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Another Life 〜現実が詰んだので、フルダイブVRで人生やり直します〜  作者: hanaXIII
第三章 王都クエスト依頼〜新たな出会い――守護者とゴブリンキングの激闘 編

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第八十九話 反省

いつも通りの狩りの時間。けれど、アユは花の「異変」を見逃しませんでした。

ついに溢れ出した、花が心の奥底に蓋をしていた苦悩。

「自分を労うこと」――アユが差し出した救いの手は、花の凍りついた心を溶かしていきます。

仮想世界の夜景の下、二人の距離が決定的に変わる夜。

アユの決意を聞いた後も、その次の日も花とアユは、夜の時間帯に狩りに出ていた。


「あはは。花と知り合って、まだ間もないのに、なんだかこの狩りが習慣化してきてる気がする。」

「ん?すまない。もし、楽しくなければすぐに教えくれ、遠慮はいらないから。」

「いえ、楽しいわ。一人の憂さ晴らしよりも、スケールが違うもの。

それに、もしわたしのMPが尽きても、花がなんとかしてくれるから、何も考えずにぶっ放せるのが、もうたまんない!」


「一緒に森に入る際はパーティとして入るから、俺一人の時より格段に経験値が入る。

まあ、あまりステ振りはしてないんだが、手練れの魔法使いが一人いるだけで、ここまでとは、もう脱帽さ。」


二人は狩りを早々に切り上げて、いつもの王宮の一番高い場所へ行く。


「アユはすげえな。この数日間だけで、連携がかなりスムーズだ。誰かと合わせたことあるのか?」


「いいえ、パーティを組んだのはあなたが初めてよ?あ!もしかして、他の誰かとわたしが一緒にプレイしてるのがイヤなん……」

「そうか、なら、元々のセンスなんだな。歌もゲームも一流とはな。」

「…………」

(あーん!もう!なんでいじろうとするのにいつも食い気味にかぶせてくるのよー!絶対ワザとだ!でも……今日はなんだか変ねえ)


「……花、何かあったの?」

花は驚いてアユを見る。


「え?……どうしてそう思うんだ?俺、何か変な態度とってたか?もしそうならゴメン。」


「なんとなく、いつもと雰囲気が違うなと思ってね。なに?お姉さんに話してみたまえ。」


「………俺、子供に怒鳴っちゃって……全然大したことじゃないんだ……俺が畳んで整理した衣類を、ひっくり返しただけなんだよ……笑って見過ごせるはずなんだ……けど、なんかこう、俺の中で、何かが崩れたというか……気がついた時には爆発してたんだ。

誰かに怒鳴ったり、八つ当たりすることなんて、人としては恥だとずっと思ってたのに……自分が自分じゃないみたいで、俺、どうしたんだろうって、ずっとモヤモヤしてたんだ。」


「…………花。それは……」

花は俯いたまま王都を眺めていた。


「わたしは……あくまで花の味方だから、言うね。

多分だけど……もう容量オーバーなんじゃないかなあ。」


「容量……オーバー?……ゲームみたいなこと言うね。」

「そう、ゲームと同じよ。

花……いっときのストレスは、憂さ晴らしで晴れるかもしれない……けど、積み重なって、尚且つ進行形なら、その憂さ晴らしは追いつかないわ。」

「上手く、ストレスをコントロールできてないということか……。」

アユは首を横に振る。


「いいえ、そんなことないわ。花は、精一杯ストレスを軽減させてる。

けど、わたしが言いたいのは、積み重なった、心の傷ってこと。」

「心の……傷?」

「例えば、喧嘩でボコボコにされるとするじゃない?でも、努力してその相手より明らかに強くなれば、昔のボコボコにされたことなんて、ちっぽけになるじゃない。だって、今やったら勝てるって余裕があるもの。

けど、今の花は違う。

今までずっと嫌なことを言われ、され続けた相手を、受け入れて生きていかなくちゃいけない。

傷つけた相手は、花がどれほど苦しんだかなんて、わかってもない。

そうやって、"何も報われない"状態っていうのは、"克服しようがない状態"を続けてることだと思う……。

その気持ちは、痛いほどわかる……。」


「アユ……もしかして。」


「わたしもそう。

捨てられて、よりどころがなくて、仕事には復帰できたけど。それでも、当時のトラウマは克服できてない。

花は、今も心の容量がいっぱいで、余裕が無いんだと思う。

だから、些細なことでも、着火しやすくなってるんだと思う。」


「……やっぱりそうか……人から言われると、実感するよ……俺、職業柄、なんとなく気付いてたんだ。

俺、もしかしてって……けど、そう思うと、もっと絶望しちまうから……蓋をしてたんだ。

"俺は違う。そんな中でも心をコントロールしてこそだろ"って、人として一皮剥けるぞって、言い聞かせてたんだ。

だけど、大きな声を出した時、全く制御できなかったんだ……情けねえよな。子供のことは、心底愛してるのに。」


アユは、花の頬をつねくった。


「痛ててて!あ、アユ??」


「ごめん、普通は、抱きしめたり、キスしたりする場面だよね?

