第二百三話 ビッグマッチ対策
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現実世界でユナが動物施設でのパートを始めようと大きな一歩を踏み出す一方、花が結婚以来ずっと耐え忍んできた親族関係の壮絶なストレス、そして「娘のために自分が犠牲になるしかない」という切なすぎる現実が明かされました。そんな重い現実を背負いながらログインした花は、コモンとの約束通りに職人最高峰の「鍛冶スキルS」を獲得。リサへの誕生日プレゼントの準備を整えたその瞬間、ランスから1通の急な通知が届くのでした。
翌日。
「花!」
カレッジでランスと会う。
「きてくれてありがとう!さっそくなんだけど……」
「マサムネ対策だな?」
「うん、勝てるイメージが湧かない。」
「あいつはちょっとやべえな。まあ、想定して特訓するしかねえな。」
シャ!
「花!それは!?ほ、矛!?」
花はニヤッと笑う。
「仮想マサムネ、これで攻撃の軌道を特訓すればいい。俺の攻撃は、全てクリティカルガードするつもりでな。」
ランスは笑顔になる。
「ありがとう花!よし!さっそく特訓だ!」
こうして、ビッグマッチの間、花とランスの修行が始まった。
時折、スバルとユナも参加する。
◆
数日後。
「お!だいぶ上手くなってきたな!」
ブォン!クルクル!シャシャシャ!
ガキン!ガガガ!!
バチン!
「っと!弾き返されちまった。やるな!」
「すごい……あの二人、あんなに強かったの?」
「そうだぞユナ殿!特に、花は桁違い!ガードを怠れば即キルだ!」
「…………みんな、すごい……」
スバルは下を向くユナが目にとまる。
「ユナ殿は、遠距離からの攻撃が強いではないか!大丈夫だ!俺は近距離しかできないから、ユナ殿が助けてくれると助かる!」
ユナはハッとした。
「あ、あの!す、スバルさん!!」
「ん?どうした、ユナ殿?」
(ど、どうした!?さん付け!?)
「あ、あ、あ、あの……その……わ、私に……体術を、教えてくれませんか!?」
「な!?ユナ殿が体術!?」
「わ、わたし、このままだと、一人で戦えない!もし、モンスターが近くにきたら、何もできない……プレイヤーを相手にする時も……」
「………よ、よし、わかった!俺で良ければ!」
ユナは、花以外の仲間とも少しずつ距離を縮めていくことにした。
スバルは格闘専門。身を守ることに関しては一流だ。
空手以外にも、独自であらゆる武術をゲーム内で学んでいる。
「よ、よろしくお願いします!!」
(ぐああ!眩しい!でも、俺にとってもちょうど良い、人に教えると言うことは、自分のこれからの成長にも繋がる!)
こうして、ユナはスバルに弟子入りした。
花とランス、スバルとユナ。
ビッグマッチまでの間、各々で充実した日々を過ごす。
花は、ランスと解散後は森へ行く。
スバルとユナはたいてい日中から修行しており、修行後は、花とユナは憂さ晴らしをする流れが多かった。
◆
ビッグマッチまであと一週間。
憂さ晴らし後に、風車の丘の展望台に移動した。
ユナは花にあることを報告した。
「花、わたしね。現実の方では仕事も何もしてなかったんだ……専門学校を卒業は出来たけど、人と関わるのが怖くて……」
花は黙って聞いていた。
「それでね、こ、これ見て……」
ユナは、データから写真を見せる。
「わたし、この施設の面接に受かったんだ。パートだけど、働いてみようと思うの。」
花は目を開いてユナを見た。
「ユナ……すごいな、一歩踏み出したんだな。」
「うん!怖いけど、頑張ろうと思う。花と知り合ってなかったら、こうなってなかった……本当にありがとう……花が、踏み出す勇気をくれたんだよ?」
花は片手で自分の頭をくしゃっとかく。
「そんな大袈裟な……ただ、一緒にゲームしただけなのに……ユナの気持ちが強くなったんだよ。」
ユナは首を横に振る。
「普通だったら、こんな面倒な私を迎え入れたりしない……あったとしてもそれは……」
(まあ、下心しかねえわな、普通の男子なら。)
「だ、だから、ありがとう!!」
「お礼を言のはこっちだよ。武具も上達したし、仲間たちにも良い刺激になってる。テイムに関しても、ユナがいると心強い。
ま、これからもよろしくな。」
「うん!!」
ユナは満面の笑みを見せた。
(ぐおあ!眩しい!!……ん?この施設って……)
「なあ、この施設って、もしかして、ユナは動物系の専門学校行ってたのか?」
「う、うん。動物が好きだから……おとうさんも、その系統で働いてるの。」
「なるほどなー、ここなら、観光でも行けそうだなー。ばったり会ったりしてな。カッカッカッ!」
ドキ!!
「え!か、観光!?」
「おう、ここは、デートや家族連れとか、お客さんがよく入るところで有名だな。まあ、ユナがどこに配置かは分からねえけど、専門の資格があるなら、ショーとかも担当するんじゃねえか?」
「そ、それもあるかもって言われた。代打で代わりにすることがあるかもしれないから、動物たちとも信頼関係を作るようにって。」
「まさに、テイムだな。ユナは、現実でも、こっちでもテイマーなんだな!」
ユナは顔を赤くする。
「そ、そんなテイマーだなんて、大袈裟な!
