことは放っておいて。どうか、お願いですから」
「わかった。戦おう」
「リオン様!」
私の願いを聞き入れてくれず、リオン様は悪魔と決闘を行ってしまうのです。
二人の戦いは想像を絶するもので、魔術の頂点を極めた者同士の戦いを垣間見ました。どちらが死んでもおかしくない激しい攻防の中、最後まで圧倒したのはリオン様。
卑怯な手を使う悪魔に対し、リオン様は油断することなく倒しました。
「リオン様が私を大切にしているとあの悪魔が言っておりましたが、本当ですか?」
「知らん」
「では何故、私を助けようと?」
「……お前は“まだ”俺の婚約者だからな」
悪魔が言うには、リオン様は私のことを大切に思ってくれているようでした。そのことについて勇気を出して尋ねたら、彼は照れ臭そうにそう言ってくれたのです。
私は益々リオン様を好きになり、愛は深さを増しました。
「久しぶりだな」
「げっ、ジオ!? 何でテメエがウチに!? どういう風邪の吹き回しだよ!」
「貴様に用はない。用があるのは貴様の娘だ」
「私、ですか?」
長期休暇が始まってからすぐ、ジオ様が我が家を訪れました。
どうやら辺境にあるエルファルド本家、リオン様のお婆様が婚約者である私にお会いしたいようです。
私はジオ様の提案を聞き入れ、本家に行くことにしました。直接ではなく一度リオン様の家に訊ねてからなのですが、まさかお父様も行くとは思いませんでした。
「じゃあ俺も行くぜ」とお父様が言った時のジオ様の顔が本当に嫌そうで少し面白かったです。
「こんばんは、リオン様」
「レイラ……!?」
リオン様は私が家に来たことに凄く驚いていました。私が来ることは聞いていなかったようです。
久しぶりに来たエルファルド家は懐かしさを抱きましたが、そこにヴェラ様がいないことに寂しさを感じました。
ですが、リオン様の妹のサラさんとお話ししたり一緒に寝たり仲良くなれて嬉しかったです。
本家に向かう道中も楽しかったです。
馬車の中ではリオン様と沢山お話しできました。こんなに話せたのはいつ以来でしたでしょうか。
ただ、リオン様がカイトさんのこと聞いてきた時とは驚きました。まさか私がカイトさんを好きだと思われているのでしょうか?
天地がひっくり返ってもあり得ません。
私はリオン様一筋なのに……と少し悔しくなり、私からもリオン様にユイさんのことをつい口に出してしまいました。
「俺は――」
「申し訳ございません。やっぱり答えなくていいです」
答えを聞くのが怖かったのです。
もし彼の口からユイさんを好きだと直接言われたら、私は耐えられるか分かりませんでした。
ザッカートについてから魔導飛行船に乗り、途中ワイバーンの群れに襲われましたがリオン様が追い払ってくれました。
そしてようやくエルファルド本家にたどり着いたのです。
「まぁまぁ、なんて可愛いらしい子かしら。貴女がレイラさんよね」
「は、はい。お初にお目にかかります、メアリー様。リオン様の婚約者のレイラ・ベルンツベルンと申します」
リオン様のお婆様、メアリー様はとてもお優しいお方でした。
緊張している私に紅茶や菓子を用意してくれたり、とても好意的で安心しました。リオン様の婚約者に相応しいか厳しく見定められると思っていたのですが、その逆でした。
メアリー様は私に、リオン様が婚約者で不満はないかと心配していたのです。
なので私は、噓偽りなくはっきり申し上げました。
「そんな事はありません。私はリオン様をお慕いしています。いえ、心より愛しています」
「あらあら、まぁまぁ!」
私がどれだけリオン様を愛しているかお話しすると、メアリー様は嬉しそうに安心したように微笑んで、
「レイラさん、リオンのことをどうかよろしくお願いします。あの子は私の旦那や息子に似て気難しところもあるけど、貴女のような人が安心できるわ。ジオを支えてくれた、ヴェラさんのように」
