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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第二章 学園篇

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27話 物語の強制力

 



「レイラ! どこにいる!」


 連れ去られたレイラを助けに森の中に入ったが、探し出すのは困難だ。レイラから応答があるか、何か一つでも手掛かりがあれば見つけられるんだが。

 くそ、何か方法はないのかよ!


『こっちだ』


「今の声は何だ」


 不意に誰かの声が聞こえてくる。いや、声というよりは頭に直接呼びかけるような感覚だ。


『こっちに来い』


「……」


 また声が聞こえた。そして声の主は俺を呼んでいる。

 明らかに罠だ。でもレイラを助けるためには罠と分かっていても行くしかない。

 覚悟を決めた俺は、声の導くままに森の中を駆ける。


「あれは……」


「ようやく来たか。待っていたぞ」


 開けた場所に出ると、そこには一人の男子生徒がいた。見たこともなければ、物語にも登場していないモブ。しかし、男子生徒からは怪しげな雰囲気が漂っていた。

 こいつがレイラを攫ったのか?


「レイラはどこにいる」


「そう慌てるなよ。まずはお互い話をしようじゃないか」


「レイラはどこにいると聞いている」


「話を聞けって。レイラがどうなっても知らないぞ?」


(こいつ……)


 何でこんな余裕なんだ。こっちは今すぐお前の顔面をぶん殴りたいってのに。

 落ち着け……レイラの救出が最優先だ。話しがしたいならしてやろうじゃないか。


「何を話したい」


「そうだな~。お前は何が聞きたい?」


 ぶっ殺してぇ……。


「貴様は誰だ」


「ただの男子生徒だよ……と言いたいところだが、流石に信じないか。オレは悪魔だ」


「悪魔?」


「そうだ。「知恵の塔」に存在する「幻の5.5階」の禁止区域に封印されていた悪魔だ」


 こいつの言っていることは本当なのか?

「魔術学園の無能力者」に悪魔なんて一切出てこなかったぞ。原作の隠し設定にあったのか?


「仮に貴様が悪魔だとして、どうやって封印が解かれた」


「あのカイトっつう人間のガキが「幻の5.5階」の入り口を見つけるために魔術を消してくれてよ。その効果が禁止区域の中にある、オレが封印されていた書物に偶然届いちまったんだよ。お蔭で何百年ぶりに娑婆《しゃば》に出られたって訳さ」


 何だよカイトのせいかよ。でも偶然なら仕方ないか。

 カイトだって「魔法の杖」を手に入れるために、「幻の5.5階」を見つけようと幻惑魔術を消しただけで、まさか悪魔の封印を解いてしまっていたとは思わないだろうしな。


「折角外に出てきたのに、何故そのような学生の姿をして学園をうろついている。どこへでも行けばいいだろう」


「ああ、外見《これ》か? これは変身とかじゃなくて、この人間の身体をちょいと借りているだけだ」


「借りるだと?」


「ああ。悪魔は単体で生きることはできないからな。人間と契約することでオレはこの世界を自由に動け回れるんだ。オレだってできるならさっさと学園《こんなところ》から去りたいんだけどな」


 なるほど、悪魔の話が事実なら男子生徒は本物で操られているだけなのか。そして学園を去らない理由は、人間と契約しなければならないから。

 でもそうなると、腑に落ちないことがある。


「ならばどうしてその学生の身体で学園を去らない」


「言っただろ? 身体を借りているだけだってな。このガキとは契約してねーんだよ。契約するつもりもねーしな」


「何故契約しない」


「契約ってのは強固な縛りでな。一度契約すると契約者の人間が死ぬまで解除されないんだ。オレはこんなザコと契約なんてするつもりはねぇ。強ぇ人間と契約するんだ。だから予選会ってのでオレに相応しい人間を探していたんだよ」


 こいつ……学生の身体を借りて予選会の観客席にいたのかよ。全く気付かなかった。あの場には俺以外にも優秀な魔術師がいた。魔術師の最高峰であるダニエル校長でさえ欺いたのか。


「その予選会でオレに相応しい人間を見つけた」


「それが俺か」


「あたりだ、よく分かったな」


 そりゃ分かるだろ。明らかに俺を誘い出してんじゃねえか。面倒なことにレイラまで攫ってよ。


「何故俺なんだ」


「実はカイトも狙ってたんだぜ。でもダメだった。アイツの身体は特殊過ぎてオレの身体が入らねぇ。契約した瞬間に消されちまう。まぁ、元々あ~いう正義感ぶったいけ好かないガキは気にいらねぇから、契約するつもりはなかったんだけどな」


 魔術を消す力を持つカイトの身体では生きられないってことか。やっぱカイトの力はチートだな。


「リオン。オレはな、最初《はな》っからお前に目をつけていた。お前がカイトに抱く憎しみや怒りといった負の感情は悪魔にとって最高の餌なんだ。保有する魔力量も最強クラスだしよ。お前はオレの契約者に相応しい逸材だ」


「全く嬉しくないな」


「そんな冷たいこと言うなよ」


「単に俺が騙しやすいと思っただけだろ」


「お、よく分かったな。悪魔が人間と契約する際はそいつの欲をつけねらう。欲が深ければ深いほどコロッと騙せるのさ。逆に欲がなくて良い人間は中々騙せねえ。まぁ悪魔としても、良い人間よりもお前のような悪い人間の方が居心地が良いんだよ」


 大体の悪魔はそんな感じだろーが。あとさ、人を悪い人間扱いすんのやめてくれる? 確かに悪役貴族ではあるけども。


「ならば最初から俺を狙えばいいだろう。何故レイラを巻き込んだ」


「オレもそうしたかったんだが、貴様の身体を何かが守ってやがってよ。直接仕掛けるのは無理だった」


(守った? いったい誰が……まさか!?)


