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物語中盤で死ぬろくでなしの悪役貴族に転生したけど、死にたくないから最強になって死亡フラグを回避する  作者: モンチ02
第七章 帝国篇

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103話 守れたもの、守れなかったもの




「力及ばず、申し訳ございませんでした」


 目の前にいる、アルカディア帝国第一王子グリードに頭を下げる。

 結局俺は、【純血使徒《ノーブルブラッド》】による襲撃から帝国を守り切ることができなかった。


【黄昏】アルフォート・ロッテによる皇帝殺害。

 第二王子のガリアを含めた王族も何人か殺されている。さらには帝国が誇る魔術師部隊「帝国十師(ディエース)」と「最強の魔術師(マギウス)」も殺されていた。


【爆弾魔】クランキー・キッドと【操り人形】ミルキー・チェダーチーズが仕掛けた爆弾人形により、首都である帝都は壊滅。多くの民が犠牲になってしまった。


 炎上する帝都の光景と、帝国が崩壊した事実が投影魔術によって世界中に放映され、原作と同じように【純血使徒】が如何に恐ろしい存在であるかを知らしめることになった。


 帝国が滅びる物語を変えようと駆けつけたのに、失敗してしまった。

 デモルト・ブラックロードが不在なのにこの有様だ。俺がスネルやギンガナムといった過去の英傑どもを早く倒せていたら、結果は変わっていたのかもしれない。


(自惚れていたんだ、俺は!)


 魔術大会でデモルトと幹部を圧倒した俺なら、帝国を守ることだって可能だと息巻いていた。


 それがこのザマだ。

 最強になったと自惚れ、デモルトを含めて俺に敵う奴なんてこの世にいないと勘違いした。過去の英傑たちとの戦いだって、本物のリオンや第一王女キャリーサの助けがなかったら俺は死んでいた。


 実質、負けていたんだ。

 情けない、余りにも情けない。


 己の不甲斐なさに歯を噛み締めていると、グリード王子が告げてくる。


「頭を上げてくれ、リオン」


「……」


「敵国の、いや因縁のあるエルファルド家のお前が帝国の為に尽力してくれたことはよく分かっている。謝る必要なんてない」


「そうだぞ。お前が居てくれなかったら、俺達やグリード兄様も殺されていた」


「それに貴方のお蔭で、民の犠牲も抑えられたのよ」


 グリードに続いて、第五王子のオレオと第三王女のココア兄妹が俺を庇う。俺が闇の魔術師と戦っている間、グリードと兄妹は民間人を地下に避難させていたらしい。


 大体の避難を終えた後に爆弾人形が起爆したから、建物は木端微塵になったが民の犠牲は少なかった。ただ、避難が間に合わず死んでしまった民も少なからずいる。

 それも帝都で暮らしている人間は貴族や金持ちばかりだから、帝国は多くの人材を失ってしまっただろう。


「死んでしまった皇帝の代わりに、私が礼を言うぞ。リオン・エルファルド、帝国を守ってくれて心より感謝する」


「……はい」


「見ての通り帝都は炎上し、父上やガリアなど王族も殺され、「帝国十師(ディエース)」や「最強の魔術師(マギウス)」といった戦力も失ってしまった」


 グリードは一拍置くと、「だが……」と続けて、


「帝国は終わっていない。まだ立て直せる」


「そう、でしょうか」


「ああ。帝国の領土は大きい。帝都が壊滅したのは痛いが、他が無事なら立て直せる。それに帝国の軍事力は、何も「帝国十師(ディエース)」や「最強の魔術師(マギウス)」だけではないのだ。父上はその力に固執し過ぎていたが、帝国の強みは屈強な兵士達だ。エルファルドの兵のようにな」


 そうだったのか……。

 原作での帝国は【純血使徒】のかませ犬だったから、大したことはないと思っていた。しかしよくよく考えてみれば、次々と領土を拡大していった帝国の力が個人の能力に頼り切っている訳ないよな。


「そしてリオン、皇帝代理として私からお前に頼みたいことがある」


「……何でしょうか」


「改めて、我が帝国を世界同盟に加えさせて欲しい」


 えっ!? いいのか!?


