13話 ゴーズとクラッド
「はぁ~~疲れた」
久しぶりに自分のベッドに寝転がった俺は、疲労の息を吐いた。
エルファルド家に戻ってきたら、皆して詰め寄ってくるんだもんなぁ。
父親のジオからはこっぴどく叱られたし。
「ベルンツベルンから話は聞いている。余計な真似をしてくれたな」
「申し訳ございません」
「だが、奴に一つ借りを作ることができた。よくやったな、リオン」
まさかジオから褒められるとは思っていなかった。今まで彼から褒められたことなんて一度もなかったから、認められたような気がして嬉しかったよ。
セバスチャンからはしこたま説教を喰らった。
「いいですか、坊ちゃま! 坊ちゃまはエルファルド家の大事な跡取りなのです! その事を自覚し、危険な真似はなさらないでください! せめて私に一言相談するようにお願いいたします!」
「すまない」
「無事に帰ってこられて何よりです。立派でしたね、坊ちゃま」
凄く心配させてしまった。深く反省し、これからはセバスチャンに相談するようにしようと心に誓う。
リコとサラには泣きつかれてしまった。
「リオン様~~~! ご無事で何よりです~~~!」
「お兄様のバカバカバカ! お兄様が重傷だと聞いてすっごく心配したんですのよ! 心配で心配でお兄様へ見舞いに行こうとしたのですけど、ベルンツベルンに絶対安静だからと止められましたの! レイラ・ベルンツベルンめ……お兄様の婚約者だからっていい気になってムカつきましたわ! 私はお兄様の妹なんですのよ!」
「そうですぅ! リオン様のお世話をするのは私のお役目なのに、させてもらえなかったんですよぉ! どれだけ歯がゆかったか分かりますかリオン様ぁ!」
「二人にも心配をかけたな。俺ならもう大丈夫だ」
泣いて怒る二人を宥めるには苦労したよ。
でもそれだけ俺の身を案じてくれて、俺を大切に想ってくれてるっていことだよな。機嫌を取るわけじゃないけど、今度二人にプレゼントでも買ってやるか。
「リオン様、ご無事で何よりです」
「体力のつくものを沢山作りますよ、リオン様!」
その他にも、料理長やメイド長など使用人たち皆から心配され、無事で良かったと伝えられた。リオンをエルファルド家のろくでなし扱いしていた半年前から比べると信じられないことだった。それだけリオンに対しての評価が良い方向に変わったんだなと実感できて良かったよ。
「なぁリオン、今じゃ皆がお前を認めているぞ」
胸の中にいる相棒に語り掛ける。
魔族のヴァーリを倒すため、本物のリオン・エルファルドが俺に力を渡してくれた。その際、リオンの魂が消滅してしまう恐れがあった。
でも俺は、リオンは俺の中から消えていないと思っている。
確かにめちゃくちゃ強くなって魔族を倒せたけど、あの時の一回だけだ。今は力が元に戻っているし、魔族を倒した強力な魔術も使うことはできない。
そこから推測するに、俺とリオンの魂はまだ一つになり切っていないんじゃないかと思うんだ。
俺の願望かもしれないんだけど……それでもいいんだ。俺の相棒は、俺の中で生きて今も見守ってくれていると信じたい。
「坊ちゃま、よろしいですか」
「何だ」
「坊ちゃまにお客様が見えています」
俺に客?
いったい誰だろう。
◇◆◇
「リオン様~~! ご無事で何よりですぅ!」
「俺達ずっと心配してたんですよぉ!」
「ぁ……ああ」
号泣する男の子二人に抱き付かれてしどろもどろになってしまう。
(そういえばいたな~。この二人のことすっかり忘れてたよ)
泣きついてくる彼等は「魔術学園の無能力者」にも登場するゴーズとクラッド。まんまる太っちょがゴーズで、背が高くヒョロっとしているのがクラッド。リオンの手下というか、取り巻きのようなキャラだ。
二人とも弱小貴族なんだけど、大貴族のリオンの傘を盾に偉そうにしている。物語ではリオンと常に行動しており、主人公のカイトや平民にいちゃもんをつけたりしていた。
俺が転生する前のリオンはゴーズとクラッドを連れて遊び惚けていたみたいだ。リオンに転生した俺は強くなるために遊んでなんかいられなかったから、二人のことは完全に放置していた。
「リオン様、急に俺達と遊ばなくなったから寂しかったんですよ~」
「俺達、何かしちゃいましたか~!」
「いや、そういう訳ではないんだが(ごめんよ、忘れてただけなんだ)」
過去の記憶を振り返ると、本物のリオンはこの二人のことを大事にしていたようだ。彼の性格的に家来のように扱っていると思っていたけど、意外と仲の良い友達だったんだな。
「お前達のことを蔑ろにしていた訳ではない。魔術の鍛錬に励んでいただけだ。いつまでも遊んでいる訳にはいかないからな」
「何だ~そうだったんですか」
「では噂は本当だったんですね。ろくで……リオン様が心を入れ替え真面目になったというのは」
おいゴーズ、お前今俺のことろくでなしって言おうとしたろ。
「そうだ。お前たちも俺と一緒に居たいなら、遊んでばかりいないで少しは鍛錬でもしたらどうだ(悪いね、君たちと遊ぶ暇は俺にないんだよ。強くならないと死んじゃうから)」
「え~鍛錬ですか~」
「俺、魔術って苦手なんですよね」
二人も頑張れって言ってみたけど反応は良くない。
う~ん、どうするかな。物語でリオンと常に一緒にいるゴーズとクラッドは欠かせないキャラだし、このまま放っておくわけにはいかない。
何よりも、本物のリオンの友達を蔑ろにしたくはなかった。
「仕方ない。俺が魔術を教えてやる」
「えっ、リオン様が!」
「いいんですか!?」
「ああ。鍛錬が終わったら遊びに行くか」
「「やった~~! 流石リオン様だぜ!」」
大喜びする二人の姿につられ、俺も表情を綻ばせる。そういえば転生してからろくに遊んだりしていなかったな。ここ最近大変だったし、たまには友達と息抜きでもしますか。
◇◆◇
「はぁ~遊んだ遊んだ」
自室に帰ってきた俺は、豪奢な椅子に深々と座り込む。
ゴーズとクラッドを連れて街へと繰り出し、三人で遊び倒した。美味いお菓子を食べたり、小さい劇団がやっている劇を見たり、買い物だとかな。因みに代金は全部俺持ちである。まぁ仮にも大貴族だし、金だけはあるんだよな。
サラとリコにもおみやげのアクセサリーを買ってあげたら凄く喜んでくれた。
異世界の街並みは新鮮で楽しく、お蔭でストレス解消にもなったよ。たまには遊びに出かけるのもいいかもしれないな。前世の俺はブラック企業で働きまくって遊ぶ暇もなく過労で死んだからな……。
死亡フラグを回避するには強くならなくてはいけないけど、その前に無理して死んだら元も子もない。
「坊ちゃま、よろしいでしょうか」
「何だ」
も~今度は何だよセバスチャン~。
「坊ちゃまにパーティーの招待状が届いております」
パ、パーティー?




