第二百二十一話 秩序
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カレッジのコモンと情報共有を行い、自国愛の強い「ダイスリー王国」などの存在を知った花。一方、ピナクルオーナーのヒロシ率は暗部組織「アンダーシャドウ(us)」が結成され、VR世界での覇権と裏の資金源確保に向けて動き出して……!?
VR世界で加速する秩序の乱れ。そんな中、ランスとの久々の対戦と深い対話を経て、花は一人「謎多きダイスリー王国」への調査を決意する――!
注目の第二百二十一話、ぜひお楽しみください!
花は翌日も朝からログインしていた。
年内の仕事も終えて、家族も帰郷。
しかし、何かあれば仕事には出なければならないということで、気は抜けなかった。
(しかしながら、平和だ……誰にも気を遣わなくていい。ヨイショしなくてもいい。自分のパーソナルスペースを脅かされない。最近思う……俺は、誰かと生きていくことに、向いてないんだろうな。俺の周りにいる身近な異性は、いつも俺を無碍に扱う。俺がされて嫌なことなんてお構いなし。自分のしたいように無理やり強制してくる。そんな扱いされやすい俺がダメなんだろうな。見た目か?優しさか?もはやなんなのかすらわからねえ。だが、自己主張すると喧嘩になる。俺は、何もワガママを押し付けたいわけじゃない。困るからやめてほしいと言ってるだけだ。だが、自分の思い通りにしたいやつ、支配欲の強いやつからすると、"支配されるべき対象が言うことを聞かないこと"が間違いと思うんだろうな。なんで俺が支配されるべき対象なんだよ。ふざけんじゃねえ。そんな扱いされるんなら、もう他人といる必要なんかねえよ。そんな人生クソみてえだな。俺はもう期待せん。)
ピロン。
(ん?ランスから。今からか。ちょっと合流するか。)
「花、久しぶり。」
「まだ数日だろ、どうした?」
「この前、ミントと探検したんだって?詳しく教えてよ、興味がある。」
「ああ、そのことか。」
花は、妖精族の国や村のことをランスに話した。
そして、オベロンたちからの依頼も詳しく話した。
「よく見つけたね。妖精の国かあ。」
「機会があれば、ランスたちも会える。だが、人攫いとかの件があって、あいつらは国や村から出てこねえ。」
「僕はハイジャンプできないから、まだ行くのは先になりそうだよ。そんなにゾロゾロいったら、妖精たちをびっくりさせてしまうよね。」
(こいつは、なんて大人なんだ。好奇心があるなら、連れて行けって言うもんだろうに。)
「行きたくないのか?」
「そりゃあ行きたいよ、でも、タイミングが合う時で大丈夫!僕は打倒マサムネで特訓があるから。それにしても、アップデートから一年で、少し秩序が乱れてきたね。前作ではここまでの自由度もなかったから、ほとんど運営の土台の上の遊びだったけど、今は違う。ゲーム内のお金、生き方、楽しみ方の幅がよりリアルに近づいたから、それに対して、悪いこともしやすくなってる。」
「その通りだランス。自由ってのは、それだけリスクがあるってことだ。人生もそうだ。」
(花はまた意味深なことを。)
「とにかく気をつけねえとな。ただ、今のところ、表にはそこまで噂にもなってねえ。俺たちが目撃したのは、その序章だったのかもな。」
ランスは複雑そうな顔をしている。
「現実世界もある意味自由だ。最低限の法はある。でも、全ての価値観を決めるルールはねえ。だから、みんな試行錯誤して、何かを得ようとする。その方法が、時に人を傷つけることかもしれないし、迷惑をかけることかもしれない。それこそ、個人の価値観だからな。」
「この前の……ラピーが捕まっていたことについても、やつらは、ラピーに指一本触れてなかったんだ。ただ、その場の空気感、恐怖感、状況で追い詰めていた。僕らがいかなければ、きっとサインさせられて、労働延長していたに違いない。」
「ああそうだ。契約書の中にも、目に見えないかわからないくらいの文字で、細かいルールが書いてある。ゲーム内だろうと、あの手の書類は危険なんだ。サインした方が悪くなっちまう。」
「マサムネってさあ……本当にあっち側なのかなあ……」
「お前も、違和感感じるのか?」
「花も!?……うん、僕は違和感を、感じた。僕が初対面した時も、僕らをあえて逃した。あそこまで強いなら、コリスと一緒に僕を捕まえることって、そんなに難しいことじゃなかったと思うんだ。」
「何か事情があって、雇われてるのかもな。まあ、みんなやり方は自由だ。俺たちはその罠にかからないようにしていこう。その点は、現実となんら変わりはない。俺たちも、このゲームで、やりたいことをやりゃあいいんだ。」
ランスは少し戸惑ったが、顔を上げた。
「そうだね、自分のやりたいことか……花、時間あるなら久しぶりに相手してよ!」
「お?望むところだ!」
二人はPvPで対戦を始めた。ランスはまだ日が経ってないのに、前より成長している。
「やるなぁ、成長期ってのはこんなにすげえのかい?」
「涼しい顔してよく言うよ!それ!」
ブォン!!ガキン!!ブォン!!
