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Another Life 〜現実が詰んだので、フルダイブVRで人生やり直します〜  作者: hanaXIII
第三章 王都クエスト依頼〜新たな出会い――守護者とゴブリンキングの激闘 編

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第八十三話 城壁

夜の王都を連れ立って歩く二人。

平穏な散歩になるはずが、アユの「あるスキル」がきっかけで事態は思わぬ方向へ……。

最強クラスの兵士を前にした時、花が見せた「圧倒的な力」とは?

そして、二人の距離がほんの少しだけ近づく、特別な夜の終わり。

「あの、本当に、抜けるんですか?このバンドを」

「おうマネージャー、そうさ。才能あるやつに託すのが一番だ。

俺はここらで引く。もう十分楽しんだ。

ま、夜の方に興味があってな。

そっちに行くことにするわぁ」

そういって、事務所を出て行った。

「あんなに売れてるのに、夜って、いったい何をするつもりなんだ……ヒロシさんは。」



王都。

「ところで、なんで、プレイヤーが、兵士やってんだ?冒険しねえのか?まあ、価値観はそれぞれだが。」

「それはズバリ、お給料かな。

王都護衛や任務を行うことで、定期的に給料が出るから、ゲーム内のギルが増えるの。

モンスターと戦うのもありだけど、効率よく大金が入るのはこっちかなぁ。」


「ふーん。なんか、リアルなら、戦争や暴動とか、王都を守るってわかりやすいが、ゲーム内では、とくにピンとこないなあ。」


「ゲーム内にも、一応シナリオや、秩序があるの。あとは、NPCたちにも設定や寿命があって、現実世界と同じように、こちらでも世界として機能してる。だから、こちらのNPCと、お付き合いすることも全然ある話だし、運営は、そのリアルさを狙ってる。」


「そうか、なら納得だな。

そうなれば、その仕事一つ一つに、意味があるからな。

そういえば、アユは王城の関係者だよな?

何か仕事に就いてるのか?」


「ええ、わたしは医務室の担当なの。

主に、兵士たちの回復が仕事。」

「そうか、アユはもう安定したゲームライフを送ってるんだな。」

「……………ええ。安定しているといえば、そうね。」

「どうした?大丈夫か?」

「え?ええ、大丈夫。ほら、あそこが案内所よ。近くで兵士たちが訓練してるわ。」

「こんな夜中に、熱心なこった。」


二人が歩いていると、兵士から声をかけられる。

「おい‼︎そこのお前!アユ様と腕組みなど、どんな身分だ!見た感じ、上級民では無いな?!」


花は何も聞こえなかったように、素通りする。

(ああ、うるせえ。絵に描いたようなやつだな。面倒だからもう無視だ無視。)

「ちょ、ちょっと花?そんなあからさまに無視して大丈夫なの?」

「ん?ああそうだな。てか、声かけられる原因は。これ、なんだけど、それでも離さんのは、わざとだろ?」

花は笑いを堪えている。

「ぷ……いえいえ、そんなはずはありません。わざとなど、ぷ……そんなことをしたら、彼らに火に油、ムカ着火ファイヤーですわよ?」


「なーなが、ですわよ?だ。ぷ。

おい、あいつプルプル震えてるぞ、どーすんだよ。アユのせいだからな?俺は目立ちたくないんだ。」


「き、貴様ー!舐めた態度とりやがってぇ!

しかも、アユ様と腕組みだと??」


「ほら、嫉妬されてるじゃねえか!俺は討伐の詳細聞きにきただけなのに!」


ズン!


あからさまに、先ほどの兵士が目の前に通せんぼする。

「あ?なんだ?俺は討伐の詳細聞きにきただけだ。お前とはなんも関係ない。とっととそこどけ。」

「そうはいかん!アユ様と腕組みなんぞ、百年早いわ!」

「そんなの、お前に関係ねえだろが。いや、まてよ?なんかおかしくねえかこいつ。」


花はアユの顔を覗き込む。すると、アユは顔を上げて、ウインクをして舌を出した。


「ア、ユ、さん?まさか、何かしたのかな?」

「つべこべ言わずに、PvPを受けろー!このモヤシがー!」


ピク


「あん?」


キッ!

花は威圧を発動する。


兵士は全身ガタガタしている。

「これでもやるか?」

(す、すごいわ、まさかこんな。いけない。わたしの魅了が解かれちゃう。ごめんね、兵士さん!えい!)

