第二百十七話 妖精族のじいさん
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反り返った断崖絶壁を二段ハイジャンプで難なく飛び越えた花とミント。上空の湖畔でポツンと佇む小屋を見つけ、そこに住む自称・妖精の老人と出会いました。
妖精の村へと続く上空のワープ結界、そして空を飛ぶための条件「自分にとっての幸せを想像すること」――。ミントが素直に空へ舞い上がる一方、現実世界で深い葛藤を抱える花は……!?
注目の第二百十七話、ぜひお楽しみください!
「この先の湖を越えると、妖精の村がある。妖精族の住む村じゃ。」
「へぇ……妖精族の村か……この世界では初めて見るかもな。」
「とても、神秘的ですねご主人様!きっと、可愛い妖精さんもいますよ!」
「可愛い妖精ねえ、今のところ、出くわしたのは、このじいさんだけだからな、イメージを更新しないとな。」
「何と失礼な!」
「ありがとう、妖精様、じゃあ、湖の向こうへ行ってみるよ。」
「どうやって行くつもりじゃ?」
「そうだなあ、湖沿いに行けば、そのうち着くんじゃねえのか?」
「甘いのぉ。この湖は、絶壁まで広がっており、常に溢れている状態じゃ、端など存在しない。この先の村にもさらに山岳地帯があり、その上から水が常に流れ落ちている。」
「この山、そんなにでけえのか。妖精の村以外にも、探索しがいがありそうだな。」
「ほっほっほっ!妖精族ですら行ったこともないところもあるくらいだからのぉ。冒険者にはちょうど良いわい!」
「で?どうやって向こうまで行けば良い?まさか、一度降りて、また登り直しじゃねえだろうな?」
「ふん。一つはその選択肢じゃ。だが、ここからのルートもある。」
「お、それを教えてくれ!」
「どうしようかな〜」
老妖精は二人の周りをヒラヒラ飛んでいる。
(このジジイは……)
ミントは掌を出して、老妖精を着地させる。
「妖精様、どうかお願いです。私たちにこの湖を渡る方法を教えてくれませんか?」
老妖精の目がハートになる。
「そなたの頼みなら、仕方ないのぉ!」
老妖精は飛び上がり、テーブルの上に着地する。
「あの湖はの、普通に船で渡ろうとすれば、魔物に襲われるんじゃ。妖精族は湖の上の方に、結界を作っていて、そこに飛び込むことで村の前にワープするようになっておる。ちょっと外へ出てみい。」
三人は湖の前に立つ。
「あそこを見てみい。」
「ん?あ。空間が揺らいでるのか?もしかして、あそこがそのワープか?」
「その通りじゃ、おぬし、あれが見えるのか?」
「何となくな。」
「わたしには、光の球体に見えます。」
「ほう!そんなにくっきりと見えるのか!やはり、妖精族のものに間違いないのぉ!」
「あそこに飛び込めば、いけるんだな?」
「ああそうじゃ、じゃが、あんなところまでどうやっていくつもりじゃ?」
「何か方法があるのか?」
「湖の管理者のワシが、妖精の粉をかけてやる。そうすれば、数分は飛ぶことができるんじゃ。」
「そんな便利ものがあるのか!?」
「ある。じゃが、これは、邪心を持つものは効果がない。まあ、おぬしらなら大丈夫じゃろう。」
「ミント……粉はお前だけかけてもらえ。」
「ど、どうしてですか?ご主人様も……」
花は静かに湖を見た。
「俺はいい……粉をかけても多分無理だ……」
(邪心があるものはダメ、か。なら、俺は到底無理だ。ミントに見られたくねえ。)
「ふ。俺は自分で飛ぶから大丈夫だ。心配するな。」
その様子を、老妖精は見逃さなかった。
「……………」
(こやつ、何を抱えておる?普通は空を飛べるなど、よろこんで試す。粉の効果がないのを知ってか?それとも、効果がないとふんで拒否したのか?)
「なあ、妖精様……妖精族の村には……普通に誰でも入れるんだよな?邪心がどうこうとかはあるのか?」
「流石にそこには邪心の結界は無い。もっとも、もっと広い範囲で別の結界は張っておるがな。」
「なら、とりあえずあそこに飛び込めばいいんだな?」
「そういうことじゃ。簡単にいうが、かなりの距離じゃぞ?あんな上空にどうやっていくんじゃ?」
「飛びあがるんだよ。ハイジャンプでな。」
「そうですね、ご主人様なら行けそうです。」
「ん?まあ、落ちても知らんぞ。じゃあ、ミントには粉をかけよう。それ!」
ミントに綺麗な粉をふりかけた。
花とミントは自分のステータス画面を確認する。
「カウントダウンが始まりました。これが、空を飛べる時間なのでしょうか?まだ数分あります。」
「そうじゃ。どれ、すこし練習するかの?空はイメージで飛ぶんじゃ。」
「イメージ?ですか?」
「どこへ向かいたいか、どう動きたいかで勝手に飛んでくれる。しかし、この粉を初めて使用する場合には、ロックを解除しなければならない。嬉しいこと、楽しいこと、自分にとって幸せと思うことを想像して、身体が浮けば解除完了じゃ。」
「わたしにとって、嬉しいこと。」
ミントは目を閉じて念じる。
フワ……
ミントはすぐに身体が浮き始めた。
「成功じゃ!あとは自由に飛ぶだけじゃ!」
スイー……
ミントは自由に空を飛ぶ。
「す、すごいですご主人様!私、空を飛んでいます!」
花はその光景を見て考えていた。
(自分にとっての幸せか……イメージできねえ俺はどのみちロックを解除できねえだろうな。俺の願いは、あの親子と離れること。でもそれは、経済的に子供にとっては不幸にすること。今はイメージしたらダメだよな。)
「よし……じゃあ、俺はあそこに飛び込む。失敗したら拾ってくれよ?」
「かしこまりました!」
グググ……
花はしゃがんで構える。
「ま、まさか、ここから飛び上がるんじゃなかろうな!?」
「その、まさかさ。」
ドン!!
