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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第二章 学園篇

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19話 魔術学園の無能力者

 



「入学初日に決闘とはリオンも馬鹿なことするねぇ。少しは変わったと思っていたけど、僕の見込み違いだったようだ。バッカス、君はこの勝負どう見ているんだい」


「パーティー襲撃事件のリオンは素晴らしい活躍だった。恐らく魔術の腕も優秀だろう。魔術を使えない平民の彼では万が一にもリオンには勝つことは不可能だな」


「うん、僕もそう思う。残念だけど、彼は学園を去ることになるだろうね」


「リオン様ー!!」


「平民なんかコテンパンにやっつけちゃってください!」


「カイトー! 負けたら許さないんだからねー!」


(ギャラリーが騒がしいな)


 決闘場には、貴族と平民クラスの新入生六十人が集まっている。クラインやバッカス、ゴーズとクラッドなど貴族クラスの生徒は俺の背後、ユイとレイラ、弱小貴族と平民はカイトの背後の客席に座っていてそれぞれを応援している。


 俺とカイトは決闘場の中心で向かい合っていて、横には上級生のリヒトがいた。


「決闘を始める前に、双方が賭けるものを確認する。リオンが勝った場合はカイトの退学。カイトが勝った場合は学園の在学を認める。二人とも間違いないな?」


「ああ」


「はい」


「よし。それじゃあ決闘のルールを教えておく。戦い方は何でもあり。魔術を使ってもいいし、拳でぶん殴ってもいい。勝敗はどちらかが戦闘不能となるか、降参するかだ。大抵の怪我は見過ごすが、生死に関わる場合は俺が判断して止める。いいな?」


「問題ない」


「それでいいです。あっ先輩、剣を使ってもいいですか?」


「剣? あぁ、そういや魔術を使えないんだったな。いいぜ、刃を潰してる剣なら使用を許可する」


「ありがとうございます」


「なら俺も使わせてもらおう」


「OK。それじゃあ二人とも、少し距離を取って待ってろ。剣を持ってきてやる」


 決闘の準備が整ったので、俺とカイトは互いに距離を取って対峙する。その間にリヒトが持ってきてくれた剣を俺達が受け取ると、彼も俺達から距離を取った。


「これより、カイトとリオン・エルファルドによる決闘を開始する! 始め!」


「サンダー」


 開幕直後、俺は左手をカイトに向けて初級雷魔術を放つ。

 まずは小手調べだ。さぁ、お前の力を見せてみろ。


「ふっ!」


 迫り来る雷魔術に対し、カイトは逃げる訳でもなく刃の潰している剣で“雷魔術を斬った”。


「何だと!?」


 と驚いたふりをする。そんな俺とは違い、今の不可解な光景を見ていた生徒たちは目を丸くしていた。


「はっ?」


「おい、あの平民……今何をしたんだ?」


「分からない。魔術を斬ったように見えたけど……」


「そんなことあり得るのか?」


 カイトが魔術を斬った光景を見て、新入生たちが狼狽する。無理もない。魔術を斬るところなんて今まで見たことなかっただろうからな。


 アレがカイトの特別な力だ。まぁ厳密に言えば魔術を斬ったのではなく、“魔術を消したんだけどな”。


「魔術学園の無能力者」は、タイトルの通り“能力が無い者”という意味ではない。

 本当の意味は、“能力を無《む》にする者”である。


 簡単に言えば、カイトは魔術を消滅させる、無に帰す力を持っているんだ。よくある無属性の魔術とかではなく、カイトの力は完全なる異能。


 正直言って、魔術が全てのこの世界では最強のチートと言っても過言ではない。正に主人公が持つべき力だろう。


 貴族からしたら魔術を消すことができるカイトは異物であり、最大の天敵だ。その為カイトは貴族から疎まれ、この物語の敵である純血派の闇の魔術師を筆頭にラスボスから命を狙われてしまう。平民ってことも含めて周りは敵だらけってことだな。


 だが、学園の中にいる間は安全だ。何故ならダニエル・ゴッドヴァルトが目を光らせカイトを守っているから。因みにカイトを学園に誘ったのも入学させたのもダニエルである。


 ダニエルがいる学園には敵もおいそれと手出しができない。それでもカイトを亡き者にしたい敵の連中は、学園内であの手この手を使ってカイトを始末しようとしてくるんだけど、それを仲間と共に跳ね除けて成長していくのが「魔術学園の無能力者」のストーリーだ。