「今回の襲撃で【純血使徒】の恐ろしさを改めて認識した。アルフォートだけでも厄介なのに、その上デモルト・ブラックロードという【最悪】の魔術師までいるのだろう? 奴等を野放しにしてはおけん。世界各国の力を終結させて戦うべきだ。それで構わないな、キャリーサ」


「……」


 グリードがキャリーサに問いかける。

 実は彼女も、俺達がいる玉座の間にずっと居たんだ。ギャーギャー五月蠅かったキャリーサが、一言も発言せず黙ったままなのはかなり不気味だった。


(キャリーサはなんて答えるんだろうか)


 彼女は強国である帝国に誇りを持っている。

 そんなキャリーサが世界同盟に加入することを良しとするのだろうか。


 そんな俺の懸念は、たった一言で吹き飛んだ。


「いいだろう」


「姉上!」


「勘違いするな、今でも帝国が他国と協力することなど気に食わん。だが、私も戦って分かったが奴等の力は強大だ。たった数人で父上や兄上を殺され、帝都も壊滅してしまったからな。それに、やられっぱなしは性に合わん!」


 よっぽど腹に据えかねたのか、ブチ切れるキャリーサから魔力が迸る。怒るのはいいけど無意識で炎を出すのはやめてくれ。熱いから。


 熱気から遠ざかろうと一歩後退っていると、突然キャリーサが俺に目を向けた。


「エルファルド。お前、名をリオンと言っていたか」


「そうだ」


 王女だろうが年上だろうがこいつに敬語を使うつもりはない。


「お前、帝国に来る気はないか? 望むなら、私の伴侶にしてやろう」


「「なっ!?」」


 突然何を言い出すんだこの女。

 エルファルドだからって問答無用で殺そうとしてきた癖によ。見ろ、俺だけじゃなくてグリードたちも目が豆粒になっているぞ。


「あ、姉上……冗談ですよね」


「冗談ではない」


「だって、リオンはエルファルドですよ? あんなに憎んでいたではないですか」


「確かにこいつは憎きエルファルドだ。だが私はこいつの“強さ”が欲しくなった。こいつが手に入れば、帝国も更に強くなるだろう」


 な、なんて女だ。

 戦力強化の為なら因縁のある相手だろうが関係なしかよ。まぁ、王族って政略結婚って当たり前だからな。


「どうなんだ、エルファルド」


 キャリーサに尋ねられた俺は悩むことなく即答する。


「断る、俺はリアーナ王国の貴族だ。帝国に属するつもりはない。それに俺には心に決めた婚約者がいる」


「婚約者……一緒にいた小娘のことか? 私よりあんな小娘が良いというのか、あ?」


(何でキレてんだよ)