「ヴェラ様ですか」
「ええ。ジオには勿体ないくらいヴェラさんは素敵な人だった。亡くなってしまったのが本当に残念でなりません。けど、彼女と出会えたからジオも立派になった。ジオを支えてくれたヴェラさんのように、レイラさんもリオンを支えてあげて欲しいの」
「お任せください。私の全てをかけてリオン様を支えます」
メアリー様と約束しました。
例えリオン様との婚約がなくなったとしても、この命をかけてリオン様をお支えすると。
「レイラ嬢、少しいいか」
「エリザベス様」
リオン様の伯母様であるエリザベス様は、とても大きくて近づき難い雰囲気を放つ女性です。リオン様やジオ様やお爺様もそうですが、エルファルド家直系の方は似ている気がします。
エリザベス様は私と同じ氷属性の魔術師です。エルファルド家の雷属性ではなく、メアリー様の水属性の血を色濃く継いだようです。
エリザベス様は、私に氷魔術の使い方を教えてくれました。危険な使い方ではあるけれど、覚えれば強くなれる。
今まではリオン様に守ってもらってばかりでした。けど私もリオン様の力になりたい。守られるばかりでなく、守り支えたい。
そんな想いで、エリザベス様の指導を受けることにいたしました。
エリザベス様の指導のもと氷魔術の鍛錬に励む日々の中、帝国が侵攻してきました。それに対し、エリザベス様とエルファルド家の兵士が迎え撃ちます。
リオン様と私も未来を見据えて見学させていただくことになりました。
エルファルドの兵士は屈強で、帝国兵を圧倒します。
しかし、帝国兵は倒せど倒せど何度でも立ち上がってきたのです。エリザベス様とリオン様の見解では、帝国兵は魔術で動く屍のようです。
「私が出る。お前達はここで見ていろ」
魔術が施された帝国兵に一般兵では打つ手がないと判断したエリザベス様は私達を置いて戦場に向かいました。
氷魔術で次々と帝国兵を薙ぎ倒していくエリザベス様はとても美しく勇敢で目を奪われてしまいました。
「エリザベス様、お強いです。これが最上級魔術師の力なんですね」
「そうだな」
興奮したのか口に出してしまいました。
お父様もそうですが、最上級魔術師の力はまさに一騎当千。私もいつかあんな風になりたいと強くなりたいと思いました。
このままエリザベス様が帝国兵を全滅するかと思いましたが、金色の鎧を纏った兵士が現れてから旗色が変わります。
「クソが……」
「ふん、思い知ったか。同じ系統の魔術でも術者の力量が勝敗を分けるのだ」
黄金の兵士はエリザベス様と互角どころか、押されているように見えました。それを危惧したのか、リオン様が私に告げてきます。
「レイラ、俺は伯母上の助太刀に入る。お前はここにいろ」
「いいえリオン様、私も力も行きます」
「何だと」
「レイラ様があの敵と戦うようになった今、死兵を倒す術がありません。このままでは被害が大きくなってしまいます」
「……」
「お願いします、リオン様。私も彼等の力になりたいのです!」
「ふぅ……分かった。死兵はお前に任せる」
「ありがとうございます!」
リオン様は渋りましたが、私が強く出ると了承してくれました。
黄金の兵士の相手をしている間、エルファルド兵は耐えるしかありません。魔術師の私の力が必要だと判断してくれたのです。
「ただし、無茶だけはするなよ」
「はい」
「行くぞ」
「はい!」
リオン様と並んで戦場に出ます。
リオン様はエリザベス様のもとへ、私はエルファルド兵のもとへ向かいます。初めての戦場でしたが、緊張は全くありませんでした。
敵が生きている人間ではなく屍だったのもありましたが、役に立ちたいという気持ちで必死でした。
「加勢します!」
「おお、レイラ様! ご助力感謝致します!」
エルファルドの兵士たちが私を守るように壁になって帝国兵を足止めしている間に魔術を叩き込みます。
