第二百十九話 雷神トル
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幻想的な「フェアリーランド」を訪れ、妖精王オベロンと「父親同士の友達」になった花。そして行方不明の王子・王女の捜索を引き受けたものの、ラストでトル爺さんが「ワシの強さを見せてやらねば」と雷雲を呼び寄せて……!?
伝説の雷神トルの実力とは!? そして下界で暗躍する「裏の組織」の正体とは――!?
注目の第二百十九話、ぜひお楽しみください!
ゴロゴロ……ゴロゴロ……
花は立ち上がり、ひとまず人がいない場所へ飛んだ。
スタッ
(ここなら大丈夫だろう。くるなら来い!)
ピカ!!
雷鳴と同時に雷が花の元へ落ちる。
(あ……こりゃいかん……やられる)
ズガーン!!
「老師様!!いくら何でも威力が強すぎます!!花は、みんなに当たらぬよう離れたのですよ!?」
シュン
花は再び皆のところに現れた。
シャキン……
!?
大剣をトルの首元へ突き立てる。
「ふう……ちょっとヒヤッとしたぜ。じいさん、ただものじゃねえな?」
花は、距離を取る前に、トルの後ろにワープアイテムを見えないように投げていた。
「ほほう〜、アレを避けたか〜、まあ、そうでなくては、依頼も頼めんわい!ほっほっほ!」
「あ?もしかして、あれは遊びだったのか?」
「当たり前じゃ!ワシが本気を出したら、この辺り一帯に雷を落とせるわい!」
「ぷ。みんなが尊敬するわけだ。参ったよじいさん。」
「おぬしも、なかなかやるようじゃな。強いジョブを設定しているとみた。竜騎士。いや、聖騎士か?」
「ん?いや、俺にジョブはない。ノーマルだ。」
「はあ?おぬし、嘘はいかんぞ?ジョブも無しに、そこまで強いわけなかろう!」
「本当ですトル様、ご主人様はヒューマン、そしてジョブはノーマルです。」
「なんと!?……ミントが言うなら信じよう。」
(このジジイ……)
ジョブ無しについてはオベロンたちも驚いていた。
「異世界人は、たいてい特殊なジョブを持っていて、強さもどんどん増していく、そんなイメージです。花は特別なのでしょうか、老師様?」
「ワシもこんなやつ見たこともない。さっきの瞬間移動も、魔法では無さそうじゃ。」
「ジョブは無えが、俺は鍛冶職人だ。自分でいろんなアイテム作って、工夫して戦ってる。」
「ふふ、アイテムを駆使するのは、珍しいですけどね。ご主人様は攻撃力が高すぎるので、ほとんど素手で倒せてしまいますから。」
それを聞いてみんな呆気に取られている。
「鍛冶……アイテム……そんな戦い方があるのか。」
「雷神とよばれたワシの一撃を避けたんじゃ、大したもんじゃわい!花よ。二人を見つけてくれ、この通りだ。実力を測るようなことしてすまなかったのぉ」
トルも頭を下げた。
「お、おいおい、やめてくれ!オベロンは友達だ!探すのは当たり前だ!」
「わお、二人はお友達になられたのですか?なら、これからはオベロン様と呼ばせてください。」
オベロンは少し顔が赤くなる。
ミントはどうやら、伝承に伝わる妖精族の幻獣と似ているらしい。
伝承について少しだけ話を聞いた。
すると、モンスターの中に、稀に妖精族の遺伝子を持つ個体が現れるとのこと。その個体は様々で、ベースの種族に妖精族の特徴をあわせ持つ姿になると。
「わたしが、この個体ということでしょうか?」
「いかにも……ミントはゴブリンとして進化し、ついにはフェアリクイーンへと進化した。身体能力の高い妖精族、これは妖精族において、理想の姿なのじゃ。」
「よくわかりませんが、運良く私は進化できたと言うことですね?これも何かの縁かもしれません、お二人の子供は見つけ次第連れて帰ります。」
「しかし……どこへ向かったのか、何も情報がないんだ……」
「一つあるのが、裏の組織の存在……妖精族を探しているということ。」
「裏の組織?」
