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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第三章 帰郷篇

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31話 帰省

 




「リオン、ランニング100週!」


「はい!」


「リオン、腕立て伏せ100回!」


「はい!」


「リオン、腹筋100回!」


「はい!」


「リオン、上体起こし100回!」


「は……い」


「おらおらどうした! 声が小さいぞ声がぁ!」


「は、はい!」


「リオン、素振り1000回!」


「ぐっ……」


「腕が止まってるぞ! 根性見せろやリオン! そんなひ弱だから同じ相手に二度も負けるなんて恥を晒すことになるんだろ~が!」


 ひ、ひぇぇえええええええええ!

 もう勘弁してくれーーーーーー!


 何故俺が、こんな地獄の猛特訓をさせられているのかというと……。


 時は王立魔術学園の長期休暇が始まった時までに遡る。



 ◇◆◇



「リオン坊ちゃま、着きました」


「そうか。送迎感謝する、セバスチャン(長い間運転してくれてありがとうございました)」


 王立魔術学園は長期休暇に入り、俺もエルファルド家に帰省することになった。

 学園から実家までの馬車の運転をしてくれた執事長のセバスチャンにお礼を伝えると、馬車から降りる。


「お帰りなさいませ、リオン様!」


「リコ」


 わざわざ門のところで待ってくれていたのか、俺の専属メイドであるリコが笑顔で駆け寄ってくれる。

 リコと会うのも久しぶりだな。彼女の顔を見ると家に帰ってきたんだと実感できる。


「お荷物お持ちしますね!」


「ああ、ありがとう」


 サッと、俺の持っている鞄を引き取るリコ。

 一年前はおっちょこちょいなドジっ娘新人メイドだったのに、今ではしっかりとメイドが板についているみたいだ。俺がいない間にも成長していたんだなぁ……と感慨深くなっていると、


「うぎゃ!?」


「……(あちゃ~)」


「ふぇぇ、ごめんなさいぃ」


 躓き盛大に転んでしまった。

 その際、メイド服のスカートが全部捲れてリコの可愛らしいおパンツが丸見えである。

 成長はしているけど、ドジっ娘属性は相変わらずみたいだな。


「「お帰りなさいませ、リオン様」」


「ああ、今帰った」


 門を潜ると、玄関までの道にメイドと執事が左右にズラーッと並んでいる。わざわざ皆で出迎えてくれたのか。


 なんか感動するな。俺が転生してきた頃では考えられない光景だ。頑張って好感度を上げた甲斐があるってもんだよ。


 本物のリオンは、使用人たちに難癖付けたり辞めさせたりしてめちゃくちゃ嫌われていたからな。本人はそのことを凄く後悔していたけど。


「お帰りなさいませ、リオン様」


「出迎え感謝する、ストークメイド長」


 俺の一歩後ろをついてくるリコと列の真ん中を歩くと、玄関の前にいる三十代半ばの女性が出迎えてくれる。彼女はメイド長のストークで、リコの教育を担当した人だ。


「ご当主様は今、私用で留守にしております。いつ頃戻ってこられるかは分かっておりません」


「わかった。土産を買ってあるから、皆で分けてくれ」


「お気遣い感謝いたします、リオン様」


 実は帰りの道中で使用人たちにお土産を買っておいたんだ。


 甘いお菓子とか、装飾品とか、珍しい酒とかをね。ジャンルが女性の好みに偏ってしまっている感は否めないけど、男は美味い酒が飲めれば十分だろう。


 土産を買ってきた理由は、いつも頑張って働いてくれてありがとう、という感謝と、純粋にポイント稼ぎでもある。学園に行っている間に、俺がまたろくでなしに戻ったのではないかと思われないようにな。


(そっか、ジオは家にいないんだな)


 正直助かった。

 父親のジオとは予選会でカイトに負けた以来だし、絶対に怒られるもん。高官や貴族たちの前でエルファルド家の顔に泥を塗ってしまったから、どんな説教をされるか分かったもんじゃない。