 キャリーサの身体から炎が迸る。

 女として自分がレイラに劣っていると思って腹が立っているのだろうか。にしても沸点が低すぎだろこいつ。


「抑えろキャリーサ。恩人に向かって色々と無礼だぞ」


「……ふん」


「ふぅ……」


 キャリーサにため息を吐くグリード。

 皇帝代理にはなったものの、こいつを抑えるのは大変だな。

 さて、挨拶も済ませたことだしそろそろ戻ろうかな。


「グリード王子、俺は自国に戻ろうと思います」


「もう行くのか? 連れもまだ回復はしていないだろう。もう少しゆっくりしていけばいいのではないか」


「俺には自国に転移する方法があります。それに、優秀な治療魔術師に治療を頼みたいと思っております」


 クランキーと死闘を繰り広げたラドクリフ・ベルンツベルンは、レイラの応急処置のお蔭でなんとか一命を取り留めた。

 だが、未だに目を覚まさず油断のならない状態だ。できれば“あの人”に診てもらいたい。


「それならば仕方ないな。リオン、また会える日を楽しみにしている。力を合わせ、共に脅威へと立ち向かう」


「はい」


 グリード王子とがっしり握手を交わす。

 オレオとココア兄妹、ついでにキャリーサと挨拶してからその場を後にした。


「レイラ、ベルンツベルン卿の具合はどうだ」


「リオン様……いえ、お父様はまだ目覚めません」


「そうか……」


 王城に備わっている治療室に入って尋ねるが、レイラは首を横に振る。やはりすぐに診てもらわないとな。

 眠っているラドグリフを見ながらそう思っていると、ルマンド・リッツェが問いかけてくる。


「それで、貴方の方はどうなったのかしら。王族と謁見したのでしょ?」


「はい。帝国も世界同盟に加入していただく事になりました」


「そう……それは朗報ね。よくやったわ、リオン」


 素直に褒められてちょっと驚く。

 ルマンドは俺の監視役だから、俺が帝国の王族と謁見するのは芳しくないと思っていたんだがな。


「これからどうするの?」


「今すぐ、王立魔術学園に行きます」


「今すぐって、ラドクリフはこの状態なのよ。目覚めるまで動かさない方がいいわ」


「いえ、俺には魔術学園に転移する方法があります」


「そ、そうなの?」


「はい。どこでもいいので、俺の身体に触れてください。レイラもだ」


「はい」


 そう言うと、レイラとルマンドは俺の両肩に手を置く。俺は眠っているラドクリフに触れ、片手でポケットから【純血使徒】からパクった転移魔道具であるロケットを取り出す。


 四人分を転移するには膨大な魔力量が必要だが、俺なら大丈夫だろう。

 とある場所をイメージしながらロケットを開き、俺達四人は転移したのだった。



 ◇◆◇



「きゃあああ!? 何だい何だい、何事なんだい!?」


「ここは……」


「学園の保健室?」


 転移した場所は学園の保健室だ。

 俺が知っている治療魔術師の中で一番優秀なのはベレッタ先生である。このおばちゃんならきっとラドクリフを治してくれるだろう。


 突然現れて困惑しているベレッタ先生に、抱えているラドクリフを見せながらお願いする。


「先生、この方を診ていただけませんか」


「あらまぁ、ボロボロじゃないか。よく生きてるわね。早くベッドに寝かせな」


 ラドクリフをベッドに寝かせると、すぐにベレッタが身体を診てくれる。よし、後は彼女に任せよう。


「俺は帝国について校長に報告してくる。レイラはベルンツベルン卿についてやってくれ」


「わかりました」


 レイラに頼んでから、ダニエル・ゴッドヴァルトがいる校長室へと向かう。廊下を歩いていると、背後から呼びかけられた。


「リオンはん!」


「ナナか」


 俺を呼んだのはナナだった。

 まだ授業中のはずだが、こんな所で何をしているんだろうか。


「戻ってきてたんやな。って事はお咎め無かったっちゅうことか」


「ああ、まぁな」


 そういや俺は審問会に出頭していたんだな。

 学園に戻らずそのまま帝国に向かったから、ナナたちは俺がまだ王城で尋問されていると思っていたらしい。


「実はな、リオンはんに言わなことがあんねん。最後まで言うつもりはなかったんやけど、そうも言ってられへんわ」


「藪から棒に何だ。今忙しんだ、話すならさっさと話してくれ」


 もったいつけるナナにそう言うと、彼女はなんてことのないように口を開いた。



「実はわてな、この世界の神やねん」


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……。


「……は?」



ここまでお読み頂き、誠にありがとうございます!


いかがでしたでしょうか?

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


これで第七章は終わりです!

第八章は英雄篇となっております。


恐らく後二章ほどで完結予定です!

それと今日まで読者様の応援のお陰でなんとか毎日更新してきましたが、八章からは不定期更新になります。


絶対に完結させますので、最後までお楽しみいただければ幸いです!


ブクマ、評価ポイントありがとうございます!

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誤字脱字のご報告と修正、本当に助かります!

ありがとうございます!


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