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Another Life 〜現実が詰んだので、フルダイブVRで人生やり直します〜  作者: hanaXIII
第一章 フルダイブ型VRとの出会い――人生詰んだ男の再始動(リスタート) 編

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第二話 フルダイブ型VR

今回は、主人公の「結婚生活」という、少し重たい現実のプロローグから始まります。

皆さんは、結婚ってどんなものだと思いますか?

支え合い、共に歩むこと。そんな「当たり前」の理想を信じていた一人の男が、なぜ現実から逃げ込むようにしてフルダイブ型VRにのめり込んでいったのか――。その切実な理由が明かされる回です。

皆さんは、結婚ってなんだと思いますか?

好きな人と一緒にいたい。助け合って生きていく。お互いの夢を叶えたい。子宝に恵まれたい。

どれも正解だ。きっと、間違いじゃない。

俺の場合、自分の母親から理不尽な扱いを受けて育った経験から、結婚相手は「家族想いな人」が良いと心に決めていた。

それは間違っていなかったと思う。

妻は、義母と二人暮らしで、その母親を心底大切にしていた。近くに住む親戚たちとも仲が良く、付き合っている頃の俺には、その姿がとても献身的で、スレていない純粋なものに見えた。

だが、現実はそう甘くはなかった。

「家族を大切にする」という言葉の定義が、俺と彼女では決定的に違っていたのだ。

彼女にとってのそれは「依存し合う関係」であり、対象はあくまで「自分が幼い頃から慕ってきた血縁者」のみを指していた。

俺は、互いに支え合えるパートナーになれると思い込んでいた。

その淡い期待は、結婚して同棲を始めた瞬間、音を立てて崩れ去った。

共働きのため、ルールを決めた。

早く帰った方が夕食を作る。家事は分担する。

だが、たいてい俺の方が早かった。

俺が夕食を作って待っている。帰ってきた妻は、俺が作った食事を済ませ、俺が掃除して沸かした風呂に入り、一言だけ放つ。

「じゃあ、もう眠いから寝るね」

食器洗いも、洗濯物の片付けも、すべてを俺一人に残して寝室へ消えていく。

翌朝、返ってくるのは「うん、ありがとう」という、温度のない一言。

そんな日々が、何日も、何ヶ月も続いた。

家事の9.5割は俺が担っている。

これが「助け合い」なのだろうか。

そこまでやらせておいて、何も思わない妻。

彼女は実家暮らししか経験がなく、母親がやってくれるのが「当たり前」の生活しか知らないのだ。

それでも俺は諦めずに、何度も分担の話をした。人は対話で変われると信じていたかった。

ふと、そんな虚しい記憶が脳裏をかすめた。

――ピコン。

深夜。妻も子供も寝静まり、静寂に包まれたリビング。

ソファに横たわり、最新鋭のヘッドギアを装着する。

ついに、現実を脱ぎ捨ててゲームの世界へ。

「……ここが」

辺りを見渡せば、高級ホテルのロビーを思わせる、重厚な洋風の空間。

手足の感覚を確かめてみる。皮膚に触れる空気の感触、叩いた時の衝撃、高く跳んだ時の浮遊感。

すべてが恐ろしいほどリアルだった。

「これはすごい……リアル過ぎる!」

受付のNPCから最低限のチュートリアルを受けた。

だが、俺にはそんな説明はどうでもよかった。

知りたいのはただ一つ。「どうやって攻撃するか」、それだけだ。

街の外には、初心者向けの森が広がっていた。

中世ヨーロッパを思わせる美しい街並み。現実の時間軸とリンクしたりしなかったりする、移ろいやすい空の景色。

普通ならその景観に感動するところだろうが、俺が感動したのは別の部分だった。

最初に対峙したのは、スライムやゴブリンといった、ありふれた雑魚モンスター。

正直、恐怖を感じるかと思っていたが、違った。

無我夢中で武器を振りかぶり、その感触が手に伝わった瞬間――俺の体中に電流が走った。

ズガッ! ドガッ! バキィ!

モンスターの断末魔が響き渡る。

「……全然疲れない。全然、痛くない。これ、最高だ!」

現実でストレスを溜め込み、衝動的に壁を殴って手を痛めた夜があった。

ここでは、どんなに暴れても、どんなに八つ当たりしても、誰も俺を責めないし、俺の体も傷つかない。

俺は無我夢中でモンスターを狩り続けた。

長年、胃の奥に溜め込んできたドロドロとしたストレスを、すべて剣に乗せて叩きつける。

それからというもの、仕事、家庭、そしてこの「発散」というルーティンが完成した。

驚くべきことに、俺は現実でストレスを感じにくくなっていった。

フルダイブ型VR。これが俺の、唯一の救いになった。

この爽快感に、俺は完全に「沼」にハマってしまった。

ストーリーの進行はどうでもいい。新しいエリアに行くのも、誰かとパーティを組むのも面倒だ。

ただ、冒険者登録という最低限の作業だけ済ませ、モンスターを狩り尽くし、最後に素材を換金する。

その単純作業だけで、俺の心は救われた。

「あー、スッキリした! 開発者は天才だ。俺にとっては、あんたが神様だよ」

もちろん、わかっている。俺はただ、現実逃避をしているだけだ。

ログアウトすれば、現実は何も変わっていない。理不尽な日常が待っている。

だが。

溜め込んだ毒を吐き出す場所があるだけで、どれほど救われるか。

「○ね! ○ね!! 消えろぉぉぉ!!! 俺の気持ちなんて、わかってたまるかよ! 馬鹿野郎! どうせわかんねえよ、あいつには!」

モンスターに浴びせる罵声。……ということに、しておこう(笑)。

まさか、ここから数年もの間、この単調なルーティンをひたすら繰り返すことだけに没頭するなんて。

この時の俺は、それが「異常事態」だなんて、微塵も思っていなかったんだ。



第二話 完

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

現実での孤独と家事のワンオペ、そして夜のゲームでの凄まじいストレス発散。

花峰にとって、このVR世界がどれほど切実な拠り所だったのかが明かされる回でした。

この「ひたすら初期の街のモンスターを狩り続ける」という奇妙なルーティンが、のちに彼をどんなバケモノ(最強)へと変えていくのか……。

「花のストレス発散にスカッとした!」「ここからの成長が楽しみ!」と感じていただけましたら、ぜひ【ブックマーク登録】や、下部にある【ポイント評価】での応援をよろしくお願いいたします!

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