第二百二十八話 半々
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ロットの現実の姿(病室でリハビリに励む菜月)や、担当看護師・一ノ瀬葵衣の壮絶な過去、そして二人が同じ「憂さ晴らし」としてVR世界にログインしている事実が明かされました。
さらにラストシーンでは、ダイスリー王国の夜景を眺めていた花が、「検温」「看護師」「葵衣」というワードから過去の記憶(病院修行時代)を呼び覚まし、「あーーーーーー!!!!」と絶叫する衝撃の展開となりました!
過去と現実の点と点が繋がり始めた中、物語は二人のゲーム内での冒険へと戻ります。
注目の第二百二十八話、ぜひお楽しみください!
「ヒロシさんよお。地下闘技場ってのは、プレオープンどうだったんだ?」
「ジェイソンか。半分成功、半分失敗というところだな。」
「招待状を各所に送ったんだろ?血祭りにあげて盛り上がったんじゃねえのか?」
「そのつもりだったが、来なかった。本来の目当てのプレイヤーが見当たらなかったのだ。
招待状はランダムにプレイヤー宛に届けていたからな。
その中に、とてつもない実力者がいてな。お面をかぶったプレイヤーだった。
見た目はふざけていたが、そいつ一人にかき回されて、イベントは終了さ。」
「なんか、あやしくねえか?お前のお目当てのプレイヤーが、そのお面のやつなんじゃねえのか?」
「その線は十分ありうる。しかし、確証もない。そんな状態で表立って調査はできんのだ。」
「まあそうだな、目立っちゃまずい。で?成功したものってのはなんだ?」
「檻だよ。ステータスを下げる檻だ。これはうまくいった。ダイフォー王国から課金で特注したものだったが、これだけあればこれからの計画に役に立つ。」
「ヒヒヒ、あの計画が動き出すんだな?」
「まだ先だがな。時期を見て必ず実行する。」
二人は不敵な笑みを浮かべて笑っていた。
◆
ピロン……
「お!花からだ!」
「花?菜月さん、女の子のプレイヤーともお友達になったの?」
「ちがうよ、花は男のプレイヤーだよ。みんなは花とか、花さんって呼んでるみたい。」
「え?」
「どうしたの葵衣さん?また固まって?」
「はっ……ごめんなさい!なんでもないわ。よし、バイタルも異常なし!さあ、その花って人と、たくさんゲームやっておいで!」
「うん!行ってきます!」
(…………花…………何か引っ掛かる。)
◆
「よ。さっそく誘って悪いな。」
「全然大丈夫!今日はどこ行くの?」
「憂さ晴らしできそうな場所に行きたいんだが……ロットは行きたいところはあるか?」
「………そうだねえ………憂さ晴らしなら、この森、ダイツ王国との国境付近かなあ……わたし個人としては……」
「ん?どうした?」
ロットは恥ずかしそうにしてなかなか言い出せない。
「ロット?気を使わなくていいんだぞ?自分の行きたいところ言ってみてくれ。」
「こ、ここかな」
「砂漠?」
「うん……情報を集めてたら、ダンジョンが発見されたらしいんだ。しかも、そのダンジョンを中心に、都市があったみたい。」
「おお、いかにもゲームって感じだな。よし、じゃあ、そこいってみっか!」
「え!?う、憂さ晴らしは!?」
「ん?ああ気にすんな、憂さ晴らしなんてのは一人でもいつでもできるからな、さっきの森は今ロットに教えてもらったから、今度一人でじっくりいくよ。せっかく一緒にいるんだ。俺はわからねえことも多いから、ロットが行くところについてくのがいいかなと思ったんだ。迷惑だったか?」
「い、いえいえ!迷惑だなんて、こっちこそありがとう、わたしの力じゃ多分行けないから……少し前から気になってたんだけど、誰かとパーティを組むとなると、またガツガツしたゲームになっちゃうなあって、悩んでたんだ。」
「決まりだな。ロット、そこに立ってみろ。」
花とロットはロビーの光るサークル内に入る。
シュン!パッ!
