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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第二章 学園篇

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24話 予選会

 




「優勝するのは俺だ!」


「いえ、私よ!」


「楽しみだな~。誰が優勝するのかな~!」


 魔術大会の予選会に参加しようと、ゴーズとクラッドを連れて決闘場へと訪れる。決闘場の広場には沢山の生徒がいて大いに盛り上がっていた。

 そりゃ全学年を含めた学園の一大イベントだ。盛り上がるに決まってるよな。


 予選会に参加しようと、生徒達が次々と決闘の盃に自分の名前を書いた用紙を投げ入れていく。参加表明する者はやる気に満ち溢れ、参加しない者も野次馬になって盛り立てていた。


 因みに用紙を盃に入れると、盃に入っている水に溶ける仕組みになっている。水は名前を記憶し、戦う生徒を選ぶ。用は決闘の盃自体が対戦表だと考えてくれていい。


「やはり君も出るんだね、リオン」


「それはこちらの台詞だ。二人も出るのか」


「うむ。我らは大貴族だ、出場するのは当然のこと」


 声をかけてきたのは、俺と同じ大貴族のクラインとバッカスだ。俺達はまだ一年生のひよっこだが、大貴族のメンツがあるため出場しない訳にはいかない。


 彼等の実力ならいい線いくと思うが、優れた二、三年生には敵わないだろう。というか俺、予選会を勝ち残る代表四名をもう知っちゃってるんだよね……。


「ささ、リオン様もどうぞ!」


「ああ」


 クラインとバッカスが決闘の盃に用紙を入れたのを見てゴーズが促してくるので、俺も用紙を盃に入れた。

 直後、背後がザワつき群がっていた生徒がモーセの如く縦に割れる。その先からカイトが、ユイとガイとディックを連れてやってきた。


(来たか)


 主人公一行様のご登場だ。

 俺は両手を広げて悪役貴族リオンになりきり、目の前に来るカイトに話しかける。


「おやおや、この場に相応しくない奴がいるんだが、俺の目がおかしくなってしまったかな」


「そこを退いてくれ、リオン」


「退け? まさかとは思うが、偉大なる魔術師(アークウィザード)を決める神聖な魔術大会に、魔術も使えない奴が出場するつもりじゃあないだろうな?」


「ああ、俺は魔術大会に出場する」


「くく、はーはっはっは!」


 カイトの言葉を聞いた俺は手で顔を覆い、腹を抱えて笑う。こういう如何にも悪役っぽい笑い方初めてやったけど、案外楽しいもんなんだな。

 悪役を演じるのが楽しくなってきた俺は、ノリノリで口を滑らせる。


「図に乗るなよ平民。この大会は魔術師による魔術師のための大会だ。魔術師でもない平民の貴様には出場する資格はないんだよ。分かったらとっとと消え失せろ」


「そう言って、また俺に負けるのが怖いのか?」


「何だと?」


「大勢が観ている中で俺にまた負けたら恥ずかしくて死にたくなるんじゃないか」


「き、貴様~~~! (うぜぇぇええ!)」


 カイトうっぜぇぇえええ!

