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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第三章 帰郷篇

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42話 リオンVS皇帝ゲオルグ

 



「グランドショット」


「アイスウォール」


 飛来する岩の散弾に対し、エリザベスは氷の壁を作るが凄まじい勢いで削り取られていく。戦い始めてから終始防戦一方を強いられていた。


(まずいな)


 まさかの強敵に焦りを抱く【氷血の魔女】。

 どんな敵が来ても負けない力と自信がある彼女でも、死んだ英傑が出てくるとなると話が違う。


 遥か昔、エルファルド家を本気で潰そうと自ら侵略してきた皇帝ゲオルグ。歴代最強と謳われている先祖が返り討ちにしたが、二人の戦いは今でもエルファルド家に語り継がれているほどだ。


 このままでは負ける。それだけはあってはならない。この命を差し出してでも差し違えてやる。


 エリザベスが決死の覚悟を抱いていたその時、横から雷撃が降り注いだ。


「ライトニング」


「むっ」


「リオン!? 何故ここに来た!?」


「伯母上の助太刀に参りました」


 突如現れた従弟に驚愕する。

 砦で待っていろと言っていたのに何故戦場に現れたと警告した。


「これは命令だ。お前がどうこうできる相手じゃない、今すぐ帰れ。そして父上に報告するんだ」


「伯母上は彼奴を知っているのですか」


「知ってるも何も、ずっと昔、自らエルファルド家を滅ぼそうと攻めてきた皇帝ゲオルグ様だそうだ」


「っ!?(何だって!?)」


 リオンもその話は父親から聞いていた。

 遥か昔、帝国第三代皇帝ゲオルグが侵攻してきて先祖が返り討ちにしたと。でもまさかエルファルド家最大の窮地であった敵が現代に蘇ってくるとは思いもしない。

 通りでエリザベスが押されるほどの強さだと納得するリオン。


(ん、待てよ。じゃああいつが死兵を操っている魔術じゃなかったのか)


 リオンは死兵を操っている魔術師がゲオルグだと思っていたが、ゲオルグも既に死んでいる身。つまりゲオルグを現代に復活させた魔術師が他にいるということだ。


 また厄介な……とリオンが渋っていると、ゲオルグがキレ気味に口を開く。


「無粋ではないか、戦士の戦いを邪魔しおっ――待て、貴様、まさかヨハンか!? おおヨハン! 貴様も蘇ってたいのか!?」


「伯母上、ヨハンとは?(なんか急にテンション爆上げで怖いんだけど)」


「お前……ご先祖の名前ぐらい覚えておけよ。ヨハン・エルファルドは奴を倒した歴代最強の魔術師の名だ」


「申し訳ございません(ごめんなさい、名前まで覚えてませんでした)」


 勉強不足の従弟にやれやれとため息を吐く伯母。

 どうやらゲオルグは自分のことをヨハンだと勘違いしているようなので名乗ることにした。


「俺はリオン・エルファルド。貴様を倒したヨハンではない」


「何だと? いや、確かに似てはいるが当時のヨハンより大分若いな。そうか、ヨハンではないのか……」


(何で落ち込んでんだよ。仇敵だったんだろ?)


 ヨハンでないことに何故か落ち込む様子のゲオルグに首を傾げるリオン。自分を殺した相手に再戦できず落ち込んでいるのかと思っていると、皇帝は気を取り直した風に顔を上げて、


「まぁよい。奴の代わりに子孫を葬ってやるか」


「リオン、話は終わりだ。今すぐ逃げろ」


「心配ご無用です、伯母上」


「遊びじゃねぇんだぞ! 四の五の言わずいう事を聞け!」


「瞬雷」


「ぐはっ!?」


「はっ?」


 エリザベスの思考が止まった。

 リオンの姿が消えたと思ったらゲオルグを殴り飛ばしていた。呆然とする伯母に、自身の力を見せつけたリオンが告げる。


「ご覧の通り、俺なら奴を倒せます」


「リオン、お前……」


「はっはっは! 中々やるではないかヨハンの子孫よ! やはりエルファルドの血は侮れんな!」


「皇帝様よ、女の方は儂に任せてくれんかのう」


(また出やがった、今度は誰だよ)