アユは、指先で兵士に魔法をかける。


「ぐぬおお!PvP。受けろーー!」

花は仕方なしにとため息をつく。

「離れてろアユ。後でじっくり聞かせてもらうからな。」

「なんのことかわからない〜、こわ〜い。」

アユは討伐説明のある小屋の方に走って行き、建物の影からPvPをみる。

アユが魅了したのは、兵士の中でも最強クラスの兵士だった。戦えば周辺は危ない。


バトルが認証されて、始まった。


「くらえー!モヤシ野郎ー!」

ヒョイ

ドゴーン!

地面が抉れる。


シャ。  花の手に大剣が現れる。


(うぜえから、一発で終わらす。)


「うおりゃあ!くらえ!ジャガイモ野郎ー!」

花は大剣を大きく振りかぶり、刃ではなく、面を使って、思い切り兵士の横っ腹をぶち当てた。凄まじい衝撃波と共に、兵士は弾丸のような速度で吹き飛んだ。


ドゴーーン‼︎‼︎


兵士は城壁を突き破り、吹き飛びながらポリゴン状にバラバラに散った。つまり、PKされたのだ。


城壁は爆風も相まって一部大きく崩れた。


「え?な、なにあれ……花って……あんな化け物だったの?」

花はスタスタ歩いてアユの前を通り過ぎる。

その後、討伐の説明はすんなり終わり。

訓練所を出た。


「アユ。」

ビクー!


アユは花にびびっていた。

「な、なんでしょう?」

花はアユの前に立ち片手を振り上げた。

「ヒぃ!」

アユは、身体をこわばらせて身を丸める。


ガシ!


花は片手でアユをホールドする。

そして、もう片方の手で、頭をグリグリする。


「痛たたたたた!ご、ごめん!ごめんなさい!悪気は……あったかもー!……痛たたた!許してー!」


パッ

花は手を離す。

アユはその場にぺたんと座り込んだ。


「痛ててて。ごめんなさい。つい、花の実力が見たくって。その……スキルの魅了を使ったの。」

「やっぱり魔法だったのか。魅了…あんなこともできるのか、魔法ってすごいな。

なあ、俺にも魅了って、通じるのか?」

「いえ、通じないわ。」

「なんでだ?」

「す、すでに、試したから。」

アユは花をチラッとみる。


ガシ!グリグリグリグリ!


「痛いー!いてててて!ごめんなさいー!」

またぺたんとへたり込む。

「ぜぇ、ぜぇ、はじめに路地に入った時、即座に魅了を使ったの。でも、全く効かなかった。

けど、さっきのバトルでわかった。

多分、わたしの魅了の力よりも、花の威圧の方が勝ってたんだと思う。」


「なるほどな。だから俺には通用しなかったのか。」

「でも、もしわたしの魅了がレベルアップしたとしても、花にはもう使うつもりは無いわ。」

「お仕置きが怖いからか?」

「それもだけど……なんか、ズルしてる気がして、嫌なの。」

一瞬沈黙する。

「ん?ズル?なんかよくわからんな。」

アユは、花の肩にパンチする。

「わ。わたしも、よくわかんないの!だから、花には魅了、使わない。」

「ああ、そうしてくれ。実際、魅了がなくても、十分だと思うぞ?少なくとも俺は引っかかる自信がある。」

(花。それって?)

アユは顔が赤くなる。

(な、なんでわたしは赤くなってるの?よくわからない。なんで?ま、考えても仕方がない!冗談で乗り切ろう!)


「もう、あんなマネはしないでくれよ?

目立つのは嫌いなんだ。今度したら……」

花はグリグリの構えをする。


「もうしません!やだ怖い〜、もう、そんなに怒らないでよぉ。ほら、ちょっとくらい揉んでもいいから、許して〜」

「アホ!

それこそ、なんか負けた気分になるわ。そんなの、納得できねえ」


(え?それってどういう………)


二人は向かい合って、互いに顔が赤くなる。

二人の考えは似通っていた。

好きとか、いやらしい意味ではなく。お互いに。"魅力的な相手には正々堂々と"という意味合いだったのだ。

たった一夜の出来事だが、

はじめて、"自分と似た価値観の人に出会えた"。二人はそう思うのだった。


第八十三話 完



第八十三話をお読みいただきありがとうございます!

ついに花の規格外な強さの一端が、アユの前でも露わになりました。

二人の絶妙な距離感、楽しんでいただけていれば嬉しいです!

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