 そんでそのストーリーに欠かせない、カイトを成長させる役目《キャラ》が悪役貴族のリオン(俺)だった。


「今度はこっちから行かせてもらう!」


「平民風情が調子に乗るな! サンダーアロー!」


 地面を強く蹴り上げ、俺に向かって真っ直ぐ突進してくる。俺は迎撃しようと雷の矢を放つが、再び斬り払われてしまう。


「馬鹿な!?」


「また斬った!」


「何がどうなってんだ!?」


「はぁあああ!」


「がはっ!(痛ってぇぇえええ!!)」


 接近を許した俺は、カイトに横っ腹を剣で殴打され吹っ飛ばされてしまう。カイトの攻撃は敢えて受けたし、できるだけ大袈裟にやられてやった。物語に沿うようにな。

 でも、痛いものは痛い。物語のためとはいえ、わざと喰らってやるのは結構辛いな。


「どうした、これで終わりか?」


「平民風情がッ……この俺をよくも傷つけたな! 絶対に許さん!」


 無様に這いつくばっている俺を、余裕の表情で見下ろすカイト。そんな彼に怒髪天の反応を見せながら反撃に出た。


「サンダーボール!」


「効かないんだよ!」


「何故だ! 何故俺の魔術が効かないんだ! 何なんだ貴様は!?」


「俺はカイト。魔術が使えないただの平民だ。でも俺は、お前を倒せる!」


 雷球を放つが真っ二つに斬り裂かれ、カイトはそのまま俺に近づき決め台詞を告げながら剣を振り下ろしてくる。

 だが、“その攻撃を俺は防御した。”


「何っ!?」


(かっこよく決めようとしたのに悪いなカイト。もう少し付き合ってもらうぞ)


 本来の物語であれば、今の一撃を喰らってリオンは負けていた。

 だけど俺は、現在のカイトの実力が知りたい。魔術を消す力は確認できた。なので次は剣の腕がどれほどのものなのか把握しておきたかった。


「はぁ!」


「……」


「まだまだぁ!」


(こんなものなのか?)


 果敢に攻めてくるカイトの攻撃を剣で捌きながら、首を傾げる。確かに剣速は速いが、太刀筋は拙く光るものは全然感じられない。言ってしまえば子供のチャンバラと変わらなかった。

 俺が本気を出せば、魔術を使わず剣だけでも一瞬で倒せてしまえるだろう。


(う~ん、こんなんでラスボスに勝てるのか?)


 ちょっとばかし不安になってきたな……大丈夫なのかよカイト?


 いや……物語は始まったばかりだし、今はこんなもんか。これから困難を乗り越えながらメキメキ成長していくのだろう。というか、成長してもらわないと困る。俺が生き残るためにはカイトの成長が必要不可欠だからな。


(もういいか)


「はっ!」


「ぐぁあああ!」


 現在のカイトの実力をある程度知れた俺は、わざと剣を弾かれトドメを刺される。バタンと地面に倒れ、気絶したフリをした。


「勝負あり! 勝者カイト!」


「「おおおおおおおおおお!」」


 リヒトが宣言すると、平民クラスの生徒たちがカイトの勝利に歓喜した。

 そりゃそうだろう。魔術が使えない平民が大貴族を決闘で打ち負かしたんだからさ。下剋上する場面を見て興奮しない訳がない。


 俺としてもカイトの力を知れたし、物語通りにイベントを進められたのでミッションクリアと言いたいところではあるけど……。


(はぁ、わざと負けるのも疲れるなぁ)



 ◇◆◇



「はい、終わりだよ」


「ありがとうございます」


「全くもう、入学初日から怪我だなんて今年の新入生は意気が良いね」


 決闘でカイトに敗けた俺は、治療のために保健室に連れて来られた。保健室の先生でもあり、物語にも登場するベレッタから治癒魔術をかけてもらい打撲を治してもらう。因みにベレッタは漫画とかでよくある保健室のエロティックな美女じゃなくて、普通のおばちゃんだ。

 もし妖艶な美女が保険室の先生だったらきっと俺は毎日通っていただろう。


「リオン様!」


「……レイラか(えっ、何でレイラがここに来てんの!?)」


 アホなことを考えていたら、レイラが血相を変えて保健室に入ってくる。思わぬ人物の登場に胸中で狼狽していると、突然彼女が抱きしめてきた。


「ご無事で良かった。リオン様に何かあったと心配で……」


「そうか(ありがとうレイラ、心配してくれて嬉しいよ)」


「どこも怪我をしておりませんか? 私が治して差し上げます」


「それには必要ない。ベレッタ先生に治してもらった」


「そうですか、良かったです」


 怪我は治ったと伝えると、レイラは安堵の息を吐く。彼女がこんなに心配してくれるとは思ってもみなかった。めちゃくちゃ嬉しいけど、レイラってこんなにリオンに対して好感度高かったっけ?


「リオン様、一つ聞いてもいいでしょうか」


「何だ」


「何故、あのような真似をしたのでしょうか」


 あのような真似とは、平民であるカイトに決闘を申し込んだことだろう。余りに突飛かつ愚かな行動だから、レイラとしても困惑しているんだと思う。

 俺だって馬鹿馬鹿しいことだと分かってはいるけど、物語のためにやらなくちゃならかったんだ。


「魔術も使えない平民が学園にいていいはずがない。奴の存在が目障りだっただけだ」


「そう……ですか。ですが――」


「この話は終わりだ。用がないならもう戻れ」


「……はい」


 ごめんよレイラ。心配してくれる気持ちは嬉しいんだけど、本当のことを話す訳にはいかないんだ。きっと君は今の俺の言葉に傷ついただろう。俺が最低な人間だと気づいたかもしれない。

 レイラに嫌われるのはキツいけど、これから俺はもっと君を落胆させてしまう。そして最終的には……。


「ごめん」


 寂しそうに保健室を出ていくレイラの姿を見ながら、俺は心の底から謝罪したのだった。



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