エリザベス様との鍛錬で魔術の技量も上がったお蔭で、次々と帝国兵を倒しました。このままいける! と思ったその時、帝国の魔術師が現れました。
「私は帝国軍魔術部隊、【死霊使い】のネルフィム」
「死霊使い……」
どうやら帝国の死兵を操っているのはあの魔術師みたいでした。
本元である奴を倒せば帝国兵も消えると狙おうとしたのですが、骸骨のドラゴンが出てきて押し返されてしまいます。
「レイラ様、今の内に!」
「はい!」
そんな中でもエルファルド兵が必死に魔術師を喰いとめている間、私は魔力を練り上げました。
(集中、慌てちゃダメ。自分の魔力を自然に干渉させるの)
エリザベス様に教えてもらったことを思い出し、骸骨竜の周辺の空気に私の魔力を干渉して氷属性の魔力に変換。
膨大な魔力を媒介に呪文で命令を与え、上級魔術を放ちました。
「アイシェード・ブロッサム!」
「何ぃいいいい!?」
「はぁ、はぁ、やりました!」
骸骨竜の体躯が花の氷像に覆われ、木端微塵に砕け散りました。惜しくも魔術師には回避されてしまいましたが、骸骨竜は倒せたので後は本人を直接叩くのみです。
「今が好機、魔術師を倒せ!」
「「おおおお!」」
「帝国兵よ、時間を稼ぐのだ!」
しかし、帝国兵に邪魔されている魔術師に届きません。その間に魔術師は私に向けて魔術を放ちました。
「我に従え、ダークネス・コントロール!」
「っ!? (身体が、動かない!?)」
突然身体が動かなくなってしまいました。意識はありますが、指一本動かせません。どうやら私は魔術師の魔術で身体を操られてしまったようです。
「小娘、こっちに来い!」
(身体が……)
魔術師に命令された私の身体は自らネルフィムのもとへ向かってしまいます。そして骸骨の狼に乗せられて、黄金の兵士と戦っているリオン様のもとへ連れ去られてしまいました。
「待てぇ! この小娘を死なせたくなかったらそこで止まれ!」
「レイラ!?」
「おっと、下手な真似はするなよ! この小娘は私の闇魔術で操っている。私が死んだら魔術が解けず、ただの人形になってしまうぞ」
「下衆が」
(私のせいでリオン様が!)
魔術師は私を人質として使うようです。
私はまたリオン様の足枷になってしまいました。折角強くなって今度こそ役に立てたのに、結局ご迷惑をかけてしまう。
せめて自死できればいいのに、それすらできません。悔しい、ただただ悔しかったです。
「陛下、ここは一旦引いて態勢を整えましょう」
「余に情けなく逃げろと申すか」
「憎きエルファルドを滅することが我らの悲願。それをお忘れですか?」
「……承知した。ここは貴様の案に乗ってやろう。ヨハンの子孫よ、この勝負一旦預けるぞ」
魔術師は黄金の兵士を連れて逃げ去ります。
後ろで必死に私の名を叫ぶリオン様の声が聞こえました。
(申し訳ございません、リオン様!)
魔術師に連れて来られたのは、私とリオン様が訪れた花畑が咲いている湖でした。骸骨の狼から降りると、黄金の兵士と魔術師が会話を始めます。
「まさか陛下が敗れそうになるとは思いもしませんでした。あの小僧はそれほどの力を持っているのですか?」
「うむ。ヨハンと同じかそれ以上の力を有していたぞ。ヨハンの子孫のようだ」
「なんと、噂に名高いエルファルドの【雷光】ですか。それは確実に殺さないといけませんね」
「奴にどう勝つ?」
「な~に、勝つ必要はございません。この小娘を人質に取れば殺すことなど容易です」
(何で……どうして……)
いつもいつも私はリオン様の邪魔しかできないのでしょう。
弱くて情けない自分が許せない。自分で自分を殺してやりたいと思ったのは初めてでした。
「あの小僧に一人で来させるようエルファルドに伝令を送ります。その間、陛下は魔力を回復してください」
「分かった」
(お願いです、リオン様! どうか来ないでください! 私はどうなってもいいですから!)
