第二百二十六話 どこにする
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前話(第二百二十五話)では、案内のお礼として花がロットへ渡した「試作品の収納ポーチ」に大感激!
軽装になったロットと共に中央ギルドのカフェへ向かった二人は、ダイスリー王国の5都市構造やランキング制度、さらに北の砂漠のダンジョンや未開の大陸といった未知の世界観トークで盛り上がりました。
同じソロ思考として意気投合し、気楽なフレンドとなった二人。
そしてログアウト用の拠点を探すため、ロットが提示した「宿屋一覧」のホログラムパネルを花が覗き込んだのですが……!?
注目の第二百二十六話、ぜひお楽しみください!
花はホログラムの画面を指先でスクロールする。
「………………」
(花……叫んだかと思ったら、無言でスクロールし始めた……)
ピタ。
花はスクロールをやめた。
「多すぎる……見るのも面倒だ……」
(言うと思ったーー!!)
「そ、そうだよね……これは流石に多すぎるよね……なら。」
ロットは自分の方にパネルを向き直す。
「こ、これならどうかな?気になる場所とかある?」
今度はダイスリー王国のマップを出し、宿屋検索をして場所と一緒に見えるようにする。
「おお、ピン差しならわかりやすいな。さすがロット先生。」
ロットは「先生」と言われても、もうスルーしている。
(よかった、これなら気になる場所を絞って見やすいよね。)
「…………ここは?」
「ここは、王都中央の一番大きな宿屋だよ。この国には似つかわしくないけど、巨大なタワーになってる。」
「ああ、チラッと見えてた、あの建物か。」
「そうだね!中央ギルドからすぐそこだよ。観光目的に、巨大な宿屋を建てたんだ。宿屋というより、もはや高級ホテルやビルみたいな雰囲気だね。」
「………もうここでいいや。さっそく行ってみよう。ロットにも来て欲しいんだが、時間は大丈夫か?」
「うん!大丈夫だよ!行こう!」
二人は中央ギルドを出て、小型トレインで移動する。
「ん?無料?」
「そうだよ、冒険者ランクがB以上になったら、国内のあらゆるものが免除されるんだ!花はAランクだから、他にも特典があるかもね! 特典については調べても全ては公表されてないんだ!隠し要素っぽくて、ゲームって感じだよね!」
小型トレインで移動すると、目の前には巨大な建物がいくつも並んでいた。
「こりゃあ圧巻だ。ダイスリー王国は、何もかも規模が違う。いったい、どの建物に入ればいいんだ?」
近くまで進むと、ホログラムのモニターが宙に浮いていた。そこにはメイン受付を案内している表記が記されていた。
「とりあえず、正面のあの建物に行ってみましょう!」
二人は比較的小さな建物に入る。小さいとは言っても、ビギナ大陸の受付ロビー程度の大きさは備わっていた。
「ようこそ、ダイスリー王国へ。このエリアは宿屋都市になっております。お泊まりですか?ご契約ですか?」
「花、中央の宿屋はかなりの高額だから、とりあえず宿泊で…」
「契約でお願いします。」
「えーーー!!!」
「ん?何かいけないのか?」
「やばいよ!中央エリアの宿屋は高額なんだ!借金になっちゃう!」
「ふ…俺はそこまでアホじゃないさ……んー……ここでお願いします。」
「そ、そんな簡単に!!」
ロットはそっとパネルを覗く。すると、最高ランクの最上階を契約していた。
ロットはふらついた。
ガシ!
「ちょ!?ロット、大丈夫か!?」
花はロットを受け止めた。
「は、花……そこは、一番高額だよ……やばいよ。」
花は受付嬢に問いかける。
「あの、ここって、そんなに高額なんですか?」
「この最上階フロアは7000万Gになります。ただいまキャンペーン中なので、本来はこの倍の値段がつきます。」
「だから言ったのに……」
「まあ、買えない額じゃないから大丈夫さ。」
「えー!!買えるの!?どれだけG持ってんの!?」
そこで、受付嬢から話しかけられる。
「お客様、冒険者ランクの提示をお願いいたします。オプションや免除が対象になるかもしれません。」
シュイン。
「ん?ああ、わかった。ほら、これだ。」
花はAランクの証明を見せる。
「お客様はAランク冒険者だったのですね。であれば、この契約の負担額は、100万Gとなります。」
「へ?」
ロットは目を丸くする。
「そんだけでいいのか?」
「はい。宿屋やホテルに関しては、冒険者のランクに応じて購入額の免除が定まっております。当社は、Aランクの冒険者様には、自己負担が100万を超える場合は、全て免除の設定となっております。」
「だとさ、良かったよ。じゃあ、それで契約してくれ。」
「こ、こんな特典があるのか……いやいや待って!100万Gでも相当な額だよ!?」
「なら、俺のステータス画面を見てみろ、ほら。」
「う、うわあ!」
ロットはまた腰を抜かす。
「ま、丸の数が……桁が……異常すぎる。」
「ほとんど狩りしかしてねえからな。あと、スキルかなんかでレア度の高いアイテムもドロップするらしいんだが、全て変換してきたからな。」
「お客様、では、どのフロアにするか選んでください。オススメは、この王都が一望できる、このフロアです。」
「じゃあ、そこで。」
「決めるの早!」
「では、サインも終わりましたので、フロアへ案内致します。入室制限はどうなさいますか?」
「ん?入室制限?」
受付嬢は丁寧に説明する。
「ああ、なら、フレンドはもちろん使用自由だ。」
「え!?わたしも使っていいの!?」
「もちろんさ。むしろ、俺一人では使い切らん。」
「あ、ありがとう。」
(は、花って何者なの……?アバター変更無しって聞いてるから、至って普通の顔……普通の人の代名詞みたいな見た目だから、素性がわからない。)
受付の建物から出て、地面に浮いている移動式の車に乗り込み案内される。これも本来なら有料だが、Aランク冒険者とその仲間は無料とのこと。
「うひゃー!さらにでけえ建物だな!」
巨大な高層ビルがいくつも並ぶ。それはまるで近未来の大都市のようだった。
宿泊都市の中心の建物に入ると、エレベーターに乗り込む。
「お、ここが最上階か。」
「いえ、ここは中層です。あちらへどうぞ。」
違うエレベーターに乗り込む際に、カードキーを手渡された。アバター内に収納していると自動で使用可能になる仕組み。
「お、ここが最上階か。」
「いえ、ここは上層です。」
「………………」
「すごい!もうずいぶん上がってきたよ?」
ロットも興奮している。
ウイーン……
何もない屋上へ出た。あたりは綺麗な庭園が広がる。
その中央部分に、巨大なサークルが描かれていた。
3人はそこに立つ。
シュン!