 強敵の出現に喜ぶゲオルグの隣に現れたのは強固な鎧を纏った老人だった。新たに現れた敵の出現にリオンが辟易としている中、エリザベスが眉間に皺を寄せて舌を撃つ。


「ちっ、あのジジイまで復活しやがったのか」


「伯母上はあのご老人を知っているのですか」


「まぁな。【風熊】のドルフ。私が若い頃にぶっ殺した帝国のクソジジイだ」


「がっはっは! また会えて嬉しいぞ氷血! 今度は左目だけでなく命を貰ってやるわい!」


「しつけーんだよクソジジイ!」


(左目の傷はあの爺さんにつけられたものだったのか)


 眼帯で隠れているエリザベスの左目には獣のひっかき傷のような傷跡がある。実はその傷は、彼女が若かりし頃にドルフと戦った時にできた傷跡だった。


 二人は何度も戦ったほどの宿敵。エリザベスが左目を差し出してやっと勝てたほどの実力者だった。


「前言撤回だリオン。私はあのクソジジイと戦る、皇帝はお前に任せた」


「分かりました」


「すまないな。ガキを死地に送り込むような不甲斐ない伯母でよ。もし死んだら私を恨みな」


「伯母上、子供であっても俺はエルファルド家の人間です。それに私は負けません」


 エルファルド家の次期後継者に危険な真似はさせたくはなかった。しかし、ドルフが現れたことで状況が一変した。皇帝と相打ちしてもドルフがいる限りこの戦いに負けてしまう。


 今はリオンの謎の自信に賭けるしかない。すぐにドルフを倒して皇帝と相打ちする。それしか方法がない。


「頼んだぞ、リオン」


「はい」


「話は終わったか? ならば存分に戦おう、エルファルドの子孫よ」


「ライトニング」


「アースウォール」


 リオンとゲオルグが戦いを始める中、エリザベスとドルフも場所を変えて何十年ぶりの死闘を繰り広げる。


「ウインドカッター!」


「アイスウォール」


「ゲイルスラッシュ!」


「ちっ、相変わらず鬱陶しい風だね」


 次々と飛来してくる風の刃に氷の壁が壊されてしまう。ドルフが得意とするのは風属性魔術。

 豪快な見た目と裏腹にトリッキーな攻撃を仕掛けてくるのが特徴だ。ドルフの老獪な戦いに手を焼いたことを思い出すエリザベス。


「ほれほれ、戦いはまだ始まったばかりじゃぞ氷血! エアリック・ストーム!」


「アイシェード・ブリザード!」


 荒れ狂う突風と吹雪が激突する。上級魔術の打ち合いは周囲の地形を変えていく。エリザベスとドルフが激しい戦いを繰り広げる中、リオンとゲオルグの戦いも壮絶を極めていた。


「ガイアード・ゴーレム」


「ボルテックス・アックス」


 岩の巨人の頭を雷の斧でたたき割るリオン。空中で身動きの取れない彼に、ゲオルグは追撃を仕掛ける。


「ガイアード・ショットブラスト」


「ジャッジメント・ボルテックス」


 飛来してくる岩の散弾を落雷によって一つ残らず消滅させる。その間に地面に着地するリオンに、ゲオルグは攻撃を仕掛けることなく楽しそうに笑った。


「ははは! 存外やるではないかヨハンの子孫め! やはり戦いとはこうでなくてはな!」


「……(あいつ、戦いが上手いな)」


 今までリオンが戦ってきた強敵の魔族や大悪魔は、ひたすら強力な魔術によるごり押しだった。そこに付け入る隙や油断があったのだが、眼前の英傑にはそれがない。


 魔術師同士の戦い方を心得ていた。力は魔族級かもしれないがそれ以上に厄介な相手だった。


(レイラも心配だし、ここは多少無理してでも決めに行くか)