しばらくして、ふたりは休憩する。
カレッジ内のカフェに向かった。
「それにしても、もし人攫いが表に出てきたら、この世界はどうなってしまうんだろう……」
「…………」
「花?」
「んー……あいつらのやり口……表向きは経営……場所も地下とか、見えないところで悪さしてる……もしかすると、表に出ない方法をあえて選んだ上で、何か企んでるのかもな。」
「企む?もしかして、裏で何か計画してるってこと?」
「ああ、このゲームって、もう世界的に見ても有名だろ?覇権を握ったやつは頭一つ上の生活になる気がするんだよな。」
「だから、覇権を握るために、勢力拡大を図ってるということ!?」
「単純だが、俺はそう踏んでいる。しかも、表立つと、運営に目をつけられるからな。何か違う方法……この前のように、自分のテリトリーに来た人間を罠にはめる方法が主かもしれないな。」
「じゃあ、やっぱり僕たちはその網にかからないように気をつけたらいいってことだね?」
「他の方法の線がねえってわけじゃないと思うが、とりあえずそれが最善かもな。契約書を巧みに使ってるところを見ると、やつらも自分たちが悪くならねえように立ち振る舞ってるからな。」
「大晦日、僕も行けることになったんだ。みんなが集まったら、注意喚起しよう。」
「お、行けるんだな。そうだな、そうしよう。」
二人はマップを共有した。
「すごいね、こんなところまで行くなんて。ここがダイスリー王国、あっちがコリスたちのいるダイツ王国か、そして、こっち側はまだ未開の地か。おそらく、ダイフォー王国だと思うけど、どんなところだろうね。」
「また暇な時に調べてみるか。」
「ぷ。」
「ん?なんだランス?」
「花は、元々冒険にあまり興味がないのかと思ったから、最近はすごいなとおもって。でも、今は僕らの仲間の中で、誰よりも冒険してる。」
「……………」
「みんな、少しずつ変わっていってる……」
「………ランス?どうした?」
「いや、なんでもない!また何か新しい情報があったら教えてよ!今日は特訓に付き合ってくれてありがとう!」
「……おう、また何かあれば言えよ。」
二人は解散した。
花も一旦ログアウトする。
冷凍食品を食べながら、ぼんやり考えていた。
(やっぱり、表立って行動は起こさねえよな……俺ならそうする。わざわざ目立つことして、運営に締め上げられてもバカだ。どっかに罠がある。もしくは、目立たねえところで襲われるかだな。一人行動は危険ということか?……と言われても、俺は割と一人行動好きだしな……ま、襲われたらその時だ。)
花は、食事を済ませて、午後からのプランを考えていた。
(………ダイスリー王国、ダイフォー王国、どちらも気になる。ダイツ王国は、今後コリスやユナたちと冒険しそうだな。ダイフォーは、近々小型トレインが開通して行き来しやすくなる。となると、今謎なのはダイスリー王国か……。大晦日まで、あと数日か……。よし、ダイスリーまで行ってみるかな。なんなら、向こうでもセーブポイントを作ってもいいな。さて、あとは誰と行動するか……。いや、今回は一人で行くか、みんなを危険に晒すわけにはいかん。いくらミントでも、ゲーム内のキャラとはいえ、何かあったら二度と戻らねえ。久しぶりに、気ままに行くか。)
ピロン。
花にメッセージが届く。
(お?新しい情報か?……これは!?よし、さっそくログインするかな。)
第二百二十一話 完
第二百二十一話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
冒頭の「他人からの身勝手な支配欲」に対する花さんの冷めた独白から始まり、ランスとの深い対話、成長著しいPvPバトル、そして悪辣な裏の組織の「表に出ない絶妙な罠」を見抜く考察力まで! 人間ドラマとサスペンスが見事に融合した素晴らしい回でしたね!
自由が増えたからこそ、法律の隙間を突くような悪意が生まれる……。現実の社会構造と重なるテーマに対し、「現実もゲームも、やりたいことをやればいい」と淡々と語る花さんの姿が最高にクールでした。
そして、マサムネに対する「違和感」をランスも感じていたことが発覚! やはりマサムネには、あえて彼らを逃がした裏の事情があるのでしょうか……!?
大晦日の集まりを前に、一人で「謎多きダイスリー王国」へ潜入することを決めた花さん。
ラスト、彼のもとに届いた「一通のメッセージ」の差出人と、その驚きの内容とは一体――!?
「冒頭の花さんの愚痴が深すぎる……現実のリアルな疲れが伝わってくる」「ランスがどんどん大人になって強くなってる!」「マサムネが実はイイ奴説、かなり濃厚になってきた!」「ミントを巻き込まないように一人で行く花さん優しい」「ラストのメッセージは誰からなんだ!?」など、今回もたくさんの感想お待ちしております!
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花のもとに届いた衝撃のメッセージとは!? ダイスリー王国への単身潜入は果たしてどうなるのか――!?
気になる第二百二十二話も、どうぞお楽しみに!