けど、なんか自然にこうなったの。

笑ったらいけないんだけどさ。

花は、もう十分過ぎるほど、頑張ってきたと思うよ?

話聞くだけでそう思うんだもの、実体験ならなおのこと、とてつもないストレスと経験値だと思うわ。

だから、自分を、責めないで?

花は、普通の人間でしょう?

ストレスがあれば、怒るのは当たり前じゃない?

わたし、カウンセリング受けた時に、まずは、自分のことを褒めてあげることって言われたことがあるの。

"わたし、十分頑張ったじゃん"って。

だから、花も、まずは自分を労って、そこからじゃないかな?

"自分を知って、自分を労う"

次の成長に進むにも、まず、ここからじゃないかなって、わたしは思うかな。」


シャッ。

スッ。

花は、アユに酒を手渡す。

「……ふぅ……たしかにそうだな……俺は……いっぱいいっぱいだよ。図星だ。そして、自分を俯瞰しても、よく耐えてると思う……そら爆発もするよ、そこら辺にいるただの人だからな。

ぷは!俺は、何ドラマの主人公みたいなことやろうとしてたんだろうな。

そんなカッコつけたって、誰も見てもねえし。

ただ、溜め込むだけじゃん。

そうだよな……そんな自分だってわかった上で、どうするか考えねえとな。

少しスッキリしたぜ。

ありがとう、アユ。」


「どういたしまして〜。寂しいなら、お姉さんが、いつでも抱きしめて、あ、げ、る、わよ?」

「アホ。」

二人は笑い合った。


(花は……良い人すぎるわ。

奥さんは、本当に運の強い人。よほど前世で徳を積んだのね。

けど……花はそのうち、あなたの元から離れるわ……高確率でね。

けど、それは因果応報。

悪気がなければ何をしても良いってことは無いの。

パートナーの言葉に耳を貸さず、追い詰め続けた。

自分たちの価値観がどうであれ、相手の主張と向き合わなかった。

それが、花をこんな目に合わせてる。

………こんな人に、一生を捧げちゃだめ……

そんな人に捧げるくらいなら……」


アユは心の声と葛藤していたためしばらく沈黙していた。


「アユ?……おーい、起きてるか?酔ってきたか?」

アユは我にかえる。

「んえ?!あ、ごめん!酔ったかも!なんちゃって。」

「なんか、すまんな今日は。いかんな俺も、いい歳こいて、見破られちまった。」

「なーに、年寄りみたいなこと言ってるの?

実際の歳は知らないけれど、みんな一人の人間なんだから。

そして、またそうやってカッコつけようとする。ダメですよ?"そんなんじゃダメだ"じゃなくて"やっちまったなあ、でも、次から気をつければいいさ"くらいでいいのよ。

お子さんも、きっと分かってる。

あなたの愛は、きっと届いてるから。」


少しの沈黙が続く。


「おい、アユ……」

「なにかしら?……って、へ??」

花は、立ち上がり、アユとは反対の方を向く。


「アユは……いつから水系の魔法……使えるようになったんだ?……火と雷しか、見たことねえのに……顔が濡れるから、もう使わないでくれ。」

アユは、優しく微笑んだ。

(花……泣いてるの?!)


「ごめん……たった今、偶然使えちゃったわ。

すぐに止めるから……そこを動かないでね。」


アユは立ち上がり、花の背中にそっと触れる。

背中は少し震えていた。

(自分の弱さを、受け入れたのね。花は強い人。逃げずに受け入れた。大丈夫……あなたはきっと、強くなる。)


アユは、花の背中をそっとさすった。

そして、背中に耳を当てて、花の体の前に軽く腕を回し、しばらくじっとしていた。

その震えがおさまるまでの、ほんの数秒だった。

花の震えはとまり、振り向いた。

アユと目が合う。


「どう?わたしのヒーリングは?」

「ああ、こりゃあ、儲けそうだ。」

シャ

花はまたアユにお酒を渡す。

花も、軽めのお酒を出す。

「あら?飲めないんじゃなかったの?大丈夫?」

「悪い思い出が、呼び起こされるから、避けてたんだ。

でも、この一杯だけは、いいんだ。」


「ありがとう、アユ。」

「ふふ…どういたしまして!


第八十九話 完

第八十九話をお読みいただき、ありがとうございます。

今回は、花の人間臭い弱さと、それを包み込むアユの包容力が描かれた回でした。

現実で戦い続ける人ほど、「自分を褒める」ことを忘れてしまいがちですよね。花の涙が、皆様の心にも何かを届けていれば幸いです。

【応援のお願い】

物語が心に響いた、二人の関係を応援したい!と思っていただけたら、ぜひブックマークや評価、レビューでの応援をお願いいたします。

皆様の温かいレビューが、この物語をより遠くへ届ける力になります。

【コンテスト&他作品】

現在、コンテストに挑戦中です!皆様の一票が大きな励みになります。

また、週末更新の

『Ultimate Wars ー 才能なしの人生だった俺、宇宙の危機で人類の切り札になる ー』

(Nコード:N6980LM)

も、あわせてチェックしてみてください!連日更新の『Another Life』とはまた違う、熱い物語をお届けしています。

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