第八十一話 同族
いつもご愛読ありがとうございます。
ついに語られた、花の抱える現実の痛み。
それを聞いたアユは、自分の秘密を抱えたまま、花の手を強く握り返します。
「同族」であると確信した二人の間には、ゲーム内という枠を超えた、特別な空気が流れ始めていました。
数年前。
「絶世の美女!歌姫降臨だ!この子、間違いなく、メジャーデビューできる!」
「本人の希望で、まだ素顔は晒してませんが、このまま成長すれば、大物になります!」
「うちの秘蔵っ子だ。大手の会社だが、この人材は50年に一人だ!とくに歌声がとてつもない!」
「知ってました?これは内密ですが、今世界で人気爆発中バンドの、ドラムの方と、すでにお付き合いしてるそうです!
音楽はその影響だと!
噂では婚約したとかしないとか。」
「だからまだ顔出ししねえのか!なるほどな!
まあ、そんなの、関係ない!アイドル的な魅力もあるが、この子は歌唱力だ!アイドル路線は本人を縛ってまでやるもんじゃない!」
それから一年。
歌姫は、その姿を業界から消した。
◆
花は、今の現場を包み隠さずに、端的に話した。
「ふっ。笑えるだろ?そこで憂さ晴らしへ、という流れさ。
自分自身、判断の遅さ、未熟さには、呆れ返っている。
そこまでされて気づけよってな。」
アユは、笑わなかった。むしろ、触れた花の手を、いつのまにか強く握っていた。
今度は、アユが震えていた。
「ごめん……想像していた以上だったから。
もっとこう。彼女にフラれた。とか、そんなありふれたことだと思ったの。
軽く聞いてしまって、本当にごめんなさい。思い出したくないから、ここにいるのにね。」
「いや、いいんだ。こうやって、ネタにしてでもやり過ごさないと、いくらゲームの世界に入っても、現実からは逃げられない。
向き合うしかないんだ。」
アユは、目の前のお酒を飲み干した。
「お、おい、大丈夫か?リアルの体調には影響なくても、バイタルスキャンで酔いとか誘発されるって聞いたぞ?」
「ふーん、そういうのは詳しいんだ〜。」
(え?もしかして、そこまで強くない??)
「なんちゃって!
実は、お酒は強すぎるから、多分酔いを誘発されることは稀だと思うなあ。
じゃあ……わたしも話さないと、フェアじゃないよね。」
「いや、気にするな!無理に話さなくていい。
人それぞれ事情があるんだ!
アユにとって辛いなら、話さなくて構わない!
もし、気が向いたらでいいから!アユのペースでな!」
「花は、優しいね。これで見た目が良ければ、もうハーレムだな。」
「それを言うな。一番落ち込む。………ぷ!」
二人は笑い合った。
いじりと自虐が上手いネタとして二人のツボに入る。
「ありがとう、花。けど、これだけは言わせて?
わたしとあなたは、同族よ。
それだけは言える。
ゲームの中で、こんな気持ちになったのは、初めてなの。
あの……その。花が迷惑じゃなければ、フレンド登録させてもらえない?
やっぱり、いくらゲームの中でも、異性との交友は、ダメ?」
「いや、かまわん。俺の交友なんぞ、気に留めてなどない。むしろ、俺も同じことを考えてた。
アユ、これからまた色々教えてくれ。
俺、このゲーム、まだ進み出したばかりなんだ。アユがいると、心強いよ。」
アユはドキドキしていた。
今まで数多のイケメンたちに告白されてきたが、そのどれとも違う感覚だった。
恋愛なのか、なんなのかすらもわからない。
顔は真っ赤になっていた。
「と、とんでもない。ありがとう。……よし、これで登録できたわ。」
「ん?なんか赤いぞ?ついに酔いがきたか?」
「そ、そ、そ、そうかしら?気のせいよきっと!さぁ、夜はまだ長いわよ?」
(え?!まだ飲み続けるの??)
ひと段落したかと思えば、酒はまだまだ進むのだった。
第八十一話 完
第八十一話をお読みいただき、ありがとうございました!
互いの傷を認め合い、フレンドとなった花とアユ。
二人がこれからどう歩んでいくのか、そしてアユの隠された過去が物語にどう絡んでくるのか……。
次回もぜひお見逃しなく!
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物語が核心に迫っています!
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