第二百二十話 暗躍
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雷神トルの本気の雷撃をワープで回避し、下界の「裏の組織」の存在について共有した花とミント。モンスターの村へ帰還した際、花のアバターのポケットの中で謎の袋が強烈な光を放ち始めて――!?
袋の中身の正体とは!? そしてカレッジへ戻った花が掴んだ「ダイニー大陸の裏の組織」と、その暗部組織「アンダーシャドウ」の不穏な計画とは――!?
注目の第二百二十話、ぜひお楽しみください!
「こりゃなんだ!?めっちゃ光ってるぞ!?」
花は袋に手を入れて取り出してみる。
すると、トルが使っていた粉だった。
「これ、空飛べる粉か?なんで俺のポケットに……」
花はひとまずアバター内に収納した。
「もしかすると、ご主人様にも空を飛んでほしいと思ったのでしょうか?」
(あのジジイがそんなこと思うだろうか……まあいいや、持ってて損するものじゃねえからな。)
「とりあえず、何に使えるかわからねえから、保管しとく。また空飛びたくなったら言ってくれ。」
「はい!かしこまりました。お気をつけて、ご主人様。」
ミントと別れて一人で狩りをしながらカレッジへ戻った。
カレッジ内。
「おおおお!花か!!」
(相変わらず声でけえな……)
「ちょっと話したいことがある。今から時間あるか?」
「おおおお!もちろんだ!!なんでも聞いてくれ!!」
(耳が……うるせえ……)
スタッフがよく使用する、会議室まで移動する。
「ここは、盗聴とかはねえよな?」
「もちろんだ!完全に音は消してある!」
「コモン……スタッフ側だから信用するが、構わないか?」
「ん?もちろんだ!守秘義務は守る!」
「わかった、他言無用で頼む。もし約束を破ったら……このカレッジを破壊する。」
「な!?大丈夫だ!安心しろ!」
「…………コモン、ダイニー大陸で、裏で暗躍してる奴らがいるのは知ってるか?」
「暗躍?なにかの組織か?」
「そうだ。この世界はVRだ。暗躍もクソもねえが、組織立って動いてる連中がいるかもしれねえ。とくに、人攫い系だ。この前も報告したが、あいつらが絡んでる可能性がある。」
花はその他にも懸念点を話した。
「なるほどな。お前がプレイ中に知り合ったNPCも、人攫いに遭ったということか。ここにはそんな噂は流れてこないな。だが、何か聞いたら花へ伝えよう。」
「いいのか?守秘義務は?」
「すでに、そのNPCから依頼を受けてるんだろ?なら、ゲーム要素も絡んでるかもしれんからな。もし、プレイヤーたちが絡んでそうなら、なおのことお前に注意喚起してやらんと、何かに巻き込まれたらいかんからな!」
「あれから、あいつらの動向は?」
「ああ、建設中のものは、年度末には完成予定だ。お前たちが行った場所はほんの一部。あの奥に、巨大都市を建設予定だ。」
「差し詰め、本拠地って感じか?」
「そうかもしれないな。ただの事務所にしては、あそこまで広げる意味もわからん!」
「もし、この大陸の他の国も含めて裏で繋がっていたとしたら……各地で人攫いや理不尽な契約を結ばされるプレイヤーも増えるかもしれん。そうなると、運営もやべえんじゃねえか?」
「たしかに、それは秩序が崩壊しかねんな。しかし、運営は何も動かん。現実となんらかの組織に接点があった場合、迂闊に手は出せんのだ。それこそ、規約にも自己責任の範疇と記載もある。事件が起きない限り、警察が介入することも難しいだろう。」
「結局、やられっぱなしってことか。」
「まさか、お前、乗り込んでいって潰す気じゃないだろうな?」
「そんな面倒なことやるかよ。」
「ほ……よかった。お前の攻撃力なら、破壊しかねないからな。」
「まあ、まだ何も被害は受けてねえからな。」
「ま、まだ?おいおい、この世界を潰そうなんて考えるなよ?」
「安心しろって、俺は面倒なことが嫌いなんだ。ひっそりとゲームするだけさ。だから、もし何かあるときは教えてくれ。面倒なことは避けたいから。」
「そ、そういうことならさっきも言ったが任しておけ!」
コモンと別れて一人で森で狩りをした。
(コモンも何も掴んでねえのか。一体、どこ探しゃいいんだ……もし、なんらかの組織がこのゲーム内にいるなら。闇雲に動いても危険なだけか。)
ズバババ!!