 折角久しぶりに家に帰ってきたってのに、気分が落ちるようなことはしたくないよな。


「お兄様!」


「サラ」


「お帰りなさい、お兄様!」


 玄関の扉を開けて屋敷の中に入ると、妹のサラが太陽のような眩しい笑顔を浮かべて抱き付いてきた。

 俺も優しく抱きしめ、小さな頭の上にポンと手を置いて、


「元気にしていたか?」


「はい! お兄様にお会いできるこの日を待ち詫びていました! お兄様もわたくしに会いたかったですか?」


「ああ、サラに会いたかった」


「そうですわよね!」


 俺の言葉にむふ~としたり顔をするサラ。

 ああ~可愛いな~。俺の妹が可愛すぎて困っちゃうな~。サラのせいでシスコンになっちゃったな~。


「ほら、サラにお土産を買ってきたぞ」


 そう言ってポケットから装飾があるネックレスを取り出しサラの首にかけてやる。ネックレスを見るサラはパアッと顔を輝かせた。


「まぁ、とっても綺麗ですわ! ありがとうございます、お兄様!」


「ああ。リコ、お前にはこれだ」


「えっ、私も貰ってもよろしいんですか!?」


「当たり前だ。お前は俺の専属メイドだからな」


「わぁ、ありがとうございますリオン様! 一生大事にします!」


「良かったですわね、リコ!」


 リコに渡したのは装飾のついた髪留めだ。メイドの彼女は装飾品をつけられないが、髪留めなら目立たないし問題ないだろう。仕事にも邪魔にならないしね。


 二人に喜んでもらえて良かった。土産を用意しておいてよかったな。


「お兄様はしばらく家にいるのですよね?」


「ああ。長期休暇の間はな」


「やったー! ですわ!」


 俺に会えなくてそんなに寂しかったのか。お兄ちゃんもサラに会えなくて寂しかったよ。

 やっぱり実家っていいよな~、学園生活での疲れとかもう吹っ飛んだもん。


「馬車での移動で疲れましたわよね? お兄様、一緒にお風呂に入りませんか?」


「いいぞ」


「それではすぐにご用意いたします」


 正直風呂は助かる。

 長時間馬車に乗って疲れていたから、湯に浸かって身体をほぐしたい。すぐに使用人たちが準備してくれて、サラと一緒に広い風呂場に入る。俺の身体を洗うためにリコも付き添ってくれた。


「お兄様に髪を洗っていただいてもよろしいですか?」


「勿論だ。こっちに来い」


「やったーですわ!」


 甘えん坊の妹の頼みを聞くのは兄として当然のこと。俺の前にリコを座らせ、洗髪用の石鹸を泡立ててから母譲りの綺麗な銀髪を丁寧に洗っていく。


「むふ~気持ち良いですわ~」


「流すから目を閉じておけ」


「はいですわ」


 泡立った髪にお湯を注いで洗い流していく。うん、綺麗になりさらに輝いている。サラの銀髪は綺麗だなぁ。ずっと触っていたいよ。


「それではリオン様のお体は私が洗いますね」


「頼む」


 サラの次は俺の番。リコは俺の背後に回ると、石鹸のついたタオルで背中を優しくこすってくれる。


 今更だけど、腰にタオルを巻いているからね。流石に大事な所を見せる訳にはいかないよ。

 勿論リコも裸ではなく身体にタオルを巻いている。サラは何も巻いてないけど、まだ子供だからよしとしよう。


「リオン様のお背中、また大きくなりましたね」


「そうか?」


「はい。毎日洗っていた私には分かります」


(リコの胸も大きくなってると思うよ)


 みたいなセクハラのようなことは心で思っていても口にしない。まぁリオンの口からは出そうと思っても出ないだろうけど。

 成長期だもんな……俺の背中やリコの胸だって大きくなるよな。


「お背中は終わりました。次は前を――」


「前は自分でやる」


「くっ、久しぶりだからいけると思ったのに!」


 君はどれだけ俺の前を洗いたいんだ。そんなに俺の相棒に興味があるのかい? 

 因みに相棒っていうのは本物のリオンのことじゃなくて俺の息子のことだからね。


「ふぁ~あ、寝む」


 サラとリコと三人で風呂に入った俺は、疲れてしまい夕食を断って寝ることにした。恐らく豪華な食事を用意してくれていた料理長には申し訳ないけど、食べている間に寝落ちしてしまう。


 久しぶりに大きなベッドに寝転がると、強烈な睡魔が襲ってきた。学生寮のベッドは狭いし寝心地も良くなかったからな。やっぱりエルファルド家のベッドが一番だ。


 さぁ寝るぞっていう時、コンコンと扉をノックした後サラが部屋に入ってきた。


「お疲れのところごめんなさい」


「どうした」


「よろしければ、お兄様と一緒に寝てもいいですか?」


「勿論だ」


 了承すると、サラはてててっと小走りで来て俺のベッドに潜り込んでくる。あんなに可愛く頼まれて断れるお兄ちゃんなんてどこにもいないよ。


「悪いが、相手はしてやれないぞ(ごめんサラ、本当に眠いんだ)」


 サラの話し相手になってあげたいのは山々なんだけど、マジで眠いから今日だけは許して欲しい。


「構いませんわ。お兄様と一緒に寝れるだけで充分ですもの」


「そうか」


「おやすみなさい、お兄様」


「おやすみ、サラ」


 そっと抱きしめてくるサラの体温を感じながら、俺は心地よい眠りについたのだった。



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