↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第三章 帰郷篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/105

41 死兵

 




「帝国め、ついに宣戦布告すらせず侵攻してきたか。余ほど私の首を獲りたいとみえる」


(二千……いや三千はいるか)


 国境に設置されている砦の上から、迫り来る帝国軍を眺める。


 レイラとのデートから帰ってきたと思ったら、屋敷では帝国が侵攻してきたと大騒ぎ。花畑で俺が聞いた馬の足音は、帝国が侵攻してきた情報を知らせるエルファルド家の斥候のものだったようだ。


 はぁ、祖父母の家に来たと思ったらまた面倒ごとかよ。それも帝国との戦争とかさぁ、俺って呪われているんじゃないの。


 しかも今回は、いや今回もレイラがいる時だしさ。ま~た物語の強制力さんが介入してきたのかよ……。


「リオン、レイラ。貴族に連なる者としていずれ国を守るお前達に戦争というものを見せるために連れてきたが、今回は参加せず見ているだけでいい。分かったな」


「「はい」」


 エリザベスの配慮はありがたいけど、状況が危うくなったら俺も参加しよう。レイラもいるし、家族を見捨てたくはないからな。



「聞けぇ! 屈強なるエルファルドの兵士たちよ! 我が領地を土足で踏み荒らそうとする帝国の奴等に、二度と歯向かえぬよう完膚なきまで叩き潰すのだ!」


「「おおおおおおーーーーー!」」



 エリザベスの掛け声とともに兵士たちの士気がぐんと高まる。余りに急な侵攻だったので兵士の数を準備する時間もなかったが、それでも千は集まっている。これもエリザベスの求心力の賜物だろう。


「やれぇぇえええ!」


 エルファルドの兵士が帝国軍に向かって駆けていく。防衛線かと思っていたが、どうやらこちらから打って出るようだ。倍以上の相手に随分と強気だな。


「はあ!」


「どうせ負けるんだからいい加減諦めろや!」


「死にさらせぇ!」


(強ぇ~)