何もできない私は必死に祈りました。
けれど、私の祈りは届かずリオン様はたった一人で来てしまいました。私を助ける為に……。
お願いです、今からでも引き返してください!
心の中で必死に叫んでも操られている私にはどうすることもできませんでした。
「キヒヒ、どうやら言う通り一人で来たようですねぇ。余ほどこの娘が大事なんでしょうかね?」
「汚い手で触れるな、殺すぞ」
「おお恐い恐い! 分かっていると思いますが、この小娘を無事に助けたいなら私に手を出してはなりませんよ」
「わかっている」
「よろしい。では陛下、後はお任せいたしましたよ」
「うむ。ディルガイア・アルミューレ」
「キヒヒ、これでようやく悲願が叶う!」
「そうだな。だがその前に邪魔者には消えてもらおう」
「きょ?」
(えっ!?)
驚愕の事態に目を見開きました。
なんと黄金の兵士は、仲間である魔術師の首を刎ねたのです。
「何故です……陛下」
「貴様は余の戦いを穢した。その上、人質を取り無防備な相手を殺せとな。看過できない愚行だ。皇帝である余を愚弄にするのは誰であろうと許さん」
「く、そ……これだから馬鹿と組むのは嫌だったん……だ」
黄金の兵士は卑怯な魔術師とは違い高潔の魂を持った人でした。
魔術師が死んで私にかけられた魔術も解除されると喜んだのですが、残念なことに魔術は解除されませんでした。
「案ずるな。小娘にかけられた闇魔術の解き方なら余が知っている」
「それは何だ」
「真に愛する者からの口付けだ」
「はっ?」
(えっ!?)
黄金の兵士から魔術の解除方法を聞いて驚きました。
口付けで魔術が解かれる? そんな方法聞いたこともありません。でも、嘘を言っているようにも思えませんでした。
「信じておらんな。昔から闇の力を祓うのは愛の力と決まっているのだ。貴様の必死さを見るに、小娘への想いは本物であろうから条件は問題ないな」
(そんなことは……ありません)
確かにリオン様は私を助けてくれようとしています。いつもいつも、自分の命を顧みずに……。
それでも、彼が私を愛しているはずはないのです。
「行くぞ、皇帝ゲオルグ!」
「来い、リオン・エルファルド!」
リオン様と黄金の兵士が同時に剣を振るう。
大地を震撼させるような剣戟の中、打ち勝ったのはリオン様でした。
「はぁ、はぁ……」
(リオン様!)
黄金の兵士を倒したリオン様が私のもとへ歩み寄ってきます。身体はボロボロで、足を引きずっている。
そんな彼の姿に、私は胸中で泣き叫びました。
「……」
リオン様は真っ直ぐ私を見つめ、頬に優しく手を添える。
そして――私とリオン様は初めて口付けを交わしました。
「リオン様……!」
「レイラ、気付いたのか」
「はい、はい! リオン様の口付けで魔術が解けました!」
それが意味するのは、リオン様が私を愛しているという確かな証明。
リオン様は私を愛していた。愛してくれていたのです。
どんなに、どんなに嬉しかったことでしょうか。
「そうか。それはよか――」
「リオン様? リオン様!」
喜びで死にそうになっていると、リオン様が私に身体を預けて気を失ってしまいました。
「リオン様! しっかりしてくださいリオン様!」
リオン様の身体は酷い状態でした。
私は馬鹿でした。喜んでいる場合ではありません。すぐにリオン様を治療しないと。
「レイラ様!」
「レイラ嬢!」
「セバスチャン様! エリザベス様!」
リオン様を治療していると、セバスチャン様とエリザベス様が駆け付けてくれました。眠っているリオン様を馬車に運び込み、エルファルド邸に急いで戻ります。
「リオン様……私も貴方を愛しています」
「ん? レイラ嬢、今何か言ったか?」
「いえ、何でもありません」
リオン様、私は幸せです。
言葉よりも確かな気持ちを知ることができましたから。
だけど、いつか、いつかでいいのです。
リオン様の口から愛の言葉を聞きたく思います。
そして今度は私から、口付けをさせてください。
愛しております、リオン様。