 カイト目線の読者からしたらリオンがめっちゃウザかったけど、リオン目線のカイトもかなりウザいぞ。

 リオンの身体に引っ張られてカイトに悪感情を抱いているってのもあるんだけど、カイトも中々に煽りスキルが高いんだよな。


「俺に出場資格が無いのか、盃に入れてみれば分かるさ」


 そう言ってカイトは俺の横に通り過ぎて盃に用紙を入れる。決闘の盃は、出場資格が無いと判断されたら用紙が水に溶けることなくペッと吐き返される仕組みになっている。

 カイトの名前が書かれた用紙は、盃に吐き出されることなく水に溶けた。


「どうやら俺にも出場資格があるみたいだな、リオン」


「お、己ぇぇぇええ!」


「もしお前と当たることになったら、その時はよろしくな」


 俺の肩に手を置きながらそう告げるカイトは、喜ぶ仲間たちを連れて去って行く。マジで煽りスキル高いぞカイト君。思惑通りだとしても一瞬ぶん殴りそうになったわ。


「相変わらずリオンはカイトに当たりが強いね。彼が気に入らないのは分かるけど、普段の君らしくないんじゃないかな」


「エルファルド家は平民を良く思っていないことは知っているが、放っておけばいいだろう」


「気にするな。俺の都合だ」


 優しく宥めてくれるクラインとバッカスに、俺は突き放すような言葉で返した。


 彼等は俺の悪役っぷりにドン引きすることなく、ただ戸惑っている。それは日頃の俺が悪い奴じゃないと知っているからだ。


 普段は冷静で善人の俺と、カイトと会う時だけ暴虐な悪人になる俺の激しいギャップに戸惑うのも無理はない。二人だけじゃなく、普段の俺を知っている貴族クラスの生徒やナナも疑問を抱いているだろう。


 今の所はカイトが平民であることや魔術を消せることが気に入らなくて目の敵にしている、という理由で通しているけど、いつまで通用するかは俺にも分からない。


 本物のリオンならば怪訝に思われることはないのだろうけど、常日頃までリオンになりきるのは俺には無理だ。めっちゃ疲れるしな。


 そもそも、悪行を犯した本物のリオンが後悔してやり直しをしたのだから、俺が二回目でも悪行をする訳にはいかない。物語通りに進ませようと、仕方なくカイトに対しては悪役貴族を演じているだけだ。


「リオン様、今度こそカイトをぶっ飛ばしましょう!」


「あんな奴けちょんけちょんにしてください!」


「ああ、期待していてくれ」


 カイトを倒せとゴーズとクラッドが応援してくれる。

 二人には申し訳ないが、俺はリオンに負けるんだよね。


 物語通り進めるとはいえ、わざと負けるのは気が引けるな~。ゴーズとクラッドが純粋に応援してくれるだけに、彼等の期待を裏切ってしまうのが辛いよ。



 ◇◆◇



「さぁついにこの日がやって参りました! 各国の代表者で争い、偉大なる魔術師(アークウィザード)の称号を手に入れる魔術大会! そして今日、我が学園から魔術大会に出場する代表者四名を決める予選会が始まるのです!」



 ――わあああああああああああああ!!



「実況は私、三年生キアラ・ベッラが務めさせていただきます! 解説はアシェリー教頭先生に来ていただいております!」


「よろしくお願いします」


 テンション爆上げのキアラと盛り上がる生徒達とは反対に、老女のアシェリー教頭は至って静かだった。なんなら五月蠅そうに顔を顰めている。


(お祭り騒ぎだなぁ)


 魔術大会予選会当日。

 試合が行われる決闘場の客席は満席。先生や生徒は勿論のこと、貴族や宮廷勤めの魔術師など多くの来賓が訪れていた。


 予選会で優勝すれば宮廷魔術師が確約されるし、優勝しなくとも優秀な生徒には唾を着けておけるからな。

 流石に王様は来ていないが、それに次ぐ権力者の顔ぶれも見える。以前エルファルド家を訊ねてきた宰相とかな。当たり前だが、俺の父であるジオもこの場に来ていた。



「皆、正々堂々戦うように」



 校長のダニエル・ゴッドヴァルトが短く開会の挨拶を終えると、再びキアラがマイクを握った。


「さぁ、栄えある一試合目に出場する選手を紹介しましょう! 三年生リヒト、一年生クライン・クラディウス!」


 キアラが生徒の名前を呼ぶと、出場出入口からクラインとリヒトが出てくる。中央で対峙する二人の側には戦闘魔術の教師のスレインがいた。彼が予選会の審判を務めることになっている。


「ルールは決闘と同じだ。戦い方は何でもあり。武器の使用も許可する。だが、魔術師を名乗るなら魔術を使って戦え。勝敗はどちらかが戦闘不能となるか、降参するかだ。危険と判断したら私が止める。問題ないな」