花は、考えながらもしっかり身体を動かして狩りをしていた。
(とりあえず、みんなにも注意喚起しとくか。)
花は、メッセージで全体に注意喚起した。
ピロン
『それは気になるね。わかったよ。僕たちも気をつける。何か情報があれば報告し合おう。』
皆それぞれ返信しあった。
(リサは受験勉強があるが、年越しはこっちにくる。念のためアナウンスしておいて損はない。)
再びカレッジに戻り、電光掲示板に目を通す。
(何か、情報はねえのか……ん?)
『人材募集!ザ ピナクル都市!夢の開発へ!』
(……………これだな。こうやって一般募集から理不尽な契約へすすんでやがるのか。他には……)
『スキルカレッジ、分校設置予定!』
(ん?スキルカレッジをダイニー大陸でも建てるのか?確かに、マジカルカレッジがあるからおかしな話ではないわな。ん?これは?)
花は注意書きや概要を見るため、個別の小さな掲示板モニターを開く。
『スキルカレッジ分校!本校登録者は無料利用可能!』
(これだ!各地の分校へ行って、情報を集めよう!)
花は一人でカフェに入り、作戦を考えた。
防音にして、一人でぶつぶつ言いながら作戦を立てていた。同時に、更新されたマップを開いて眺めている。
「他国への調査も必要だな。話によると、ダイツ、ダイスリー、ダイフォーって国がある。ダイツ王国は、コリスたちが住む、和風テイストの国。残り二つはわからねえ。北がダイスリー、西がダイフォー……カレッジはそれぞれの国に設置予定か。行くにしてもかなりの距離がありそうだな。トレインがどこまで走ってるか確認しておこう。」
花はターミナルへ行き、マップを同期させて更新する。
自分のマップ画面でも、トレインのルートを探れるようになった。
「小型トレインは、ダイワン王国の領土の端までか……」
花は、サービスカウンターに行き、他国との交通アクセスについて聞いた。
すると、それぞれ国内に小型トレインはあるが、国境間は開通していないとのこと。近々開通予定ではあるらしい。
王国間の条約を結ばなければ成立しないが、ダイワンとダイツ、ダイフォーの王国は比較的前向き。しかし、ダイスリー王国は、開通時の条件をつけてきているとのことで、そちら側にはまだ時間を要するとのこと。
「ダイツ王国と、ダイフォー王国には、いつ頃開通する予定なんでしょうか?」
「年明けに開通の予定です。」
「え!もうすぐじゃん!」
「はい。できれば全ての国を開通させたかったのですが、そうはいきませんでした。」
「ダイスリー王国って、何かある国なのか?」
受付はおそらくNPCだが、質問に対してスムーズに答える。
「ダイスリー王国は昔から他国に対して競争心を持っております。そして、独裁的。納税制度もしっかりあります。ですが、実力主義なので、力のあるものを好みます。来るもの拒まず、野心家は大歓迎。この大陸一の国家を目指している。と言ったところでしょうか。」
「国内の雰囲気や様子は?行ったらやべーところなのか?」
「いえ、他のプレイヤーもたくさんいます。しかし、愛国心が強く、その雰囲気で振る舞わないと、非国民として差別され、いづらくなることもあるそうです。」
(はぁ……俺が一番苦手なやつだぜ。自国愛が強すぎて、それを誇りに思うあまり、他国を否定的に見る。そして、自分たちこそが一番だと思い込む……身近なあいつらにそっくりじゃねえか……)
「じゃあ、とくに国境を越えても、捕まったりすることはねえってことだな?」
「はい、その辺りは大丈夫かと思います。ですが……最近、行方不明の方が続出しているとの報告を受けます。ターミナル内でも情報提供の問い合わせが多くなっています。なので、もし遠出される際は、お気をつけて。」
花は、ざっくり最近のストーリー展開を話した。
「そうだったのですか、その方々も人探しをしていると。わかりました。その方の特徴についても、何か情報があれば、ご報告いたします。」
「ありがとう。色々助かったよ。よければこれ飲んで。」
花は飲み物を手渡した。
「あ、ありがとうございます。あの、お名前は……」
花は、登録してあるプレイヤー名を見せた。
「みんなは俺を花と呼んでいます。」
「かしこまりました。花様。もしまた、なんらかの情報等必要でしたら、お声がけください。」
「ありがとう。」
花はその場から去った。
(NPCの挙動にしては自然すぎるなぁ、さすがは最新の人工知能。)
◆
ダイニー大陸、ピナクル本社。
