第八話 空港
人生は、選択の連続だ。
だが、間違えた選択をしたと気づいても、
現実では簡単に引き返せない。
もし、もう一度選び直せる場所があるとしたら――
俺は、迷わずそこへ行くだろう。
「とにもかくにも結婚せよ。
もし君が良い妻を得るならば、君は非常に幸福になるだろう。
もし君が悪い妻を持つならば哲学者となるだろう。
そしてそれは誰にとっても良いことなのだ」
古代ギリシャのソクラテスの妻はかなり気性が激しかったという。
実に共感できる。
俺は、じいちゃんの教えの通り生きてきた。
だから、良い友達に恵まれたと思っている。
職場でも周りに残るメンバーは良い奴らばかりだ。
彼女やパートナーとも、同じ観点で、まずは仲良くなった。はずだった。
しかし、妻だけはこれに反していた。
じいちゃん、違うじゃん!
そう思ったことも何度もある。
妻は「自分がどうしたいのか」という軸が、決してブレない。
相手が嫌がろうが関係ない。
にもかかわらず、自分が嫌なこと(努力したり支え合うこと)は何がなんでも拒む。
「うちの、親戚がいつもよくしてるんだから、しんどくても顔を出して、尽くすべきだ」
これは、支配だろう。そう思うよな。
よく頑張ったぜ、昔の俺。
ソクラテス的に言うなら、俺は「人がどうすれば嫌な気持ちになるか」を、深く考えられるようになった。反面教師として、俺は人にはこれからも嫌なことをしないように心がけて生きて行こう。
それが経験できた。
そう思うことにしよう。
そんなことを考えていると、光に包まれた。
◆
「ん?空港?」
巨大な空港の中にいた。
近未来的なテイストの空間に、電光掲示板は巨大な電子ビジョンだった
俺は立ち尽くしていた。
ここは、行き先を自分で選べる場所らしい。
現実では、それが出来なかった。いや、選んだけどミスだったんだ。
「お客様、新規プレーヤーの方でしょうか?」
振り返ると、CA風の美女が立っていた。
俺は新規プレイヤーであることを伝えて、この場所について聞いた。
「ここは、ALO airportです。世界各国からユーザーが利用されるため、新規ユーザーはここで自分のゲートを選択致します。
選択すると、はじまりの都へ転送され、そこから冒険がスタートします。
ユーザー数が多いので、はじまりの都は複数存在しています。
ゲームを進めるにあたり、徐々に共通マップを共有できるようになり、クエスト難易度が上がると、世界のプレーヤーとの触れ合いも可能です。」
俺はこのまま説明を受けることにした。
「ゲートはまず、大まかな分類から選び、その後、小さなゲートを選んで飛び込みます。
小さなゲートの数はとても多いですが、はじまりの都の風景はどこも一緒。そして、もしそのはじまりの都で良ければ、次回ログインから自動的にそこに行くようになりますし、選択したい場合には、小さなゲートをまたここで選択することも出来ます。」
「なるほど、まずは大きなゲートから選べばいいんだな?」
「そうです。
あなたは日本人なので、日本語圏寄りのゲートはあの50番ゲートがオススメです。
日本語圏ゲートは、ゲーム開発主軸の国として、今後人気が出るでしょう。
世界のプレーヤーが集まる可能性があります。」
「ふーん、、、まあ、どうでも良いけど、とりあえずそこにしとくか、考えるのも面倒だし。」
「そして、小さなゲートは、数字によってー」
「うん、もういいよー、説明ありがとね!」
そう言って俺は大きなゲート、小さなゲートを潜った。
相変わらず説明は省略した。
実はこの小さなゲート、やはり意味があったらしい。
また、ログインする際に小さなゲート自体は毎回選択できるとのことだったが、それは後で知るのだった。
第八話 完
現実では選び直せなかった。
だが、この世界では――まだ選べる。
次回、はじまりの都へ。