「ないっす」


「ありません」


「校長や来賓の方々が見ている。無様な試合を見せたら承知しないぞ」


「準備は整いましたかぁ!? それではいきましょう! 魔術大会予選会一試合目、開始です!」


 試合が始まり、生徒達が「いけ~!」とか「そこだ~!」と盛り上がる中、渦中の二人は激しい魔術戦を繰り広げていた。


「ホーリーレイ!」


「アクアミラー!」


「お~~っと! クライン選手の魔術が弾かれた~!」


「僕の魔術が!?」


「水は光を反射できるんだよ、後輩」


 光線を放つクラインに対し、リヒトは眼前に水鏡を発現して跳ね返す。一年生の学園案内も任され、俺とカイトの審判をやってくれた三年生のリヒト。彼は平民でありながら優秀な魔術師だ。


 クラインも珍しい光魔術の使い手だけど、経験豊富のリヒトでは相手が悪かった。なにせリヒトは四名の代表者まで勝ち残る猛者だからな。


「勝負あり! 勝者リヒト!」


「僕の完敗です、先輩」


「一年の割りには強かったぜ。来年が楽しみだな」


 クラインが力負けし、リヒトが勝ち上がる。一試合目に相応しい見応えのある戦いを繰り広げ、スポーツマンシップ溢れる握手を交わした二人に観客席から盛大な拍手が送られた。


「それでは二試合目に参りましょう! 次の対戦は――」


 その後、着々と試合が行われていく。

 勝ち上がるのは基本的に上級生。入学したばかりの一年生が二、三年生に勝つのは難しいからな。一年生の中で勝利したのはバッカスだけだった。


 そしてついに、俺の出番がやって来る。


「さぁやって参りました、今大会の注目カード! 片方は大貴族エルファルド家が長男、リオン・エルファルド! その対戦相手は~、学園で話題沸騰中! 今やその名前を知らない者はいない! 魔術が使えないが魔術を消せる、カイト~~!」


「「……」」


「あ、あれれ~~~?」


 俺とカイトの登場に、今までと打って変わって会場がシンと静まる。観客の無反応にキアラが困っている中、来賓の方がザワついているのが視界に入った。


「あっちがエルファルド家のろくでなしか」


「何でも決闘で平民に負けたそうですぞ」


「なんと! それは誠か!? 不甲斐ない奴め、貴族の面汚しが」


「向こうにいるのが、ろくでなしを負かした例の魔術を消せる平民です」


「ほう、あやつが……」


「おいジオ、ついに息子の番だな」


「気安く話しかけるな」


「固いこと言うなよ~。一緒にリオンを応援しようぜ。おいリオ~ン、頑張れよ~」


(みたいな話してるんだろうな~)


 流石に話し声は聞こえないが、お偉いさん方がカイトに興味津々なのは一目瞭然だし、レイラの父ラドクリフ・ベルンツベルンが隣に座っているジオに笑いかけているのを見てどんな内容なのかは手に取るように分かる。

 てかラドクリフも来てたのか。それもジオの隣だしよ。ジオも嫌ってる相手に絡まれて可哀想だな。



「貴様も運が無かったな。多くの面前で恥を晒すことになるとは」


「そんな事言っていのかよ? 俺に決闘で負けたこと、もう忘れたのか」


「抜かせ、あの時は貴様のふざけた能力に油断しただけだ。今度こそ完膚なきまでに貴様を倒してやる」


 俺とカイトが一触即発のやり取りをしていると、審判のスレインが眉尻を上げて注意してくる。


「二人とも口を閉じて配置につけ」


「はい」


「リオン。お父上や貴族の方々がお前を見ている。無様な姿を見せることだけは許さん」


「勿論です、スレイン先生」


 スレインに釘を刺された俺は、静かに頷く。

 まぁ見ててくださいよ先生、俺がいかにしてカイトに負けるかをね。


(それにしても、俺が負ける所をジオやラドクリフに見られるんだよな~)


 正直最悪な気分だ。

 物語のためとはいえ、身内に恥を晒してしてしまうんだからな。ジオに関してはエルファルド家の名に泥を塗ってしまう。この後他の貴族達から笑い者にされるだろうし、めっちゃ怒るだろうな。

 今の内に謝っておきます。本当にごめんなさい。


 それとリオン(相棒)、お前にも謝らなきゃな。

 カイトに二度も負けるような真似をさせてごめんな。


「試合開始!」



 そしてついに、リオン(俺)とカイトの重大イベントが幕を開けた。



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