第二百十六話 登り坂
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ミントの肌の色が人間と同じになり「フェアリクイーン」へと劇的な進化を遂げたことが判明! 一足先に旅立ったユナ・コリス・ラピーのコミカルな旅路を描きつつ、花とミントの二人は未開の川沿いへ。そして山頂の地理を確かめるため、ミントをお姫様抱っこしたまま二段ハイジャンプを放った花が目撃したものは――!?
断崖絶壁に囲まれた絶海の孤峰のような山頂エリア。はたしてそこに何が隠されているのか!?
注目の第二百十六話、ぜひお楽しみください!
「こりゃすげえ……」
王都側に続く川の向こうを見ると、そこは、断崖絶壁だった。
その下には、絶壁を取り囲むように川が囲んでいる。
「まるで、王都を囲むように……いや、この山を囲むように……それにしても、ここから見ても、かなりの高さの絶壁だとわかる。」
スタン。
花は着地した。
「見たかミント?」
「見ました。こちら側から見ても、あちら側はかなりの絶壁だと思います。きっと、王都側から見ると、とてつもない絶壁が見えるでしょう。」
「やっぱりそう思うよな。反対側はどうかわからねえが、この山って、ちょっとやそっとじゃ上に登れねえようになってるんじゃねえか?」
「そうかもしれません。現に、川を辿ったとしても、渡るすべがありません。橋をかけるなら別ですが。」
「そうだな。橋は見当たらねえなあ。なら、山上には特に何もねえのか?それとも橋をかけない理由が……」
「ご主人様!あれを!」
「あれは、ゴブリンキングか?」
川にはゴブリンキングが何匹もうろついていた。
花たちはそれを見下ろしていたが、一匹がそれに気がついた。
キキャー!!
ゴブリンキングたちは絶壁を登ってくる。しかし、途中で下に落下している。
「ここまでは登れねえのか。だが、落ちたら普通はアウトだな。」
「だから、橋をかけたり、誰も近づかないのでしょうか?」
「そうかもな、人が入りやすいと、モンスターも溢れてくる。この川と絶壁が、食い止めてるのかもな。お?あっちの傾斜が緩やかな方で、一匹は自力で上がってきたぞ?」
ゴブリンキングは花に襲いかかる。
「へ!よく登ってきたな。くるなら来い!」
花はゴブリンキングへ視線の向けた。
ピタ!
しかし、ゴブリンキングは途中で動きを止めて後ずさりした。
キキャー!!
ゴブリンキングは、川へ飛び込んだ。
他のゴブリンキングも川の中へ飛び込んで去っていった。
「…………」
「に、逃げたのでしょうか?」
「そうみたいだな。だが、俺にビビってというわけじゃなさそうだ。」
「たしかに、そのようですね。」
二人は森の奥から近づいてくる気配に気がついていた。
何かがキラッと光る。
「ご主人様!」
ガキン!!
ミントが攻撃を受け止めた。
「ミント!無理すんな!」
「大丈夫です!……って、あ、あなたは!?」
パッ!
斬りかかってきた相手は距離をとった。
「おや?あなた方は……どうやら、普通の冒険者のようですね、失礼しました。」
相手は剣を納めて頭を下げた。
その姿を見て二人は驚く。
「ご、ゴブリンか?」
「はい、俺は、進化したゴブリンです。」
「あなたもゴブリン……色々な姿があるのですね。」
ゴブリンは不思議そうにミントを見た。
「あなたも?その口ぶりだと、自分もゴブリンだという言い方に聞こえますが、どう見ても人間……いや、エルフ族でしょうか?」
「わたしは、ゴブリンですよ?進化してこの姿になりました。」
「えええええ!!」
ゴブリンは目を見開いて驚いた。
「おい、立ち話もなんだ、座って話さねえか?」
ゴブリンは、少し開けた場所を案内してくれた。
シャ!
花はキャンプ道具から椅子を取り出す。
「ここなら、モンスターは近寄りません。」
三人は椅子へ腰掛ける。一通り自己紹介も済ませた。
「お前、さっきは普通の冒険者って俺たちのこと言ったよな?もしかして、お前はこのあたりを何かから守ってるやつなのか?」
「説明が遅れました。その通りです。俺はこの辺りを見張っている進化したゴブリンです。先ほどは、間違えて攻撃をしてしまい、申し訳なかった。」
「ミントじゃなきゃやられてたぞ?まあそれはいい、せっかくの縁だ、お詫びとして、この辺りのことを教えてくれねえか?」
「そうだな、俺にわかることでいいなら、お詫びに答えよう。」
花はこの辺りの地理について聞いた。そして、その他のこともざっくりと事情を聞き出す。
すると、思った通り、この森と川に囲まれた山は断崖絶壁、そして、頂上には村があるとのことだ。
「村?しかし、橋も何もねえ。山頂だけで生きていけるってことか?」
「そうだ。しかし、俺は山頂の村のことを他言しないように言われている。だから、これ以上村の情報は与えられない。すまない。」
「いや、十分だ。何かあるとわかったからな。なあミント?」
「ええ、それに、あなたがあちらの国からの侵攻を防いでいることも知れました。」
「そいつらは山頂を目指してるのか……しかも、人攫いもしてる……」
「そうだ。さっきも言ったが。やつらは手段を選ばない、とても危険だ。」
「なあ、俺たちがもし、山頂へいくと言ったら、お前は俺たちを攻撃するのか?」
「いや、それはない。あくまでダイスリー王国の兵士が来たらという指示だからな。そもそも、自力で上まで行けるやつは見たことがない。行けるものなら行ってみるがいい。」
「お前は行けるのか?」
「いや、無理だ、あちら側の崖を見ろ。反り返っていて、よじ登るのは無理だ。」
「ふーん、じゃあ、誰からの命令なんだ?」
「…………」
「いえないのか。じゃあ言わなくていい。きっと、山頂のやつらなんだろうよ。」
「俺たちはそろそろいく。色々教えてくれてありがとう。」
「さ、山頂へいくのか?どうやって?」
「ん?あっち側に飛ぶだけだ。じゃ、またな。」
「ありがとうございました。お勤め頑張ってくださいね。」
「と、飛ぶって、あっち側まで何メートルあると思って……」
ドン!!