「へ!?ここ、一階のロビー!?」
「なんか、ワープできるらしいぞ?転送装置ってやつらしい。動線があまりに長いから、あの後受付嬢に聞いたんだよ。いちいち登るのは面倒だってな。」
「は、ははは。」
(言いそうー……)
「よし、じゃあ小型トレインで近くまで行くか!」
「ちょっと待って花!準備は!?どうやって行くの?」
「………確かに……砂漠エリアにはどうやって行くんだ?」
「ぷ!花、知らずに行くつもりだったの!?」
二人はロビー内のカフェに入り、まずは作戦を立てることにした。
「さっきロットはマップ指差してただろ?だから、ここ目指せば良いのかなって思ったんだよ。」
「エリア5か、うん、たしかにそこからが一番早いルートだね。ただ、そこは少し治安が悪いというか、あまり発展してないんだ。NPCたちも荒いし。」
「けど、そこが一番近いんだろ?」
「うん、わたしが調べたら、エリア5を抜けてそこから砂漠地帯に入るのが一番近道だね。」
「エリア5には行ったことあるのか?」
「ない……一人で行く勇気がないんだ。何が起こるかわからないから……」
「ログアウトできなくなるとか?」
「うん……ソロだと一発で気をつけなきゃいけないんだ。」
「ふーん……なら、これやるよ。脱出装置。この小さいのが一組セット。片方が転送先、片方がボタンだ。こいつをどこか安全な場所に置いておけば、いつでも脱出可能だ。推定エリアは大陸内だな。ただし、ビギナ大陸規模の範囲と思ってくれ。このダイニー大陸じゃ、飛べる範囲が限られてるかもしれん。」
「転送装置!?ワープってこと!?す。すごい!こんなの見たこともない!」
「ああ、俺が作ったからな。まあ、何百個もあるからいくつかやるよ。うまく使ってソロを楽しむといい。」
ロットは嬉しさのあまり、花に抱きついた。
ガバ!
「ありがとう花!何から何まで!」
ギシギシ!
「うぐ!お、おいロット!装備!鎧が!痛え!」
「あ!ごめん!」
「ロットは、その鎧は気に入ってるのか?」
「へ?いや、気に入ってるも何も、これ装備しないと、紙切れ防御力だからね。」
「ぷ!紙切れ防御力!」
「わ、笑うことないじゃないかー!」
「いやすまん!それ、俺も仲間に言われてるんだよ、一緒だなと思ってな。」
『君は紙切れ防御力なんだから、気をつけてね!』
二人の思考はシンクロした。
「へ?」
(こ、このセリフって……まさか、アーサー……)
「お!?シンクロした!?ロットも誰かに言われてたんだな、このゲームではこのワードが流行ってんのか?」
「そ、そうかもね、ははは……」
少しの沈黙の後、花が喋り出す。
「少し脱線していいか?ロット、その鎧、もしそこまでこだわりが無いなら、軽装にしたいって思わないか?」
「そ、そりゃもちろん、わたしも可愛い衣装とか、着たいし、動き回ると体力ゲージがすぐ減るから、困ってたんだ……」
「なら、俺が作ってやろうか?軽装で防御力はそのままの服を!」
「え!?そんなこと出来るの?」
「出来る。旅に行くなら準備からだな。まずは装備やアイテムを整えるか。一旦上に戻ろう。」
二人はまた最上階へ戻る。契約した部屋はプレミアムルームと言うらしい。
花の部屋、マスタールーム内に、すでに簡易工房を設置していた。
ロットは装備を脱いで、花に渡す。
「お、サンキュー。そこに置いといてくれ……って、うお!?」
ロットは鎧を脱いで、指示されたところに置いた。
アンダーシャツは、ユナと同じ、ぴっちりとしたインナーだった。
(ダニィ!?こ、こいつのスタイルもか!なんでここのプレイヤーはみんなスタイルがいいんだよ!?いや、俺の周りが異常なだけだ。さすがにロットは素じゃねえだろ……)
「ん?どうしたの花……あ!」
ガバ!
ロットはインナーから溢れそうな胸元を隠す。
「ち、違うんだ、これは、その、ちょっと設定を間違えたと言うか。」
「…………」
(ふう、良かった。さすがにこの幼い見た目でこれは反則だろう。)
「ふ、気にするな、ここはゲームなんだ、誰にでも理想はある。待ってる間これでも飲むといい。」
花は胸元を見たことを悟られないようにクールに振る舞う。静かにコーヒーを飲んでクールに振る舞っていた。
「あ、ありがとう、本当に恥ずかしい……実はね……わたし……今14歳なの……し、将来こんなスタイルになったらいいなって、一つだけ大きなカップに設定しちゃったから、アンバランスになっちゃった……」
ブーーー!!
