第二百十四話 召喚士のプレイヤー
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前話(第213話)では、リアルでのモラハラ義母たちとの確執に絶望しつつも、VR世界で新たな仲間ラピーをテイム! 一晩で驚異の美少女へと進化を遂げたラピーに驚きつつ、コリスたちの里帰りに付き添うことになりました。そして解散直前、山頂の風車展望台でユナが静かに「ゲーム内での過去」を語り始めるのでした。
かつて召喚士の村で「落ちこぼれ」と蔑まれていたユナの過去とは――!? そして一人で立ち向かおうとする彼女を前に、花たちはどう動くのか!?
注目の第二百十四話、ぜひお楽しみください!
「花……わたしの過去のことは、もう知ってるよね?」
「ああ、ざっくりとな。」
「わたし……このゲームを始めてから、前作では召喚士として、ある程度進んだプレイヤーだったんだ……」
「ああ、それも、何となくこの前の話で察したよ。これから、前の召喚獣を復活させるんだよな?」
「うん……でもね……アップデートしてから、急いで召喚士の村に行ったんだけど……試練があって、何も前に進めなくて……」
花は頷きながら聞いた。
「そこでも、周りのプレイヤーと、溶け込めなくて……いつしか、わたし、落ちこぼれってレッテルを貼られるようになったの……」
「…………」
「中には、暴言を吐いてくるプレイヤーもいて……わたしはコミュ障だから、どうしていいかわからなくて……それで、召喚士の村に居づらくなって、コリスたちのいる、獣人の村にたどりついたの。」
(それでコリスと友達だったのか。)
それから、ユナは、コリスたちと出会い、獣人の村で過ごしたことを語る。
「コリスたちは、村周辺のクエストを主にやって稼いでいたの。でも、そろそろもっと稼ぎたいって、ダイワン王国……つまり、この前潜入した施設の労働や、その周辺の発展してきてる場所に出たの。
わたしも、そんなコリスたちを見て、怖かったけど、出て行くことにしたの。」
「そこで、俺たちがユナをナンパしたってことだな?」
花は、意地悪そうに笑った。
「な、ナンパだなんて!はじめはびっくりしたけど……でも……あの時声をかけてくれたのが花だったから……」
ユナは顔を真っ赤にしている。
「花のおかげで、少し自信もついたし、前にも進めた。だから……だから、わたし、数日かもしれないけど、一旦一人で召喚士の村に戻ってみるね!」
ユナの顔は真っ赤だが、そこには、かつてとは違う、自信に満ちた表情をしていた。
「おう。今のユナなら大丈夫だ。31日にはまた会える。もしなんかごちゃごちゃ言ってくる奴がいたら、俺たちがタダじゃおかない……なんてな。すまん、調子に乗りすぎだよな。」
花は照れくさそうに笑う。
ユナは首を横に振る。
「花の……みんなのおかげで勇気が出たの。それは本当だから……わたしの中に、花たちがいつも支えになってる。
だから、行ってくるね!」
花は、ユナの頭をガシって撫でた。
「また、案内してくれよ!楽しみにしてるからな!」
「うん!!」
ガバ!!
(だから!!それはやめろーー!!)
