第九十七話 モヤモヤ
解けない問いを反芻する独りの時間が過去の痛みを鮮明に呼び覚ましますが仮想の戦場に身を投じることで昂ぶる鼓動が迷いを振り払い静かに更けゆく夜の帳の向こう側で予期せぬ再会が渇いた心を潤していきます。
チン!
電子レンジから冷凍チャーハンを取り出す。
食べ終わってから、少し仮眠をとった。
『今度、またご飯でもどう?』
『じゃあ、またこっちから連絡するね!』
『付き合ってください!』
『無理なものは無理。』
(………………ほんと、大昔の自分は青すぎるな。だが……
その言葉で、"脈無しなのを察して諦めろ"ってか?
察しろってなんだ?
笑えてくるな。
まあ、相手をカスみたいにしか思ってないと、向き合うのすら面倒なんだろうよ。
今なら俯瞰して理解できる。
だが、共感はできんな。俺にはそんな高飛車な真似できん。
それでいい。いくらモテたとしても、そんな人をカス扱いするやつにならなくてよかったと思うよ。
そんなやつは、いつか人付き合いでボロが出る。
まあ、負け惜しみだがな。笑えてくるぜ)
花は、数々のトラウマを走馬灯のように思い出していた。
(今でこそ、大したことねえって思うなあ。
なんせ、うまくいかない理由が、全て"見た目"だったからな。
うまく行くはずねえよ。笑える。
けど、そのおかげで、"見た目以外"の部分に向き合うことができた。努力もできた。
それなりに人から認められるようになった。
だが、その努力の果てに、結ばれたのが、今のこれか?……………ふっ……俺の努力は何だったんだ、笑えてくる。)
数時間後、花は目が覚めた。
(ち、なんて夢だ、まったく……)
水分を摂り、すぐにログインした。
いつものように、アユからメッセージが届いていた。
もうすっかりルーティン化している。
だが、今日のメッセージは違った。
仕事があるから、狩りはできないらしい。
シュン
カレッジにログインした。
辺りには誰もいない。
(今日はアユもいない。なんだか、モヤモヤする。タクの野郎のせいだ、まったく。
嫌なこと思い出させやがって。)
花は森へ走り出す。
ゴブリンキングを倒した場所に辿り着いた。
(ここでのバトルでタクを巻き込んだのか?全く身に覚えないぜ。まあ、俺かどうかはわかんねえから何とも言えんが。それにしても、全然今日はモンスターが出ねえな。まるでゴブリンキングが出てきた時みたいに………)
後ろを振り返ると、そこには、昼間のゴブリンキングの大きさのゴブリンが立っていた。
(あ?まだ生きてたのか?いや、ちょっと違うなあ。ありゃ、アンデットか?デカい剣持ってやがる。)
キキャー!!
俊敏な動きで花に襲いかかる。
スカ!
花はギリギリでかわす。
また残像が一瞬映った。
昼間のゴブリンキングよりもかなり素早く攻撃を繰り出す。しかし、むしゃくしゃしている花の集中力は高く、どれも紙一重の残像を残して交わしていく。
ザン!
花も大剣で攻撃する。
だが、アンデット系は通常攻撃がダメージを通しにくい。
雑魚ではないため、持久戦となった。
バトル中は敵のライフゲージは一応見えている。
花は、試したいことがあった。
シャ!
大剣を仕舞って、ロングソードを2本取り出す。
「へ!二刀流だ。今日の俺は少しモヤモヤしてんだ。覚悟しとけ!」
ズバババ!ズバン!
花は回転しながら斬り刻む。
キキャー!
ゴブリンアンデットのライフは少しずつ削れていく。
花も動くごとに体力がわずかだが減ってきていた。
「へ!消耗戦か!望むところだ!」
何度も攻撃を繰り返す。
お互いにライフがあとわずか、しかし、体力が初期値に近い花は、間髪入れずに攻撃を繰り出しているため、みるみる体力が減り、ライフゲージにも影響が出始めていた。
(やべえ!こちらが先に消耗する!回復薬だ!)
花のライフと体力は回復した。
再び攻撃を繰り出す。
(よし!あと少しだ!だが、またライフが!ええい!負けてもいい!押し切れ!)
ズバババ!ズバババ!
(ぐ!これまでかー!もっと回復薬持っとくんだった!先にこっちが落ちるぞ!)
「ヒール!」
花は回復した。
「へ?!なんかよくわかんねえけど、これで押し切れる!」
ズバババ!ズバン!
キキャーーー!
バシューーン‼︎
「ふう……押し切れた」
花は振り向く。
「やっほ〜、無事に討伐成功だね〜」
「アユ?!おま……仕事は?!」
「何時だと思ってるの?今日は早めに切り上げて、こっちにきちゃった。
そしたら、"そうか。俺はいつも通り狩りだ。仕事頑張れよ"っていう、味気ないメッセージがあったから、来てみたの、すると……」
「俺がいたということか?」
「正解〜」
アユは、花の首に手を回す。
「…………」
ヒョイ
花は無言でお姫様抱っこする。
「アユ、すまんが、一度カレッジに寄ってもいいか?
さっきのやつ、何か落としていったんだ。
もしかすると、何かのクエストかもしれん。」
「ええ、いいわよ、ていうか、クエストで合ってるわよ?」
「へ?」
「遅くなったけど、討伐おめでとう。討伐一覧で見たわ。そして、夕方もうひとつの討伐クエストも出てたの。」
「それが、あいつだったということか?」
「ええそうよ。ゴブリンアンデット。まさか、依頼が出て数時間後にクリアしちゃうなんてね。」
◆
カレッジ内、受付。
「確かにゴブリンアンデットの持つ大剣です。
確認できたので討伐クリアです。
王都には報告しておきます。
この大剣は、お持ち帰りください。」
花は、大剣を手に入れた。
「さて……」
アユはまた花の首に手を回す。
「いや、さすがに汽車で移動しよう。」
数分走らせて、王都の前に到着する。
「よし、ここから行けるぞ?」
二人はいつもの王宮のてっぺんに飛ぶ。
討伐祝いに、アユがシャンパンを奢ってくれた。
「討伐祝いに、乾杯〜」
花はグラスのシャンパンを飲み干す。
「ねえ花?……何か隠してることない?」
「いや、特に隠してることは何も。」
「ダーメ、今日は明らかに不機嫌そうよ?
何かあったの?」
花はモヤモヤしている気持ちを誰にも言うつもりは無かったが、見事に見破られてしまった。
すこしの風が二人の間を通り抜ける。
花は俯き、何とも言えない表情で、静かに王都を見下ろしていた。
第九十七話 完
第九十七話をお読みいただき、ありがとうございます!過去の苦い記憶に苛まれながらも、戦いの中で自分を保とうとする花。そんな彼の変化を敏感に察し、そっと寄り添うアユ。王都の夜景をバックに、二人の間に流れる「言葉にできない空気感」が切なくも美しい回でした。
【読者の皆様へお願い】
花の「モヤモヤ」の正体、そしてアユに何を語るのか……。もし「花の過去に共感した」「アユの優しさが染みる」と思ってくださった方は、ぜひ下部の**評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)**やブックマークをお願いします!皆様の温かい応援が、物語を紡ぐ大きな力になります。
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