第八十四話 わずかな時間
楽しい時間はあっという間に過ぎ、別れの時。
王城関係者専用の豪華な宿舎を前に、アユが漏らした「安定」という言葉の裏にある影。
そして明かされる、花の規格外すぎるステータス。
ゲームを閉じ、現実へと戻った二人がそれぞれに想うこととは……。
「ここが、王城関係者の宿舎よ。」
敷地内に、巨大な洋館がそびえ立つ。
「でけえな。兵士の連中も、ここに部屋があるのか?」
「兵士はまた別よ。ここは、NPCをはじめ、王城の関係者や、その一族が使用する場所。」
「なら、アユはもう安定したゲームライフを送れてるのか。」
「安定……か。」
「ん?……どうした?」
「いえ、なんでもないわ。今日は助けてくれてありがとう。」
「助けたのか?その気になれば、追い払えたんじゃないのか?その、ムカ着火で。」
「ぷ。まあ、そうなんだけど、ミスしたらPKしちゃうじゃない?加減が難しいのよね!」
「なるほどな。確かにそれは難しい。納得だ。」
「そういえば、あなたも前作プレイヤーだったわね?花も、ステータス高いの?」
「いや、高いかはわからんが、5年間、ずっと攻撃力しか上げなかったからな、それを引き継ぎしたんだ。……こんな感じだ。」
花は、攻撃力の画面を見せる。
「んえ??へ?え?き、9000以上??な、何これ!……だから、あの威力だったんだ。」
「だから、加減が難しいのは、共感できる。」
「ぷ!共感にも、次元が違うけどね!あははは。」
無事に送り届けて、解散する。
去り際に、アユが花を呼び止める。
「あの、もし、また時間があるなら……」
「ん?おう、また遊びにくるよ!」
「そうね、良かったらデートしま……」
「王都の隣に森がある、そこで一緒に狩りしような!じゃ」
花は去っていった。
「……………狩りって、どんなデートよ!……ぷ。
やっぱり面白い人。」
◆
花はヘッドギアを外す。
(アユか……なんか、どっかで会ったっけ?
なんか、見たことがあるような……。どこだ?
あんな美人、周りにいたら絶対印象に残る……芸能人?……そうだ。もう何年も前に見たような……ま、いっか。
それにしても、俺と同じ、憂さ晴らししてたとはな。
何か訳ありかもな。
無理に聞くのはやめよう。思い出させて傷つけるだけだ。)
◆
「お帰りなさいませ、アユ様。」
「ただいま。」
アユは、洋館内の自室に戻り、セーブポイントからログアウトした。
「ふう……あ〜、今日は楽しかったなぁ……花か……なかなか現実詰んでたなぁ。わたしは未来が詰んだ。けど、花は、現在進行形で詰みっぱなしか……あれじゃ、生き地獄ね。
私が欲しかった家族。でも、得られたとしても、あんな扱いをされたら……それって、わたしの望む未来なの?
いや、そうじゃないわ。
たとえ五体満足でも、あれじゃ、生きてるのもつらい。
やり直しもできない。全てを捨てない限り………。
全てを捨てる……何て残酷な選択なの……。」
アユは広いリビングを見渡す。
「お洒落な家に住んで、何不自由ない暮らし……ある程度のものは、何でも手に入る……。けど……足りない……。
そう。
シンプルに、生きてて面白くない。
けど……今日は、本当に楽しかった……。
よし!
色々考えるのも、疲れたわ。
明日のシフトは……うん。週末まで無いわ。
明日、誘ってみましょうか!」
第八十四話 完
第八十四話、最後までお読みいただきありがとうございました!
花の攻撃力、とんでもないことになっていましたね(笑)。
そしてアユのリアルでの視点も少しずつ見えてきました。恵まれているはずの彼女がなぜ「詰んだ」と感じているのか……。
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