第九十八話 優しいエゴ
誰にも言えなかった本音をアユに打ち明けることで、花の固まっていた心が少しずつ解けて、二人の距離がまた一歩近づきます。
花は、観念して、リサに言ったことをアユに話した。
アユはただ黙って最後まで聞いていた。
「と、言うわけさ。恥ずかしいが、これは俺のエゴだ。リサを不快にさせたに違いない。
あいつは賢いから、理解してくれたように振る舞ったんだ、きっと……」
アユは少し笑う。
「大丈夫……花は、ちゃんと言葉を選んでる。
説教くさくもないし、ちゃんとリサちゃんの気持ちも理解した上での言葉だったと、わたしは思うけどなぁ。」
「なんで、そう思う?」
「だって、最後の彼女のセリフ。きっと、花から言われたこと、図星だったんだと思うよ?
上手く気が付いてなくて、やっとピンときたのね。
それにしても、おせっかいだね、花は。
ちゃんと、リサがそこらのただ顔のいいだけの女にならないように、エスコートしてるんだもん。」
アユはクスクス笑っている。
「俺も、自分で言っときながら、かなりおせっかいだと思った。
だが、後悔はしていない。ここでは思ったことを言うんだって決めたんだ。
嫌われたかもしれんがな。」
「どこが?その子なら大丈夫よ、むしろ、もっと仲良くなったと思うなぁ。
今までの話を聞くだけでも、いい子だってわかるもの。
その辺の、顔だけでモテる子とは、レベルが違うわね。
そして、また花がレベルを上げてしまったというわけ。
こりゃ、これからモテるぞ〜。」
「あいつには……人の気持ちがわかる大人になってほしいんだ。まあ、元から優しい子なんだがな。
世の中には、自分より恵まれてない人なんて沢山いる。けど、人の気持ちを汲み取ることができれば、きっと、末長く上手くいくはずなんだ……」
アユは心配そうな顔になる。
そして、花の手にそっと触れた。
「大丈夫、きっとわかってる。
花の気持ちは、ちゃんと伝わってるから、あの子はそんな風にはならないわ。」
「ありがとう、俺の気持ちが、よくわかるもんなんだな、アユは」
「ええ、あなたは割とわかりやすい方よ?」
(だって、優しすぎるもの……)
「人に気持ちを理解してもらうなんて、何年ぶりだ……いや、今まであったかな……
そう考えると、アユは女神に見えるな、カッカッカッ」
アユは触れた手をくるりとひっくり返してアピールする。
「なら、女神様に、なにかあるんじゃなくて?」
アユはニンマリする。
「へーへー、ほれ!女神様ー!貢ぎ物だ!」
シャ!
「こ、これ!王都でも高級なやつじゃない!?」
「飲もうぜ!こんなに嬉しいんだな、気持ちを理解してもらえるってのは!
円満なやつらは、きっとこんな気持ちで生活してるんだろうな。
けど、アユのおかげで、俺も経験することができたよ、ホントにありがとな!」
(花……本当は、当たり前に異性から受けられるはずの愛情……誰にも相手にされないんじゃない、ちゃんとパートナーができたのに、それを得られない……それは絶望、生き地獄よ。
なのに……花は前を向いている。
わたしも、見習わなくっちゃ……)
アユは、この場所で、いろんなことを話した。もちろん、花の過去のことも。
だからこそ。花に心を開いたのだ。
ギュウ
アユは、花の腕に絡みつく。
「おい!酔ったのか?」
ムギュウ
腕を自分の身体に包むようにしがみつく。
「花……わたしはちゃーんと、わかってるからね。」
「ん?何か言ったか?」
「ええ、言ったわ。
花がこの先、どんな目にあっても、わたしはちゃんと、み、か、た!だからね!」
「………そうか……ありがとう」
花は、一瞬だけアユにハグした。
(お?!おおお?花?)
ぱっ
「さあ、表彰前夜だ、パーっとやるか!」
アユは顔を真っ赤にしていた。
「お、おうー!飲もう飲もう〜!」
第九十八話 完
第九十八話をお読みいただき、ありがとうございます!自分のエゴをさらけ出した花と、それを「優しさ」として受け止めたアユ。二人の魂が触れ合うような、静かで熱い夜でした。アユの「味方だからね!」という言葉、現実世界で戦い続ける花にとって、どれほどの救いになったことでしょう。
【読者の皆様へお願い】
交わされたこの二人の時間が、物語にどう深みを与えていくのか……。もし「アユの優しさに涙した」「二人の距離感にニヤニヤした」という方は、ぜひ下部の**評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)**やブックマークをお願いします!皆様の温かい声援が、執筆の支えになります。
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