「今、このダイニー大陸で、国ごとに暗躍している集団がいるらしい。そいつらは各国に精通していて、異世界でもやり取りしている可能性があるみたいじゃ。」
「名前とかわからねえのか?」
「裏の組織じゃからな、そう簡単にはわからん。しかし、人攫いや、人身売買、理不尽な契約で拘束するなど、よからぬ噂が出てき始めておる。」
(理不尽な契約で拘束?………それって。)
花とミントは顔を見合わせる。
「ご主人様、それってもしかして」
「ああ、あいつらかもしれねえな。怪しいにおいがプンプンするぜ。」
「花!心当たりがあるのか!?」
花はここ最近の近況を話した。
「そやつらが怪しいのお。しかし、ワシらでは……」
「トルじいくらい強かったら、もうなんも問題ねえんじゃねえか?」
「と、トルじい!?……いや、もうええわい。そうじゃな、単純な戦闘だけなら、おそらく楽じゃろう。しかし、ワシは活動できるエリアが限定されておる。この付近からは自力では出られんのじゃ。」
「なるほどな、その強さに納得がいったよ。」
(こんなんがウロウロしてたらチートだからな。そういう設定なんだろうな。)
「かと言って、わたしたち妖精族が安易に動いて、被害を大きくするわけにはいかない……」
王妃は悔しそうに話す。
「そうか、そうだよな。オベロンはかなり強そうだけど、そんな簡単な問題じゃねえよな。よし、大体のことはわかった。どこにいるかわからねえ以上、闇雲に動けねえ。このことは、俺たちの仲間にも共有して、それぞれでアンテナを張っていくしかねえな。俺たちの冒険の中で、少しでもアンテナにかかりそうな時は、優先するよ。」
「ありがとう花、感謝する。」
「感謝するのはまだ早えよオベロン。無事だといいな、二人とも。」
こうして、花たちはオベロンたちと約束をしてフェアリーランドを去ることになった。
「花、またいつでも来てくれ。見つかったときとは言わない。いつでもいい……また話をしよう。」
「ああ、俺も、今日だけじゃまだ聞き足りねえことたくさんある。また来るよ。」
フェアリーランドを出ると、またトルがミントに粉をかけてくれる。
「すまんミント。今度は俺を抱えて飛んでくれるか?多分、向こうじゃ湖の真上だ。流石に二段目のジャンプだけじゃ渡れない気がする……」
「もちろんです、ご主人様!抱っこがいいですか?それともおんぶがいいですか?」
ミントは少し赤くなってはしゃいでいる。
「いや、任せる。」
「では……後ろから抱きしめてくれますか?」
「へ?……こ、こうか?」
「は、はい!そうです!」
(ああ、なんという幸せ!)
その時。
「あ、すまん!今のはわざとじゃねえ!」
「いえ、大丈夫ですわご主人様、掴みやすいところをしっかり掴んで構いません!ようし、飛びますよご主人様、しっかりつかまっていてくださいね」
ミントは少し鼻息が荒かった。
「……………やっぱり、これはアウトだろ。ミント、俺の後ろから、両脇を引き上げる形で飛べるか?」
「ええ!?そ、そうですか……わかりました。」
(な、なんかしょげてねえか?俺、嫌がることしちまったかなあ?)
「ごめんなミント、苦労かける。」
「へ!?あ、いえ!決してそのようなことはありません!気にしないでください!」
(ああ、いけない!つい、残念さが態度に出ていました!ご主人様に気を遣わせてしまいました!密着できることにドキドキしていて、つい期待してしまっていた……)
フワ……
ミントはゆっくり飛び上がる。
「あら?殆ど重さは感じませんね?」
「この粉で飛んどる相手に触れると、自動的に浮遊できるんじゃ。無駄にしがみついたり、持ち上げたりせんでええ。」
「早く言えよ、ミントに失礼なことしちまったじゃねえか。」
「ナイスなタイミングじゃろ?お前もいい思いができて良かったじゃないか。」
(バカかこのエロジジイは)
(そうだったんですね!ナイスですトル様!)