けど、確かにそうかも……テイムするつもりでやらないと、ショーが上手くいかないかなあ。」
「ま、イルカとかのショーや体験で会うことはねえから安心しろ。」
「……あ、泳げないから?」
「……その通り!泳げないのに体験したりしないぜ!」
「なんで、そんなに威張ってるの!?あははは!」
「金槌だからな!俺は!もし、イルカ体験をしなきゃならなくなったら、絶対助けろよ!?」
「はいはい、助けますよ。助けられっぱなしは嫌なんで!」
ユナは以前より花を少しいじるようになった。
花もそのことに気がついており、わざと振ってみたりして、ユナが過ごしやすいよう工夫した。
「スバルにも、色々習ってるみたいだな。」
「うん、近接のプロに、色々教えてもらおうと思って……わたしの弱点だから。」
「すごいな、ユナはどんどん前に進んでる。俺も見習わないとな。」
花は遠くを見つめて言った。
ユナはその横顔を見て、少しモヤモヤした。
(花……やっぱり何か抱えてるんだ……そうだよね、憂さ晴らししてるんだもん……)
「は、花は……大丈夫なの?」
ユナは勝手に口が開いていた。
「ん?何が?」
「いつも……思い詰めてるみたいだから……」
「ん?……ああすまん……こうして景色を見ていると、ついな……。ありがとうな。」
「わ、わたしでよければ……その……いつでも話してね!」
ユナの顔は真っ赤だった。
花はユナの顔を見て驚いた。
(他人を気にかけるなんて、今まで自分のことで精一杯だったのに……ったく、若いってのは、成長が早えもんだな。)
花は、ユナの頭をくしゃっとする。
「わ!」
「ユナに心配かけるとはな!俺もまだまだだな……でもそうだな……もし、どうしても追い詰められたら……そんときは、ちょっと話聞いてくれるか?」
ユナは顔を赤くしながら笑顔になる。
「う、うん!もちろん!その時は言ってね!」
(誰かに頼りにされること……これも成長か。ユナ、すげえよ。
だからこそ、良い人生を歩んでほしい……良い人に出会ってほしい。
俺みたいに、詰んでほしくない。
この子に対して、俺にできることをしよう。
この子の未来が明るくなるように。)
「ん?どうしたの花?」
「いんや、ユナは優しいなと思っただけさ!
さて、そろそろ帰るか!」
二人は風車を離れて狩りをしながら戻った。
途中、モンスターの村にも立ちる。
「ご主人様!ユナ様の歓迎会はいつにしましょう!?」
「そうだな、ビッグマッチの前日はどうだ?」
「それはいいですね!ランス兄様の健闘も祈って!」
「じゃあ、みんなにアナウンスしとくな。」
「み、みんなありがとう!」
カレッジで解散となり、ユナは先にログアウトした。
「よし……とりあえずみんなにアナウンスはした。」
(さて、俺はもう一度憂さ晴らししてから上がるか……)
花は無意識にいつもと違うルートを走っていた。
(いつもと同じじゃワンパターンだ。そして、今日は完成したこれを使ってみよう。)
シュパパパ!!
バシューン!!
「お、なかなかの切れ味。なら、これはどうかな?」
キキャー!
ガキギン!!
「お!?ピクリとも押されなかった。やっぱりこの効果はちゃんと付与されてたな。
とりあえず、完成だな。」
ピロン
(ん?誰だ?こんな時間に、もう返信か?)
花は、メッセージを開く。
(ん?……な、なに?……はあ?)
第二百三話 完
第二百三話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
今回はビッグマッチに向けてそれぞれが己を磨く熱い特訓、そして現実世界での大きな一歩を報告し合う花とユナの、優しくも切ない心の交流が本当に深く胸に刺さる回でしたね!
マサムネ対策として矛を振り回す規格外な花の格好良さはもちろんですが、その背中に応えるように、スバルに弟子入りして体術を学び始めたユナの健気な成長には感動を禁じ得ません。風車の丘で「面接に受かった」と照れくさそうに微笑むユナと、花の「金槌いじり」の微笑ましいやり取りにはニヤニヤが止まりませんが、花の抱える「現実の絶望」を察して「いつでも話してね!」と真っ赤になりながら伝えるユナの優しさ、そして「俺みたいに詰んでほしくない」とどこまでも彼女の幸せを願う花の深い包容力には胸が熱くなります。ラストでは、完成した新武器の圧倒的な性能を試した直後、深夜の花のアバターに届いた謎のメッセージ。花の口から出た「はあ?」という困惑の正体は一体何なのか、次なる展開への期待が最高潮に膨らみます!
「ユナがスバルに弟子入りして強くなろうとする姿が健気で最高!」「花の『俺みたいに詰んでほしくない』というモノローグに涙が出た……!」など、今回の感想をぜひメッセージで届けていただけますと嬉しいです!
皆様からいただく応援の**【コメント】、作品を見逃さないための【ブックマーク登録】、および【ポイント評価】や【コンテスト】**への応援が、現実の重荷を抱えながらも、完成した最強の武器を引っ提げて仲間たちと共に次なるビッグマッチ前夜の歓迎会、そして衝撃の通知の謎へと突き進む花の無双をさらに熱く盛り上げる最大の力になります。ぜひ、hanaXIII への変わらぬ力強い応援をよろしくお願いいたします!
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『Another Life』の、切ない現実を抱えながらも、VR世界で大切な仲間の未来のために最強の盾となり矛となって寄り添う花の物語とはまた一味違う、才能なしと見捨てられた主人公が己の拳と不屈のソウルだけで宇宙を揺るがす危機に立ち向かい、全人類を救う最強の切り札としてド派手に無双する王道の熱いSFバトルファンタジーです。こちらも魂が震えるほど熱い展開が満載ですので、ぜひあわせてチェックしてみてください!
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