◆
「お待たせ!!コリス、ラピー、行こう!」
こうして、三人はひと足先に獣人の村へ旅立った。
「あいつら、大丈夫だろうか……」
「大丈夫です。コリスはとても強いですから。ユナ様も、とても成長されました。スバル様とも修行してましたし、わたしも少しだけ手合わせしましたが、近接戦もかなり上達しています。」
「え!?ミントも修行手伝ってたの!?」
「おっと、これは秘密特訓でしたから、内密にお願いしますね!はい、わたしも頼まれて手伝ってました。スバル様が、それはもう教えるのが上手で、みるみる成長しました。」
「あいつら、案外お似合いかもしれねえな!なんか、嬉しいな!」
「……………」
ミントは少し呆れ顔で花を見た。
(ご、ご主人様……ユナ様は、ご主人様のために強くなろうとしていたのですよー!?このあたりは、ご主人様は鈍感なのですね。
リサ様といい、アユ様、ユナ様……そして、私たち眷属も……いえ、異性だけではなく、ランス様も、スバル様も、みんなご主人様を好いてます。
もっと自信を持ってください。)
そんなミントの気持ちをよそに、花は満足そうに微笑んでいた。
(まあ、こういう鈍感なところが、可愛らしくて、わたしは好きです、ご主人様。)
ミントは花に擦り寄る。
「ミント……隙があったらいつも腕に絡まってくるよなあ。」
「あら、いいじゃありませんかー!皆の前ではなるべく控えてるんですよ?飼い猫だと思って、大目に見てください。」
(こんなセクシーな猫がどこにいるんだよ!ったく、仕方ねえなあ。ゲームの中だから、まあいっか。)
二人は、ミントの部屋から三人が見えなくなるまで見送った。
「なあ、ミント。」
「はい、ご主人様?」
「たまには、二人で行くか!」
「はい!よろこんでお供します!」
イレギュラーなゴブイチを除くと、ミントは花が初めて自分の意思で仲間にした眷属。
コロッセオのときも、潜入の時も、花の代わりに皆を支えてきた。
花もそれをわかっていた。
ミントは、花と二人きりで機機嫌が良い。
終始腕に絡まっている。
(仕方ねえなあ……)
花は、ミントの頭を撫でた。ミントは顔が赤くなる。
「じゃあ、今からフォローよろしくな!行くぞ!」
「はい!」
二人はその日の午前中、森でひたすら狩りをするのだった。
範囲を広げて、途中、ゴブリンキングにも遭遇したが、余裕で対峙した。
あれ以降、ゴブリンキングは、クエスト討伐対象として、常に冒険者ギルドへ受注されるモンスターとなった。
当時は高難易度のモンスターも、時間が経つと少しずつ当たり前となってくる。とはいえ、かけだしのプレイヤーには荷が重く、現時点でゴブリンキングは中級クエストとなっていた。
ゴブリンキングを倒したら、確率でゴブリンアンデッドも出現する。
二人はその日、中級クエストを狩りまくっていたのだった。
「ミント!めちゃくちゃ強くなったな!」
「はい!ご主人様が、経験値は好きに振り分けて良いと言ってくださったので、わたしなりに振っていました!」
そう、ミントには、ある程度自由にさせていた。頭がよく、考えて動けるため、自主性を重んじたのだ。
それが功を奏して、みるみる成長していた。
「いいぞ!さすがミントだ!」
「ありがとうございます!ご主人様!」
ミントは顔を赤くして、さらに喜んだ。
その度に、ミントは光り、花との信頼度や親密度を上げ、ステータスリンクも向上していった。
昼になり、一旦村に戻って花はログアウトする。
「ふう……とりあえず昼飯食おう。」
(昼からはどうしようかな……せっかく一人なんだ、楽しまないとな。)
花は昼食を済ませて、書斎の整理をする。
(俺は、このまま働いていていいのだろうか……今のうちに、何かできることはないだろうか……一人になるなら、それなりに収入がないと、現実的じゃない……)
デスクのノートパソコンを見つける。
(持ち運び用に買ったパソコン……そうだな、こいつを使わないとな。
今まで受けてきたモラハラ……これは記録してないとしけないな。
あとは、今の仕事以外で出来ることを探そう。)
花は、未来のために記録を残すことにした。
いざとなれば、弁護士に相談すればいい。
精神的におかしくなりそうなら、心療内科に行けばいい。
その時に、いかに現状を伝えるか。
その下積みをすることにした。
そして、仕事については、ひとつ思いついたことがあった。
それを形にするために、花は一歩を踏み出す決意をした。
(やれることをやるんだ。やらずに後悔するよりマシだ。少しずつでいい……前に進もう。)
花は、ひそかに新たな決意をした。
未来を変えるために。
「さてと、また行くとするか。ミントが待ってる。はは……もうどっちが現実かわからんな。」
花は、ミントの部屋にログインした。
「ん?いない……どこだ?」
花は一旦外に出るが、モンスターたちは、ミントを見ていないとのこと。
(んー、なら、やっぱり屋敷の中か?)
もう一度戻り、ミントの部屋にいく。
(やっぱりいねえな……あ、まさかあいつ、昼寝してるとか?
