第九十六話 事後連絡
現実の組織に渦巻く不穏な影が静かに足元を侵食し始める一方で思わぬ形で幕を閉じた因縁の余韻が仮想の世界に奇妙な静寂をもたらし逃れられない対峙の瞬間を前にして新たな決意の火が灯ります。
「花峰さん、これを見てください。現在沖縄支部で巻き起こっていることです。」
(……あの狸、この前指導したのに、まだやってんのか……しかも、退職希望まで出てるじゃないか。)
「高口も、もう限界みたいです。」
「僕たちが全員と面談します。この子達が辞めないことを最優先で動きましょう。
今まで何か手を打ったりは?」
「対策を練ろうとしたのですが、彼は上へ気に入られてまして。僕が口を出そうものなら怒られるんです。」
(なんで幹部がそんな扱いされてんだよ。ま、今回に関しては、部門は違うが、一応他の幹部連れて行くし、報告書次第では、なんらかの対応はせざるを得ないだろうな。ていうか、何で幹部の動きに俺が含まれるんだ?………謎だ。)
◆
「リサ、マネージャーからは何て?」
「………マネージャーさん、ご家族の都合で、しばらく仕事休んでたみたい……その間に……すでにタクはゲームを開始していたみたい。」
「え?!じゃあ、すでにこっちに潜伏してるってこと?!」
「あ、うん、でも続きがちょっと謎なのよ。」
「ん?謎?何だ?」
「……しばらくプレイしていましたが……何者かにPKされたようで……"もうしばらくゲームはしない"と言って……マネージャー宅にゲーム機ごと持ってきたと。
"しばらく仕事に集中する"……と言われています。
だってさ。」
「ぷ。しれっとPKされてんじゃねえか。そらやる気無くすわな。カッカッカッ」
「けど、課金しまくれる状態のタクを、PKできるって、よほどの手練れだよね。僕ら以外にも、手練れがいたということか。」
「あーーーー!マネージャーさん、前にわたしにメッセージくれてる!え!気が付かなかった!」
「おいおい、しっかりしてくれよ?危うく遭遇するところだったな。」
「この日は携帯を忘れた日だったから、そっか、あの間にメッセージがきてたのか〜。」
(画面にでてた通知、おばあちゃんが閉じちゃったのかも。)
「でも。結果オーライかもね、これでリサさんも安心してアルバイトもできるね。
念のため、ステータス画面を見ておこう。」
「ん?ステータス画面?」
「そう。もしかしたら、僕がPKしたかもしれないし……あ、僕じゃなかったよ。花は?」
花はステータス画面を開く。
ランスに操作してもらい、PK欄を見る。
「………2って書いてあるけど……心当たりは?」
「ん?そういや、この前王都で喧嘩売られた時に一人試合したなあ。それ以外は知らねえ。」
「……………え?」
「も、もしかして、俺か?」
「可能性はあるね。だって、攻撃力がでたらめだから、巻き込まれててもおかしくないよ。」
「誰をPKしたかはわからねえもんなのか?」
「そこをタップしても、何の反応もないなら、見れないかな。」
「ま、いっか、もし俺だとしても、わざとじゃねえし!カッカッカッ!」
「なんにせよ。しばらくは安泰だな。もうゲームすらやらないかもしれねえからな。
しかも、次こそは、マネージャーからゲーム機ごと回収しなきゃやれねえわけだし。
リサが連絡確認を怠らない限りは大丈夫だろ!」
「うん、ひとまず安心したよぉ。いつ来るかわからないなんて、気が休まらないもん〜」
「まあ、ひとつ油断しちゃならねえのは、もし、タクが本気でリサを狙っていたら、まだ諦めてねえかもしれねえってことだ。
そん時は、しっかり準備して、返り討ちにする。しっかり受け止めてやるんだ。
じゃねえと、タクも踏ん切りつかねえ。
お互いに、中途半端が一番きついからな。」
「たしかにそうだね。次はきっちり捕まえて、白黒はっきりさせないと、またくる可能性がある方がリサさんも不安だよね。」
「う、うん……」
「ん?どうした?」
「わたし……そこまで追い詰めたくないんだ。
タクは、そこまで悪い人じゃないんだ。」
「え?こんなところまで追いかけてくるのに??」
「まあ、そう思うよなランス。リサの言いたいこともわかる。
一緒に仕事してきたんだからな。」
(まあ、なんとなく、タクのこじらせてるものはわかるけどな。あいつ、あんなツラして……)
「リサ、タクと向き合う覚悟はあるのか?」
「へ?む、向き合う?」
「そうだ、余計なお世話かもしれないが、俺にはこの先どんなことが起こるか、大体想像がつく。
けど、あくまで想像だ。先入観を持たれたらいけねえから言わねえ。
でも、これだけは言える。
多分、タクに向き合わなきゃならない場面が必ずくる。」
「向き合う……タクと?……どうやって……」
「タクの望むようにしてやれって言ってるわけじゃねえ。そんな必要もねえ。
ただ、お前を追いかけてくる意味はなんだ?
