第八十話 魔法
いつもご愛読ありがとうございます。
王都の店で、魔法使い・アユと腰を据えて語り合う花。
「前作プレイヤー」という共通点に加え、二人の間には、言葉にはできない「似た者同士」の空気が流れ始めます。
アユの問いかけに対し、花はついに胸の内を語り出すのでしょうか?
第八十話 魔法
「いらっしゃいー!お!アユ!男連れとは、初めてじゃねえか!」
「そうなの!そこでナンパされちゃって!」
「いえ、してません。」
「お前にしては……普通の男だなあ!ガッハッハ!まあ、そこら辺座ってくれ!」
(普通で悪かったな、どうせ美女と野獣さ。……って、明るいところでみると……うお?!
アユって、やべぇ!かなり美人だぞ?!
……こりゃ、スカウトもくるわなぁ。)
花は顎に手を当てて、首を縦に振っている。
「なに、納得してるの?」
「ん?ああ、そうだな。納得してたよ。
明るいところで見ると、こんなに美人だなんて思わなくてな、面喰らってたのさ。
アバターとはいえ、びびったよ。」
「??……アバターじゃないけど?するわけないよ、あんな面倒な設定。あなたもそのタイプでしょう?」
「はぁ??アバターじゃない??
確かに、面倒っていう価値観は同じだが……驚いた。はぁ……親に感謝しろよ?」
「…………なにわけわかんないこと言ってるの。
さあ、座りましょう。」
店の一番奥のカウンターに座る。
人の気配はほとんどない場所だ。
「お酒は?」
「飲めねえ。茶でいい。」
「じゃあ、わたしはいつもの。よし、注文完了。」
モニター注文すると、数秒でやってくる。
「とりあえず、乾杯。」
二人はガラスを合わせる。
「んーと、何から話そう。」
「そうだな。なぜ、魔法が使えるのが、貴重なのか、教えてくれ。」
「わかったわ。そこからね。
魔法使い自体は、たくさんいるわ。ジョブを設定すれば、その時点で魔法使いになる。
でも、魔法は、MPを使用するでしょう?」
「ああ、俺も少しは昔ゲームやってたから、その辺の常識的なものはわかる。」
「そう。なので、MPと魔力両方伸ばさなきゃならない。
物理アタッカーは、超必殺技のみ、SPを使用するでしょう?
けど、魔法は、通常のものでもMPをつかう。
だから、育つまでに時間を要するの。」
「え?俺たち物理アタッカーも、そんな消費するもんがあったのか……色々勉強になる。」
「え?知らなかったの?必殺技は使わないの?」
「そんなの知らん。普通に振り回してるだけだからな。よし、今度ランスに聞いてみよう。」
「話を続けるわね。わたしは、魔力でいうと、すでに前作上位レベルなの。これがどういうことか、わかる?」
「ああ、ポイントを魔力に全振りしたってことか?……あ、まさか、アユも、前作プレイヤーなのか?」
「その通り……その口ぶりからすると、花も?……にしては、知識が曖昧ね。」
「俺も前作プレイヤーだ。俺の場合は、最初の森から一切ストーリー進めてなかった。5年ほど、ひたすら森の中で狩りをしていたからな。」
「え?……ぷっ!あははは、それ、面白い!」
「わ、悪いか?このゲームを、憂さ晴らしにしてたんだよ。笑いたきゃ笑え!」
「いえ……おかしいのはそこじゃない……わたしと、同じだなと思ったの。
わたしは、魔の森ってところで、ひたすら憂さ晴らししてた!
まさか、同じようなことしてる人がいるなんて、おかしくておかしくて、あははは!」
……………
この瞬間、花とアユは、同じ感覚になる。
そう。憂さ晴らしをしているということは、お互いに、現実が詰んでいるのでは?
そう思うのであった。
しばらくの沈黙。二人は数秒目が合うが、互いに言葉が出なかった。
「次、何飲む?」
「え?おごってくれるの?」
「ああ………、好きなだけ、おごってやるさ。思う存分飲めばいい。」
花が気を遣っていることに、アユはすぐに気がついた。お互いに似たような境遇なんだと察したからだ。
「……………花も、詰んでたの?」
アユはストレートに問う。
花は、アユが追加注文したものを手渡す。
不思議なことに、花は、その日出会ったばかりのアユに、すでに親近感が湧いていた。
美人かどうかなんて、そんなことは頭に無かった。
ステータスが異常であること、自分が数年憂さ晴らしをしていた心境を思うと、この華やかな女性に、一体何があったのか。そんなことばかりぐるぐる考えてしまうのだった。
(いや、やめよう。人によって"詰んだ"と感じるレベルは違う。こんな恵まれたやつが、そこまで"詰む"状態になんか、そうそうなるもんか。)
花は無言で数秒沈黙していた。
ふと、アユは、花の手に触れる。
花の手はわずかに震えていた。アユはそれをすぐに察知した。
「………ごめん、辺な質問して。忘れて。楽しく飲みましょう?」
花はハッとする。
「あ!いや、ごめん、ぼーっとしてた!」
「このわずかな間に?クス!面白い人」
アユは困り顔で少し花をいじる。
花は少し参ったという表情になる。
(ああ、なんだろう。リサとは違う、なんかこう、同族というか。アユになら話してもいいかもな。俺も、いつまでも一人で抱えすぎず、ネタにするくらいのメンタルで、心を開いていかないとな。)
「アユ……気ぃ使ってくれて、ありがとう。
実はなーーー。」
第八十話 完
第八十話をお読みいただき、ありがとうございました!
ついに花の口から、現実の苦悩が語られようとしています。アユという存在は、彼にとって救いとなるのか、あるいは……。
物語が大きく動き出す次話、ぜひお見逃しなく!
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物語がさらに深く、濃い展開になってきました!
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