NPCたちもこの世界では生活してるんだよな。リアルだなあ。ちょっといけないかもしれないが、のぞいてみよう。)
ミントの部屋から繋がる扉をそっとすかしてみる。すると、案の定ミントがスヤスヤ寝ていた。
(やっぱり昼寝してやがる。リアルだな。てか、なんつー格好で寝てるんだ!!)
パチ!
ミントが花の気配に気がつく。
「この匂いは……ご主人様?」
ミントは眠そうに目を擦る。
「あ、すまん、どこにいるのかと思って!寝てても良いぞ?」
「いえ、ほんの少しのつもりだったので……むにゃむにゃ……」
(いつもシャキッとしてる分、新鮮だな。)
ムク。
ミントは起き上がり、ベッドの上に座る。まだ眠そうに目を擦っていた。
ハラリ……
起き上がった拍子に、服が片方肩からズレ落ちる。
「わ!おま!服が、服!」
花は顔を逸らして見ないようにした。
「ん?あらまあ……これはこれは。はい、直しましたよご主人様。くす。」
「あらまあって……わ、笑い事か?」
「わたしは、そんなに恥ずかしいとは思いませんよ?なのに、ご主人様が慌てるからおかしくって。」
(少しは恥ずかしいと思ってくれ!!)
「すまなかった。」
花は少し顔を赤くして謝った。
「そんな!謝らなくて大丈夫ですよご主人様!顔を上げてください!」
ミントは素早く花に駆け寄り、顔を上げさせる。
ハラリ……今度は両肩から服がズレ落ちた。
「あ!……あらあら、また……」
「な!?ちょ!と、とりあえず着替えてくれ!」
花は反対を向いて部屋を出ていった。
着替えを終えてミントが出てきた。
「お待たせしました。先ほどは、眠そうな顔をしてしまい、申し訳ありませんでした。」
(いや、そこじゃねえ!!)
ミントはご機嫌な様子で、また腕にすり寄ってくる。
(二人だと、やたら懐いてくるなあ。まあ、嫌な気分はしないな……よく気がつくし、真面目で従順……ここまで尽くされると、情が湧くな……ん!?え!?…………な、なんか、ミント、おかしくねえか?)
第二百十四話 完
第二百十四話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ユナの口から明かされた「召喚士の村」での切ない過去と旅立ち、ミントとの二人きりの中級クエスト無双、リアルでの花の未来に向けた強い決意、そして後半のミントのお色気ハプニング(笑)とラストの違和感……! 今回も感情揺さぶられる要素が盛りだくさんでしたね!
かつて召喚士の村で落ちこぼれ扱いされ、コミュ障ゆえに傷ついて逃げ出したユナ。ですが、花や仲間たちと出会い、前を向く勇気を得た彼女は、過去を乗り越えるために一人召喚士の村へと戻ることを決意! 花の「俺たちがタダじゃおかない」という不器用な優しさに、ガバッと抱きついて照れ隠しするユナちゃんが最高に可愛らしかったです!
そして、久々の花&ミントによる二人きりの冒険!
かつては高難易度だったゴブリンキングも余裕で撃破し、信頼度とステータスリンクを高めていく相思相愛(?)な二人。現実世界ではモラハラ被害の記録をノートPCに残し、将来の自立に向けて力強い一歩を踏み出す花の姿に胸が熱くなりました。
……からの、ゲームに戻ってのミントのうっかりお色気ハプニング(笑)!
普段は知的で頼もしいミントの寝起き姿&肩出しアタックに純情な花さんは大慌て!
ですが……甘い雰囲気で終わるかと思いきや、ラストの花の一言。「な、なんか、ミント、おかしくねえか?」――一体ミントにどんな変化が起きているのか!?
「ユナちゃんの成長に感動した!」「スバルとユナがお似合いと言われてヤキモチ焼くミント可愛いw」「ミントの肩出しハプニングに焦る花さんごちそうさまです!」「リアルで弁護士や副業の準備を始める花さんを全力応援!」「ラストのミントの違和感って何!?」など、今回もたくさんの感想や考察をお待ちしております!
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ミントに生じた「違和感」の正体とは……!? そして、召喚士の村へ戻ったユナの運命は!?
気になる次話も、どうぞお楽しみに!