ゲートを渡り、湖の上空に出た。
ザバ!!
再び大蛇が勢いよく出てきた。
「お?さっきのやつか、懲りねえなあ。もう一発おみまいしとくか。」
ビク!!
ピタ!!
大蛇は花と目が合って固まっていた。
「ん?来ねえのか?案外賢いんだなこいつ。じゃあな〜」
ブルブル。
大蛇は震えていた。
拳骨をくらった直後、その威力で湖の底まで叩きつけられていたからだ。そんな攻撃は今まで受けたことがなく、大蛇には花が巨大な魔物のように見えていた。
(かわいそうに、後でワシが慰めておくか。)
陸まで無事に辿り着いて、トルとも別れる。
「では、また暇があれば来るがいい。」
「ああ、色々ありがとうな。また来るよ。」
花とミントはその場を去った。
「花よ!必ず二人を見つけるんじゃぞ!?」
花は振り向かずに、静かに手を振った。
(確証のない約束は返事をせんか……逃げのようにも見えぬ……あいつの場合は、静かに闘志を燃やすタイプじゃろうな。オベロンとのやり取りでもわかる。花よ……頼んだぞ。)
◆
森を抜け、モンスターの村まで帰ってきた。
「今日は、長旅でしたが、とても楽しかったです!また一緒に過ごしたいです、ご主人様。」
「ああ、今日はありがとうなミント。お前がいてくれると、心強いよ。」
「ありがとうございます。」
(ああ!なんという幸せ!わたしも、もっと強くならなければ!)
「じゃあ、今日は帰るよ。」
「こ、この部屋で異世界へ戻られないのですか?」
「ん?ああ、ちょっとカレッジで調べ物があるんだ。そうだなあ、でも、年末まではここを拠点にしても良さそうだな、ミントもいるし。」
ミントの顔がパッと明るくなった。
「是非!お待ちしております、ご主人様!」
「すまないが、今日はカレッジへ戻るよ。また明日も来るからよろしくな。」
「はい!……あれ?ご主人様、そのポケット、何か光ってますよ?」
花はポケットから、袋を取り出して、中身を見た。
ピカー!!袋を開けると中から光が溢れてきた。
「な、なんだこりゃー!?」
第二百十九話 完
第二百十九話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
「雷神トル」による容赦ない本気の雷撃と、ワープアイテムで見事に背後を取る花さんの圧倒的センス! そして裏の組織の不穏な噂と、密着飛行に一喜一憂するミントの可愛さ、ラストの眩い光を放つ袋まで、怒涛の展開でしたね!
「雷神」と称された伝説の守護者トルの雷撃すらも余裕でかわし、素手とアイテムで戦うノーマル職業の花さん。これにはトルも呆気にとられつつ、心から頭を下げて王子・王女の捜索を託す姿が印象的でした。
そして「人身売買」「理不尽な契約」というワードから、あの怪しい連中の影を感じ取る二人。
さらに帰還の際、トル爺さんの「粉で飛ぶ相手に触れると自動で浮遊する」という事後報告のせいで、ミントの「後ろから抱きしめて」という密着タイムが不発に終わる爆笑の展開も(笑)。
無事モンスターの村へ戻り、ミントとの絆を深めた花でしたが、最後にポケットの中の袋から強烈な光が照射!?
はたしてこの光の正体とは何なのか――!?
「雷神トルの攻撃をかわす花さんマジでかっこいい!」「トル爺さんナイスアシスト(?)だったのに惜しかったw」「大蛇がビビってブルブル震えてるの笑う」「裏の組織とあのブラックギルドが繋がってるのか!?」「ポケットの光る袋って何が入ってるの!?」など、今回もたくさんの感想お待ちしております!
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ポケットの中で光り輝く謎の袋の正体とは!? そしてカレッジへ戻る花を待ち受ける新たな展開とは――!?
気になる次話も、どうぞお楽しみに!




