第一話 ご褒美
数ある作品の中から目を留めていただき、ありがとうございます!
本作は、現実の理不尽に耐えるアラフォーの男が、フルダイブVRという新世界で己の人生を掴み直していく物語です。
大人の男だからこその哀愁と、不器用な生き様が生み出す人間ドラマを、ぜひ最後までお楽しみください。
俺の名前は花峰佑城。
今年で40歳になる、どこにでもいる、普通のサラリーマンだ。
背は高くなく、顔も良くない。運動神経だって並以下だ。
――つまり、何一つ自慢できるものがない。
人生の折り返し地点を迎え、ふと足を止めてみる。
俺の人生って、一体なんだったんだろうな。
そんな、実体のない絶望に胸を締め付けられる日々を送っている。
妻もいる。子供もいる。
世間一般では「幸せ」な家庭のはずだ。
だが、ただ「形」があるだけで、本当に幸せだと言い切れるだろうか。
どんな人と過ごし、どんな風に生きていくのか。
正解のない問いに、俺は毎日、泥沼のような悩みの中にいた。
そんな時だった。
あるゲームをきっかけに、止まっていた俺の時計が、再び静かに動き出したのは。
◆
5年前。クリスマスを一週間後に控えた、冷え込む夜のことだ。
「よし……これは娘、これはあいつ、これはお義母さんの分っと……」
リビングの隅で、家族へのクリスマスプレゼントを並べる。
決して余裕があるわけではない給料をやりくりして用意したそれらを眺め、俺は小さく呟いた。
「みんな、喜んでくれるかな……」
ふと、指先が止まる。
(……俺へのプレゼントは、あるんだろうか)
……いや、別に欲しいわけじゃない。期待なんてしていない。
ただ、胸の奥を通り抜けた隙間風が、少しだけ痛かった。
ふと思い出したのは、経営者だったじいちゃんの言葉だ。
『佑城、いいか。人にして与えることは、ドブに捨てたものと思え』
『え? じいちゃん、どういうこと? せっかくの物を捨てるの?』
『そうじゃない。誰かに尽くすというのはな、見返りを求めてやるもんじゃないってことだ』
幼い俺は首をかしげたものだが、じいちゃんは優しく諭してくれた。
誠意は一方通行でいい。相手がどう返してくれるかを期待するのは、それは「善意」ではなく「取引」だと。
『誠意を押し付けてくる奴と、お前は仲良くしたいか?』
『ううん、嫌だ。後で何か言われるなら、何もしてほしくないよ』
『そうだ。だから見返りを求めずやりなさい。そうすれば、お前の周りには自然と、良い人が集まるようになるからな』
当時の俺は、元気よく返事をした。
けれど、じいちゃん。俺はまだ、あんたみたいに強くはなれなかったよ。
自分を否定し、理解しようともしてくれない相手に、善意を注ぎ続けるのは……あまりに、摩耗しすぎるんだ。
俺は、妻との折り合いが悪かった。
価値観のズレは衝突を呼び、子供ができれば変わると信じていた期待も、虚しく霧散した。
俺は、自分の家の中でさえ、孤独という絶望に浸かっていた。
そんなある日のことだ。
立ち寄った家電量販店で、俺はある「夢」と出会う。
世界初、フルダイブ型VRゲームの発売告知。
(アニメで見たあの世界か……いいな。もう、現実から逃げ出してしまいたい)
自分でも情けないと思う。だけど、これくらいは許されていいはずだ。
「……俺、頑張ってるもんな。自分で言うのもなんだけどさ」
じいちゃん、ごめん。これだけは、自分への「見返り」として買わせてくれ。
俺は、吸い込まれるようにレジへと向かった。
それが、俺の人生を少しずつ変えていくとも知らずに。
どこにでもある人生の理不尽に、アラフォーの男がどう立ち向かっていくのか。
これは、そんな一人の男の再生の物語だ。
――そのゲームの名前さえ、まだ深く考えていなかった。
まさか、五年間も“初期の街”から出られなくなるなんて。
第一話 完
第1話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
40歳の不器用な男・花峰の物語がここから始まります。
家族のために擦り切れるまで頑張ってきた彼が、ゲームの世界でどんな一歩を踏み出すのか……。
「おっさんの逆転劇を応援したい!」「この先の展開が気になる!」と感じていただけましたら、ぜひ【ブックマーク登録】や、下部にある【ポイント評価】での応援をよろしくお願いいたします!
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それでは、次話もよろしくお願いいたします!




