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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第二章 学園篇

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21話 未登場のナナリー

 




 決闘でおじゃんになった上級生による学園の見学も済ませ、本格的な学園生活が始まった。


 魔術の授業、魔法生物の授業、魔道具の授業、魔法薬の授業など、学ぶことは沢山ある。

 その中でも比率が多いのは圧倒的に魔術の授業だ。


 魔術には大きく分けて二つある。

 戦闘魔術と。

 一般魔術だ。


 戦闘魔術は「サンダー」や「ファイア」といった攻撃魔術や「フレイムシールド」や「アースウォール」といった防御魔術のことを言う。

 さらに戦闘魔術は初級・中級・上級と脅威度や難易度で区分されているんだ。


 対して一般魔術は「火を起こす魔術(スタティファイ)」や「明かりをつける魔術(ライティン)」、「物を運ぶ魔術(キャリティ)」といった、生活で使う便利な魔術のことを言う。


 死亡フラグを回避するために強くなることを優先した俺は、これまで戦闘魔術だけを学び鍛え、一般魔術はノータッチだった。

 だから一般魔術の授業は新鮮だし楽しい。ぶっちゃけ戦闘魔術よりも一般魔術を使っている時の方が自分を魔術師っぽく感じられた。


 そんな感じで学園生活を楽しみつつ、カイトの情報を手に入れるために誰を協力者にするかを悩んでいた俺だったが、思わぬ所から協力者を得ることになる。


「ちょいとええですか」


「何だ(誰だこの子、モブか?)」


 授業が終わって「知恵の塔」の廊下を一人歩いていた時、背後から声をかけられる。振り向くと、見たことがない女子生徒がいた。


「わてはナナリーいいます。あっ、ナナリーとか可愛らしい名前は身体がむずかゆうなるんで、気軽にナナって呼んでや。よろしゅうおたの申します、リオン・エルファルドはん」


「……ああ」


「ところでリオンはん、ワテがあんさんの協力者になったりまひょか?」


「……(はっ?)」


 女子生徒――ナナリーことナナの突然の宣言に、俺の頭は酷く混乱した。

 いきなり自己紹介したと思ったら協力者になるだって? 何なんだこいつ……何故俺が協力者を求めていることを知っているんだ。

 いや焦るな、落ち着くんだ。まずはこいつから色々聞き出そう。


「どういうつもりだ」


「そう警戒せんといてや。わてはただ、リオンはんに協力したいだけやで」


「協力とは何のことだ」


「も~いけずやな~わかっとる癖に~。欲しいでしょ? カイトはんの情報」


「――っ(こいつ、そこまで!)」


 マジで何なんだこいつ。何で俺がカイトの情報を欲しがっていることを知っているんだ。まだ誰にも相談してないのに、どうやってそんな考えにたどり着けるんだよ。

 もしやこいつ……俺の敵なのか?


「驚くのも無理ありまへん。せやけど、冷静に考えれば分かることやで。カイトはんは平民やけど、魔術を消すっつう聞いたこともない力を持ってはる。そんなカイトはんに決闘で負けて赤っ恥をかいたリオンはんは、カイトはんや力のことが気になってどんな人間なのか知りたくてたまらんのちゃう? あ~そうや、ユイはんがカイトはんの幼馴染ってこともおまけでな」


「……よく知っているな」


「わてはマーマン商会、マーマンの娘。商人の娘やねん。商人が一番大事にしているのは何なのか、リオンはんは分かりまっか?」


「……情報か」


「その通りや。せやからわてがリオンはんの情報を知っているのも、リオンはんが協力者を必要としていることも分かってるっちゅうことやな」


 マーマン商会か……聞いたことないな。

 確かに話の筋は通っているが、肝心なことが抜けている。


「何故俺に近づいた。協力者となると言うが、貴様は何を求める。商人が無料《タダ》で協力しないことくらいは俺にも分かる」


「そんな怪しまんといて~ね。わてはただ、大貴族エルファルド家の坊ちゃんとのツテを作りたいだけやねん」


「気に入らない答えだな。大貴族なら俺以外にもいる。平民に寄り添う商人側のアストレア家やベルンツベルン家に近づいた方が得策だ。それこそ、俺ではなくカイトとツテを作ってもいい」


 この年は大貴族が五人もいる黄金世代。クライン、バッカス、レイラ、ユイ。大貴族とツテを作りたいと言うならその四人の誰かに近づけばいい。それか、稀有な能力を持つ出世頭のカイトの仲間になるとかな。

 わざわざ平民を嫌っている悪役貴族の俺を選んだ意図が見えないんだ。


「リオンはんが納得できないのも無理あらへん。せやけどな、あんさんを選んだのは個人的な理由やねん」


「それは何だ」


「リオンはん、各貴族に税を下げさせるように言ってくれたやろ? あれな、商人としてはほんま助かってん。客が潤えば店も繁盛する。店としても収める税が少なくなったし、ほんまに感謝してんねん」


(何故俺がさせたことを知ってるんだ。マジで恐いんだけど)


 貴族の子供を襲撃してきた平民たちが、不当な税によって今日生きるのも苦労していることを知った俺は、父のジオに頼んで不当な税を徴収している貴族に税を適正にするよう訴えた。


 ジオは平民が大嫌いで憎んではいるものの、決して不当な扱いはしていない。平民を苦しめたら、平民を大事にしていた亡き妻に顔向けできないという想いからだろう。エルファルド家は悪役ではあるが、悪徳貴族ではないんだ。


 問題なのは、各貴族に直接話を通したのはジオなのに、税を下げさせたことが俺だとナナが決めつけていることだ。


「リオンはんのお父様が悪徳貴族の連中を脅したことは知ってんねん。せやけど、平民が飢えて苦しんでいるのを知っているのは、パーティー中に襲撃された貴族の子供の中だけや。そんなら自ずと、お父様に進言したのはリオンはんってことになるやろ?」


(情報の入手力も凄いけど、考察力も大したもんだ。商人ってみんなこうなのか?)