花はミントを抱えて飛び上がる。
トン!!
途中でもう一度飛び上がり、二段ジャンプで余裕で渡る。
「な!?なんという跳躍!あんなにあっさりと!」
ストン。
「よし、上に何かあるって言ってたから、行ってみるかな。」
「はい!楽しみですね、ご主人様。」
二人は川を辿ってどんどん進んでいった。
(随分と高地なんだな。お?体力ゲージが減ってる?バトル判定でもねえのに、環境次第ではこういう設定もあるんだな。)
ズザザザザ。
「ミント、少し歩行も加えて移動しよう。体力が削られるらしい。」
「そうみたいですね、しかし、かなり大きく、広い山ですね。」
しばらく進むと、開けたところに出た。
あたり一面に湖が広がっている。
「すげえ……反対側は左右ともに端が見えねえ」
「こんな広い場所があるなんて……あら?あそこに小屋があります、ご主人様。」
遠くの方に小屋を見つける。
二人は小屋をノックして中に入る。
「反応ねえな。入ってみるか。」
中に入ると、誰もいない。
人が10人は入れそうな空間に、小さなテーブルなど家具が並んでいる。
(誰もいない……留守か……こんなところに人が住んでいるのか?)
「おい!そこの!」
ビク!
二人は振り向く。しかし、そこには誰もいない。
「ん?気のせいか?」
「ここじゃここ!!」
下を見ると、羽の生えた小さな老人が立っていた。
大きさは手のひらサイズ。
「なに!?まさか、妖精か?」
「そうじゃ、その妖精じゃ、ほっほっほっ。こんなところに人間がくるなんてのお。はじめてじゃわい。」
ミントはしゃがんで挨拶をする。
「こんにちは、妖精さん。わたしはミンティナ、通称ミントと申します。」
「ほほーう!なんという別嬪じゃー!お前さん、初めて見る妖精族じゃのうー!」
(妖精っつったら神秘的な生き物かと思ったが……ただのエロジジイじゃねえか。)
二人は軽く自己紹介を済ませた。
「違うの妖精さん。わたしはゴブリンなのです。」
「んー?おかしいのう。そなたの纏う気は、確実に妖精族のものじゃが……おい小僧、この娘は、お前が従えとるのか?」
「ん?ああ、従えてるっつーか、テイムして、仲間になったんだよ。」
(なんか偉そうだな、このジジイは)
「なら、ステータスに載っとる種族を言え!それでわかる!」
「フェアリクイーンって書いてある。」
「やはりか!ミントよ、そなたはもうすでにゴブリンではない!」
「え!そうなのですか?確かに見た目は変わりましたが、特に他は変わりないので、あまり気にしてませんでしたが。」
「やっぱり進化してたのか。そんなことがあるんだな。」
「小僧よ、お前はプレイヤーなのに、何も知らんのだな。」
「ああ、知るわけねえよ。初めてやるゲームなんだからな。」
「なんと呑気な!ここまで来るほどの実力があるとは思えん!」
「知るかよそんなの、なら、あんたが色々教えてくれよ。運営スタッフなんだろ?」
「わ、ワシは妖精じゃ!」
(このジジイ、わかりやすー。)
花はため息をつく。
「はぁ……では、妖精様、色々教えてくれませんか?」
「ふむ!よろしい!では、ワシが色々教えてやろう!」
(絶対スタッフだろこのジジイは!)
第二百十六話 完
第二百十六話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
断崖絶壁に囲まれた絶海の山頂エリア、そこで出会った律儀な「進化したゴブリン」の警護者、人攫いを行う危険な敵国兵の情報、そして山頂の超高地湖畔で出会った胡散臭さ満載の「自称・妖精(絶対運営スタッフ)のエロジジイ」! 今回もワクワクと笑いが止まらない怒涛の展開でしたね!
普通なら絶対に登れない反り返った絶壁を、ミントを抱えて「二段ハイジャンプ」であっさりクリアしてしまう花さんには笑ってしまいました(笑)。見張り役の進化したゴブリンも、開いた口が塞がらない驚きっぷり!
そして辿り着いた山頂の広大な湖と、ポツンと佇む小屋。そこにいたのは手のひらサイズの小さな自称・妖精の老人!
ミントのグラマラスな姿を見るや否やデレデレしつつ、「フェアリクイーン」という種族の証言でミントが正真正銘の妖精族(ゴブリンからの超進化)であることを証明してくれました。
しかし、プレイヤーの知識がない花にツッコミを入れつつ、「運営スタッフなんだろ?」と問われると「わ、ワシは妖精じゃ!」と分かりやすく動揺する姿に、花さんの冷ややかなツッコミが冴え渡ります!
「反り返った崖を二段ジャンプで超える花さん凄すぎw」「進化したゴブリンの guard さん良い奴だな」「エロジジイな妖精(運営)、隠す気なさすぎて笑った!」「ミントちゃんの妖精族進化が確定して嬉しい!」「ここからどんな世界の秘密が明かされるのか!?」など、今回の感想や考察をぜひメッセージでお寄せください!
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自称・妖精の怪しい老人は花たちに何を語るのか!? そして山頂に隠された「村」と「ダイスリー王国の脅威」とは――!?
気になる次話も、どうぞお楽しみに!