「もっともっと余を楽しませろ! 貴様を殺し、今度こそ憎きエルファルドを滅ぼしてやる! ガイアード・デモンハンド」


「瞬雷」


 地面から出現する幾つもの岩の手が触手のように波打ちながら迫ってくる。リオンは雷属性による身体強化を行い岩の手を回避しながらゲオルグに肉薄する。超近距離から上位の魔術を叩き込もうとしたのだが、


「その技はさっき見たぞ」


「っぐ!?」


 魔術を発動する前に蹴りを喰らってしまう。咄嗟に腕をクロスしてガードしてダメージは最小限に留めたが、リオンの動揺は大きかった。


 今までリオンの十八番である瞬雷に対応できた者はいなかった。それをたった一度見ただけですぐに対応されてしまったのだ。ゲオルグの反射速度は常軌を逸している。


「余が二度も同じ技を喰らうと思ったのか? 笑止! 貴様が如何に愚かなのか思い知らせてやろう! ディルガイア・アルミューレ!」


(身体強化系魔術か!)


 ゲオルグが岩の鎧を身に纏い、剣を手にする。最上級魔術で構成されたあの鎧は鋼の鎧より強固なはずだ。


「行くぞ!」


「く……っ(速い!)」


 動きにくそうな鎧を纏ったのにも関わらず、挙動が遅くなるどころかスピードが数倍にも増している。

 さらにゲオルグの剣技はセバスチャン並みで、躱すので精一杯。剣が触れた地面が木端微塵になっていることから単純な膂力も底上げされている。

 走・攻・守のパラメータを全て強化する凄まじい魔術だ。


「逃げ続けて魔力切れを狙うのならやめておけ。余の保有魔力量はこの程度で尽きんぞ」


(マジかよ)


 鎧の魔術のメリットは凄まじいが、大きなデメリットもある。それは最上級魔術を発動し続けなければならないので、消費魔力が尋常ではないのだ。


 なのでリオンは短期決着を諦めて持久戦に持ち込もうとしたのだが、陛下の様子だと魔力切れは期待できそうにない。


「ふん!」


「ちっ(あれじゃ歩く兵器だな)」


 鎧を纏ったゲオルグから繰り出される攻撃は、一撃一撃が中級魔術相当の破壊力を兼ね備えている。一発でもまともに当たればひき肉にされてしまうだろう。


「どうしたヨハンの子孫、もう終いか!?」


「ジャッジメント・ボルテックス」


「そんな柔な電撃がこの鎧に効くと思ったのか!」


 上級雷魔術であっても、岩の鎧に焦げ跡をつけるくらいしかできていない。魔術に対してもかなり耐久性があるようだ。

 近づけばやられ、魔術もろくに効かない。攻防一体の鎧をどう攻略するか。



(ひらすら魔術で殴って削り切る!)



 リオンが取った手段は遠距離からの波状攻撃だった。

 度重なる魔術の行使でエンジンは十全に温まった。今なら上位の魔術でも身体がたえられる。リオンは体内の魔力を練り上げ、強力な魔術を発動した。



「ジオボルト・ドラファゴン」


「ぐぬっ」


「ジオボルト・スパイラドル」


「ぐおおおおおっ!?」


「ジオボルト・エンドバース」


「があああああああっ!?」



 最上級魔術の連続攻撃。

 鎧の強度に絶対の自信があるゲオルグは全て受け切ろうとしたが、凄まじい電撃の威力に耐えられずついに鎧が砕け散ってしまった。


「お、己ぇ……余の最強の鎧を砕く者がヨハン以外にもいたとはっ。子孫の力を見誤ったか!」


「終わりだ」


「無念」


 リオンがゲオルグにトドメを刺そうとした――その時。


「待てぇ! この女を死なせたくなかったらそこで止まれ!」


「レイラ!?」


 黒いコートを着た不気味な見た目の魔術師に、レイラを人質に取られてしまっていた。



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