 俺を守っている人間なんて一人もいないと思ったが、一人だけいるじゃないか。



(リオン、お前が俺を守ってくれていたんだな)



 本物のリオン・エルファルドは俺の中にいる。魔族との戦いで魂が消滅してしまったのかと思っていたが、やっぱり生きていたんだ。

 ありがとうリオン……お前は頼りになる相棒だよ。


「だから小細工したんだよ。ナナとかいうガキに、お前を森に誘い込むように仕向けた」


「ナナまで操っていたのか」


「そうさ、アイツの言葉ならお前も信じるだろ?」


 ああ、まんまと騙されたよちくしょう。


「何故わざわざ森に誘い込んだ」


「そらお前、オレの存在を誰にも知らせないために決まってんじゃねーか。森《ここ》なら何が起きても誰にも気付かれない。お前の身体を乗っ取り、リオンとして色々と楽しませてもらうぜ」


 こいつ、俺の身体を乗っ取って好き放題するつもりなのか。こんな悪魔を自由にさせる訳にはいかない。学園を危機に晒してしまう。


「それならレイラを解放しろ。彼女は関係ない」


「それは無理だ」


「何故だ」


「オレはお前と契約する際に、50/50(ヒフティーヒフティー)の契約を交わすつもりはねぇ。100/0の、完全にオレが主導権を握る契約だ。お前の身体を乗っ取るためにな。だがその契約を交わすには、オレとお前が決闘を行う必要がある」


「決闘だと?」


「そうだ。太古から存在する人間と悪魔による「闘いの儀」。勝った者が願いを叶える。知らないなら教えてやるよ。お前等人間が行っている決闘はな、「闘いの儀」を元にできたんだぜ」


 知らなかった、魔術師の決闘にそんな起原《ルーツ》があっただなんて。

 確かに魔術師が行う決闘も、何かを賭けて戦うもんな。


「ただ、命を賭けて決闘してくれって言ってもお前は絶対に頷かね~だろ?」


「当たり前だ」


「だから、お前を土俵に上げるために必要なのがレイラっつう人質だったんだよ」


「俺が断ればどうなる」


「そんなこと言っていいのか? 大切なレイラが傷ついても知らねーぞ?」


 悪魔がそう言った直後、奴の近くにレイラの姿が現れる。

 まさか最初からレイラはそこにいたのか?


「レイラ!」


「おっと動くなよ! 少しでも動けばこいつの顔に醜い火傷を負わせるぞ!」


「きゃ!」


「やめろ! やめてくれ!」


 悪魔がレイラの首を鷲掴みながら脅迫してくる。


(くそ……何でこうなっちまうんだよ)


 折角魔族からレイラを守って、顔に傷を負うことを防げたのに。

 今度は悪魔だって? そんな物語にも登場してない奴がレイラの顔を傷つけようってのか。ふざけんじゃねえ。



(まさか……物語の強制力だとでも言うのか!?)



 物語のレイラは顔に傷を負っている。

 本来ならこの後のイベントで彼女に「醜い顔だ」と言って婚約を破棄する予定だった。だが魔族から助けたことでレイラの顔には傷がない。

 今からでも物語に沿わせるように、物語が強制的にレイラに傷を負わせようとしているのかもしれない。


(させない。そんな事させてたまるか!)


 レイラは絶対に俺が守る。相棒と約束したんだ。


「さぁ、オレと戦えリオン! 戦わないと大切なレイラの顔がどうなっても知らねえぞ!」


「リ、オン様……やめてください。私のことは放っておいて。どうか、お願いですから」


「わかった。戦おう」


「リオン様!」


「ははは! そうこなくっちゃなあリオン!」


 少しだけ待っていてくれ、レイラ。

 ささっとこいつをぶっ殺して助けてやるからな。


「早速契約内容の確認だ。オレとリオン・エルファルドが戦い、オレが勝ったらお前の身体を貰い受ける。それでいいな?」


「ああ」


「万が一だが、お前が勝ったらどんな願いを叶える? お前が望むのならどんな願いでも叶えてやるぜ」


「俺もいいのか?」


「当たり前だ。これは神聖で対等な儀式だからな」


 ふ~ん、そういうところは律儀なんだな。

 どんな願いでも叶えられるね~。だったら俺の願いは一つだ。


「俺が勝てば、貴様の存在を完全に消滅させる」


「はっ? そんなことが願いでいいのか? どんな願いでも叶えられるんだぞ?」


「ああ。この世に貴様のような存在を野放しにはしておけないからな」


「はは、やっぱ面白ぇなリオン! いいじゃねえか、勝った方が生き残り、負けた方が死ぬ! 戦いに相応しい単純《シンプル》で原始的《プリミティブ》な願いだ!」


 悪魔は愉しそうに嗤うと、レイラを放り投げ両手を大きく広げる。その瞬間学生が気絶するように倒れ、彼の中からブワッ! と炎の魔人が出現した。


 なるほど、あれが悪魔の本体か。


「これにて「闘いの儀」の儀式は完了した! さぁリオン、後はお互い名乗りをあげれば始まりだ! オレの名はイフリート! 邪悪にして魔炎を操る大悪魔だ!」


「大貴族エルファルド家が嫡子、リオン・エルファルド」


「行くぞリオン! お前の身体、このオレが貰い受ける!」


「来い!」


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