第八十八話 ALOにきた理由
月明かりの下、ふとした瞬間にこぼれ落ちたのは、誰にも言えなかった独白。
似たもの同士だからこそ通じ合う、言葉以上の「共鳴」。
偽物の空の下で見つける、本物の感情の行方とは。
静かに、けれど確実に、二人の距離が変わり始めます。
「わたしは、元々歌手を目指してたの。
きっかけは、彼氏のバンドの影響。
ドラムの練習に付き合ったときに、歌ったのがきっかけだった。
それから、彼氏のバンドは飛ぶように売れ始めて、わたしは公にせず、紹介されたレコード会社で準備してた。
彼氏とは随分長かったから、婚約もしてた。
けど……
わたしの身体のせいで、婚約は破棄になった。
復縁を求めたけど。無理だった。
向こうは良いとこの子だったから、なおのことね。
わたしはあっさり捨てられて、夢も希望も無くなって、今に至る。
というわけ。」
(身体のこと……怪我、病気か?けど、今は飛び回って仕事してるって言ってたから、今は治ってるのか。)
「もう、体調はいいのか?」
「??……ああ、うん。ありがとう、気遣ってくれて。」
「あんまり、無理するなよ?狩りも、しんどかったら無しでもいいんだ。」
「大丈夫だよ。わたしも、憂さ晴らし派だから。
そんなこんなで、しばらく自暴自棄でさ。
そんなときにこのゲームに出会ったの。
ここなら、どんな攻撃しても許される。
何もかも忘れるように、ひたすらにゲームしてた。
けど、いつまでもこのままじゃダメだ。
そう思って、スナックで働くことにしたの。
そこで歌ったのが、さっきの曲だったの。」
「復帰後の再出発の曲みたいなものか?
でも、めっちゃ上手いな。ゲーム内でこれだから、実際はもっとすごいんだろうな。」
「未だに、辞めたレコード会社はわたしを嗅ぎ回ってるみたい。だから、いろんなところを拠点にして、働いてるってわけなの。」
「だからか。まあ、放っておかないよな。」
「しばらくは沖縄かなあ。東京と違って、だれも知ってる人いないし、楽なのよね。」
「移住は考えなかったのか?」
「ええ……まだ、深く人と関わることに抵抗があるの。だから、いろんなところをふらふらとしてる感じかなあ。」
「ゆっくりでいいんじゃないか?働いてるんだし、一歩踏み出してるんだから、偉いと思うよ。」
「花は、ただの憂さ晴らしから、なぜ、前に進めようと思ったの?」
「俺か?
俺は……成り行きで仲間になった奴がいたんだ。
はじめは、憂さ晴らしのことしか考えてなかった。だが、そいつといると、少しずつ自分らしさというか、ドス黒いものが、浄化されていってたんだ。
だから、仲間として意識するうちに、そいつにも悩みがあると知って……
それを今、救おうとしてるところなんだ。
だから、前に進まないといけなかったんだ。」
花は、リサのこと、タクのことを簡単に話した。
「タクって、あの宣伝してる子でしょ?と、いうことは、あの事務所……」
「ん?どうした?」
「花、くれぐれも気をつけてね。タクの後ろに、何かいるかもしれない。もし、いるとすれば、それはかなり危険な人。
上手に逃げた方が、その子のためにもなるから、用心してね。」
「……?……ああ、ありがとう。そっか、アユはそっちの関係だったから、色々情報は持ってるよな。
忠告ありがとうな。なんか、心強えな。」
アユは立ち上がり、花にある決意をする。
「わたし、ここを離れて、ダイニー大陸へ行こうと思うの。」
「お。そうなのか?」
「ええ。いつまでも、同じ場所にいても、ダメだなって思ってた。わたしも、憂さ晴らしばっかりだから。
けど、花とゲームをするうちに、こんな景色見れるんだーって。
なら、自分の人生も、ゲームも、可能性を探さなきゃなって思ったの。」
「いいんじゃないか?少なくとも、ゲームの中は、現実と違って、色々やれることが多いからな。
楽しさの幅が広がるのは良いことだ。
それに、新しいことをするのがきっかけで。現実にも何かいい影響があるかもしれん。
少なくとも、俺は最近考え方が少しずつ変わってきてる気がするんだ。」
「例えば?」
「詰んでるけど。まだ人生は続くんだ。
諦めるには、まだ他の可能性。見つけられるんじゃないかって。
少しだけど、そう思えるようになってきたんだ。」
「可能性か……。そうだね。
生きてる限り。可能性は捨てたらいけないよね。……うん。……花と話せて本当に良かった。
少し、前向きになれそう。」
自ら自分のことを語ってくれたアユ。
ダイニー大陸へ向けて、お互いに違う道を行くことになるが、今はただ、この時間を大事にしようと思うのだった。
第八十八話 完
第八十八話をお読みいただきありがとうございます!
アユの過去、そして彼女が抱える「闇」の断片が見えてきました。
現実で戦う花と、過去を乗り越えようとするアユ。二人の前向きな変化が眩しい回となりました。
【考察・感想募集!】
アユが警告した「タクの背後」にある危険とは……?
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