花はコーヒーを吹き出した。
(な、なにぃ!?一つだけだと!?………なんて逸材なんだ……いかん!落ち着け!てか、ロットってそんなに若かったのか!?にしては落ち着きすぎてんだろ!年齢は聞かんかったことにしよう。ここはゲームの中だ。お互い対等なプレイヤーとして接さないとな。)
「ふ……誰にでもミスはあるさ、ロットはどんな衣装を纏いたいんだ?素材はあるか?」
ロットはポーチから服を取り出す。
「はじめはこんな衣装でプレイヤー登録したんだけど、やっぱり防御力を考慮しないと行けないなと思って……前は守りの要がいたから気にしなかったんだけど……」
(こ、この衣装着るのか……まあ、女の子らしくてヒラヒラしたものか……てか、このスタイルにこの服って、やばくねえか?)
「わかった、試しにやってみるよ。ふ……任せときな。」
「花……」
「ん?」
(やべ、動揺を隠すためにカッコつけすぎたか!?)
「鼻からコーヒー垂れてるよ?」
「な!?い、いかん!」
花は即座に鼻を拭いた。
(しまった!いい歳こいてダサすぎる!)
気を取り直して、花は鍛冶スキルを発動。防具を分解して、衣装に融合させる。
「わあ!す、すごい!鍛冶スキルってこんな感じなんだ!」
「コモンに言って、鍛冶スキルを免除して良かったぜ。もはや発想次第で作れねえものはないからな。ほい、出来たぞ。」
「あ、ありがとう!さっそく着替えてくるね!」
ロットは自室に駆け込み、着替えてきた。
「花ー!見てー!すごくいい感じ!」
バーン!
(う、うおおお!いかん!やっぱりこうなったかー!)
ロットはまるで踊り子のような服装。胸元は谷間がばっちり見えるほどブカブカではだけている。下はショート丈のため、脚はほぼ見えている。
(アユとまではいかんが、この衣装もあからさますぎる。やっぱりゲームの中は個性が強めだな。)
「よく似合うじゃないか。動きやすさはどうだ?」
「うん!全然違うよ!軽い!ステータス確認したけど、前と防御力が同じでびっくりしたよ!」
「大成功だな。ついでにほれ、これもやるよ。半分余った素材で作ってみた。これで、ソロでもばっちりだな。」
「え!?こ、これは!?」
第二百二十八話 完
第二百二十八話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
冒頭では地下闘技場のヒロシとジェイソンの密談! お面をかぶった花さん(前作の無双)の影を追いかけつつ、なにやら怪しげな「ステータスを下げる檻」を使った計画を企んでいるようで……今後の波乱を予感させます。
一方、現実世界では「花」という名前に引っ掛かりを感じる葵衣さん!
探求を続ける二人ですが、VR世界へやってきたロットと花さんは、砂漠のダンジョンを目指すべく準備を開始!
花さんのお手製「転送装置」のプレゼントや、アーサーの「紙切れ防御力」のセリフが重なるシンクロなど、クスッと笑える二人のやり取りが最高でした。
さらに、重い鎧を脱いだロットの「14歳で1つだけカップを大きく設定した」という衝撃の告白と、それに動揺して鼻からコーヒーを出す花さん!
結果として完成した踊り子風の超絶可憐な衣装と、花さんが「半分余った素材」で急遽作成した更なるプレゼントの正体とは……!?
「ヒロシたちの企みが気になりすぎる!」「紙切れ防御力のシンクロで吹いたw」「14歳の設定ミス告白からの花さんの動揺が面白すぎる!」「鼻コーヒーをツッコむロットちゃん可愛い」「花さんが作ったもう一つのプレゼントって一体何!?」など、たくさんの熱い感想をお待ちしております!
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花が余り素材で作った追加アイテムの正体とは!? そして二人は無事に砂漠地帯エリア5へと向かうことができるのか――!?
気になる第二百二十九話も、どうぞお楽しみに!




