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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第一章 転生篇

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15話 大貴族の子供たち

 



「リオン様ぁ……」


「俺達どうなっちゃうんですかぁ」


「落ち着け二人とも」


 脅えるクラッドとゴーズを落ち着かせる。

 俺達貴族の子供は、正体不明の賊に取り囲まれている。数は十人ほど。奴等の目的は分からない。


 賊の侵入を許したということは恐らく会場の外にいた警護は全員奴等に倒されているだろうし、助けが来るのは望めないだろうな。


(クソ……あいつらはいったいなんなんだ)


 突然襲撃してきた賊に怒りを覚える。

 物語が始まる前だから、当然俺も知らないイベントだ。せめて本物のリオンが未来の記憶を見せてくれれば対処できたが、魔族との一件以降未来の記憶は一度も見せてくれない。


 リオンにとっては窮地でもないのか……それとも本当にリオンは俺の中から居なくなってしまったのか……できれば後者であってほしくないが。


「わ、私達を誰だと思っているのよ!」


「そ、そうだ! ここにいるのは貴族なんだぞ! こんなことしてただで済むと思っているのか!」


「黙れガキ共! 死にたいのか!」


「「っ……!?」」


 恐い物知らずの子供が訴えるも、賊の神経を逆なでするだけだった。賊に威圧され、子供たちは恐怖に脅えて縮こまってしまう。

 そんな中、クラインが一人前に出て賊に話しかける。


「あなた達は僕達を人質にすると言っていたけど、つまりアナタ方には目的や要求があるということだね?」


「ああ、その通りだ」


「なら聞かせてもらっていいかな」


 流石はクライン、大貴族なだけあって子供ながら肝が据わっているな。冷静な態度で敵と会話し、情報を引き出そうとしている。


「俺達の要求は一つ、金だ。各領地の税を今よりも少なくし、補填してもらう。いくら金にがめつい貴族でも、子供のためなら動かざるを得ないだろう」


「なるほど、つまりあなた方は平民ってことか」


 クラインのお蔭で敵の正体と目的が分かった。こいつらは全員金に困っている平民で、貴族に免税と生活のために金を要求。俺の世界で例えるならストライキ、古いもので例えるなら一揆といったところか。


「そんなことの為に僕らを人質に取るなんて馬鹿のすることじゃないか?」


「そんな事だと!? 馬鹿だと!? 俺達平民がお前達貴族が課す無理な税のせいでどれだけ苦しんでいると思っている! 平民は毎日一生懸命働いて、その日を生きるだけでも大変なんだ! 子供に腹いっぱいご飯を食わすこともできない! 野垂れ死ぬ奴だって沢山いる!」


 クラインの言葉が逆鱗に触れたのか、賊が血相を変えて激高する。彼と同調するように他の者たちも「そうだそうだ!」と訴えた。

 賊たちの怒りにクラインはたじろいだが、負けじと反論した。


「税は国が定めている法だ。僕達貴族は税を国に治め、残った税は領地を良くしようと使っているだけだ」


「詭弁を言うな。今やっているこれは何だ? 貴族の子供が集まってパーティーだと? そんな無駄なことに俺達は必死に働いている訳じゃないんだ!」


「聞いてください! 貴族だって平民のことは考えているわ!」


 横からユイが弁明しようとするが、不満を抱いている賊には響かない。


「アストレア家のような立派な貴族もいることは知っている。だが平民のことを考えている貴族は少なく、殆どは自分の懐を潤し贅沢を貪る悪徳貴族ばかりじゃないか! そこにいる、エルファルド家のろくでなしのようにな!」


(俺か~~~)


「あなたたち、リオン様を――」


「よせ」


 俺を庇おうとするレイラを抑える。彼女が庇ってくれるのは嬉しいけど、今は油に火を注ぐだけだ。

 賊の言い分を聞いたクラインはうんうんと納得したように頷くと、突然目つきを鋭くさせた。


「なるほど、あなた方の考えと目的は理解した。しかし、僕達を人質にしようとしたのは間違いだったね。子供と侮っているようだけど、あなた方を制圧するぐらい簡単なんだぞ」