「へ?こ、ここは?」
あたりはロビーのような場所。
「ここが、最上階です。」
「な、何がどうなってんだ?」
受付嬢は、ホログラムで説明してくれる。
「なるほどな。最上階は、空中にフロアごと浮いてるんだな?」
「その通りです。他のものが安易に来れないように、セキュリティの観点からも安全が確保されております。もちろん、空中域では、モンスターや災害も、シールドで保護されているので、このフロア周辺に入り込むことはありません。ごく自然の風や光など、害のない範囲のみ通過できる仕組みとなっています。」
「なあ、もし俺がここから落ちたらどうなるんだ?」
「自動的にフロアに転送されます。お客様の安全を確保するため、転落しても、シールドに触れたら自動転送される仕組みとなっています。ただし、先ほど渡したカードキーの証明書をアバター内に入れている場合に限るので、ご注意ください。」
「設定次第で、自動転送を解除できるのか?」
「できます。アバター内で操作していただくと、オフにできます。」
「色々ありがとう、助かったよ。」
「またわからないことがあれば、お声かけください。」
受付嬢は帰っていった。
花たちは、受付フロアのゲートを抜ける。
すると、そこは高級ホテルのような仕様の光景が広がる。廊下もいくつもに分かれていた。
「お、おいおい、さらに広がるのかよ。普通に部屋があるもんかと思ったぞ。」
室内でホログラムマップを確認する。
「なるほど、何十人でも過ごせるように、個室もそれ相当にあるのか。」
「まるでホテルだね。しかも、一つ一つ大きな部屋だ。各フロアに20部屋、様々な形の部屋がある。」
「ロット、どの部屋がいい?一室をロットが自由に使うといいよ。」
「え!?そ、それはさすがに申し訳ないよ!花が契約してるんだよ?」
「かまわない。さっきも言ったが、これだけあると持て余す。色々教えてくれているお礼だ。」
「花……ありがとう。すごい、こんな経験できるなんて……ど、どれにしようかなあ……」
◆
シャ!
カーテンの開く音が病室に鳴り響いた。
「失礼します。あら?またゲームね。ふふふ、手術も無事に成功して、もう随分経つ。よくここまで回復したわね。最近流行りのゲームか……女の子でも、ハマるのね。ま、人のこと言えないけど。」
そこには、ヘッドギアを装着してゲームをしている少女の姿があった。
パソコンモニターに、ゲーム風景が映っている。
(覗いちゃダメだけど、ちょっと失礼……え!!こ、この人!!)
第二百二十六話 完
第二百二十六話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
宿屋選びで「多すぎるから」と一番巨大なタワーの最上階(本来7000万ギル!)を即決契約してしまう花さん!
焦りまくるロットでしたが、前話で獲得した「Aランク」の驚愕の特典(ほぼ全額免除で負担額100万ギル)と、桁違いの所持金によって見事契約完了! Aランクの威力が遺憾なく発揮された爽快なシーンでしたね。
そして案内された最上階は、なんと空中に浮遊するセキュリティ抜群の豪華フロア!
気前よく一室をロットにプレゼントする花さんの男前(?)な気遣いと、目を輝かせるロットのコンビ感も最高でした。
……しかし! ラストシーンでは舞台が現実世界の「病院」へ!
ベッドでフルダイブVRをプレイしている少女と、モニターを覗き込んだ看護師(あるいは医師)の衝撃のリアクション……!! 一体モニターには誰(何)が映っていたのでしょうか!?
「Aランクの割引率がバグりすぎてて笑ったw」「7000万ギルを『買えない額じゃない』って言う花さん流石すぎる」「浮遊フロアの部屋を一室プレゼントしてくれる花さん、スパダリすぎる」「ラストの病院の少女って、もしかしてロットちゃん……!?」「モニターに映った画面で花さんの正体がバレるのか!?」など、たくさんの熱い感想をお待ちしております!
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病室でゲームをする少女の正体、そしてモニターを見た人物が驚愕した理由とは――!?
気になる第二百二十七話も、どうぞお楽しみに!