「今日はお集まりいただきありがとうございます。これから、会議を行います。では、まずは自己紹介から……ピナクルオーナーのヒロシです。今回、暗部組織のリーダーを務めることになりました。皆様、よろしくお願いします。」
「ダイスリー出身、ジェイソン」
「ダイツ出身、コリハン」
「ダイフォー出身、アーキラ」
各王国の暗部のリーダーが集結した。
ジェイソンが血走った目で問いかける。
「ヒロシさんよぉ、ただ集まるのもなんだ。組織名を決めようぜ?なんなら、あんたがリーダーなんだから、決めてくれてもいい。」
「そうですねえ、では、under shadow、頭文字をとって、通称usというのはどうでしょうか?」
「は!ちゃっかり考えてやがる。俺は異論なし。」
ほか二名も異論なし。
「では、改めて皆よろしくお願いします。」
ヒロシは淡々と計画について説明する。
歓楽街の興行収入を上げること。
低コストで効率よく働く従業員の確保、秘密裏に開発する兵器。
課金による装備などの強化。
これらを目標に動いていく。
「我々がこの世界で覇権を取り、現実の世界にも影響をもたらす組織にする。もはや今、全世界でこの世界が話題になっている。これを逃さずに、速やかに覇権を取る。」
「だな。ゲーム内通貨がリアルでも交渉材料として取引され始めてる。本格的に現実の裏の奴らがくる前に、こっち側で覇権をとっておく。」
「良い理解だ。だが、現実の世界の裏側まで取ろうとは思っていない。そんなことは無謀すぎる。我々は、自分の人生の身の丈より、少し贅沢をする。そこがポイントだ。本物の裏社会と対立し、関わることに、なんのメリットもない。ゲーム内での表向きは歓楽街、娯楽施設の運営として振舞えばいい。」
「やることはえげつねえけどな。しかし、納得だ。現実世界の裏社会なんて、想像もつかねえ。」
「このゲームが世界的に人気になっても、そもそも裏社会や富裕層たち、金に困ってない連中が、金を目当てに介入してくるとは考えにくい。だが、VRというもの自体は仮想空間として、興味は出てくるだろう。そうなった時、おそらくこの事業は蹂躙される。運営が上手く立ち回らなければな。もしその時は、我々は速やかに撤退する。それまでの間、速やかに覇権をとって、稼げるだけ稼いでおく。」
「いいぜ、そういう現実的なスケール。より低リスクで確実に儲けるってことだな。」
「現実の人生をよくするため、このもう一つの世界……VRで覇権を取る。詳細は各自確認して、任務に取り掛かるように。」
◆
運営側。コンピュータ。
ピピ……ピピ……。
『運測定率……プレイヤー名……』
ピピ……ピピ……。
『運上昇……。』
ピピ……。
『プレイヤー名……、……運下降……。』
『上記、更新完了……』
第二百二十話 完
第二百二十話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ポケットの中の「空飛ぶ粉」の行方、カレッジのコモンとの豪快な情報共有、スキルカレッジ分校を使った情報収集ルートの確保、そして裏の組織「アンダーシャドウ(us)」の全貌と現実的な野望! 緻密な伏線が張り巡らされた素晴らしい回でしたね!
カレッジの会議室で「約束を破ったらこのカレッジを破壊する」と真顔で言い放つ花さんに、「大丈夫だ!安心しろ!」と大声でビビるコモンとのやり取りには思わずニヤリとしてしまいました(笑)。
そして、ピナクルオーナーのヒロシ率いる暗部組織「us」の幹部集会。
本物の現実裏社会には手を出さず、「ゲーム内で低リスクに金を稼ぎ、自分の人生をちょっと贅沢にする」という妙にリアルで生々しいスケール感が絶妙なリアリティを醸し出しています!
さらに各地の国(ダイツ、ダイスリー、ダイフォー)の特色や、独裁的で自国愛の強すぎるダイスリー王国の異質さ。ラストの運営コンピュータが弾き出す「観測定率(?)」の不穏な数値……!
一体これからどんな波乱が花たちを待ち受けているのか、ワクワクが止まりません!
「コモンとの会話の温度差で笑ったw」「アンダーシャドウの目的が妙にリアルで生々しい!」「ダイスリー王国の排他的な感じ、花さんの現実の愚痴が混ざってて面白い」「スキルカレッジ分校巡り、新しい旅の予感がする!」「ラストの運営システムのエラーっぽいログは何なんだ!?」など、たくさんの熱い感想をお待ちしております!
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年明けの各国王国トレイン開通に向けて動き出す世界。花とミント、そして仲間たちの新たな冒険の行方は――!?
気になる次話も、どうぞお楽しみに!