「ほう、やれるものならやってみろ」


「後悔しても知らないからね……ホーリージャベリン!」


 クラインが賊に向けて手を翳し、魔術の呪文を唱える。しかし、魔術が発動することはなかった。


「どういうことだ……魔術が使えない?」


「くくく。お前たちは子供だが腐っても貴族の子供だ、決して侮ることはしない。この会場の中は魔術を使えないように細工してあるんだよ」


「何だと!?」


(なにそれヤバいじゃん)


 これはかなりマズい状況になったな。魔術が使えなければ貴族といえどただの子供に過ぎない。数では勝《まさ》っているけど、武装している大人たちを倒すのははっきり言って無理だ。


 魔術が使えないとなると厄介だな。恐らく魔術を封じる道具とかその辺の類だろうけど、気になるのはそんな凄いものをどうやって平民が手に入れたかだ。


「さて、話は理解してもらえたかな。分かったら大人しくしていてくれ、騒げば殺すからな」


「恐いよぉ……」


「大丈夫、お父様がきっと助けてくれる」


 賊の脅しに恐怖し、泣き出す子供たちが出てくる。可哀想だし何とかしてやりたい気持ちもあるが、魔術が使えない状況では難しい。無理をすれば奴等を制圧できるかもしれないが、子供たちに危害が及んで状況を悪化させてしまう恐れもある。


 ここは黙って、父のジオやラドクリフが助けに来てくれるのを待つとするか。

 そんな風に呑気なことを考えていたら、賊のリーダーが俺を指してこんなことを言ってくる。


「だがエルファルド家のろくでなし、お前だけは例外だ。貴族の連中に我々が本気だと知らしめるために、お前一人は死んでもらう」


(な、なんだって~~~!?)


「悪く思うなよ。今まで好き勝手やってきたんだ、その代償を払ってもらうだけぞ」


「リオン様には手を出させない!」


「ええい、邪魔するな! 殺すのはお前でも構わんのだぞ!」


「きゃっ!」


(こいつ……レイラに剣を向けやがったな)


 俺を庇おうとしたレイラが賊のリーダーに払い除けられ、切っ先を向けられる。愛しのレイラに暴力を振るわれたことでブチ切れた。子供たちに被害が及ぶかもしれないが、レイラを狙われて黙っている訳にはいかない。


「バッカス、皆を守ってくれ」


「……うむ、承知した」


 近くにいたバッカスに子守りを頼む。彼は俺の意図を読み取ってくれたのか、静かに頷いてくれた。

 よし、やるか。


「はっ!」


「ぐはっ!?」


 レイラに剣を向けている賊の懐に飛び込み、顎に掌底を喰らわせる。衝撃の展開に賊たちは呆然としたが、すぐに俺目掛けて一斉に襲いかかってきた。


「お前、何をした!?」


「殺してやる!」


「ユイ!」


 昏倒した賊が持っていた剣を拾い、ユイに向かって投げる。見事キャッチしたユイは一瞬戸惑うも「こっちは任せて!」とすぐに俺の考えを察してくれた。

 俺一人では子供たちを守りきれない。人質にされると困るからユイとバッカスに守ってもらうことにした。


 ユイは魔術だけじゃなくて剣術も長けているし、バッカスは筋肉による格闘が凄まじい。子供たちは二人に任せ、俺は襲いかかってくる賊に集中する。


「おら!」


「甘い」


「ぐへ!!」


 正面から斬りかかってくるが、軌道を見極めて難なく避ける。そいつの手首を殴って剣を落とさせ、横っ腹を蹴り飛ばす。

 剣を拾った俺は、襲い掛かってくる賊の武器を次々と打ち落としながら蹴り飛ばしていく。


 殺しはしない。本来守るべき平民を殺すのは忍びないし、子供たちにグロテスクな光景を見せるのも嫌だなと思ったからだ。


「なんだよこいつ!?」


「ろくでなしって話だったろ!? 凄い強いじゃないか! 聞いてたのと違うぞ!」


(それは前までのリオンだよ)