「いかん!!魔物のことを言い忘れておった!一直線に飛ぶと危ないぞ!」
「え!?妖精様、そういうことは、早めに教えてください!」
「す、すまぬ!ええい、こうなったら炎で……」
ザバ!!
湖から、巨大な蛇が飛び出してきた。
蛇は口を開き、花を丸呑みしようとした。
「いかん!!飲み込まれるぞ!」
光の球体の手前で、蛇が口を開けて待ち構える。
バクン!!
蛇は花を丸呑みしようと口を閉じた。しかし。
トン!!
スカ!!
花は二段ジャンプでその攻撃をかわす。
グググ……
「これでも食らっとけ。ふん!」
ドゴン!!!!
巨大蛇の頭に拳骨を叩き込み、その反動で、花は光の球体へ吸い込まれていった。
シュン……
「あ!ご主人様が消えた!私も行かなくては!」
ミントは安全に上空から光の球体に入り込む。
老妖精は口を開けて呆然と立ち尽くす。
「はっ!いかん!つい、驚いてしまった!な、何じゃ、あのデタラメな強さは!ええい、ワシもいくとするか!」
老妖精も空を飛んで向かう。
先ほどの蛇がゆっくり出てくる。
頭にはコブが出来ていた。
ギャオー!
「おうおう……痛かったのう……ヒーリング!」
キラキラ……
巨大蛇のコブが回復した。
巨大蛇は嬉しそうに静かに湖へ帰っていく。
「……………」
(あいつ……一応水系でも上位の幻獣なんじゃがなあ……まだ未成熟とはいえ、拳骨で倒すとは……)
シュイン……
老妖精もワープした。
◆
「お、みんな来たか。みてみろミント。」
「わ!すごい!自然に満ち溢れた都市ですね!」
そこには、巨大な一本の大樹を取り囲むように、都市が広がっていた。
「ここが、妖精の村か。さすがに壮観だな。もっとこじんまりしてるものかと思った。」
「さあ、行くか、妖精様、もしかして、案内とかしてくれるのか?」
「ふん、仕方ないのう。客人ははじめてじゃ、ついてくるがいい。」
「やったー!行きましょう、ご主人様!」
ミントは飛び跳ねて喜んでいる。
花と老妖精は一瞬固まる。
(か、可愛い!)
第二百十七話 完
第二百十七話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
「邪心のない者しか飛ばせない粉」を静かに辞退する花の切ない心の葛藤と、水系上位の巨蛇をパンチ一発の反動台にしてワープ結界へ飛び込むデタラメな強さ! そしてワープの先に広がっていた巨大な大樹を取り囲む美しい妖精の都市! 笑いと感動、そしてバトルの爽快感がぎゅっと詰まった回でしたね!
「本当の幸せ」を想像して嬉しそうに空へ舞い上がるミントに対し、現実の離婚や子供の経済的負担について真剣に苦悩するからこそ粉を拒否した花。彼の誠実さと心の痛みに、胸が締め付けられそうになります。
ですが、そんな湿っぽさを吹き飛ばすかのごとく現れた巨大蛇を、二段ジャンプで回避して脳天へ「ドゴン!!!!」と拳骨一発!
湖の管理者である老妖精が「一応水系でも上位の幻獣なんじゃが……」とドン引きしつつ、コブができた蛇をせっせとヒーリングで癒す姿には大爆笑でした(笑)。
そしてワープの先に広がっていたのは、大樹を中心とした幻想的な妖精の都市! ラストで無邪気に喜ぶミントの可愛さに、花と老妖精が同時にノックアウトされるオチも完璧でしたね!
「花の苦悩がリアルで切ない……早く幸せになってほしい!」「上位の幻獣を拳骨反動台にする花さん凄まじすぎるw」「蛇にヒーリングかけるジジイで腹抱えて笑った」「大樹の都市が気になる!」「飛び跳ねるミントちゃんマジ天使!」など、今回も熱い感想をお待ちしております!
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老妖精の案内で巡る「妖精の都市」にはどんな出会いや発見が待っているのか!?
気になる次話も、どうぞお楽しみに!