 エルファルドの兵士が帝国兵を次々と薙ぎ倒していく。一人一人の練度が違い過ぎるな。これなら数の不利も物ともしないだろう。


 これで兵士の数が本来の十分の一と言うというのだから、エルファルド家が帝国の侵攻を防ぎ続けているのも頷ける。


 ていうか帝国兵ザコ過ぎじゃないか? 殆ど棒立ちで殺られているし。

 これなら本当に俺の出番がなく、早々に決着が着くかと思われたのだが……。


「エルファルドを……殺せ……」


「こいつら!?」


「憎い、エルファルドが憎い」


「どうなっているんだ!? 何で首を飛ばしたのに生きているんだよ!?」


 開戦直後は押せ押せだったものの、旗色が悪くなっていく。

 というのも、倒したはずの帝国兵が再び立ち上がってきたり、首を刎ねて完全に殺したはずの帝国兵が動き続けているのだ。

 その様子はまるでゾンビ映画を観ているかのようだった。


「伯母上」


「気付いたか。あの帝国兵共は生きていない、動く屍だ」


 流石はエリザベス。

 提言しようとしたが、彼女も気付いていたようだ。あの帝国兵三千は全て生きていない。恐らく魔術的な何かで死人が動かされている。

 魔術が使えないエルファルドの兵士じゃ死人である帝国兵を倒せない。


「私が出る。お前達はここで見ていろ」


 そう言うや否や、エリザベスは砦から飛び降りて兵士たちの加勢に向かう。めちゃくちゃ速い……あの巨体で何でそんなに速く動けるんだよ。


「くそ、このままじゃ!」


「お前達は下がっていろ。こいつ等の相手は私がする」


「「エリザベス様!」」


 あっという間に戦線の先頭まで辿り着いた伯母は兵士たちを下がらせる。すると帝国ゾンビに異変が起きた。


「エリザベス……憎い」


「【氷血の魔女】、この恨み晴らしてくれよう」


「殺してやる!」


「ふん、どうやら私に殺された者も多くいるようだな。化けて出るほど憎んでいるか」


 目の前の敵に機械的に攻撃していた帝国ゾンビが、エリザベスに対して明らかな敵意を向き出した。

 なるほど、あいつ等は生前エリザベスに殺された兵士なんだろうな。死人なのに記憶があるのか、それとも怨念だけで動いているのかは分からないけど。


「ならばもう一度殺してやろう」


 こぞって襲い掛かってくる帝国ゾンビに対し、エリザベスはひるむことなく歯を剥き出しにして魔術を叩き込んだ。


「アイスランス」


「ギャアア!?」


「アイシクルキャノン」


「「ギャアアアア!」」


「アイシェード・ウェーブ」


「「ギャアアーーーーー!」」


 氷の槍、氷の大砲、氷の津波。

 初級中級上級と、怒涛の氷魔術で帝国ゾンビを蹴散らしていく。


 死人といえど、それが魔術によって動いているのなら魔術による攻撃を受ければ消滅する。これで帝国ゾンビは死人の優位性を失ったな。


「エリザベス様、お強いです。これが最上級魔術師の力なんですね」


「そうだな」


 猛獣のように暴れ回っているエリザベスの姿を目の当たりにし、驚嘆するレイラ。


 何故この世界の貴族の地位が高く崇められているのか。それは魔術が使える者の中でもさらに強力な戦闘魔術を使える貴族が、戦争において最強の戦力だからだ。


 エリザベスの戦いっぷりを見れば分かるが、一般的な貴族の魔術師でも百人力。

 大貴族のエリザベス、ジオ、ラドクリフのような王国屈指の最上級魔術師に関しては一騎当千の力を有している。たった一人の魔術師で戦況が覆るなんてザラにあるそうだ。


 帝国がどれだけ攻めて来ようが、大貴族エルファルド家の血を継ぐ魔術師がいる限り負けることはないんだ。


「ほう、未だエルファルド家の魔術師は屈強であるか。良きかな、それでこそ踏み潰し甲斐があるというものだ」


「アイスランス」


「アースウォール」


「ちっ……」


(何だあいつ、他の奴とは違うぞ)


 このままエリザベスの蹂躙で終わるとかと思われたが、突然変な奴が出てきた。

 しかもただの兵士じゃなく、金ぴかな鎧を纏っている。エリザベスが放った氷の槍を土の壁で防いだし、魔術師であるようだ。


 という事は、あの金ぴかが死人を操っている魔術師なのか?


「テメエが親玉かい?」


「口の利き方に気を付けろ女。余を誰と心得ている」


「悪いけど、私はアンタのことなんて知らないね」


「ふん、余の威光が次代に知られておらぬとはなんと腹立たしいことだ。知らぬなら今度こそ思い知らせてやろう。第三代帝国皇帝ゲオルグの名をな!」


「皇帝ゲオルグだって!? おいおいそりゃ何の冗談だい!」


 戦わずに何を話しているんだろうか。エリザベスが驚いているし、まさかあの金ぴかのことを知っているのか?


「ガイアード・デモンハンド」


「ちっ、アイスタワー」


 腕を組んで仁王立ちしている金ぴか魔術師の側から巨大な岩の手が二本出現し、エリザベスに襲い掛かる。


 エリザベスは氷の柱に乗って上空へ回避するが、岩の手によって柱を握り壊されてしまった。

 金ぴかは術を発動し続け、空中で体勢を崩しているエリザベスに追撃する。


「アイシェード・ブリザード」


 強烈な吹雪で岩の手を凍らせると、エリザベスは凍り付いた岩の手をスケートの如く滑りながら金ぴかに向けて魔術を放った。


「アイシクルショット」


「グランドバイソン」


 氷の散弾に対して、金ぴかは土の蛇を顕現して防御する。地面に着地したエリザベスにそのまま土蛇が襲い掛かるが、冷静に凍らせて破壊した。


 刹那、二人の魔力が一気に高まる。


「アイシェード・ゴーレム」


「ガイアード・ゴーレム」


「「ゴォオオオオオッ!」」


 同時に上級魔術の発動。

 氷と土の巨人の肩に乗るエリザベスと金ぴかが命令を下すと、巨人同士が激しい取っ組み合いを行う。

 互角かと思われたが徐々に氷の巨人が押され始め、ついに土の巨人のパンチによって倒壊してしまった。


「クソが……」


「ふん、思い知ったか。同じ系統の魔術でも術者の力量が勝敗を分けるのだ」


(まずいな……)


 あの金ぴか、相当強いぞ。

 決してエリザベスが弱い訳じゃない、金ぴかが強いんだ。果敢に攻めているエリザベスに対して金ぴかはまだまだ余力を残している。なんなら遊んでいるようにも見えた。


 信じ難いが、あの金ぴか……俺と戦った魔族と同等の力を持っているかもしれない。


 いくらエリザベスでも魔族級には勝てないだろう。見てるだけと言われたが、そんなこと言っていられない状況だ。


「レイラ、俺は伯母上の助太刀に入る。お前はここにいろ」


「いいえリオン様、私も行きます」


「何だと(何言ってるんだよ!)」


 おいおい、急に何を言い出すんだ。そんなのダメに決まってるじゃないか。

 大人しくここで待っていろと言い聞かせる前に、覚悟を秘めた顔を浮かべてレイラが口を開いた。


「レイラ様があの敵と戦うようになった今、死兵を倒す術がありません。このままでは被害が大きくなってしまいます」


「……(ぐぬぬ)」


 レイラの言う事は尤もだ。

 さっきまではエリザベスが帝国の死兵をぶち殺していたけど、まだ千ほど残っている。

 なんとか喰いとめてはいるけど、倒せない限り先にエルファルド兵の体力が尽きてしまう。死兵を倒すには魔術師が必要だ。


 それは分かっているけど……。


「お願いします、リオン様。私も彼等の力になりたいのです!」


「ふぅ……分かった。死兵はお前に任せる」


「ありがとうございます!」


 心配ではあるが、今はレイラの力も欲しい。

 あの死兵は基本ゾンビのようなノロい動きしかしないから遅れを取ることはないだろう。俺が金ぴかを倒すまで彼女に頑張ってもらうしかない。


「ただし、無茶だけはするなよ(マジでお願いだから!)」


「はい」


「行くぞ」


「はい!」


 俺はレイラと共に戦場へと駆け出したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。