 こちとら転生してからセバスチャンと毎日毎日剣を重ねてきたんだ。セバスチャンのような達人級が一人でもいたら危うかったけど、一般兵士レベルなら負ける気がしない。


 俺の実力が予定外だったことに恐れを成したのか、賊たちの戦意が途切れ動きが悪くなる。そうなれば、制圧するのはあっという間だった。


「クソォ! ろくでなしがこんなに強いなんて聞いてないぞ!」


「お前達のしたことは決して許されるものではない。だが、気持ちは痛いほど伝わった。お前達の言葉は俺の方から父に伝えよう。税に関して改善していくよう努力する」


「い、いいのか……?」


「ああ」


「ありがとう……本当にありがとう!」


(ふぅ、なんとかなったな)


 彼等の処遇については大人たちに任せよう。貴族の子供を人質にしたとなれば最悪死刑になる可能性はあるが、温情を与えて欲しいとジオに頼むしかない。あのジオが平民の愚行を許すとは思えないけど、平民を大事にしている大貴族のアストレア家やベルンツベルン家のラドクリフなら何とかしくれるはずだ。


(あ~疲れた)


 事態を収拾できて安堵していると、クラインとバッカスから声をかけられる。


「驚いたよ、君があれほど剣術に長けているとはね。お蔭で助かった、礼を言わせてくれ」


「うむ、見事な筋肉だった」


「お前達もな(二人が守ってくれて助かったよ)」


 そう返すと、二人は俺の言葉に驚いたのか鳩が豆鉄砲を食ったような顔を浮かべる。すると二人の横からユイが出てきた。


「リオン」


「……何だ」


「アンタ、やっぱり変わったわね。見直したわ」


 ユイにそう言われて身体が熱くなる。おい相棒、ユイに褒められたことがそんなに嬉しいのか。疲れるから一々反応しないでくれよ。


「リオン様……」


「無事だったか」


「はい。また助けてもらいましたね。ありがとうございます」


「婚約者だからな(レイラには傷一つつけさせません!)」


「っ!?」


 そう告げると、レイラの白い顔が真っ赤に染まる。

 えっ、怒っちゃった? 婚約者だと言われたことが嫌だったのかな。ちょっと悲しい……。



(何はともあれ、誰も傷つかなくて良かったよ。けどこの騒動、何かきな臭いな)


 幾つか腑に落ちないことがある。

 一つは、貴族の子供がパーティーを開くことを何故知っているのか? パーティーを知り得たとしても、いつどこで行われるのか、正確な情報をどうやって入手したのか?


 もう一つは、魔術を使用できなくする細工とやらをどうやって手に入れたのか。恐らく装置か何かだと思うが、魔術の使用を禁止する装置なんて高価なものを平民が自分達で手に入れられたとは思えない。



(貴族が絡んでいる気がするが……)



 パーティーの正確な情報を入手できるのも、高価な装置を買える財力も貴族なら可能だ。だけどこの騒動を貴族が仕組んだとは思えないんだよな。

 平民の要求は免税と補填金だし、割りを食うのは貴族だ。デメリットになることを自分からするとは思えない。ならば、他に目的があったとか?


(はぁ……考えても分からない)


 それにしてもリオンは命の危機が多すぎるんじゃないか。死亡フラグを回避するためにも、もっと強くならないといけないな。



 ◇◆◇



「ご報告いたします。平民たちは貴族の子供が集まるパーティーに襲撃いたしました」


「そうか。お膳立てしてやった甲斐があったな」


「ですが、完璧という訳ではございません。本来は子供を人質にとって親に要求する手筈でしたが、子供たちだけで平民を制圧したようです」


「ほう、貴族の子供も中々育っているようだな。それはそれで良きことだ」


「申し訳ございません」


「よい。この一件で混血派の貴族たちの中にも平民を疎ましく思う者も現れるだろう。これでまた一歩計画が進んだのだ」


「はっ!」


「さて、次の一手をどうするか、じっくり考えていこうじゃないか」



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