第八十二話 王城の宿
いつもご愛読ありがとうございます。
王都の酒場で、花とアユは互いの過去や境遇について少しずつ言葉を交わします。
「同族」であると確信した二人の間には、これまでにはなかった特別な空気が流れ始めていました。
賑わう王都で、二人はこれからどんな冒険に巻き込まれていくのでしょうか。
数年前。
「俺たち、そろそろ婚約すっか?だってお前、生理きてないんだろ?
俺は子供が欲しかったんだ。早いとこ籍も入れて、結婚もありだな!
こう見えて、うちの家は堅物の集まりなんだ。
早く跡取りが欲しいらしい!」
「うん。おとうさま、大企業の社長さんだもんね。
けど、まだ身体にはなんの反応もないんだ。」
「もう二ヶ月だろ?それは確実なんじゃねえのか?」
「こんど、病院にいってみるね。」
数ヶ月後。
妊娠ではなく。早期閉経であることが発覚した。
婚約は、いとも簡単に破棄され、あっさりと別れを告げられた。
復縁を求めたが、二度と関わるなと叱責され、連絡も取れなくなった。
まもなくして、歌姫は突如姿を消した。
数年後。とある都心のキャバクラ店で、彼女は名を上げる。
その美貌と歌唱力で、客が入り、その界隈では、"遅咲きの魔女"と言われるようになっていた。
◆
「ところで、アユは、あんな風にいつも誰かに追われているのか?」
「いえ、あんなのはたまによ。今日はしつこかったの。
ちょっとムカついたから、お尻にファイアしたら、怒っちゃったの。
ぷぷ。今思い出しても笑えてくるわ」
「ぷ。ムカ着火ファイヤーだな。」
「そうー!それそれ!まさにそれよー!
あははは、花、面白すぎ、もう大好き!」
「おいおい、ついに酔ってきたか?
だが、みんなからその価値を求められるなら、セーブポイントも考えないと、待ち伏せされるんじゃねえか?」
「そうなの。だ、か、ら、わたしは王城の、敷地内に、部屋を借りてるの!」
「へ?王城内に?!それって、城の関係者ってこと?」
「御名答!まあ、お城の中も、油断はできないんだけどねえ。」
「ん?なんでだ?あ、もしかして、兵士からもモテるのか?」
「そうなのかなぁ?まあ、よく良いよってくる人もいたり、争ったりしてたりもするかなぁ。
PvPやってたりするよ?」
「まあ、魔法の特技といい。その見た目といい。そら、どこに行ってもそうなるわな。」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん〜、あ、少し酔ってきたかも、こんなこと滅多にないんだけどねえ。」
「そ、そらそうだ。途中からテキーラしか飲んでねえんだからな。もう、何十杯飲んだんだ?
バイタルの判定でまだそこまで酔ってないということは、現実だともっと強いってことじゃないか……まさに。魔女だな。」
「魔女かぁ、いいねえ〜、わたしの異名は"遅咲きの魔女"だからねえ〜。」
「へえ、ゲーム内でも、異名があるのか。」
「いえ、それは現実の方でーす。」
(い、いったい、何者なんだ、アユは。)
「いま、何者なんだ?って思ったでしょう?な、い、しょ!」
「それはかまわない。気にはなるが、そこまで重要じゃない。現実でアユが何者だろうと、ここにいるのは、酒を飲み干す、魔法使いのアユだ。」
「花、やっぱり良い人ね。そこらのサルとは違うわ。
あ!そんなことより、花は王都に何しにきたの?」
「ああ、言ってなかったな。
モンスターの討伐依頼を受けるために、王城に行く途中だったんだ。」
「あ、例のゴブリンキングのことね。兵士たちの間でも噂になってる。
かなり強いらしいからね。ここいらで運営が面白いの入れてきたなって感じ。」
「そんなに強いのか?その、ゴブリンなんとかってのは?」
「そうね、もう兵士が何人もチャレンジして返り討ちにあってるわ。」
「それは面白そうだな。」
「たくさん飲んだし。そろそろ出ましょうか。
花の予定を大幅に遅らせてしまったわ。」
「全然大丈夫だ。むしろ、わからないことを聞けて良かった。こちらの方が時間を取らせてしまったよ。ありがとう、アユ。じゃあ、また何かあれば、メッセージ、で……え?」
アユは、花の腕にガシっと絡まる。
「もうすぐそこだし、わたしも一緒に詳細聞くから、ね?」
「ね?って、わかったわかった。じゃあ、そこまで案内。よろしく頼むよ。」
「はーい!」
アユは上機嫌だった。
初めて理解者が現れて、仲間ができた気分だった。
第八十二話 完
第八十二話をお読みいただき、ありがとうございました!
アユの過去と、彼女の抱える強烈な孤独。花とアユ、二人の「同族」としての物語が動き出しました。
王城にて、二人は一体どんな「真実」を目にすることになるのでしょうか。次回もぜひお楽しみに!
【応援のお願い】
物語がさらに深みを増してきました!
面白いと思っていただけましたら、ぜひブックマーク登録や、下の**評価(★★★★★)**で応援をお願いいたします!感想コメントも一通ずつ大切に拝読しております。
また、現在コンテストにも挑戦中です。皆様の応援が完結への何よりの糧になります。引き続き、よろしくお願いいたします!
【他作品のお知らせ】
SFファンタジー作品も絶賛連載中です!
『Ultimate Wars ー 才能なしの人生だった俺、宇宙の危機で人類の切り札になる ー』
Nコード:N6980LM