どうしてリサなのか、そして、その理由は?
多分それがわかるんだ、きっと。
その答えがわかった時、お前は逃げずに、きちんと自分の思ったことを、言えるかってことだ。」
「ちょ、花!難しいよ、そんなの、タクがどういった経緯でリサさんを追ってるかなんて、本人じゃないとわからないんだよ?
もし、危険な思考だったら、リサさんは、かなり危ないと思う、それでも、向き合わなきゃならないの?」
「…………ランスの言ってることは、正しい。
正しいし、普通はその線が最もだ。
けど……本当にそうなのか……リサ、お前は俺と同じこと、頭よぎってるんじゃねえか?」
「……………」
リサはしばらく沈黙する。
(まあ、これはさすがに難しすぎたか……そうだよな。
追われる側は、追う奴の気持ちなんか、知ったこっちゃねえ。
ただ、ウザくて、怖くて、逃げたい。まあ、そんなとこだろう。
だが、タクの野郎は、そういう奴じゃねえ気がするんだ。
だから、どう転んだって良い。リサに向き合って欲しいんだ。
ま、これは俺のエゴだ。
ちと言いすぎた………リサに謝ろう。)
花は、自分の経験から、リサに対して自分のエゴを伝えていた。
たが、その時リサは口を開く。
「うん……やっぱり……花さんは、気づいてたんだね……タクのこと。
すごいね……わたしの方から聞いた情報だけなのに、まるで、タクと一緒に過ごした友達みたいに、タクのことわかってるみたいなんだもの。」
リサは、花をまっすぐ見た。
「わかったよ。わたし、タクの気持ちから逃げない。花さんに言われて、決心がついた。
けど、どんな行動するか、それはわたしにもわからない。
だから……」
「ああ、そのために、俺たちがいる。
バシッとケジメつけられるように、ちゃんと守ってやるからな。」
花は、リサの頭をポンと撫でる。
リサの表情は、少し大人になった感じに見えた。
「と、とにかく、僕たちがいるから、安心してね!」
(ま、こいつにはまだまだわかんねえだろうな。まだ知らなくていいんだ。てか、俺のこのモヤモヤなんて、味わわない方がいい。
これは、受け入れてもらえなかった奴の無念だ。
タクも、そのうち味わう。下手すりゃ崩れる。人は脆い。)
三人は、明日の表彰に向けて、流れの確認をカレッジで済ませて。今日は解散した。
(よし……飯を済ませたら、狩りに励むか!)
第九十六話 完
第九十六話をお読みいただき、ありがとうございます!タクがまさかの「自らゲーム機を返却」という形で一線を退きました。しかし、花が指摘したように、これは終わりではなく「本当の対峙」への準備期間なのかもしれません。リサが選んだ「逃げない」という選択が、今後の二人の関係にどう響くのか……。
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花の意外なまでの鋭さと、リサの成長が描かれた今回のエピソード。もし「花の言葉が刺さった!」「リサ、頑張れ!」と思ってくださった方は、ぜひ下部の評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)やブックマークをお願いします!皆様の感想コメントも、一通一通大切に読ませていただいております。
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