「沈黙は答えってことでええんやな?」


「ああ」


 誤魔化す必要もないので肯定した。するとナナは嬉しそうな顔を浮かべてパンッと手を叩いて、


「ほな、わてがリオンはんの協力者になるってことでええんやな?」


「いいのか? 決闘でも醜態を晒した落ち目の俺と組んでも貴様に得は無いと思うぞ」


「確かにリオンはんはエルファルド家のろくでなしって呼ばれてるぐらいダメな貴族のお坊ちゃんやで」


 こいつ、大貴族の俺に物おじせずよくそんなことが言えるな。

 過去のリオンだったらブチ切れて死刑を言い渡していたぞ……。


「せやけど、心を入れ替えて真面目になったって噂も聞いておる。半信半疑や思っとったけど、色々な情報を精査したところ噂はほんまだった。ほんでわては確信したんや。リオンはんは落ち目やのうて、出世頭やってな」


「一つ聞きたい。協力すると言ったが、どうやってカイトの情報を手に入れるんだ」


「あっ、しもうた! リオンはんはわてなんかのこと知りまへんよな。うっかり言うの忘れとったわ。わてはカイトはんと同じ一年平民クラスやで。せやからカイトはんの情報はすぐ側で手に入れらまっせ」


(こんな濃ゆい奴がカイトのクラスにいたの!?)


 物語に登場していないキャラだから全然気付かなかった。

 っていうかこいつ、何で登場してないんだよ。結構可愛くて、糸目で、関西弁を喋るいかにも裏切りそうな個性マシマシなキャラが物語未登場のモブだなんておかしいだろ。


(どうする)


 ナナを協力者にするメリットはある。情報に長けているし、平民クラスではあるが物語未登場なことからカイトと接触しないことが確定しているキャラでもある。協力者にするには打って付けの人材だ。

 ただ一つ不安があるとすれば――、


(こいつ、裏切りそうなんだよな)


 だってさ、情報に長けていて糸目で関西弁のキャラなんて絶対裏切るじゃん。逆に裏切らない方がおかしいよ。

 でもまぁ、裏切ることを前提に考えていれば、ナナと組むのは有りだな。


 よく考えた俺は、ふぅ……と短く息を吐いて、


「お前の案に乗ろう。俺の協力者になってくれ、ナナ」


「流石リオンはん! 話が分かるやっちゃで!」


「マーマン商会の名前も覚えておこう」


「ほんまでっか! ありがとぉ、リオンはん!」


「おい、くっつくな」


 突然抱き付いてくるナナ。あれ、この子結構胸があるな。


「なんならわて、リオンはんの側室や愛人になってもええんやで」


「調子に乗るな」


 耳元でふざけたことを言ってくるので、ナナを押し返す。

 この子本当に十五歳? 損得で動き過ぎだろ。商人の子供って皆こんな感じなのか?


「冗談や冗談! ほな、これからよろしゅう頼んます!」


「ふぅ……(どんと疲れたな)」


 笑顔で去っていくナナとは反対に、俺は心の底からため息を吐いた。

 協力者として申し分ないから組んだけど、彼女と絡むのは疲れるな。これも死亡フラグを回避するためと割り切って我慢するしかないか。


「リオン様」


「――っ!?」


 突然声をかけられ、心臓が勢いよく跳ねる。後ろを振り向けば、死んだ表情のレイラが立っていた。


「レ、レイラか……」


「今お話ししていたのって、私のクラスのナナリーさんでしたよね。仲が良さそうに見えましたが、彼女とはどんな関係なんですか?」


「う……」


 ずいっと怖い顔を寄せてくるレイラに一歩下がる。

 何だか不倫しているところを妻に問い詰められている気分だ。いや、実際レイラは俺の婚約者なんだし、問い詰める権利はあるのか。


「な、何でもない」


「本当ですか?」


「ああ」


「はぁ……分かりました。リオン様がそう言うなら信じます」


 納得してもらえて良かった~と安堵していると、レイラは何故か身体をもじもじさせ、頬を赤らめながら口を開く。


「リオン様は“まだ”私の婚約者なのですから、他の女性とデレデレするのはお控えください」


「分かった。気をつける(別にデレデレがしてないんだけどな)」


「ふふ。わかってくれればいいんです。いきましょう、リオン様」


 と言い、俺の隣を歩くレイラは怒っていた最初と打って変わって嬉しそうな顔を浮かべている。

 レイラが怒っていた理由って、ナナと話をしていたから? ってことは嫉妬してたってことか?



(レイラがリオンに嫉妬とか……そんな訳ないよな)


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